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2024-07-04 19:45

S2E7 友達とは匂いが似ている

科学系ポッドキャストの日、共通テーマ「友情」の配信です。

Spotifyプレイリスト:

https://open.spotify.com/playlist/2znmC7fJSqK3PrfpQM8RWG?si=5434b1f2174e469f

(これは先月のプレイリストです。10日に今月のが公開されます。ぜひ探してみてください!)


匂いが似ていると友情が形成されやすいという研究を紹介します。

さらに、アオイさんと匂いと免疫の遺伝子、男女の好みについても話します。

論文

https://www.science.org/doi/10.1126/sciadv.abn0154

参考

https://www.nature.com/articles/ng0202-130

https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0031938418311995#bb0155

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今日紹介する論文ですが、生物学の論文としてはかなり珍しいことがしてあって、ドストエフスキーの罪と罰の一文が引用してありました。
私たちは時に全く見知らぬ人と出会い、一目で、突然に、何の前触れもなく、言葉を交わす前から、心を惹かれることがある。
その、会ってすぐに、なぜだかわからないけど、その人のことを気に入る、瞬時に気が合うっていうことないでしょうか。
あるいは、友達の中でも、性格とか話す内容とかで特別な理由がないんだけど、それでも相性がいいと感じる人っていないでしょうか。
英語だと、クリックするっていう表現をよく使うんですが、すぐにカチッと会う、ピンとくるっていうような友達関係っていうのがあるわけなんです。
もちろん、長く付き合っていると、友達のいいところとかがわかってくるので、それが仲良くできる理由であると思うようになるんですが、
そうなる前、初めて会った時からカチッとくる人とそうでない人がいて、そこには相手を惹きつける何かがありそうです。
このクリックするっていう感覚、即座に気が合うっていう感覚は、ほとんどの人が理解できるものであると思うんですが、
もしそうであれば、これを決める生物学的な要因っていうのがあるはずです。
でも、それが何なのかよくわかっていません。
今日は、このような無意識に人を選ばせる要因の一つを示した研究を紹介します。
フォッドサイエンティストへようこそ。サトシです。
今日紹介するのはワインツマン科学研究所のインバル・ラブレビィ・ラニオル研究で、
2022年6月にサイエンスアドバンシーズに掲載されたものです。
この研究では、人の臭い、体臭に注目しています。
例えば、犬がお互いに臭いを嗅いでいるのを見かけますが、多くの哺乳類はお互いの臭いを嗅いでいて、
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これが敵か味方かの判断に使われています。
人間はそんなに露骨に臭いを嗅いだりしないんですが、単に相手が臭いとかだけではなくて、
人間でも無意識に臭いが情報のやり取りに使われているっていう話があります。
例えば、臭いから他人の感情が感じ取れるっていう研究がありますし、
友達の臭いと赤の他人の臭いでは嗅いだ時の脳の反応が違うっていう報告もあります。
それで今回の研究では、友達関係と臭いとの関係を調べていってます。
研究のためにまず、会った瞬間から仲の良かった友達、クリックした友達の組を参加者として集めました。
20組の恋愛関係ではない友達同士で、男性同士が10組で、女性同士が10組です。
次に、友達同士では臭いが似ているかどうかを調べるために、臭いのサンプルを準備しました。
この方法ですが、参加者にTシャツを2日連続で着てもらって、それを回収するっていう形です。
その間は、臭いのするシャンプーとか、臭いの強い食べ物は食べないとかをしてもらっています。
このTシャツの臭いを解析するんですが、それには電子の花、E-NOSEと呼ばれる機械が使用されました。
このE-NOSEでは複数のセンサーがあって、空気中の気発成分を分析して、臭いの科学的なプロファイルを作ることができます。
これを使えば、2人の人の臭いがどの程度似ているかっていうのを計算することができるということになります。
その結果ですが、友達同士でどれだけ臭いが似ているかと、友達ではないランダムな組み合わせの2人でどれだけ臭いが似ているかを比較すると、
友達同士の方が臭いが似ているっていうことが分かりました。
さらに、人間の鼻で臭いを嗅いでみて、臭いが似ていると感じるかを調べるっていうこともやっていて、
