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#101 実験室ではうまくいくのに?スケールアップ効果の話
2026-06-10 23:30

#101 実験室ではうまくいくのに?スケールアップ効果の話

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#科学系ポッドキャストの日 共通テーマ「効果」に合わせて、スケールアップ効果について話してみました!単純に大きくすれば良い、というわけではありません。

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サマリー

今回のエピソードでは、「化学系ポッドキャストの日」の共通テーマ「効果」に合わせ、化学プラントにおけるスケールアップ効果について解説します。実験室レベルから工業生産規模へと拡大する際、単にサイズを大きくするだけではうまくいかず、表面積と体積の比率変化により熱伝達や混合が困難になる問題が生じます。これを解決するため、攪拌器の使用や複数容器での生産、そしてラボスケール、ベンチスケール、パイロットスケールといった段階的な検証が不可欠です。特にパイロットスケールは顧客評価や市場調査に重要であり、最終的な商業プラントの安定稼働には、劣化対応や最適化といった継続的な技術力が求められます。レイノルズ数などの指標を用いた「相似」の考え方が、この複雑なスケールアップを成功させる鍵となります。

導入とスケールアップ効果の紹介
こんにちは、かねまるです。 プラントライフは、化学プラントの技術者が、化学を軸に、皆さんの視野を広げていく番組です。
今回は、化学系ポッドキャストの日という企画に参加しています。 化学系番組も、そうでない番組も含めて共通テーマに沿って話す企画です。
毎月、ホスト番組が決まっておりまして、今回のホストは、ポッドサイエンティストさん、大学教員の佐藤さんが、最新の論文について解説するポッドキャストです。
そんなポッドサイエンティストさんが決めた、今回の共通テーマが、効果。 プラセボ効果,トンネル効果,温室効果など、化学系番組に限らず、効果にまつわるエピソードを募集します、とのことです。
化学プラントでいう効果って、いろいろあるんですけど、まさに、化学工学の根幹となるスケールアップ効果っていう話をしたいと思います。
特に料理のような身近な作業にもつながってくるスケールアップの話。 言ってみましょう。
スケールアップの概念と実験室・プラント規模の違い
まずは、スケールアップって何ですか?って話なんですけど、なんとなくイメージがついているかもしれません。
大きくなること、量が増えることによる効果です。
ちっちゃくても、おっきくても、見た目一緒じゃん!ってなるんですけど、そうもいかないのが、スケールアップ効果の大事なところです。
化学製品っていうのは、小さいスケールから作り始めます。
どこでしょうか?
実験室です。
研究者が実験室で、新しい分子を作ったり、材料を作ったり、それらの作り方を考えたりします。
最初に使う試薬の量は、1gも超えないことが多いです。
そんな規模で始めて、最終的に化学プラントで作るときは、1日何十トンって作ることもザラです。
当然ですけど、実験室とプラントって、作る量が全然違うんです。
大量生産するときに、工業的手法を考える。
それが、化学工学という学問です。
量が違うだけで、何でそんなに学問の一つとして考えないといけないのかっていうと、スケールアップ効果が関係してきます。
もう全然違うんです。
表面積と体積の比率変化がもたらす課題
具体的に言うと、表面積と体積の話です。
表面積は、面積って置き換えても、一応は差し支えないと思います。
まずはざっくり計算方法を考えてみます。
面積は縦×横、体積は縦×横×高さ。
長さをかける回数が違うんですよね。
もう少し一般化して話をすると、
面積、今回で言うと表面積っていうのは2乗で効いてきます。
そして、体積は3乗で効いてきます。
実験室で使った容器のサイズを、化学プラントみたいな大きいサイズの容器に大きくしたとき、長さが変わりますよね。
装置のサイズが変わります。
その長さが変わったときに、面積は変化した長さの2乗、体積は変化した長さの3乗で変わります。
