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2023-06-29 16:30

e32 ミヤケ・イベント:年代測定と現代文明の壊滅

屋久杉の放射性炭素測定から、過去に放射性炭素が大幅に増加した年があることがわかりました。この「ミヤケ・イベント」は、歴史的建造物の正確な年代測定を可能にしました。しかし、ミヤケ・イベントは現代社会を壊滅させるものなのかもしれません。


https://www.science.org/content/article/marking-time-cosmic-ray-storms-can-pin-precise-dates-history-ancient-egypt-vikings

https://www.sciencenews.org/article/solar-storm-radiation-trees-miyake-event

https://royalsocietypublishing.org/doi/10.1098/rspa.2022.0497


サマリー

科学用語と日本語の関係に興味を持ち、三宅イベントについて話しました。三宅イベントでは、放射性炭素年代測定を使用して年齢を特定し、C14量から地球上で放射線が増えた年を警告しています。現代文明の危機についても議論しました。

日本語の単語が入る科学用語
みなさんこんにちは、こなやです。
あの、これは僕が日本人だからってわけではないと思うんですけど、
世界中で使われている科学用語の中に日本語の単語が入っていると、
なんかエキゾチックでかっこいいなと僕は思うんです。
分子生物学を習った人だと聞いたことあると思うんですけれども、
岡崎フラグメントっていうのがあるんですね。
いや、僕これめちゃくちゃかっこいい響きだと思うんです。
で、最近三宅イベントっていう、
これもまたかっこいい響きの言葉を知ったんですね。
で、これ結構興味深い話でもあるので、
今日はこの三宅イベントについて話していきたいと思います。
その古いもの、歴史的な建造物なんかがいつできたかを調べる手法として、
ラジオカーボンデイティング、放射性炭素年代測定っていうのがあるんですね。
木材とかそういう有機物には炭素原子が含まれているんです。
地球上のほとんどの炭素っていうのはC12って呼ばれる種類の炭素なんですね。
でも地球上ではですね、宇宙からの放射線でC14っていう、
また別の種類の炭素も少量なんだけど作られるんです。
で、このC14とC12の比率っていうのは大体いつも一定なんですね。
で、その木が成長してその木材ができた時っていうのは特定の割合で含まれているっていう、
そういう状態になるわけなんです。
でもこのC14っていうのはすごくゆっくりではあるんだけれども放っておくと自然に分解するわけなんです。
で、そういった木材っていうのはもう炭素が閉じ込められた状態になって、
その中に入っている炭素っていうのはそのままなんですよ。
だから分解してしまえばそのC14が減っていくっていうことになるわけで、
古いものであればあるほどC14が少ないっていうことになるんです。
だから何かものがあった時にその中に含まれているC14の量を調べてやることによって、
それがいつできたものなのかっていうのを調べることができるんです。
この測定法っていうのは歴史の研究なんかにすごい役立って、
わりかし正確に年代を測定できるわけなんですけれども、
これでもやっぱり数十年ぐらいの誤差は出るっていう、そういう限界があるんです。
これは2012年に発表された仕事なんですけれども、
今でも現役の物理学者で日本の三宅富佐っていう人がやった仕事があるんです。
この人が、薬島の薬杉の年輪を調べていたんですね。
年輪っていうのは木の断面の円形の模様のことなんですけど、
もちろんご存知の方はたくさんいると思いますが、
一つ一つの円が一年を表しているわけなんです。
この薬杉っていうのはすごく長生きで、
樹齢2000年以上のものがたくさんあるわけなんです。
その薬杉の年輪を調べれば、
一番内側のやつっていうのは2000年以上前にできたものであって、
一番外側っていうのが去年できたものっていうことになるわけなんです。
そういうふうになってますから、一番内側っていうのはC14の量が少なくって、
だんだん外側に行くにつれて増えていくっていうことになるわけなんです。
そうやってこの三宅さんはですね、年輪ごとのC14の量を測定していたんですね。
そしたらですね、西暦774年から775年のところで、
C14の量が大幅に増えていたんです。
これ一本だけじゃなくて、どの木でもそうなんですね。
この三宅さんは薬杉を調べていたんですけれども、
また別の地域でですね、すごく古い木を調べていた人たちがいて、
その人たちも同じようにこの年でC14の量が大幅に増えているっていうことを見つけたんです。
ということはですね、何が起きたかわからないんですけれども、
地球全体で放射線の量が増えて、C14がその年にたくさんできたっていうことなんですよね。
さらにいろんな木を調べていくとですね、
こういうふうにC14の量が増えているっていう年が何回かあったっていうことがわかったんです。
それでも三宅さんが発見した774年のやつが一番強かったということで、
しかもそれが一番最初に発見されたので、
この三宅さんにちなんでこういうふうにC14が大幅に増加するっていうことが起きたことを三宅イベントと呼ぶようになったんです。
この三宅イベントなんですけれども、
年代測定に役に立ったんですね。
例えばですね、すごく古い建造物があって、そこに木が使われていたとします。
その木を使って放射性炭素年代測定を行えば、
