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#ポリヴェーガル理論 #ニューロセプション #ニューロダイバーシティ #安全感 #心理的安全性 #発達障害からニューロダイバーシティへ #ACE(逆境的小児期経験)
サマリー
ポリヴェーガル理論に基づき、安全感の重要性とその個人差について解説します。特にニューロセプションとニューロダイバーシティの概念を通じて、対人支援における安全感の理解を深めます。このエピソードでは、安全感の形成に関連するニューロダイバーシティとACE理論を詳しく掘り下げています。神経の多様性や逆境的小児期経験が、人々の感覚や行動にどのように影響を与えるのかを探求します。また、安全感の重要性とそれを決定づけるニューロセプションの概念についても検討されています。安全感には個人差があり、ニューロダイバーシティに基づいて理解されるべきことが強調され、五つのポイントを通じてその築き方も説明されています。ニューロセプションとニューロダイバーシティの視点から、安全感の個人差を探求し、ポリヴェーガル理論に基づいたアプローチが提案されています。
安全感の土台
こんにちは。のびやか四葉カフェをお届けします。
公認心理師の四葉さわこです。
では、いよいよ最終回になります。
ポリヴェーガル理論入門編ということでね、解説を続けてきました。
その最終回、シャープ11、安全感の鍵、ニューロセプションとは。
では質問です。
ポリヴェーガル理論や対人支援において、一番の土台となるものは何だと思いますか?
答えは、安全感です。
安全感、そして知っているでしょうか。
安全感は、人によって全く異なるんです。
その違いは、どこから生まれるのか。
どうすればそれを理解して、対人支援とか自己調整などに活かせるのか。
そういう内容を今日は解説します。
改めて、全6回でポリヴェーガル理論の入門解説ということでお届けしてきました。
数ヶ月にわたってお届けしてきました。
これの音声版は無料で一般公開しています。
YouTubeなどでもご覧、ご視聴いただけます。
ただ、特に今回の内容はスライドとかイラストとか図を見た方がわかりやすいと思うんですね。
動画版、動画解説版については、私が運営しているのびやか四葉カフェというメンバーシップに入っていただくと、
そちらでメンバー限定で見ていただくことができます。
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いつでも辞めることはできますんでね。
入会していただければ過去の配信のものも見ることができますので、
気になる方はぜひお試しでもいいので、メンバーシップの入会考えてもらえたらと思います。
この概要欄の方に、メンバーシップについて紹介しているページのリンクを貼っておきますので、気になる方はぜひそちらをご覧ください。
では改めて、今回の内容のポイントと学びの流れを説明します。
まず最初に、対人支援の土台は安全感ということを第一章で説明します。
ただし、この安全感には個人差があるということで、この個人差について理解するために2つの概念が知っておくと役立つんですね。
その2つが、1つ目がニューロセプション、これを第2章で説明します。
そして第3章でもう1つの概念、ニューロダイバーシティについて解説します。
その2つを踏まえた上で、最後第4章、その安全感に個人差がある中、どういうふうにそれを察知して、配慮して安全感を築けばよいのか、という具体的方法についてご案内いたします。
今回の内容は、ポリヴェーガル理論全体を把握するまとめというか総括のような内容になっているので、ぜひ楽しみにご視聴ください。
では第1章です。
すべての土台となる安全感。
ポリヴェーガル理論の創始者ポージェス博士が言っている有名な言葉があります。
それがこちらです。
安全は治療であり、治療は安全である。
ポージェスが言っているように、心身には安全感が必要なんです。
これは脳科学で説明すると、安全感がないと頭は冷静に働かないということがわかっています。
理性や創造性を司るこのおでこの方にある前頭前野、というところが、安全感を感じていないと働かなくなるんですね。
そういう意味でも安全感が必要。
それから神経生理学のところでも説明されます。