これが顕著に効いてくるのが、温めたり冷やしたりするときです。
料理をするときに大きい鍋で作ったら、内側は熱が伝わりづらいっていうアレなんです。
鍋を大きくすると入れられる料理の具材の量はたくさん増えますけど、
熱を伝える表面積っていうのは、それほど増えてないんです。
小鍋から大鍋に変わったぐらいで、結構大変ですよね。
全然熱が伝わんないし、加熱しすぎて焦げちゃうなんてこともありますよね。
料理の規模で言うと、500ml、つまり0.5リットルから2リットルまで大きくなるくらいでしょうか。
その変化でも大変なんです。
じゃあ、化学プラントの変化の仕方ってどんなもんだと思いますか。
最初がだいたい1リッターくらいの容器だと考えてみましょう。
化学プラントで反応させるときっていうのは、もちろんまちまちなんですけど、
小さいやつで1リットルくらいですかね。
つまり1000リットルです。
私が仕事で経験するのは、5000リットルとか7000リットルクラスが多いですかね。
つまりは、化学プラントで量産するために、だいたい数千倍に量が増えるんです。
料理の場だと、せいぜい2倍や3倍程度。
それに対して数千倍って考えると、熱伝わると思いますか。
何もしなければ、絶対熱は伝わらないです。
大規模化における混合と生産戦略
じゃあどうするかというと、混ぜるんです。
料理と一緒ですね。
料理だと、焦げないように混ぜる印象が強いですけど、
化学プラントだと、焦げないのはもちろんのこと、
熱をいろんなところに行き渡らせるために、混ぜて滞留させます。
以前番組で紹介しました、攪拌器というものを使います。
攪拌というのが、混ぜるっていう意味で、
それを専門にする機械が、攪拌器です。
先端にプロペラがついていて、軸がつながって、
モーターで回すことで、ぐるぐる液体を混ぜることができます。
シャープ87番 素晴らしき機能美 攪拌欲の世界
というタイトルで、ビデオボトキャストで配信しておりますので、
もし見た目が気になる場合は、ご覧になってください。
化学工学では、攪拌混合という、
ただ混ぜるためだけの専用の学問があります。
いかに早く熱を伝わらせたり、
いかに効率よく粉を溶かしたり、
規模が大きくなると、混ぜるだけでも大変なんです。
一旦整理すると、スケールアップして規模が大きくなったとき、
混ざりにくいし、熱も伝わりにくくなります。
大量生産するとき、単純にスケールアップするだけじゃなくて、
小分けにしてたくさん作るという方法をよくとります。
1万リットル分の製品を作りたいときに、
1万リットル作れる反応容器を用意するんじゃなくて、
1000リットル作れる容器を10個用意したりします。
1万リットルの大きい容器だと、全然反応が済まなくてうまくいかないものを、
品質が安定してよくできる1000リットルぐらいのもので作った方が安心ということです。
当然、お金も場所も取ります。
どれだけ大きいサイズで安定して品質よく作れるかっていうのが、
各社の技術力、差別化の部分になります。
スケールアップの段階とパイロットスケールの重要性
品質を保ってスケールアップするっていうのは本当に難しくて、
私も失敗した経験があるんですけど、
だいたい5000リットルくらいで反応してた容器に、
まだ入るからって500リットルくらい足して、
5500リットルで反応させました。
そうすると全然うまくいかなくて、
今までの3分の1くらいしか反応が進んでないってことも経験があります。
結局は3分の1しか進んでないってことは、
出来上がる製品は5500リットルも使わずに、
2000リットルくらいの規模でいいじゃんっていうレベルだったんです。
スケールアップが思ったよりうまくいかなかったっていう事態を避けるために、
化学プラントで量産を進めるためには、
何段階かに分けて、ちょっとずつ大きくして検証していきます。
一番最初の皆さんが知っている実験室の形は、
ラボスケールと呼ばれます。
このラボスケールで作れることが確認できれば、
次は大体10リットルくらいまで大きくします。
ベンチスケールと言います。
最初はビーカーやフラスコからのサイズでしたが、
今回ベンチスケールでは、
1トカンとかポリタンクくらいの容器ですね。
この時点でどれくらいの温度まで上げたらいいかなとか、
