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2023-01-26 17:13

e10 科学者以外で科学に最も貢献した人:あるアメリカの町でのニュース

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みなさんこんにちは、ポッドサイエンティスト、こなやです。
あの、こんなニュースがあったんですよ。
バージニア州ロアノークっていう都市での話なんですけれども、
以前、ロバート・E・リーの銅像が建っていた場所に、
ヘンリエッタ・ラックスの像が建てられたっていう、
そういう見出しだったんです。
いや、これ何のことだって感じですよね。
で、この一見よくわからない話もですね、
実は、科学も関係ある深い話で、
今日はちょっとこの話をしていこうと思うんです。
で、特にヘンリエッタ・ラックスっていう人なんですけど、
おそらくですね、科学者以外で、
科学に最も貢献した人だと思います。
でも、彼女自身は、科学とは関係ないし、
そういう貢献をしたいと望んでたわけでもないっていう、
そんな数奇な話なんです。
あの、バイオ細胞っていうものがあるんですね。
これっていうのは動物とか植物の細胞なんですけれども、
それを取り出してきてですね、
バイオ液っていう人工的に作ったものの中で、
シャーレの中、皿の中で買うっていう、
そういうものなんですよ。
動物を使った実験っていうのもあるんですけど、
バイオ細胞を使う実験っていうのも、
いろいろ実験がしやすくていいんです。
動物だとなかなか遺伝子を入れたりとか、
薬物を入れたりするの結構めんどくさいんだけど、
バイオ細胞は簡単にできるし、
均一なサンプルが手に入るっていうのがすごくいいんですね。
ただ、例えば動物の体から細胞を取ってきて、
そういうシャーレの上で培養しててもですね、
そんなに長くは生きてないし、あんまり増えないんですよ。
その生き物の細胞っていうのは、
分裂できる回数っていうのに限界が決まってるんですよ。
だから、うまく増えてくれる細胞でも、
しばらく飼っていると増えなくなって、
もう細胞が死んでしまうっていうことになるんですよ。
ただですね、そうじゃない細胞っていうのは、
ずっと増え続ける細胞っていうのがあって、
それが癌化した細胞なんです。
癌っていう病気は、体の中で変な細胞が増えていくっていう、
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そういう病気なんですよね。
本来、細胞が増えるべきじゃない場所で、
細胞が増えて腫瘍っていうのができて、
症状が出るっていう、そういうものなんです。
生き物から取ってきた細胞をしばらく飼っていると、
たまたま癌化して、
ずっと増え続けるっていうことが起きることがあって、
それだとずっと飼っておくことができるわけなんだけど、
そういう細胞って、かなり長い間、
人間の細胞ではできてなかったんです。
でも、やっぱり自分たちの病気に興味があって、
そういう研究を行うためには、
人間の細胞っていうのが必要で、
そういう細胞株が受立されるのが、
ずっと長らく期待されてたんです。
そうしているうちに、
1951年にヒーラー細胞っていうのが生み出されたんです。
このヒーラーって、
ヒーラーっていうのが、
ヘンリエッタラックスっていう人の名前から来ている
細胞の名前なんです。
この細胞は、
ヘンリエッタラックスっていう人がいて、
この人が子宮頸眼を患っていたんです。
そこから、
細胞を取り出して調べるっていうのをやってたんだけれども、
それを培養してみたら増えて、
細胞株として受立されたっていう、
そういうものなんです。
だから、まさにガンから取られた細胞なんですよ。
シャーレの上に置いて、
培養液に入れておくと、どんどん増えていってくれたんですね。
というわけで、子宮頸眼っていうのから
細胞株が受立されて、
それがヒーラー細胞っていうものだったんです。
こんなふうに、非常に培養に適した細胞が取れてきて、
これがその後の研究にすごく大きな貢献をしたんですよ。
よく例に挙げられるのが、
ポリオワクチンの開発なんですね。
ポリオワクチンってポリオウイルスによって起きる病気なんですけれども、
ポリオウイルスがヒーラー細胞に感染することができるし、
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感染するとヒーラー細胞が死ぬんですね。
だから、人間を使って実験ってできないわけじゃないですか。
でも、このバイオ細胞だけ使って、
これでポリオウイルスが働いているところを研究できるようになったんですよ。
それがポリオワクチンの開発につながったんです。
よく例として挙げられるのはこれなんですけど、
他にも本当無数に、たくさんの研究にヒーラー細胞は使われているんですね。
バイオ細胞を使う研究室ってものすごい数あるんですけれども、
絶対どの研究室でもヒーラー細胞ぐらいは持っているんです。
試しにヒーラーで論文検索をしたら、
10万本以上の論文が出てきたんです。
それもたぶん全部じゃなくて、
ヒーラーを使うのはあまりにも当たり前なんで、
あまり検索に引っかかる場所にヒーラーって書いてない論文っていうのもあるんですね。
だからたぶん数十万の論文がヒーラーを使ってやられた研究なんだと思うんです。
普通の研究者ってキャリアの間に数十本ぐらいの論文しか書かないんですよね。
非常に高名な教授とかだと数百本ぐらい書くこともあるんですけれども、
千本超える人ってかなり少ないんですよ。
今話したように、このヒーラー細胞っていうのは、
ヘンリエッタ・ラックスっていう人から来てるんですね。
だからヘンリエッタ・ラックスっていう人は、
