英語とギリシア語の関係
おはようございます。英語の歴史を研究しています。慶応義塾大学の堀田隆一です。 このチャンネルでは、英語の先生もネイティブスピーカーも、辞書も答えてくれなかった英語に関する素朴な疑問に、英語史の観点からお答えしていきます。
毎朝6時更新です。ぜひフォローして、新しい英語の見方を養っていただければと思います。 今回取り上げる話題は、英語とギリシア語の関係って、
という話題です。 英語の歴史の話をしていますと、ギリシア語っていうのが、そこそこよく出てくるんですね。
じゃあ、この英語とギリシア語の関係っていうのはどういうことかと言いますと、 まずは、血縁関係と言いますかね。
英語としては、両方ともインドヨーロッパ語族という大きなラングイッチファミリーですね。 言語の家族の一員であるという意味では、広く考えれば血縁関係があるっていうことなんですが、
その中でも色々派閥がありまして、英語というのはインドヨーロッパ語族の中のゲルマン語派という派閥に属するんですね。
一方、ギリシア語というのは、ヘレニック語派という別の語派に属します。 このゲルマン語派とヘレニック語派というのは、事実上他人と言っていいです。
それぐらい非常に遠い関係、遠縁ですね。 ですので、同じインドヨーロッパ語族の中の一員同士だと言っても、直接の関係はないと、ほぼ言い切っていいぐらいに遠いです。
それなのに、まだギリシア語というのは、やはり英語の歴史の話ではよく出るわけなんですね。
つまりこれは血筋が近い、血縁関係として近いからということではなくて、英語がですね、歴史を通じてこのギリシア語、特に古典ギリシア語ですね。
古代ギリシアの言語である古典ギリシア語から、相当多くの単語を借りてきているということに起因するんですね。
英単語ですね、英語の語彙の中にどれぐらいギリシア語要素が含まれているかというと、これは数え方、計算の仕方にもよるんですけれども、
ギリシア語の影響の歴史
例えば7%ぐらいですね、すごく多くはないかもしれませんが、これなかなか無視できない割合ですね、パーセンテージでギリシア語要素が英単語の中に含まれているということです。
例えばですね、いくつか挙げてみますと、ドラマ、エコノミー、アイデオロジー、フォトグラフ、テレフォンのように、比較的日常的なものも含まれていますね。
ただ全体としては音節が多くてですね、つまり長くて学術的な用語というのが非常に多く含まれているのが、このギリシア語の尺用語、ギリシア語由来のあるいはギリシア語要素を含む単語ということになります。
ではどうして英語の中にこれだけ多くのですね、ギリシア語由来のギリシア語系の単語が多く存在しているのかというとですね、
これは主に近代の話なんですね。中世の間、古英語、中英語の間はですね、直接ギリシア語から英語に単語が入ってきたということはほとんどないと考えています。
あるように見えてもですね、それはフランス語であるとかラテン語を経由して、つまり間接的に入ってきたということですね。
ギリシア語の単語はラテン語に多く取り込まれました。そしてそのラテン語に多く取り込まれたものが直接英語に入ってきたり、あるいはさらにですね、フランス語という段階を経て英語に入ってきた。
こういう非常に間接的な経路でギリシア語が入ってきたということはありました。これは主に中英語なんかではですね、あったんですね。
ですが直接ではありません。直接ギリシア語から英語の中にですね、多くの単語が取り込まれたというのは15世紀以降、近代に近くなってからなんですね。
それまでは英語、イギリスですね、あるいは西ヨーロッパ全体なんですが、この地域はですね、直接この古典ギリシア語と接する機会というのはそれほど多くなかったですね。
それが15世紀になるとですね、ギリシア文化、古典に根差したギリシア文化が直接に西ヨーロッパの諸国に入ってくる、影響を及ぼすようになったんですね。