どれくらいの時間ゆっくり反応させたらいいかなとか検証していきます。
そしてこの時点で、
ビーカーのようなガラス器具ではなくて、
実際に化学プラントで使う金属製の容器に基本的には変わります。
鉄とかステンレスが使われます。
ベンチスケールでいい感じなのが確認できたら、
もう一サイズ大きくします。
パイロットスケールというものです。
このパイロットスケールは、
化学プラントとして実際に導入する一歩手前のところです。
製品によりますが、
数百リットルくらいの規模だと考えてください。
目安としては、
ドラム缶1本が200リットルくらいです。
このパイロットプラントが個人的に一番大事で、
一番難しいところだと思っています。
大量生産する前の最後の検証の場所です。
様々なデータを収集するために、
大量のセンサーをつけたり、
検証もいろいろやりますので、
配管も増えて複雑な構成になりがちです。
そして何より、
お客さんや市場のところが絡んできまして、
パイロットスケールぐらい作れるようになると、
お客さんでの評価がしやすくなります。
客先評価に新たな市場調査。
お客さんのところは当然、
量産体制を見越した上での評価になりますので、
大量にサンプルが必要な場合も多々あります。
量産するときっていうのは、
最初に立ち上げという工程が入ります。
多くの装置っていうのは、
最初は暖気運転みたいな形で、
ちょっとずつ慣らして、
安定生産できる形まで持っていかないといけません。
その立ち上げ時間も含めて、
たくさんサンプルを使って条件を見たり、
実際に製品が作れるかっていうのを、
お客さんのところで評価しないといけません。
だから、たくさんサンプルを渡して、
この製品で作れますよねっていうのを確認してもらうんです。
お客さんでの評価も良好で、
大量生産しようと決まったら、
ついに本生産のプラントが立ち上がります。
実際の機械と書いて実機っていう人も多いですし、
商業プラントって言ったりもします。
大きな建物の建設と、
大きな装置の設置になります。
装置が組みついたら、
配管で装置同士をつなぎます。
この商業プラントの建設工事を見るのは私も好きでして、
どでかい重機で重たいものを持ち上げて運んだり、
大量の職人さんがいろんなところに渡って工事をしていったり、
プラントっていう科学装置を扱うので、
普段皆さんが外で見ている建設工事とはちょっと違うんですよね。
基本的に化学プラントは吹き曝しの状態なので、
外からどんどん組み上がっていってるなっていうのがよくわかります。
あと材質も金属、ステンレスが多いので、
意外とキラキラしてたり、
綺麗な金属光沢があるので、
外から見ると新品の化学プラントっていうのはものすごく綺麗です。
その後は実際に使っていくんで、
雨風にさらされてどんどん汚くなっていくんですけどね。
この建設工事が見られるのは、
さまざまな検証を繰り返して、
ちょっとずつスケールアップして、
うまくいったものだけが見られる光景です。
商業プラントの運用課題と相似則
たぶんサウジアラビアとかの石油を掘り出して綺麗にする、
生成する設備っていうのは相当でかくて圧巻なんじゃないですかね。
ちなみになんですけど、
商業プラントが立ち上がって、
やっとスケールアップの大変さが終わったって思ったら、
そうでもないんですよね。
ここからが私の今やっている仕事につながってきます。
安定して運転を続けないといけないんです。
何十年も。
だいたいベンチスケールとかパイロットスケールで作る設備っていうのは、
新品のものを使っています。
それをもとに最適な条件を見つけて、
実機のプラントでこれぐらいの条件だったら作れるかなっていう考え方をしています。
今度は実機のプラントの方はどんどん劣化をしていきます。
当初想定していた作り方で作れなくなっていったり、
錆が発生して穴が開いて漏れるようになったり、
私の仕事は日々の変化とかトラブルっていうのに対して対応し続けて、
もともと想定した能力100%で製造し続けられるように考えていきます。
その対応しながら、できる限り無駄なエネルギーを削減できないかって考えたり、
廃棄物を減らせないか考えたり、
安全に作れるような方法を考えたり、
実機プラントになって運転が始まったらやることがいっぱいなんです。
