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2023-07-11 18:59

Bonus Episode 5 バーンアウト(燃え尽き症候群)による休職と復職について

今回は自然科学から少し離れたトピックを扱うボーナスエピソードです。

以前はバリバリ仕事をしていた人が、燃え尽きたように働けなくなる現象、バーンアウトについて粉屋が長く抱えていた疑問を、心理師のわたるんさんに聞いていきます。

「心理師わたるんの「はたらく」をカウンセリングするチャンネル」: https://open.spotify.com/show/1McSum1tLOB0eud5YRwUbQ

Twitter:https://twitter.com/wata_lune

サマリー

バーンアウト(燃え尽き症候群)による休職と復職についての話が参考になります。バーンアウトの症状や治療のプロセスについても触れられています。また、復職に関する実情や条件、そして復職後の継続率についても話し合われています。

バーンアウトの定義と問題視
みなさんこんにちは、こなやです。
あの、バーンアウトって聞いたことありますか?
日本語では燃え尽き症候群なんて言われるんですけど、
主に仕事っていうコンテクストで使われる言葉です。
以前はバリバリと働いていた人が、糸が切れたように、燃え尽きたように働けなくなるような状態のことなんです。
診断基準というわけではないんですけれども、WHOが定義を示していて、3つあるんです。
まず1つが疲労ですね。疲れ果ててるっていう状態で、
さらに仕事に対する感情的な距離感です。
つまり仕事に対してもうどうでもいい、バカバカしいと感じるというような状態です。
さらにパフォーマンスが低下するか、あるいは仕事ができてないと感じるようになるという、
そういう状態のことをバーンアウトって言うんです。
アメリカも日本と同じように働くことをとても重要視する文化なんですけれども、
アメリカでは数十年前からこのバーンアウトが問題視されているんです。
定義がいろいろあってはっきりしたことは言えないんですけれども、
全体の3分の1から2分の1が経験をしたことがあると言われていて、
特にコロナ禍で悪化していると言われているんです。
そういう状況があるので、僕自身非常に興味を持って、
いろんな記事とか、それこそポッドキャスト番組なんかでバーンアウトについて話しているのを聞いてきたんですけれども、
ちょっと釈然としないものがあるんですね。
今日はその辺を掘り下げていきたいと思います。
バーンアウトの原因と個人の対策
だいたいバーンアウトを扱った話というのは同じパターンで進行していくんですね。
最初はまず原因について話されていて、人それぞれではあるんですけれども、
一般的に多いのは長時間の労働、つまり仕事が多いということです。
その他に自立的に仕事が進められないとか、そういったことによるストレスが継続することによって起こると言われていて、
その結果疲れ果ててやる気がしなくてパフォーマンスが低下した状態になるわけです。
その対策なんですけれども、個人としてはまず休むことが挙げられるんですね。
でもそれだけではですね、また働けばまたバーンアウトしてしまうので、働き方を変えるということが必要になってきます。
つまり仕事中心という考え方を変えるのが必要だということが言われるわけなんです。
ただそれだけでは不十分だっていう話の流れになるものが多いんですね。
つまり雇用者の対策、それから社会全体の対策が必要だとされるんです。
会社の対応としては働かせすぎない、そうした方が生産性が上がるっていう話がされることが多くて、
さらに文化として仕事第一っていう考え方から脱却することが必要だと、そういうことが言われるわけなんです。
ただそれを聞くとですね、釈然としないことがあって、つまり救いがないんじゃないかって感じるわけなんです。
そのバーンアウトをした個人の視点から考えると、自分のためだけに会社や社会が変わるわけではないので、
仕事に戻ればまた同じことになってしまうんじゃないかと感じてしまうんですね。
さらにこういったストーリーっていうのは全体としての話で、ぼんやりとして具体的なイメージが湧かないっていうところがあるんです。
さらにアメリカではよくバーンアウトっていう言葉を聞くんですけど、日本ではそうでもなくて、
でも仕事を休職するとかいうのはよく聞くわけです。
それで実際のところはどうなんだろうっていうのをずっと疑問に思ってたんですね。
それで今日は実際に医療現場で復職支援をしてきた心理師で、
ご自身でもカウンセラーの立場からポッドキャストを配信している方をお迎えしました。
バーンアウトの治療プロセスと復職支援
ワタルンさん、ポッドサイエンティストへようこそ。
はい、みなさんこんにちは。公認心理師・臨床心理師のワタルンと申します。
小林さん、今日はよろしくお願いします。
よろしくお願いします。
じゃあ早速なんですけれども、バーンアウトをした人っていうのは実際どういう状態で病院などに訪れるんでしょうか?
まずですね、精神科でバーンアウトっていう言葉は実はあまり使わないんですね。
不登校とかと同じで診断名ではないからなんですね。
