1. 技術者かねまるの「プラントライフ」
  2. #32 消える水、消える熱-気化..
2025-08-27 12:56

#32 消える水、消える熱-気化熱で読み解く日常とものづくり

spotify apple_podcasts youtube

手の甲に水やアルコールを吹きかけると、すっと冷たくなりますよね。今回は、身近な涼しさから工場の設備まで、気化熱をテーマに話します。

ものづくり系ポッドキャストの日 共通テーマ「冷却」

----

【参考資料】
・環境省熱中症予防サイト https://www.wbgt.env.go.jp/wbgt.php

・クーリングタワーの原理 https://www.kuken-coolingtower.com/knowledge/construction/

・労働安全衛生規則改正 https://www.mhlw.go.jp/content/001476821.pdf

----

質問や相談、お便りを募集しています。 https://forms.gle/EDHYXorTnk35gu91A

プラントライフは、化学プラントの技術者である私かねまるが、化学と工場に関するトピックを、分かりやすく紹介する番組です。 毎週水曜日の朝に定期配信! LISTENで公開後、各種Podcastアプリにも配信されます。

X:かねまる@化学プラント技術者 https://x.com/chem_fac

プラント技術解説ブログ「ケムファク」 https://chem-fac.com/

MONOist連載記事「はじめての化学工学」 https://monoist.itmedia.co.jp/mn/series/40825/

BGM「アイスコーヒー、デカフェで!!(しんさんわーくす)」 https://youtu.be/rhV9sy346vY

サマリー

気化熱の原理が日常生活やものづくりに与える影響を探求しています。冷却装置やクーリングタワーを通じてこの現象の実例を示し、湿度や温度が気化熱に及ぼす影響にも焦点を当てています。