直接十万本以上の論文に関わっているっていうことなんですよ。
いや、研究者でそんな数の論文に関わっている人なんていないんですよ。
ましてや彼女は科学者ではなくて、
だから、科学者じゃない人で最も科学に貢献した人はこの人じゃないかなと、
僕は思っているんです。
このヘンリエッタ・ラックスさんなんですけれども、
子宮頸がんで亡くなっているんですね。
でも彼女が亡くなってからも、
彼女の一部であったヒーラー細胞っていうのは生き残って、
世界中の研究室で今なお培養されているんです。
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それが多くの研究に貢献し続けているんですよね。
でもこれってあんまり美談みたいな話じゃなくて、
むしろ不公平、理不尽の歴史の話なんです。
このヘンリエッタ・ラックスさんは、
ヘンリエッタ・ラックスさんは、
1920年にアメリカで生まれた黒人女性なんですね。
タバコ農家をしていたそうで、子供も何人かいたんです。
なんですけど、1951年、彼女が31歳だった時に子宮頸がんになります。
治療が行われたんですけれども、
まだ彼女が生きている時に子宮頸がんの細胞が採取されたんです。
それに関わったのがジョージ・オットゲーっていう研究者なんですね。
この人がその細胞を培養して、それがヒーラー細胞と呼ばれる細胞になったんです。
この人は積極的にこれを研究に使っていって、それで世界中に広まったということなんです。
このことに関して、ヘンリエッタ・ラックスさんには何の説明もなかったし、同意も得ていないんです。
でも当時っていうのはその辺はかなりいい加減で、当時の基準でいけばそれは問題のない行為だったということになるんですよ。
なんですけど、今の基準でいけばこんなのは絶対許されることではなくて、
しかも結果として世界中に広まってますから、その辺は問題視されているところなんです。
ラックスさんはその1年以内に亡くなっているんですね。
異族に対してもこの細胞のことは当初説明が全然なかったんです。
なんですけどもその後になって、この培養細胞とその異族の遺伝子を比べるっていう目的で、異族にサンプルを求めたりしてたんですね。
その時の説明なんかもかなりいい加減で、異族たちはあまりいい扱いを受けていなかったというふうに言われています。
さらに言うとヒイラ細胞を使って多くの技術が開発されたんですね。
たくさんの特許が登録されて利益も出ているんです。
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でもヘンリエッタさんもその異族も何の利益も得ていないんですよ。
これに関しては裁判所の判断というのは出ていて、法律上はそれで問題ないということになっているんだけれども、ちょっと不公平だなという感じはするわけなんです。
だからヘンリエッタさんも家族もあまりいい扱いされていないんですよね。
これに関しては黒人だったからっていう面もあるかもしれないんです。
ちょっと違う話になるんですけれども、ヒイラ細胞が使われ始めたのと同時期にタスキギ梅毒実験というのがあったんです。
これは政府の機関が主導で行っていた研究なんですけれども、タスキギっていう町の黒人の人に梅毒を感染させてその経過を調べるっていう。
だから梅毒治療しなければ死に至りますから、相当ひどい人体実験なんですよね。
だから1900年代に入った後でも黒人への扱いってそんな感じだったんですよね。
こういう事件があったから今でもかなりの不審感を持っているっていうのがあるんです。
このヒイラ細胞っていうのも黒人の人に何の説明も合意もなく細胞を取って、それが当時主に白人の研究者によって自由に使われてたっていう、そういう構図なんです。
ロバートE.D.の方なんですけれども、この人は南北戦争の南部側の将軍なんです。
南北戦争でいろいろ功績があってですね、南部の州では今でも称えられているという感じなんですね。
そこら中にこのロバートE.D.の銅像とか名前を付けた道とか建物があるんです。
ご存知だと思うんですけれども、南北戦争っていうのは基本的に黒人の奴隷制度をめぐる戦いで、北部は奴隷解放という、
南部は奴隷制度の維持という立場だったんですよね。
だからロバートE.D.っていうのは黒人を奴隷にし続けるために戦った人なわけなんですよ。
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それを未だに英雄視しているっていうのは、少なくとも黒人の人はよく思ってないわけなんですよ。
それで2020年、ブラックライブスマター運動っていうのがあったんですけれども、各地でデモが行われて、こういった像がですね、倒されるなんていうことがあったんです。
このヘンリエッタ・ラックスさんの出身地、バージニア州ロアノークっていうところにもリーの銅像が建っていたんです。
これもブラックライブスマターのデモの時に倒されたんですよ。
しばらくそのままになっていたんですけれども、2022年の12月にその場所にラックスさんの像ができたんです。
彼女自身が望んだわけではないんですけれども、医療分野なんかで大きな貢献があったんですよね。
でも長い間無視されていた、そんな黒人女性のヘンリエッタ・ラックスさんを讃える像っていうのが、ロバート・E・リーの像っていう、黒人差別の象徴みたいなものと置き換わるっていう。
まだまだ色々問題はあるわけなんですけれども、その不公平が少し正されたっていう象徴みたいな出来事があったという、そんなニュースだったんです。
今日はこの辺で終わりにしたいと思います。
最後までお付き合いありがとうございました。
ご視聴ありがとうございました。
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