これはこれまでポリヴェーガル理論の解説でずっと言ってきたことと重なります。
安全感がないと、つまり危険やストレスを感じると、自律神経は闘うか逃げるか、あるいは凍りつくかという防衛反応を起こしてしまいますから、
カラダの方も緊張したり萎縮したり、闘うモードになって冷静になれなくなったりしてしまいます。
脳科学的にも神経生理学的にも、安全感ということが改めて大事なんです。
あとね、最近心理的安全性っていう言葉も言われるようになってきたことをご存知でしょうか。
心理的安全性っていうのでキーワードをうつとたくさん本が出て、最近出版されてるんですけど、
心理的安全性とは、自分の意見や感情を表現しても否定されたり罰せられたりせず、安全だと感じられる状態のことを、
心理的安全性、それが担保されていると言います。
主に職場とか企業、組織においてっていう文脈で語られることが多いんですけど、
それだけじゃなく教育とか対人支援の現場などでも、心理的安全性の重要性が語られるようになりました。
そのような例を出しても分かりますように、全ての土台となるのがやっぱり安全感なんです。
対人支援、教育、職場などにおいても成果を出したいなら、まずその土台に安全感を築きたいんです。
パフォーマンスを出すためにも、円滑な人間関係でチームワークを良くするためにも、安全感が大事なんですよね。
ただし、ここで勘違いしそうなのが、自分が安全と感じているなら、相手も安全と感じているだろう。
これがそうじゃないんですね。安全感には個人差があるんです。
安全感は人それぞれ、ここを把握しておくことが重要になります。
その安全感の個人差を知る鍵として、先ほどお伝えした2つの概念、ニューロセプションとニューロダイバーシティについて、この後、各2章、3章で説明していきます。
ニューロセプションの仕組み
では、第2章になります。安全を感じる仕組み、ニューロセプション。
まず、ニューロセプションとは、安全の検知システムのことです。
ニューロというのが、神経系のことを指します。脳も含めての脳と神経のことですね。それがニューロ。
それからセプションというのは、感知する、感じる知るの感知、あるいは認識する、感知や認識を指すのがセプション。
このニューロとセプションという単語を2つ合わせて、ニューロセプションという言葉を、ポリヴェーガル理論の創始者ポージェス博士が、
ニューロセプションという言い方を提唱して説明しています。
これは、神経系が無意識に常に状況が危険か安全かというのを検知している、そういうシステムがあるよということなんですね。
その結果に基づき、行動とか生理反応をカラダは準備するわけですけれども、ポージェス博士はニューロセプションの誤作動という言い方もしていまして、
客観的には安全なのに、その人のニューロセプションが危険だと検知するようなこともあると。
このニューロセプションの誤作動については、この後また説明します。
そもそもポージェス博士がそういうふうに言っていなくても、神経系というのは常に安全か適切かというのを確認しているんですよね。
自律神経、全身に神経を張り巡らせて、外部や内部がどんな感じかなというのをモニターしています。
内臓状態はどうかな、エネルギー状態はどうかなというのも測っていますし、外側、今暑いかな寒いかな、昼かな夜かな、あれは敵か、いや味方かということも
頭では意識して、本人は意識していなくても、無意識で神経系がちゃんと検知しているんです。
その上で、例えば寒いと思ったら、なるべく体温を逃さないように毛穴を閉めるとか、危険だなと思ったら闘うモードや逃げるモードを作るとか、
そういう調整を行っているのが、そもそも自律神経ですよね。
ポリヴェーガル理論では、またニューロセプションでは、危険・安全と神経系が判定したものにより、これまでお伝えしてきた3つの神経系、
腹側迷走神経系、交感神経系、背側迷走神経系、これをどれを使うかというのを決めて変えているんですね。
スライドにもそれを書きました。
左側のがニューロセプション。
まずニューロセプションは、通常は安全・安全だなって把握すれば、腹側迷走神経系、緑のチューニング神経が効くわけですね。
例えば、ここに犬がいる。ワンワンと吠えている。
安全そうだ、大丈夫だと思えば、腹側の神経系で社会交流、ワンワンと会話をしたり、対象物とつながることを試みたりもするわけです。