これでも友達同士の方が他人同士よりも臭いが似ているっていうことでした。
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というわけで、クリックするような友達同士では臭いが似ているっていうことが分かったわけです。
でも、これでもって臭いが似ていると友達になるという結論にするわけにはいきません。
友達になると臭いが似てくるっていう可能性もあるわけです。
それで、今度は全く知らない人同士が初めて会う時の関係に臭いが影響するかを調べました。
この実験では17人が参加していて、10人が女性、7人が男性です。
で、これらの人はお互いに全く知らないっていう状態で、まず全員についてTシャツを回収して臭いを分析しています。
で、次に参加者同士に初めて会ってもらうわけですが、その時に会話なしに相性が良いかどうかを調べたいわけです。
それでやったのがミラーゲームというもので、お互いに距離50センチのところで鏡に映っているようにお互いの動きを真似するっていうものです。
で、この時にどれぐらい動きが同期していたかを測定します。
さらにこのゲームの後でそれぞれにアンケートみたいなことをして、相手のことが気に入ったかどうか、友達になりたいと思ったかどうかを答えてもらっています。
つまりこのゲームでもって相性の良さ、仲良くなりそうかどうかを測定しているわけで、動きが良く同期して相手に良い印象を持っていればポジティブな関係ということになります。
最終的にはこのデータと臭いがどれぐらい似ているかの関係を調べていくという形です。
で、この結果ですが、初対面の時の関わりがお互いにポジティブだった組み合わせでは、ランダムな組み合わせよりも臭いがよく似ていたということでした。
この結果で臭いがよく似ている者同士は友達として相性が良いということが示されたわけです。
さらにこのグループはコンピューターモデルを作っていて、臭いのデータだけから二人の人がポジティブな関係を持つかどうか予測できたということです。
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で、これが71%の正確性だったということなんです。
ということは、人間の臭いには他人とクリックするか、仲良くなれるかに関する何らかの情報が含まれているということになります。
そして臭いが似ている方が相性が良いっていうことで、初対面の人に対してなぜかわからないけど良い印象があるっていうことであれば、臭いがその原因なのかもしれません。
ただし、この研究では友達同士の臭いが似ていること、それから臭いが似ていると相性が良いっていうことは示していますが、
臭いを変えてどうなるかみたいな、直接臭いが関わっていることを調べる実験をしていないので、臭いと一緒に変化する何か別のものが関わっている可能性も残されていて、その点は注意が必要です。
一般に人間は友達として自分とよく似ている人を選ぶ傾向があります。教育レベルや性格とか価値観みたいな内面についてもそうですが、年齢であったり人種、見た目っていうようなはっきりとしたものもそうです。
今回の研究は臭いもその一つであることを示唆しているわけです。なぜ自分と似た人と友達になるかですが、血縁選択で説明されることがあります。
その進化論の考えでは、生物は自分の遺伝子を残すことが有利なわけです。でも自分の子供でなくても、親戚が生き残っても、親戚っていうのは遺伝子が自分と似ているから、自分の遺伝子と同じものが残る可能性が上がるわけです。
そして他人であっても、自分と似ている人は自分と同じような遺伝子を持っている可能性が少しはあるわけで、似ている人と友達になって協力して生き残れば、自分の遺伝子を残すチャンスが高くなるっていう考えになります。
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個人の臭いには遺伝の影響が大きいことが知られています。なので、臭いで遺伝的にどれだけ似ているかを判断している可能性が考えられるわけで、今後のさらなる研究が期待されます。
こんにちは、あおいさん。
こんにちは、さとしさん。
今日の話の最後の方で言っていたんですが、個人の臭いは遺伝の影響が大きいんですか?
そうですね。特にMHC遺伝子との関係が知られています。
最近授業で習いました。免疫に関する遺伝子群ですよね?
そうです。抗原の認識に関わるタンパク質の遺伝子なんですけど、遺伝子が結構たくさんあるのに加えて、それぞれの遺伝子にバリエーションがあって、人ごとに持っている遺伝子のタイプが違うんです。
これが病原体に対する抵抗性に関わっているんですけど、多様な遺伝子を持っている方がいろいろな害的に対応できるので、病気に強くなるとされています。
だから、両親から同じバージョンをもらうよりも違ったバージョンをもらっていた方が強いという感じですね。