身近な気化熱の体験
手の甲に水やアルコールを吹きかけると、すっと冷たくなりますよね。 今回は、身近な涼しさから工場の設備まで、気化熱をテーマに話します。
プラントライフは、化学プラントの技術者であるかねまるが、 化学や工場に関するトピックを分かりやすく紹介する番組です。
今回は、ものづくり系ポッドキャストの日という企画に参加しています。 ものづくり系ポッドキャスト番組が共通テーマに沿って話す企画です。
今回のテーマは、冷却。 冷却装置、現場の熱対策、おすすめの頭の冷やし方などなど。
冷却を軸に、ものづくりの話ししちゃいましょう、とのことです。 今回は、気化熱を取り上げます。
身近な気化熱を、ものづくりの用途にまで広げて話をしてみます。 まず最初に、気化熱という言葉の意味を押さえておきます。
気化熱は、液体が気体に変わるときに周りから奪う熱のことです。 手元の水が空気の中にすっと消える。
この消える瞬間に肌や空気の熱も一緒に逃げていく。 それが気化熱です。
まずは身近な事例から紹介します。 一つ目がアルコールです。
手のひらにアルコールをつけて少し時間が経つと、一気に手が涼しくなりますよね。 この現象が気化熱です。
手の表面にあるアルコールが空気に混ざって消えていくとき、手から熱を奪っていきます。 もう一つがミストや内水です。
人通りの多い夏の広場では霧状の水を出している場所があります。 この霧の近くは涼しいですよね。
水が冷たいだけではなくて、細かい水の粒子がすぐに蒸発するので、気化熱のおかげで一層周りを涼しくしています。
似たような操作として内水がありますね。 アスファルトの地面に水を撒いてしばらくすると温められた地面が冷えて涼しくなってきます。
このように気化熱は素早く大きな熱を奪うのに向いています。 この凄さを体感しやすいのは髪をドライヤーで乾かすときです。
髪を洗った後、ドライヤーで乾かすとき、 最初の方は頭皮の熱さは感じないと思います。
それは髪が濡れていて、乾くときに水の気化熱で頭皮が冷やされているからです。 頭皮に熱を感じ始めたら、髪が乾いた目安として判断する方もいらっしゃるのではないでしょうか。
あのドライヤーの熱い風から頭皮を守ってくれるくらい 気化熱は優秀なんです。
クーリングタワーの仕組み
今挙げた事例は身の回りの気化熱でした。 この気化熱の仕組みを産業に利用した装置があります。
それがクーリングタワーです。 工場では物を冷やすために冷却水が必要になります。
例えば、化学反応で発生した熱を奪うのに使います。 熱を奪わなければどんどん温度が上がってしまいます。
そうすると反応暴走につながってしまいますので、安全に関わる大事な要素です。 この時に使われる冷却装置がクーリングタワーです。
冷却灯とも呼ばれます。 原理は気化熱による冷却です。
水の一部を気化させて気化熱で冷やしていきます。 まずはどんな構造なのかを紹介します。
原理は気化熱ですので、効率的に水を気化させる仕組みが必要です。 人通りの多い夏の広場では霧状の水を出している場所がありましたね。
水たまりのようなまとまった水よりも、こうした細かい水の粒子の方が気化する効率が高くなります。
構造としてはクーリングタワーの上からぬるい水をシャワー状に落として、下や横から外の空気を吸い込みます。
単純に水を下に落とすだけではありません。 空気と触れる時間が長い方が気化しやすいので、中には水と空気がよく触れ合うような充填剤というものが入っています。
この充填剤に水が当たって薄く広がることで、一層空気と触れ合う面積が広がります。
水が下に落ちていく過程で、水の一部が気化してたくさんの熱が一緒に消えて、残った大部分の水が冷えていきます。
この冷えた水が下に集まって冷却水として利用できます。 冷却に使った水は温度が上がっていますので、またクーリングタワーに戻します。
そうすると気化熱で冷やして再度利用できます。 気化した分の水を足しながらずっと水を循環することで冷たい水を供給し続けられます。
湿度と気化熱の関係
複雑な構造がなくて電気的な機構も少ない特徴があります。 故障リスクが少なくてメンテナンスがしやすくなっています。
水を循環させておくだけで冷やせるような便利な装置です。 だいたい37度の水が32度になるような設計が多くて、5度程度温度が下げられます。
そんな便利なクーリングタワーはどこにあるのでしょうか。 化学プラントで使われる以外にも身近なところで見ることができます。
実はビルの屋上にもあります。 大きな室外機みたいな四角い箱が並んでいます。
上にはファンがついていたり、太いダクトのようなものがアルファベットのLを逆さまにしたような向きで伸びていたりする。
そんな見た目です。 箱型のクーリングタワーは空調用として使われていまして、ビルの熱を外に逃がしています。
そしてもう一つ有名なのは発電所です。 遠くに見えるくびれた巨大な塔があります。
てっぺんからはふわっと白い湯気が出ているようなもので、それがクーリングタワーです。 白いもくもくは煙ではなくて霧です。
寒い日に息が白く見えるのと同じ現象になっています。 上から暖かい水をシャワーで落として空気は下から取り込まれて、上昇気流で空気は上に上がっていきます。
下から自動的に空気が吸い込まれるのでファンを回すような動力も不要です。 運転費用が安かったり故障リスクが低くなります。
原子力発電所でもこのくびれた巨大な塔の構造が使われています。 こんな便利なクーリングタワーですけれども弱点があります。
それは湿度が高い日はあんまり冷えないことです。 水が気化することで冷える原理なので気化しなければ効果がありません。
大事なキーワードは湿気温度です。 熱中症とも関係がありますのでここから湿気温度というキーワードを意識して聞いてみてください。
この湿度の時にどれくらい温度が下げられるかを表した指標として湿気温度というものがあります。
湿った玉と書いて湿気です。 普段使う温度計に濡れた布を軽く巻いて風を当てると表示がスッと下がっていきます。
この下がった温度が湿気温度です。 ぜひやってみてもらいたいんですけれども乾いた空気を当てると布の水がよく乾くので温度が大きく下がります。
湿った空気を当てるとあまり乾かないので温度は少ししか下がりません。 水が気化する時に下げられる温度の行き止まりが湿気温度です。
つまりは蒸発で下げられる温度の行き止まりが湿気温度です。 どれだけ頑張っても湿気温度より下には基本的に温度は下げられません。
クーリングタワーを思いっきり使いたいのは夏ですけれども日本の夏は湿度が高いです。 湿気温度が上がってしまうので他の乾燥した国に比べてクーリングタワーの冷却能力は低くなってしまいます。
最初に身近な気化熱の例としてミストの話をしました。 例えば締め切った室内で霧を出し続けると最初は涼しくなるんですけれども
湿度がどんどん上がって水が気化できなくなるのでむしむししてきます。 湿気が困ると冷たさよりも不快感が活用になります。
このミストは湿気がたまらない屋外で使うからこそ大きな効果を発揮しているということです。 湿気が低い方が涼しいということは皆さんも体感していると思います。
それは湿気温度が低いからなんです。 気温が同じでもカラッとした日は湿気温度が低め
むしむしした日は湿気温度が高めです。 最近では暑さ指数という言葉をよく耳にするようになりました。
湿気呼吸温度、WBGTとも言ったりします。 これは熱中症予防を目的に気温と湿度と日差しの3要素を総合して表す暑さの指標です。
25以上28未満で軽快。 28以上31未満で厳重軽快。
31以上は危険を表します。 気温だけではなくて湿度や日差しの影響をまとめて捉えられる実態に即した指標です。
暑さ指数を算出するときに湿気具合を考慮する指標には湿気温度が使われています。 これからも暑い夏は続きます。
湿気温度という言葉はぜひ覚えて帰ってください。 2025年6月1日には職場の熱中症対策の強化として労働安全衛生規則が改正されています。
最近特に暑くなりましたよね。 私の周りでも熱中症の方が増えています。
気化熱や湿度の話を思い出しながら安全に夏を乗り越えましょう。 今回はここまでです。
プラントライフでは化学や工場に関するトピックを扱っています。 毎週水曜日の朝6時に定期配信していますので、通勤時間や朝の準備などにお聞きください。
番組へのお便りは概要欄にあるお便りフォームから投稿ください。 プラント技術に関する専門的な内容はケムファクというブログで解説しています。
最後にこのプラントライフがいいなと思っていただけたら番組のフォローや各ポッドキャストアプリから評価をお願いします。
Xで発信していただける場合はハッシュタグプラントライフをつけてください。 それではお聞きいただきありがとうございました。
12:56

コメント

スクロール