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2024-09-06 10:00

heldio #48. How d'ye do? の ye とは?

#英語史 #英語学習 #英語教育 #英語史をお茶の間に #英語に関する素朴な疑問 #代名詞
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おはようございます。英語の歴史を研究しています。慶応技術大学の堀田隆一です。
このチャンネルでは、英語の先生もネイティブスピーカーも、辞書も答えてくれなかった英語に関する素朴な疑問に、英語史の観点からお答えしていきます。
毎朝6時更新です。ぜひフォローして、新しい英語の見方を養っていただければと思います。
さあ、本日の話題は、heldio の ye とは、という話題ですね。
これ、ごきげんよう、はじめましてという時に、かなり現代では形式ばった言い方ではありますが、
How do you do? という表現がありますよね。
これ、口語ではですね、発音上ですね、短縮されたかのように、
How d'ye do? How d'ye do? みたいに言ったりしますね。
その場合の書き方、つづり字としてはですね、
How は一緒なんですが、D do みたいになって、
D apostrophe ye というふうに D と読ませて、
How d'ye do? How d'ye do? なんていう書き方がありますね。
発音の仕方もそうなんですけれども。
これはですね、定型文句として、How d'ye do? っていうのはよく使われるので、
You とはっきり言うんではなくてですね、
これを短くして、How d'ye do? みたいに、
口語によくある短縮、省略の結果、
こんな書き方であるとか、発音の仕方が行われているのではないか、
というふうに思う人が多いと思うんですね。
アポストロフィーですし、いかにも省略っぽいですね。
ところがですね、これ実はただの省略ではないんです。
つまり、You の部分が Ye のようになるわけですが、
これは単なる省略というわけではないんですね。
ここに実は深い英語詞的な背景があるんです。
さあ、どういうことかというとですね、
この Ye で示される Yee っていう単語ですね。
これは You の弱形、少し弱まった発音だと思うかもしれませんが、
これは厳密に言うと、歴史的に言うとですね、そういうわけでもないんです。
弱形といってですね、絶対間違いというわけでもないんですけれども、
実はこれは歴史的にちゃんと説明される形なんですね。
どういうことかと言いますと、
You、現代の二人称単数複数の You ですね。
あなた、あなた方を表す You というのはですね、
実は主格、主語の形と目的格、目的語の時の形っていうのが同じ You ですよね。
YOU という形です。
つまり、You are my love, You are my sunshine という時と、I love you という時。
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文中での役割はですね、最初の二つは主語、You are っていうことですね。
主語なんですが、これも You。
I love you っていう時の You は目的語なんですが、形変わらないんですよ。
他の認証代名詞を見てみると、大体形変わりますよね。
I に対して ME ですね。
主格が I として目的格が ME っていうことになっています。
それから HE に対して HIM ですし、
SHE に対して HER っていうことになりますし、
IT は確かに一緒ですね。
複数でも WE に対して US ですし、
THEY に対して THEM っていうふうに、
大体ですね、主格と目的格っていうのは違う形のはずですよね。
ところが、IT は別にしてですね、
You という、ある意味非常に重要な単語なんですが、
これがですね、主格と目的格で同じ You なんですね。
これ考えてみるとちょっと不思議と言いますかね。
他の認証代名詞とちょっと違う振る舞い方をしているっていうことになります。
これもですね、400年ぐらい前に遡ります。
シェイクスピアぐらいの時代です。
この時代にはちゃんと主格の形と目的格の形がですね、
I ME のように異なってたんです。
基本的には。
これは古英語、古い英語からずっと異なったものがずっと使われていたわけなんですね。
この主格の形が、実は今回問題にしている Y E で表される Yee っていう形。
古英語から近代英語にかけては大体 Yee っていう発音だったわけなんですが、
このように Y E の形だったんですね。
それに対して目的格の形が、いわゆる現代の You に繋がる形だったということで、
ちゃんと本当は分かれてたんです。
古英語の形で言いますと、主格の方はですね、まさに Yee です。
Yee という発音だったんですね。
なので Yee R と言いますか、主語の時は Yee だったんですね。
Do You ではなくて Do Yee という形だったということになります。
それからですね、目的格の方が、古英語では Eo っていう形だったんですね。
これが長い時間をかけて発音がちょっと変化して、現代の You になっていくということで、
この 1600 年ぐらいまではですね、一応のところ、
しっかりと I, Me のように、ちゃんと主格と目的格の形が別々に扱われていたんです。
主格が Yee ですね。
そして目的格は You ということです。
ところがこの目的格の You の方ですね。
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これはやはりですね、短縮されたり省略されたり、
古語ではですね、短くなったり曖昧な母音になっていって、
Yee と You っていうのが、
場合によってはですね、聞き分けられないような発音になってくるっていうのも事実だったんですね。
Yee、Yee、Yee、Yee、Yee っていう微妙な音の違いぐらいで、
この二つが混同されるようになっていきます。
そしてですね、結果として実際混同されてですね、
本来主格のはずの Yee が目的格に使われていたり、
その逆ですね、本来目的格の You が主格に使われるというようなことが、
少しずつ多くなってきたということがあるんですね。
その結果、最終的にはですね、近代、現代の標準英語では、
You という本来目的格の形が、主格にもですね、
勢力を広げて、もともとの主格である Yee というのを、
ほぼ追い出してしまったということなんです。
そして、現代では今ですね、
You Are My Love という時の主語の You も You ですし、
I Love You の時の目的格の You も You になってしまったんですが、
これは結果的にですね、目的格の You が、
主格の Yee の形を駆逐した形でですね、
分布を広げていったということなんです。
ところが、これはあくまで標準英語の話です。
例えば方言なんかでは、いまだにですね、
Yee の形っていうのも残っていますし、
さらにこういう定型文句ですね、
How Do You Do みたいなものは、これずっと古いから、
ある意味受け継がれてきたような言い方だったりするので、
特に近代英語ぐらい、まだ Yee が残っていた時代からですね、
ちゃんと受け継がれてきた定型文句ですので、
そのままの形で、ある意味ですね、
結晶化して古い形のまま現代に受け継がれるということがですね、
結構よくあるんですね。
これが How Do You Do の起源ということになります。
この How Do You Do' Yee の部分は、
You の短縮形と考えるよりは、
歴史的に正当なもともとの主格の形が、
そのまま定型文句の中に、ある意味化石化して、
結晶化して、現代に伝わったものだということなんですね。
他に、このように結晶化した、化石化した形で現代に残っているというのは、
古めかしい、現代としても古めかしい表現が多かったりするんですが、
例えば、見よっていう時にですね、これを見なさいっていう時に、
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ルッケ、ルッケ、とか言うんですね。
ルックに Yee と書く、ルッケです。
これはルックの後ろにありますが、実際にはこれ主語の Yee です。
命令形の主語が明示されている文で、
動詞の後ろにありますが、これは命令形の主語なんですね。
だから、あなた、見なさいっていうことで、ルッケと言ったりしますね。
それから、聞きなさいってのも一緒で、
ハーケ、ハーケ、ハークっていうのが、Here ぐらいの意味ですね。
このような形で、定型文句の中に、
形を残しているにすぎませんが、実はこの Yee というのはですね、
今でも周辺的な言い方としてですね、残っているってことです。
本来の、つまり U の主格だったということになります。
それではまた。
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