ただエネルギーの枯渇やパフォーマンスの低下っていうところはどちらかっていうと、いわゆる鬱病に近いかもしれないです。
仕事のストレスが精神的な症状としてどんな風に出るかっていうのは人それぞれなんですが、
そうですね、バーンアウト状態の人だったら明らかに普段と違う様子で疲れ切っていたりとかぼーっとしていたりとかミスが多くなったりとか、
そういうのが周囲から見てもわかるくらいの状態で受診するっていうことが多いかなと思います。
なるほど、ということはやっぱり全く仕事ができないっていう状態になってそこで初めて病院に訪れるっていうことですね。
そうですね。
じゃあそこではまずどういった対応が行われることが多いんでしょうか。
はい、病院の対応は人それぞれなんですけれども、まず受診をしたらお薬もらえます。
あの、抗鬱薬だったり睡眠薬だったり、いわゆる薬物療法ってやつですね。
他には給食、仕事を休むっていうことをお勧められることもあります。
ストレス源であるお仕事から距離を取ることで、まずは体力的精神的な休養をするということですね。
よく鬱病の人に頑張れ、ワキンクッと言われるんですけれども、まさにその時期になります。
ただずっと休んでいればまた仕事ができるようになるかっていうとそうではなくて、活動できるようになったらまた次の段階に治療を進めていきます。
なるほど。じゃあ、活動できる状態までまず回復してもらうっていうことですね。
私の理解では、働くっていうことに対する考え方を変えるっていうことが必要だということだと思うんですけど、
それっていうのはどういうふうに行っていくことになるんでしょうか。
そうですね、おっしゃる通りで、ただ休んで回復して仕事に復帰しても、また同じようにバーンアウトになることが多いんです。
それはバーンアウトしやすい働き方、環境のままだからなんですね。
例えば、スポーツマンが1回念座すると念座癖がついたりしますが、回復して同じような練習をすると多分同じように念座をすると思うんですね。
そんな感じです。
それで治療の順序としては、まずは体力面が低下しているので生活習慣を整え直して、次に自分がバーンアウトするに至った経緯を振り返ります。
その中には自分の働き方に無理があったり、働く中での出来事の捉え方に極端さがあったりすることがあります。
例えば、自分はまだまだダメだから人一倍業務に時間をかけないといけない、常に成果物は100点の状態で出さないといけない、みたいなちょっとしんどそうな働き方だったりとか、
今回のプレゼンではたくさん準備したのに一つどもったところがあったからダメだった、という感じで自分のダメ出しが得意な捉え方とかが多いです。
その辺は人それぞれなんですが、自分の中にどんな無理があったのか、どんなことを考えてしんどくなっていったのかを知って、
じゃあ次は自分がいい感じで働くにはどうしたらいいかを考えていきます。
あと、その中には大きい話で、自分がどんなふうに働いているとしっくりくるのか、みたいな自分の人生や働き方の納得感を探ることもあります。
じゃあ、お仕事に対する考え方を少し整理するっていうことなわけですね。
じゃあ実際にですね、お仕事を再開していくっていうことになるわけなんですけれども、それに向けてのプロセスっていうのはどういう感じになるんでしょうか。
はい、プロセスはですね、給食中はまずあの職場の上司の人とか保健師さんとか、
誰か窓口になっている人と定期的に連絡を取って体調を共有することが多いです。
そこで復職のタイミングを話し合いながら準備をしていきます。
復帰するときは時短勤務から始めるのが基本です。
とはいえ働かずに自宅にいる状態からいきなり仕事に復帰するのは少しハードルが高いので、
時短勤務の前にリワークデイケアという復職の準備をする場所に通ってリハビリをすることもあります。
そこではさっき話した体力をつけたり働き方の見直しをしたりっていうのを同じ給食している人と交流をしながらやっていきます。
そのリワークデイケアっていうところでは具体的にはどういうことをするんですか?
具体的にはですね、定期的にリワークに通いながら自分がしんどくなっていった経緯を振り返るワークをみんなでやったり、
仕事で苦しかった場面を思い起こしてその時どんなことが起こっていたか、
どんなことを考えていたかを周りの助けを借りながら考えたり、
技術的な作業やディスカッションを通して仕事感を取り戻したりとか、そういったリハビリをします。
ちなみにリワークのスタッフは心理師だけじゃなくて、看護師さんとかいろんな医療専門職の方が関わってくれます。
そうですね、特に安心できる環境で同じ教群の人と交流するっていうところが割と大事な治療になります。
一人だとあんまり自分の発想の枠から出られないっていうか、自分についての理解がなかなか広がらないんですよね。
なるほど、一人じゃないっていうところが大事なわけですね。
リワークっていうのは単純に仕事に体を慣らすっていうわけではなくて、
さっき言ってた働き方を考えるっていうのを失敗しても大丈夫な環境で試して、
それを定着させるみたいな練習の場っていう感じでもあるわけですね。
はい、おっしゃる通りです。
それでいよいよ復職になるんだと思うんですけれども、私が一番疑問に思っているところとしては、
個人が仕事中心っていう考えから変化しても会社の方っていうのは変わらなくて、
復職時の条件と会社の配慮