それが安全を感じているときね。
ただ、この犬が危険だと思ったら、次に交感神経系を使います。
交感神経系はこれまで説明してきた通り、闘うか逃げるかという行動を起こそうとする。
闘うも逃げるもできない、あるいはこの犬本当に怖いという評価をした場合には、
ニューロセプションがそう評価したときには、背側迷走神経系が急ブレーキを効かせて、凍りつき反応というものを起こすわけです。
3つの神経系のどれを使うかということをニューロセプションが判断しているんですね。
ただ、こういうふうに説明してくると、本当にこの3つの神経の3パターンしか使わないかというか、
そういう反応しか起こさないのか、3パターンの反応だけかと取られちゃうかもしれないんだけど、
そうじゃなくて、この3つの神経系を組み合わせたりグラデーションにしたりして使っているんですね。
その辺をこちらもスライドでちょっと説明しています。
まず安全と感じられれば、まずベースにこの腹側迷走神経系、緑のチューニング神経系を効かせる。
その上で何か活動的なことをするときは、その上に乗っかる形でアクセルが適度に効いたりもするし、
あるいはちょっと休ませるようなリラックスする方に行くときには、ブレーキの背側迷走神経系が効いてたりもする。
この腹側迷走神経系が単独で効いているというよりは、そこに重なって効いているというのが現実的なところですかね。
ただ、これが危険だとニューロセプションが判断したときには、この腹側迷走神経系が効かないんですよ。
効かなくて直でアクセル神経が、まず闘うか逃げるかの反応を起こし、それでも間に合わないとなったら、
そのブレーキがガッと効く、凍りつき反応、あるいは解離しちゃうような反応を起こすということですね。
そしてもう一つ、押さえておきたいポイントがあります。それは、理性と神経系では、時に判断が異なるということです。
さっきちょっとニューロセプションの誤作動って話をしましたね。それに関係する話です。
例えば、歯医者に行く。理性では、別に歯の掃除をするだけだから大したことじゃない、平気平気って思っている。
理性や意識ではそう思っているんだけれども、ニューロセプション、神経系の方としては、
キュイーンっていう音とか、匂いとか、そういうので心臓はドキドキしちゃっている。
手に汗かいている。足が震えている。そんな怖いことをやるわけじゃないのに、って頭では思っているのに体はそう反応していない。
なんてことありますよね。こういう不一致があるわけです。
安全感を決めるのは、理性と神経系が異なった時に、やっぱり神経系の方が優先というか、こっちでカラダの反応が決まっちゃうんですよね。
ここの不一致があるっていうところが、本当に重要な、押さえておきたいところなんです。
ニューロセプションの誤作動というのは、本人も思っているけれど、客観的に他の人が見ても、
いや、明らかに安全でしょって思えるような状況なのに、その人の神経系が過剰に反応して危険だってしちゃうことがあって、
それをポージェス博士はニューロセプションの誤作動と説明しています。
このニューロセプションの誤作動はどうして起きるのかということについて、
次の章のニューロダイバーシティを説明するところで解説ができますので、そちらを引き続きご視聴ください。
では、第3章になります。
ニューロダイバーシティの理解
人それぞれ違う安全感 ニューロダイバーシティ
まず、ダイバーシティという言葉はご存知でしょうか。
ダイバーシティとは多様性のことを指しています。
ダイバーシティとは、例えば人間には性別とか文化、世代、能力などいろいろな違いがありますよね。
その違いを認め合って尊重しようというのがダイバーシティの考え方です。
ここで説明するニューロダイバーシティというのは、そのダイバーシティの中に含まれる一つの考え方なんですね。
ニューロというのは先ほど神経系のことだと説明しました。
神経系のダイバーシティなので、脳や神経の多様性を尊重する考え方のことです。
発達障害などの違いですね。
こういうのを病気や欠陥ではなく、個性や強みとして捉えようという視点のことをニューロダイバーシティと言います。
ちなみにそのダイバーシティの中にはニューロダイバーシティの他にも、例えばジェンダーダイバーシティ。
性別って男か女かだけじゃなくて、最近LGBTも言われるようになりましたね。
