組織の親・成人・子ども
こんにちは。明治大学で生涯学習講座の講師をしています、遠藤美保です。この番組では、社会人や学生向けの生涯学習講座を10年以上行ってきた私が、日常生活でも活かせる心理学をポッドキャストでお伝えしていきます。
今回のテーマはこちら。「組織にもある、親・成人・子ども」。今回は、「組織にもある、親・成人・子ども」のお話です。お伝えしている心理学ですが、皆様にとっての日常的で身近な話題とも自然とつながっています。その見方、活かし方をご紹介します。
今回は、「組織にもある、親・成人・子ども」について。私たちの心の中、誰もが持っている「親・成人・子ども」、実はこの「親・成人・子ども」、組織にもあるようなんです。
個人も組織も共通。同じ理論を活用することで、複雑に思える課題にもシンプルに取り組める。そんなヒントが得られます。
第1回目「承認欲求は誰もが持っている原点」。第2回目「心の仕組みは世界共通。誰もが持つ、親・成人・子ども」。第18回目「心の中のメンバー5人、その付き合い方」とも、リンクするお話です。
組織といいますと、固いイメージになってしまうかもしれませんけれども、複数の人が集まるところ、組織あり。家族やグループ、学校、趣味の集まり、働く場、企業や団体、業種・業界、などなど。すべて組織にあたるものとします。
個人が複数集まることで、それぞれが、その中での立場や役割ができ、全体でこう、まとまった人格のようなものが生まれてきます。すると、そこには、「親・成人・子ども」も出来上がる。そうイメージしてみてください。
例えば、簡単なところでいきますと、おやつを気軽に食べたり、おしゃべりを楽しんだり、そんなことがしやすい笑い声がよく出ている。外からお客様が来た時、すぐに「いらっしゃいませ」、はきはきと挨拶ができる。業種・業界にもよりますけれども、これらは「子ども」が関係してきそうです。
あるいは、よくある書類仕事、何かの決裁を得るための稟議。関係各所や役職の方々の、印をもらう。今でしたら、ワークフローシステムで電子的に決裁をもらうというような、そういったお仕事。適切なルート、適切な期限で決裁が下りるようでしたら、「成人」の働きかもしれません。
ただ、もしあまりにも多くのルートを通り、しかも長々と時間がかかる。必要以上に苦労する。ようなら、そこにはちょっと、ネガティブな「親」が関係しているかも。です。
さて、ここで改めて、第2回目でお伝えしました、「心の中に持つ、親・成人・子ども」、こちらをざっくりと復習してみます。
基本は、世界共通です。誰でも、まずは生まれて育てられ、成長して大人になる、その過程で、心の中に出来上がるのが「親・成人・子ども」。
「親」は、育てられた親や親的な役割の人から、取り入れている状態。「成人」は、<今、ここ>にふさわしい状態。「子ども」は、子どもの頃の経験や決断が入っている状態です。組織も同じ。最初に生まれて成長するにつれ、「親・成人・子ども」が出来上がります。
「親」は、今まで受け継がれてきた伝統やルールやり方など。「成人」は<今、ここ>にふさわしい状態。「子ども」は何をどう合わせるのか合わせないのか、自由にできる範囲はどんなものなのか、など。
ポイントは、「親」と「子ども」の中身は、過去のデータ。「成人」の中身は、現在のデータということです。その適切なバランスをとる、時にはデータの見直しを図る、そんなことも必要かと思います。
図解にすると、円を3つくっつけて縦に並べます。上から順に、「親・成人・子ども」。標準的には、同じ大きさの円を縦に3つ。ただ、実際には、この円の大きさが違っていることも多いのではないでしょうか。
一番上の「親」がずいぶん大きくて、下の「成人」と「子ども」の円が、押しつぶされそうなほど小さい。これは、伝統やしがらみ、過去の成功体験やルールが目いっぱい幅を利かせている組織。そんな場合は、こんなアンバランスな円で表せそうです。
一番下の「子ども」がずいぶん大きくて、上の「親」と「成人」が小さくて、押し上げられている状態。勢いよく、ルール無視で、やりたいことに向かって突っ走っている組織。そんな組織は、こんなアンバランスな円で表せそうです。
シンプルな円3つ。だからこそ、起きていることを整理・整頓。分析しやすいツールになります。
いつもいつも、そんなにバランスよく円が3つ揃っているとも限りませんので、タイミングによっては、アンバランスな時期があっても良いかもしれませんけれども、少なくとも、課題を把握しておくことで、対策を練ったり、いざという時の準備をしたりすることも、できるかと思います。
活用法と改善の提案
ちなみに、そんなアンバランスを解消するためには、個人も組織も同じ。承認欲求を満たすための刺激=ストロークを、うまく活用することをお勧めしたいと思います。
例えば、一番上の「親」がずいぶん大きくて、下の「成人」と「子ども」が押しつぶされそうなほど小さい、伝統やしがらみ、過去の成功体験やルールが、目いっぱい幅を利かせている組織。
こうならないためだったと思うんですけれども、かつて所属していたことのある組織では、「子ども」を刺激するような仕組みを、あれこれ取り入れていたことを思い出します。会社を挙げての運動会、練習を含め本気の取り組みが奨励されまして、ずいぶん盛り上がりました。
この他にも、改善の仕組みをアイディアとして出す仕組み、そんな仕組みもありまして、これには実際に、確か賞金か商品が出ていたような気がいたします。これなどは、直接的な刺激・ストロークだったかと思います。
一番下の「子ども」がずいぶん大きくて、上の「親」と「成人」が小さく、押し上げられている状態。勢いよく、ルール無視で、やりたいことに向かって突っ走っている組織。これは、立ち上げ時期のベンチャー系など、思い浮かべられますけれども、だからこそ、慣例にとらわれない、そんな活躍ができるんだと思います。
効果的な「親」 ・ 「成人」にあたる組織や、アウトソーシング先と提携するなど、その先の成長のステージに合わせ、検討する必要も出てきそうです。
シンプルな円3つ。他にも、年齢構成や役職、役割、よく使われている言葉、特徴的なやりとりや出来事、課題だと思っていること、起きているトラブル、クレーム、などなど。「親・成人・子ども」、3つの円のそれぞれに、ぜひ入れてみてください。
ヒントにつながるアンバランスが、見えてくるかもしれません。なお、「親」と「子ども」は、さらにそれぞれ、2種類ずつに分かれます。こちらも、組織にも活用できる考え方です。
ご興味のある方は、第18回目「心の中のメンバー5人、その付き合い方」を、聞いてみてください。5つに分類することで、より詳細が見えてくるかと思います。
では、今回覚えていただきたいポイントは、「組織にもある、親・成人・子ども」。まずは、気づくこと。そして、いつもと違う変化を、味わってみませんか?ここまで聞いていただき、ありがとうございます。最後に、番組からのお知らせです。
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お相手は、遠藤美保でした。ありがとうございました。