臭いとの関係ですけど、具体的になぜかはわからないんですが、MHCの違いが臭いの違いを生むということが知られていて、似たMHCの組み合わせを持っている人は似た臭いをしているそうなんです。
えー、そうなんですね。先ほどの研究は、友達は臭いが似ているというものでしたけど、男女の関係はどうなんですか?これもやっぱり似た臭いの者同士が惹かれるんでしょうか?
そうですね。その点に関しては1995年の有名な研究があります。
まず50人くらいの男性から、さっき話で出た臭いのついたTシャツを回収するというのをやったんですね。
それを50人くらいの女性にそれぞれ買いでもらって、その臭いが好きかどうかって聞いたんです。
さらに、この全ての男女のMHC遺伝子のタイプを調べて、臭いが好きか嫌いかとMHCのタイプが似ているかどうかに関係があるかっていうのを調べたんです。
その結果は、女性はMHCのタイプが自分と違う男性の臭いを好むっていうものでした。
MHCのタイプが似ていると臭いが似ているという話でしたよね。
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ということは、女性は自分と臭いが違う男性を好むということですよね。
じゃあ、さっきの友達同士は似た臭いの人を好むというのとは違いますね。
そうなんです。でも、これはこれで理にかなっているんです。
男性と女性とでMHCのタイプが違えば、そのカップルの子供では父親と母親から異なる遺伝子を受け継ぐということになります。
その結果、よりたくさんの種類の病原体に対応できるというわけです。
つまり、女性が自分と違うMHCタイプの男性を選ぶということは、病気に強い子供を産むのに役立つと考えることができるんです。
なるほど。自分にとって適した相手かどうかを嗅ぎ分けているというわけですか。
そう。でも、もちろん女性は臭いを嗅ぎながらMHCが違いそうだぞとか思っているわけではなくて、
ただなんとなくこっちがいいなって感じるという無意識にこんな選択が行われているというわけです。
さらに言うと、娘から見ると遺伝的に似ている父親の臭いは嫌いなはずで、
妊娠相関を避ける働きがあると考えることもできます。
じゃあ、テレビなんかでよく見る娘が父親にお父さん臭いなんていうのはこの仕組みかもしれないですね。
そうなんですよ。こういうふうにこの話というのは理にかなっていて、当時注目を集めたみたいなんですね。
でもその後、逆の結果を示す研究が発表されているんですが、
そうなんですか?
はい。2002年の論文では同じようにTシャツテストをやって、
女性が自分と似た臭い、もっと言うと父親と同じMHCの方の男性の臭いを好むという結果が出ています。
だから全く逆なんですね。
やっぱり臭いを好むとかでははっきりしないから、
実際に結婚したかどうかとMHC遺伝子の関係を調べるっていう大規模な研究なんかも何度も行われているんです。
でもMHCが似ている相手と結婚するっていう結果の論文もあれば、
その逆とか関係ないとかいう論文もあって、結果がバラバラなんです。
それじゃあよくわからないですよね。
そうなんです。
だからさっきの論文と合わせて、
友達は血縁選択のために似た人を選ぶ、
結婚相手としては免疫のために違う人を選ぶっていうスッキリとした話になりそうだったんですけど、
でもちゃんと調べてみたら残念ながらよくわからないっていうところなんですね。
同じようにこの友達の論文の方も論文1個だけですから、
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まだ覆える可能性はありますね。
でも動物なんかではMHCと好みの関係があるんで、
人間でも何かありそうなんですけど、
複数の要因があったりして、結果がよくわからなくなっているのかもしれません。
それから最近だと皮膚に住んでいる菌が臭いに影響があるっていうこともわかってます。
そうなんですね。
まあ人間の気持ちって複雑ですし、
それにこんな好きかどうかなんてことは科学的に解明されないままの方がいいのかもしれませんね。
なんか綺麗にまとめて終わらせようとしてますよね。
そうです。
でもその前に、今回は科学的に解明されないままの方がいいのかもしれませんね。
なんか綺麗にまとめて終わらせようとしてますよね。
そうです。
でもその前に、今回は科学系ポッドキャストの日の配信でした。
ひよっこ研究者のサバイバル日記という番組がホストで、
共通テーマが友情でしたので、これにちなんだ話をお届けしました。
他にもたくさんの番組がこのテーマで配信していて、
それがまとめられたSpotifyのプレイリストがあります。
ショーノートにリンクを載せておくので、ぜひチェックしてみてください。
では最後までお聞きいただきありがとうございました。
ありがとうございました。
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