体は男性なんだけど、性的自認は女性であるとか、愛する対象が異性じゃなくて同性だとか、
本当にここも0か100か白か黒かじゃなくて、多様だよねっていうのがありますよね。
それからエスニックダイバーシティ、民族とか文化にもいろんなものが多様性があるよねっていうことも
そういう言葉もあります。
ここで説明していきたいニューロダイバーシティ、これは一般的には発達障害を中心とした理解がされています。
ちなみにこのニューロダイバーシティは、別にポリヴェーガル理論のポーチェス博士だけが言ってるわけじゃなくて、
一般的にというか、普通に専門家は結構知ってる、使われている言葉です。
日本でも国のホームページとかでも、経済産業省のホームページでニューロダイバーシティの推進について、
なんていうページもあるので、ちょっとその説明も持ってきました。
そちらに書いてある言葉を引用すると、ニューロダイバーシティ・神経多様性とは、
特に自閉スペクトラム症、注意欠如多動症、学習障害といった発達障害において生じる現象を、
能力の欠如や優劣ではなく、人間のゲノムの自然で正常な変異として捉える概念であります。
こういうふうに発達障害っていうことを想定して、ニューロダイバーシティって言葉が使われることが多いんだけれども、
ポージェス博士、あるいはポリヴェーガル理論では、この発達障害っていうものを超えて、ニューロダイバーシティというものを理解します。
安全感と成長環境
神経の多様性は発達障害だけではないんです。
例えば、その人の感覚過敏とか生きづらさの原因が発達障害以外から来ている場合もあります。
これは生まれつきの違いで来ていることもあるし、育った環境や体験に由来する特性として違うということもあります。
このあたり詳しく書いてある本に、私もこれまで何回も紹介している本、
モナ・デラフークさんが著者の発達障害からニューロダイバーシティへっていう本もあるんですね。
2022年に日本語訳、花丘ちぐささんがしたものがありますが、そちらでも本当に感覚過敏だったり、
この本では特に子どもですね、育てることに苦労するお子さんに対してどういうふうに対応するかということで、
発達障害だけじゃなくて、こういう神経系の差異からニューロセプションの違いからこういう事例があるようということを教えてくれている本なんです。
あと、岡田尊司さんという愛着障害の本とかで有名な方ですね。この方も同じ2022年に発達障害グレーゾーンという本を出版してまして、
こちらでも発達障害って診断がつくほどではないグレーゾーンと言われる子どもだったり人の中に、
例えばトラウマとか、そういう別の理由からその生きづらさとか感覚過敏が来ている例があるよということをニューロダイバーシティという言葉も使って説明しています。
だから発達障害だけではないんですよね。ニューロダイバーシティ。もうちょっとじゃあ説明しましょう。
まず生まれつきの違いのところですね。
生まれつきの特性が生む安全感の違いがあります。 例えばHSPなどの気質などによる違いです。
HSP、ハイパーセンセーショナルパーソンの略なんですが、5、6年前ですかね、繊細さんっていう本がちょっと流行ったのをご存知な方いますかね。
気がつきすぎて疲れる、疲れてしまう人。そういう人も生まれつきそういうのを感じやすい方なんだということで、
一説には全人口の約20%がそういう人たちなんだと言われてますね。
あとこれと似たようなものを医療業界では別の言い方で、神経症気質なんて言い方もします。
ここでも神経って言葉が使われてるんですけど、いわゆる神経質なタイプですね。
それって結構生まれつきそういう特徴が特性があることがわかってるんですよね。
日本人に多いと言われてますけど、これがある程度長所として聞いてるときには、貴重面とか真面目、仕事が丁寧とかいうことになりますし、
ただこれが強く出過ぎたり行き過ぎると神経質すぎるとか、あるいは不安障害、不安になりすぎて神経質になりすぎて強迫性障害というか、
手を洗いすぎて何回洗っても気になっちゃうとかね、そういう風になる障害レベルに行くこともある。
でもそういう風になりやすいタイプや気質っていうのがあるんだということが言われてますね。
あとこれ体質でもありますよね。アレルギーかそうじゃないですか。乳製品とか小麦とか花粉とか、生まれつきそういうのに敏感な人がいる。