数十年の範囲で大体の年代っていうのがわかるわけなんです。
それでもやっぱりそういうふうに誤差があるんですよね。
でももしですね、その木材の年齢のどこかに三宅イベントの年が含まれていれば、
その年齢が何年だっていうことがわかるわけですよ。774年だっていうことがわかるわけですよ。
そこから外側に向かってあと何年あるっていうことを調べれば、
その木がいつ切り倒されたかが全く誤差なくわかるっていうことなんです。
実際にですね、いつできたかわからないとか議論があったような建物について、
この三宅イベントを使った方法によって結論を導き出したみたいな、
そういう歴史の研究もあるそうなんです。
と、そんなふうに三宅イベントっていうのは歴史の研究に役に立ったんですね。
三宅イベントと現代文明の危機
でも他にもっと大きな問題があるんですよ。
本当は何を考えなきゃいけないかというと、三宅イベントは何なのかっていうことなんです。
三宅さんの研究によって年齢を調べて、地球上でC14の量が急に多くなる年があったっていうことがわかったわけなんですよね。
そんなふうにC14が増えたっていうことは、地球に降り注ぐ放射線がめちゃくちゃ増えた年があったっていうことなんですよ。
で、なんでそんなふうに放射線がたくさん降り注いだのかっていうところなんですけれども、
これは太陽フレアではないのかっていうのが最初考えられたんです。
その太陽フレアっていうのは、太陽で不定期に起こる爆発なんですね。
これが起きることによって地球まで放射線が到達するんです。
観測史上、最も強烈な太陽フレアっていうのが1859年に起きたキャリントンイベントと呼ばれるものです。
その太陽フレアの影響で磁気嵐と呼ばれるものが発生するんですけれども、それが電子機器なんかに影響するんです。
1859年だから今とは違ってそんな大した電子機器はなかったんですね。
それでも電報のシステムが停止したり、鉄道から火花が出たそうなんです。
つまり1859年にこれが起きたからまあ良かったんだけど、もし今キャリントンイベントと同じようなレベルの太陽フレアが起きたとすると、
送電線や光ケーブルが被害を受けて、さらに無線通信が止まって人工衛星も落下すると言われているんです。
今の社会っていうのはもう全てが電力とか通信に依存しているので、もしこんなことが今起きたらですね、その被害はもう想像もできないぐらい大きなものになると言われているんです。
さらにですね、この三宅イベントによるC14の増加っていうのはキャリントンイベントによるものよりも遥かに大きいんですね。
だからもし三宅イベントが大きな太陽フレアであったのであれば、キャリントンイベントなんかよりもずっと巨大なエネルギーが地球に到達していたっていうことになるんです。
だからもし今三宅イベントなんかが起きたら、人類存亡の危機に陥るんじゃないかっていうところなんです。
なんですけれども、最近ですね、この点に関して研究が一つ発表されました。
これはチン・ユアン・ザンらによる2022年の研究です。
太陽フレアっていうのは太陽周期と呼ばれるものに応じてその頻度が変わるんですね。
太陽周期っていうのは太陽の黒点の数が変わるんですけれども、その周期のことで太陽の活動が強くなったり弱くなったりするっていう、そういう周期のことなんです。
この研究グループはですね、シミュレーションなどをして三宅イベントと太陽周期の関係を調べているんです。
その結果、三宅イベントは太陽周期とは関係なく起きるっていうことを明らかにしています。
しかもですね、三宅イベントっていうのは1年以上続くこともあるっていうことを示していて、太陽フレアっていうのは長くても数日で終わるのでかなり違うものであるということも示しているんです。
それから太陽フレアっていうのはですね、南極とか北極で影響が大きいんです。
これは地球の磁気っていうのが赤道に近い方で地球を守る力が強いからっていうところなんです。
でも三宅イベントの方は地球全体で同じように影響を及ぼしているようで、この点に関しても太陽フレアとは違うということになります。
まあ完全な証明というわけではないんですけれども、三宅イベントは太陽フレアではなさそうだという、そういう結論だったんですね。
じゃあ一半身っていうことかというと、そうではないんですよ。
太陽フレアではないにしてもC14がめちゃくちゃ量が増えるような放射線が何らかの形で地球に到達しているんです。
三宅イベントっていうのはこれまでの歴史の中では平均すると1000年に1回くらいの割合で起きているんです。
ということはこれから10年の間に1%の確率で起きると考えて差し支えがないわけですね。
だから地球の文明がめちゃくちゃになるようなことが十分起こり得るっていうことなんですよ。
でも現状ではこの三宅イベントの正体すらわかってないんですね。
だからこそもしそんな地球をめちゃめちゃにするようなことが起きたとしても、
太陽すらできないっていうことだけがわかっているわけなんです。
いや僕この話を聞くまで三宅イベントってものを知らなかったんですよ。
でも知ってしまった以上ですね、このいつ起きるかわからないし起きたら被害がとんでもないものっていうのがあるっていうことを知って、
少し不安に感じないといけなくなってしまったわけなんです。
今日聞いている人の中にも三宅イベントって知らなかった人いると思うんです。
興味深い話ではあるんですけど、
でもこの不安感の道連れにしてしまった形になって申し訳なかったなと思ってはいます。
今日はこの辺で終わりにしたいと思います。
これに懲りずにまた聞いていただけると嬉しく思います。
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