そうすると元の仕事に戻るのは難しいんではないかっていうところなんです。
実情はどんな感じなんでしょうか。
実情としてはですね、やっぱり会社によって精神疾患の認識がまだまだバラバラなので、
結局戻る先の雰囲気に左右されるっていうことが多いです。
例えば、当然給食した部署に戻るのはハードルが高いものなので、別の部署で、
それができなければせめて別の業務内容での復職を希望する方が多いんですが、
会社によってはそれがいろんな事情で許されないっていうこともありますね。
あと、時短勤務で復職できないケースもあります。
そういう復職時の条件をご本人と会社とで話し合うのがハードな場合は、
そのリワークのスタッフが間に入ることもあります。
そうですね、雑感ですが、割と復職に協力的な会社もたくさんあるにはあるんですけれども、
やっぱり会社側として配慮できないことも当然あって、
そこは復職前にお互いがある程度歩み寄って共通認識を持てることが必要かと思います。
仮にあんまり受け入れる雰囲気がなさそうな場合は、その時はその時で、
じゃあ自分が現状どんなふうに働けると自分を守りながらやっていけるかっていうのを考えて、
自分が納得できるのであれば退職するみたいな選択肢も視野に入れて話し合っていきます。
この辺はさっきお話しした、自分がどんなふうに働いているとしっくりくるのか、
といった自分の人生観とか働き方の納得感があると、
復職とか転職とか退職っていう選択もぶれないと思います。
個人的にはですね、仕事を続けるとか同じ会社でやっていくとかそういうのよりも、
自分がどんなふうに生きていくと自分にとって心地いいのかを探って、
見つけていく作業っていう方がずっと大事だと思っています。
そういうふうに実際に一旦休職して、それから復職した人で、
どれくらいの人が継続して仕事に戻れるもんなんでしょうか?
そうですね。どれくらいかというと、一応データはあるんですけれども、
リワークデイケアを利用して復職した人と、
リワークデイケアを利用しないで復職した人の、
500日後に再休職とか失職した割合を出した研究があるんですが、
リワークを利用した人は2割、利用しなかった人は4割が、
500日後に再休職もしくは失職をしています。
リワーク利用してても2割の方が再休職もしくは失職っていうのは、
どう捉えるかは微妙なところではあるんですけれども、
効果はなくはないっていう感じですね。
なるほど。現実にはやっぱり失職をする場合っていうのもあるわけなんですね。
やっぱり同じ職場に戻る場合でも、
同じようにバウンアウトしないような環境を探していくっていう、
そういう努力がされているっていうことがよくわかりました。
それが得られない場合でも、
同じ職場で継続できなかったとしても、
何かしらで自分が働ける環境を探す方がベターなわけで、
それを人生の優先順位を考えて行うっていうことなわけですね。
必ずしも理想的な環境があるわけではないから、
みんな難しいバランスを取りながらやっていて、
心理師等がそういうのをサポートしているっていう、
そういう現状がよくわかりました。
それからバウンアウトしてない人であっても、
多くの人が頑張って働いているわけで、
そう考えると、誰でもバウンアウト予備軍であるって言えるような気がしますね。
本当にその通りで、
誰でもバウンアウト、精神疾患に陥るっていう可能性は誰でも持っていると思います。
それで病院の心理師は当たり前なんですが、
病院に来た患者さんにしかサポートをすることができないんですが、
やっぱりそれってちょっと遅い気がするんですよね。
だいぶ風が悪化した状態で初めてお会いするっていうか、
そうじゃなくて、風邪の引き始めにカッコン糖を飲んだり、
日頃うがいをしていれば防げる風邪もあるわけですから、
例えば僕のポッドキャストを聞いて、
少し日常のストレスが和らいだり、
仕事を気持ち的にうまくやっていけるようなちょっとした工夫が身について、
いい感じに社会人をやっていける方が増えたら嬉しいなと思っています。
もっと社会人に優しい社会になってほしいし、
その一部を担いたいなぁなんて思っています。
今日は僕が長い間扱いたいと思っていたバーナウトというトピックについて、
心理師のワタルンさんをお迎えして話をしていきました。
ワタルンさん、今日はどうもありがとうございました。
こちらこそありがとうございました。楽しかったです。
ワタルンさんなんですけれども、先ほども話が出ていたように、
心理師ワタルンの働くをカウンセリングするチャンネルという
ポッドキャストをやっているんです。
働く人のサポート経験の多い心理師の立場で、
仕事をしていく上で、人や自分の心に詳しくなって
気持ちも楽になる知識を5、6分ぐらいで話すという番組です。
内容ももちろんなんですけれども、
今日聞いていただいたようにとても和やかなトーンで、
さすがプロだなという番組で、僕もいつも聞いているんです。
その金曜、夕方5時の配信なんですけど、
1週間働いて疲れ果てた帰り道に聞くのに最適な番組だと思っています。
非常におすすめなので、ぜひ聞いてみてください。
今日はこの辺で終わりにしたいと思います。
最後までお付き合いありがとうございました。
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