あるいはもともとそういう素質を持っていて、生まれてからそういうアレルギーに触れることで症状がどこかで臨界点を超えて症状として出るようになるとかね。
だからそういう生まれつきの特性が、気質や体質っていうところであるんですよね。
これはだってもう好きでそういう風に生まれたわけじゃないわけですから、そこは理解してあげたいところです。
それから生まれつきだけではなく、育った環境や体験が生む安全感の違いもあります。
例えば育った地域や時代や文化によって何を危険と感じるか安全と感じるかっていうのが違ってくる部分がありますね。
育った文化っていうことではやっぱり家庭環境も目立ってわかりやすいところですかね。
両親が常に喧嘩でいがみ合ってるのかとか、すごく厳しい家庭に育ったってなると、やっぱり下手なことしちゃいけないっていう、周りの顔色をうかがうような油断することは危険だっていう学習をしてるかもしれない。
あと家庭ではなく育った学校とかスポーツのチームとか、そこが体育会系ですごい上下関係厳しいところで育ったのか、そういうのフラットで伸び伸びした環境で育ったのかっていうことでも学習することが変わってくるし、成功体験や失敗体験でも違いますね。
ある人が自分の思うことをストレートに話してしまったら、それで周りにひんしゅくを買ってしまって無視されるようになってしまった。
もしそういう経験ですごく手痛い目にあったってことがあったら、それがトラウマになって、自分の思ったことをストレートにしゃべってしまうことは危険なんだっていう学習にもなるわけです。
だから、生まれつきだけじゃなくて育った環境や体験から来る安全感の違いも存在します。
逆境的小児期経験の影響
こういう話をしていくと、特に対人支援の方には知っていてほしい概念がもう一つあって、ACEっていうものをご存知でしょうか。
ACEと書いて日本語に略すと逆境的小児期経験というものです。
このACEが神経系に及ぼす影響もあります。
ACEの研究というものがありまして、これは1995年から1997年にアメリカのカイザー社とCDCが共同でやった大規模な研究があったんですね。
1万7000人以上の人を対象にアンケート調査をとって、これまでの生い立ちでどういう経験をしているかというのをチェックしてもらう。
例えば、逆境的小児期経験なので性的な虐待があったとか、親の離婚を経験しているとか、経済的な困窮があったとか、そういうことにチェックしてもらって、
そういう経験をしている人が、今大人になってからカラダの病気を持っているかとか、何か問題行動、犯罪を犯しているとか、そういうのに関連性があるかなというのを統計的に調べようとしたものです。
それを研究しましたら、やっぱりそういう逆境的小児期経験をしている方が多いほど、大人になってからだったり、生涯にわたって健康とか行動に問題を抱えるリスクが高い、その優位さがあるということが判明したんですね。
その後も、それは実際どういう違いがあるんだということで、MRI研究などもされるようになって、脳を虐待経験とかしている人の脳を何百人とか調べてみたら、
感情コントロールとか記憶に関する海馬というところが、一般の人よりも縮小していることが分かったりとか、不安とか恐れに関係する扁桃体という部位が脳にあるんですけど、扁桃体が肥大していたとか、
それによって一般の人よりも過剰に緊張状態を生んでしまう、反応しやすくなっているということが分かった研究などもありました。
あとは、日本ではACEと近い概念というか言い方として、杉山登志郎さんという方が、子ども虐待という第4の発達障害なんていう本も出して提唱していますね。
これもエースと同じような考え方なんですが、虐待経験している子どもが第4の発達障害と言えるような状態になっている。発達障害と大きく分けると3つなんですよ。
自閉スペクトラム症とかのASDとADHDと学習障害のLD。大きくこの3種類なんだけど、第4の発達障害と言っていいような生まれつきというよりは、その育ちの経験からまるで発達障害かのような症状を呈しているケースが結構あるよねっていうのが、杉山登志郎さんが著書で言っていることなんですけど。
これもエースと重なる話ですよね。ですから、ここまでエースとか第4の発達障害なんていう言われ方からも分かるように、記憶ですね。記憶が神経系の判断、あるいはその神経系の発達の仕方を左右する影響を与えるってことが結構あるってことなんですよ。