最後にスケールアップするときに目安となる指標っていうのを紹介しようと思います。
掃除っていう考え方を使います。
覚えてますかね。中学校の数学あたりで話があったと思うんですけど、
三角形のサイズが違っても形が一緒で、これは掃除だよっていう言い方をしてたと思うんですけど、
同じ形のまま拡大縮小した図形みたいな意味合いですかね。
まずスケールアップの目安としては、形を同じにする気化学的掃除っていう考え方をします。
見た目は一緒でサイズだけ大きくしたっていうことですね。
ただそれだけだと体積と表面積の比率が変わってきて、熱が伝わりにくくなったり混ぜにくくなったりしますので、
そこにさらに力学的掃除っていう考え方を加えます。
化学工学の分野ではレイノルズ数っていう言葉をよく使うんですけど、そういう数字があるんです。
液体とか気体って、そこに留まるんじゃなくて、自分で広がっていくイメージありますかね。
例えば、コップからテーブルの上に水をこぼしたとして、そこに留まるんじゃなくて、じわーって広がっていきますよね。
でも同じような感じで、はちみつとか水飴みたいなドロドロしたものっていうのは、あんまり広がらなくてゆっくり動きますよね。
粘り気が強くて、留まる力が強いんです。
レイノルズ数っていうのは、惰性で広がっていく力と、粘り気で留まるような力のどっちが強いかなっていうのを表す指標です。
広がる力割る留まる力みたいな感じで数値を出します。これがレイノルズ数です。
広がっていく力、感性の力って言いますけど、感性が働くときは外から力をかけているときなので、どれくらいの速さでかき混ぜたらいいかなとか考えるときに関わってきます。
前置きが長くなりましたが、レイノルズ数を合わせてスケールアップするっていう考え方があります。
だから、広がっていく力と、粘り気で留まるような力の比率を合わせてサイズを大きくすることによって、中に入っている液体の挙動は同じになるように設計をするってことです。
こういうレイノルズ数みたいな数値、科学工学で山のように出てくるんです。
どれも何かと何かに対する比率っていう形で計算しています。
まとめと番組情報
今回はスケールアップ効果について話をしました。
よく考えたら、科学系ポッドキャストの日でバリバリの工学の話しちゃいましたね。
大丈夫でしたでしょうか?ついていけましたか?
遠慮なく、ここわかんなかったってコメントしてください。
とにかく、スケールアップをする、サイズを大きくするっていうのはものすごく難しくて、
単純に同じ形で大きくしたらうまくいくわけでもないよってことは覚えておいてください。
いつ使うかわかんないですけど、化学プラントで働いてますとか、科学工学勉強してますとか、
そういう人がいたら、レイノルズ数っていうのがあるって聞きましたよみたいな話したら喜ぶかもしれないです。
おそらく一番有名なのがレイノルズ数です。
この言葉だけでも覚えて帰ってあげてください。
今回はここまでです。
プラントライフでは、化学や工場に関するトピックを扱っています。
配信は毎週水曜日と日曜日の朝6時ごろを予定しております。
今回みたいな形でできる限り、科学とか工場、工業の話を分かるようにお伝えしてますので、
よかったなって思ったらSpotifyとかApple Podcastの評価をお願いします。
星の5段階がつけれるようになっています。
これがつくと嬉しいんで、よろしければお願いします。
感想はぜひとも、Xにて、ハッシュタグプラントライフをつけてください。
見つけやすいのですごく助かります。
もしくは今回の場合だと、ハッシュタグ科学系ポッドキャストの日でつけても大丈夫です。
そして最後にお知らせです。
ノートにてメンバーシップかねまるのここだけの話というものを公開しています。
発信での試行錯誤とか、技術者のキャリアの話とか、
あんまりオープンな場ではしづらいなって話をしていますので、
興味があればぜひ覗いてみてください。
6月は唯一発信活動をしていて受けた誹謗中傷について、
供養しておこうかなと思っております。
もう昔の話なんですけどね。
それでは終わります。
お聞きいただきありがとうございました。
かねまるでした。
23:30

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