というのは1453年にオスマントルコによってコンスタンチノープルが陥落したということになって、そのコンスタンチノープルに蓄積されていたギリシアの文化ですね、ギリシアの文典のようなものがすべてですね、西に逃げてくることになったわけですね。
それによって西ヨーロッパに、いわゆる古典ギリシアの文化であるとか知識っていうのがドッと流れ込んだ。その勢いで英語にまでギリシャ語が入ってきたということですね。これが15世紀半ばの話です。
そして続く16世紀にはですね、ギリシャ語で書かれていた新約聖書ですね。この原点、つまりギリシャ語の原点への関心からですね、イギリスでもギリシャ語が盛んに研究されるようになった。つまりギリシャ語への関心が高まってきたということなんですね。
科学用語の発展
このようなきっかけで初期近代英語期ですね、15世紀、16世紀、17世紀あたりにギリシャ語の釈要語がどんどん増加していったということなんですね。ただ規模的にはですね、知れていました。そんなに多くないというのが事実ですね。
実際、ギリシャ語の真の存在感ですね、これが爆発するのは19世紀以降、1800年以降のこの200年ぐらいなんですね。というのは科学用語、科学が爆発したのがこの19世紀以降なわけですが、この科学に必要とされる専門用語ですね、科学用語が多くですね、ギリシャ語要素の組み合わせで作られたからなんです。
つまり科学の発達とともに英語におけるギリシャ語要素の活躍ぶりっていうのが非常に目立つようになってくるんですね。じゃあなんで科学語彙、科学用語はギリシャ語なのかということなんですけれども、いくつか理由があると思うんですね。
1つはギリシャ語っていうのは非常に造語力が高いんです。造語能力が高くて、自由に、瀬戸字、瀬戸字、それから連結形と呼ばれるものですね。これを組み合わせてかなり複雑な用語もですね、簡単に作れるっていうのはそういった語形成の特徴を持っているっていうことが1つですね。
そしてヨーロッパ世界において、ギリシャ語ですね、古典ギリシャ語っていうのは非常に高い威信を保っているっていうことを保ってきたということですね。ですので、この科学であるとか、それ自身が威信があると考えられる領域においては、ギリシャ語っていうのはふさわしいっていうふうに考えられたんですね。
これは西ヨーロッパ世界だけでなくて、東ヨーロッパ世界、例えばロシア語なんかもですね、文字でわかりますがギリシャ語、ギリシャ文字ですね、の系統を引いたキリル文字を使っていますね。
なのである意味、ギリシャ語とかギリシャ文化っていうものが接点となって、西ヨーロッパと東ヨーロッパが結びつけられるっていう側面もあったんですね。
なのでいろんな意味で、ギリシャ語っての都合が良いということがあったと思うんですね。
例えばこの2つ理由を挙げましたが、こういったことでですね、科学用語にはギリシャ語がふさわしいという感じになってきたっていうことですね。
実際ですね、この時期こそがギリシャ語の真の存在感が現れてくる時期ですね、英語において。
ある研究者によりますと、八万語の英語の語彙ですね、これで調査したところですね、その中に含まれるギリシャ語の単語ですね、の7割ぐらいが1800年以降に入ってきたものであるということなんですね。
つまり19世紀、20世紀の産物だということです。
今までギリシャ語が入ってきたとか釈養語だというような言い方をしてきたんですが、これ厳密に言うとですね、もともと例えばテレフォンなんていう単語がですね、
ギリシャ語にあったわけではない意味ですね、あくまで造語です、近代になってからの。
ギリシャ語要素を組み合わせて作った造語なので、ギリシャ語から借りたという言い方は厳密に言えば正しくないことですね。
なのでギリシャ語要素を含む単語というのは、ちょっと思ってもらった言い方をしなければいけませんが、そのような事情があるということですね。
このような歴史を経てですね、ギリシャ語の存在感というのは英語において大きい、非常に威信がある、悪く言えばちょっとお高くて難しすぎるということではありますが、インパクトのある存在ですよね。
それではまた。