その個人の記憶、本当にトラウマとかですよね、の影響ももちろんあるし、あとはその個人だけじゃなくて、なんかね、そのよく虐待の例、世代で連鎖するとか、あるいは何世代にもわたってその影響が出るなんていう研究も最新の研究で結構言われてきていて。
そうだな、あとにわかりやすい例で言うと、蛇って、蛇見たらちょっと構えたり怖いって反応を起こす人が、これ世界共通で多いんですよ。
これは個人的に、蛇で怖い経験したからとかじゃなくて、人類がこれまでの進化の過程で、蛇、蜘蛛もそうだったかな、蛇に下手に近づくと危険だっていう経験をしてきたから、それがそのDNAか何かかな、その記憶がちゃんと継承されて、現代人でも蛇っていうのはちょっと怖いみたいなことがね、
そういう反応を起こすんだっていうこともわかっています。写真でいろんな写真を見せた時に、蛇探してくださいって言ったら、蛇を見つけるのはすごい他のものより早く発見できるなんていう研究結果もあるようです。
安全感の多様性
そんなふうに、個人にせよ人類にせよ、これは危険だ、これは安全だって記憶していることが、神経系の判断にすごく影響を与えているっていうことですね。
改めて、ニューロダイバーシティのポイントはこれです。安全感は個人差があって多様性があるっていうことです。安全感を決めるのは個々のニューロセプションなんです。
ですから、普通はこれ安全と感じてもらえるよねとか、普通はこれ嫌でしょとか、決めつけないでください。
過敏に反応する人もいるけど、逆に普通の人、一般の人は危険と感じるのに、危険と感じない病気っていうか障害もあるんですよね。
そういう違うんだっていうことを前提として捉えましょうってことですね。
安全感を決めるのは、その環境や刺激そのものではないです。それをどう評価するかっていう個々の神経系が決めてるんです。
同じ状況でも安全と感じる人と危険と感じる人がいて、そこは多様性があるから。
同じワンちゃん、犬を見ても犬可愛い、安全って捉える人もいれば、犬なんてっていうふうにものすごい過剰に怖がる人だっているわけです。
だから、普通はこうだよねと決めつけずに、違うもんだよなという違いを前提とした支援っていうのが必要なんですね。
ここまでね、安全感っていうことがすごく大事だけど、それには個人差があって、ニューロセプションとニューロダイバーシティ、この2つの概念を理解しておくことが大事なんだよと説明してきました。
次、第4章です。
第4章、そういうことを踏まえた上で、安全感をどう築き育むか。
これまでお伝えしてきたように、人によって安全と感じるか危険と感じるかは異なるわけです。
その異なる安全感を、じゃあどのように把握すればよいのか。
そして、安全な関係や環境っていうのをどうやって築いて育めばよいのか。
その辺りを解説します。
安全感をどう築き育むか。
ここでは、5つのポイントを説明します。
個人差を配慮して安全感を築くためには、次の5つを押さえることが大事です。
まず最初にこの5つを順番に話しますね。
1つ目は、違うことを前提として尊重すること。
2番目、決めつけずポリヴェーガル視点で観察する。
3番目、神経系を刺激したものに気が付く。
4番目、調整できる刺激物を調整する。
5番目、ニューロセプションの誤作動を修正する。
ここで注意してほしいんですが、特に対人支援の仕事をしている方とか、あるいは子育てをしている人は、
どうしても安全感を築くというので、子どもにとっての安全感をどう築くか考えなきゃとか、
対人支援している人は、クライアントさんとか相談者さんにとって安全感を築くということはどうすればいいんだという、
対誰かという視点でこういう話を聞いちゃうんだけど、これは誰か、他者だけじゃないですよ。
自分自身の安全感を築くということもとても大事なんです。
これから解説することは、他者に安全感を築くということももちろんそうだけど、
自分の安全感にどう築いて、どう築くか育むかということも大事なので、
自他両方の意味で聞いてもらえたらと思います。
まずポイントの一つ目は、違うんだということを前提として尊重する、この前提をちゃんと持つということですね。
要するに今日説明してきたニューロセプションとかニューロダイバーシティというこういう概念を知っていて、
違うんだよなということをちゃんと理解しているかどうかということですね。
ニューロセプションの考え方でいけば、理性が安全と感じるものと、神経系が安全と判断するものと、
それはイコールではない、時に違うことがあるんだよなということを分かっておくことが大事です。
ニューロダイバーシティの概念では、万人が危険・安全と感じるものと、個人が危険・安全と感じるものがイコールではない、
違うことがあるっていう理解が大事なわけですね。
このことを抑えるために知ってほしい言葉が2つあるのでご紹介します。
一つは、違いは間違いじゃない。
もう一つは、みんな違ってみんないいです。
違うからおかしいとか間違ってるじゃないです。
違うもんだよね。でもそれでいいんだよ。
だってそれ、生まれつきの違いだったり、望んだわけじゃない、育ちから来る違いだったりするんだもん。
しょうがないよね。そこを理解し合った上で、尊重しようということですよね。
次、2番目のポイント。
決めつけない前提を持った上で、どうやってその人にとっての危険か安全かっていうのを把握するかってところです。
ここが最重要ポイントですね。
その人にとっての危険・安全を理解するために評価するためには、
これまでお伝えしてきたポリヴェーガル理論の視点、ポリヴェーガル視点で観察するってことが大事なんです。
相手、お子さんでもいいし相談者でもいいですけど、その人のその行動や反応は何を物語ってるんでしょうか。
あるいは自分がその場面でこういう反応を起こすってことは、
それって神経系が赤・青・緑・危険・安全、どういうふうに評価してるっていうことを物語ってるんでしょうか。
その反応から推察することができるわけですよね。
例えばある人を見て、なんかこう交流してる感じ、つながってる感じ、すごくリラックスしてる様子が見られるなら、
交流してる、リラックスしてる様子だから、やっぱり安全感じてるんだろうなっていうふうにも見られるし、
あるいはそのイライラしてる様子とか、焦ってる様子、闘うか逃げるかモードに近いようなものを感じるなら、
交感神経が活性化してるようだったら、やっぱり何らかの危険とかストレスを感じてるわけですね。
それがうつっぽい様子が見えるとか、すごく消耗した感じ、あるいはなんか凍りついてる感じ、解離してる感じが見られるなら、
それはもう交感神経レベルの危機感を超えたレベルの、本当に切迫した感じ、死の脅威レベルのものを感じているのかもしれません。
あるいは交感神経効きすぎて本当に消耗しちゃってそうなってるのかもしれない。
だからポリヴェーガル視点で、相手や自分のその行動、その反応は何を物語っているのかなって分かることが超大事なわけですよ。
このためにね、赤のアクセル神経効いてる時はこういうことが考えられるんですよ、みたいな説明をこれまでしてきたわけです。
3番目のポイントですね。
その人の行動や反応を観察して、緑の安全感じそうだな、赤のアクセル神経が効いてそうだなっていうことを見て取れたら、
そこから逆算して、そういう反応を引き起こした原因や刺激は何だろうっていうことを推測するんですね。
刺激ー反応理論っていうのを以前の回でも紹介しました。
この刺激があるからこの反応が起きる。
ニューロセプションの考え方は、この刺激と反応の間にニューロセプション、神経系が判断しているっていう、仲介する要素があるってことなんですよ。
この反応があるってことは、ニューロセプションが安全と捉えてるんだ、あるいは危険と判断してるんだっていうことが反応から逆算して取れるわけですね。
そこを把握することでその刺激を取り除くとか刺激を和らげようって調整考えられるよねっていうのがこのポイントの4番目ですね。
そこを把握した上で調整できる刺激物があるなら調整しようということです。
それは環境かもしれない。すごくうるさい音にすごく反応してその人はこうイライラしてるのかもしれない。
あるいはカラダがお腹が空いてるとかカフェインとかそういうもので反応してるのかもしれないし血糖値っていうので反応してることもあるかもしれない。
頭や心にも刺激物があることがありますね。
例えば自分自身自分がこんなにこう焦ってこうザワザワしたりしてるのは何でなんだろう。
あれやんなきゃこれやんなきゃとかこうすべき合わせべきっていうこのべき思考とかぐるぐる思考が刺激になって私のこの焦ってる反応心臓がドキドキするようなそういう反応を起こしてるのかもなって理解することもできるわけですね。
そうしたらそういうふうにこういろんなこと考えすぎてることを調整するような働きかけができるわけです。
あとは刺激物っていうことでは対人支援においてはその支援者支援者自身も刺激物だっていう認識が大事です。
自分がその相談者さんに対してどういう様子や態度で接してるか。
敵じゃないよ味方だよ安全だよあなたの話聞きますよ。
それこそ何言ってもそんな頭こなしに否定したり決めつけたりしないっていう態度を示していれば安全だよっていうサインを出せていれば安全なんだなって相手の人がとって安全感をその場にその場とかその関係に感じられて何ていうのかな物事の理解が進むとかねそういうことがあるわけです。
だから特に対人支援の場においては物理的環境の調整とかも大事だけれども支援者という人間自体も刺激物なんだっていう認識はすごく大事ですね。
誤作動の修正
そして最後ポイントの5番目がニューロセプションの誤作動を修正するですね。ニューロセプションの誤作動を修正するってもちろん簡単なことじゃないんです。神経系にそういうふうに刻まれていることだから。だけれども変えることもできるんです。
それは修復体験を積み重ねることによって上書き修正できるんです。脳や神経には可塑性 があると言われています。先ほどトラウマ、ACEなどの経験から
扁桃体が肥大しているとか、海馬が萎縮しているという現象が起きることが観察されたという研究結果を話しましたけれども、そういう人もいろいろな働きかけ、マインドフルネスとか瞑想みたいなことを繰り返すことでも変化が見られたとかね。
そういう脳の機質的な部分も繰り返し繰り返し、それこそこういう場面でも安全だよということを再学習することで、神経の再形成とか再配線とすることができるんですね。
ただ、理屈でこれは安全ですよって言ってるぐらいじゃやっぱり駄目で、神経系だからと。体でそれを体験できる、実感できるとか、それを繰り返し経験して馴染ませられる、ならすことができる、定着させるということで、
ニューロセクションの誤作動を上書き修正していくことができます。
心理療法で言うと、段階的曝露療法、エクスポージャーなんていうものもありますね。
学校に登校するのが怖いってなっちゃった子とか、すごくそのことに苦手を感じている状態のままじゃ、本当に生きづらくなって社会に適応できなくなっちゃうから困っちゃうよねっていうときに、
本当にハードルの低いところから、安全を本当に感じてもらえるところから、イメージトレーニングから入ったり、家から玄関のところに行くまでとか、途中まで歩いていくとか、
なので、ちょっとずつ慣らしていって、大丈夫だね、大丈夫だねっていうのを体に覚えさせていって克服するみたいなものもありますよね。
これは本当にそのハードルの設定とか、無理強いしないとか、そういう配慮がとても大事な心理療法なんだけれども、そういうものもとにかくあります。
ではまとめになります。ポリヴェーガル理論や対人支援において、一番の土台となるものは安全感です。
安全感の個人差と理論
ただし、安全感には個人差があります。それを踏まえて対応することが重要です。
では今回は、安全感には個人差があるということで、ニューロセプションとしてニューロダイバーシティという2つの概念をお伝えしました。
その上で、どのように安全感を築いて育めばいいのかということで、まさにこれまでお伝えしてきたポリヴェーガルの視点、
その視点で相手とか自分のカラダの反応を観察すること、それに基づいて刺激物とか配慮ということを検討することが大事なんだということをご紹介させてもらいました。
はい、ではここまで全6回ポリヴェーガル理論入門解説ということでお届けしてきました。
ここまで続けてご覧いただいた方いらしたら本当にありがとうございます。
ポリヴェーガル理論というのは、いろんな対人支援するときに本当に土台になるような重要な理論だと思いますので、
でも知っただけじゃ活用できないから、まさにこうならしていく、実践できるように何度でも思い出したり、何度でも確認したりして使えるようになってもらえたらなと思います。
ではここまでご視聴いただきありがとうございました。
47:30
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