2025-08-15 11:36

#72 雨月物語1(むかし~)

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上田秋成『雨月物語』より「青頭巾」のご紹介。

古文の出典は『改訂版 雨月物語』(角川文庫)より

※※※

文学セミナー「青頭巾」を読む

https://peatix.com/event/4526372


【開催概要】

日 時:2025年8月24日(日)-
配 信:YouTube配信ライブ(アーカイブあり)
講 師:古原大樹(Book Bridge Lab代表)
参加費:1,000円(各種割引あり)
お申し込み:Book Bridge Lab公式Peatixより


【「青頭巾」あらすじ】

下野の国を訪れた快庵禅師。
一夜の宿を借りようとするが、「鬼」と間違えられて騒ぎになる。
騒ぎの発端は、里の上の寺にあるらしい。
そこの住職はかつては徳の高い僧だった。
しかし、一人の童子を連れ帰ってから様子が変わってしまったそうで……


【古典文学でちょっと涼しく】

上田秋成による短編集「雨月物語」
多くのクリエイターを魅了し
映像や演劇にもリメイクされています。

そんな作品集の中から
ひときわゾッとする作品
「青頭巾」をご紹介

里を訪れた僧が出会う
一人の童子に身を狂わせた
男の末路とは

夏の昼下がり
ちょっと怖い古典作品
少しでも涼しくなってくださいね


【講師】

古原大樹/1984年山形県生まれ。山形大学教育学部、東京福祉大学心理学部を卒業。高校で国語教師を13年間務めた後、不登校専門塾や通信制高校、日本語学校、少年院などで国語や日本文化を教える。学習書に『古文を読むための古典文法入門』『50分で読める高校古典文法』『10分で読める高校古典文法』『指導者のための小論文の教え方』などがある。一方で、吉村ジョナサンの名前で作家・マルチアーティストとして文筆や表現活動を行う。古典を学ぶPodcast「吉村ジョナサンの高校古典講義」を公開中。

サマリー

このエピソードでは、雨月物語の「青月」の冒頭部分を読み解き、開安禅寺という僧侶の修行の旅が描かれています。特に、彼の修行の道や旅の途中で直面する恐ろしい出来事について語られています。

開安禅寺の修行
吉村ジョナサンの高校古典講義
このポッドキャストは、高校で勉強するような日本の古典文学を読んでいく文化系ポッドキャストです。
今回は、雨月物語から青月という作品を読んでいきたいと思います。
今回は冒頭部分です。
まず、本文をお読みしましょう。
むかし海岸禅寺という大徳の日尻をはしましけり
若きより境外の胸をあきらめ給いて
常に身を雲水にまかせ給う
身野の国の領退寺に一儀を満たしめ
この秋は王の方に住むとて
旅立ち給う
ゆきゆきて霜月の国に入り給う
富田という里にて日入り果てぬれば
大きなる家の賑わしげなるに立ち寄りて
一夜を求め給うに
田端より帰る男ら
黄昏にこの草の立てるを見て
大きに恐れたるさまして
山の鬼こそ来たりたれ
人見ないでよと呼び罵る
家の内にも騒ぎ立ち
女わらべは泣き叫び
恋まろびてくまくまにかくる
むかし海岸禅寺という大徳の日尻をはしましけり
今回の主人公がこの海岸禅寺という人です
むかし海岸禅寺という大徳の日尻
大きな徳のある日尻
日尻というのはお坊さん僧侶のことですね
日尻がいらっしゃいました
若きより境外の旨をあきらめ給いて
常に身を雲水にまかせ給う
若い時から境外の旨をあきらめ給いて
境外という方針を明らかにしていたって言うんですね
これは境外というのは
つまり何かこう一つの方針とか
具体的な拠点この拠点に従っていきましょうとか
何か一つの何でしょうね
仏教というのもいろんな
もちろん宗派があったりとか
考え方思想があったりするわけですね
そういったいろんなものの
そういった方針とか具体的な拠点
大事にするような仏典書物があるわけではなくて
常に身を雲水にまかせ給う
いろんなところを回ってですね
雲水雲や水の流れるように
自分の身も流して
いろんなところを旅していきながら修行していたと
この僧侶の在り方というのも
大まかに言って
例えば学問として学んで
そこからいろんなことを得ていく
そして自分の行動に表していく
という学者タイプの方もいれば
実際にいろんなところ諸国をめぐったりしてですね
もしくは野山に身をやつして
自然の中から学び取ったり
そういういわば臨床的な場で行くタイプもいるんですね
ですから研究者でいう学者研究者タイプと
あとは臨床タイプがいると思うんですけど
どちらかというとこの開安禅治という方は
臨床タイプの方だったわけです
なのでそういう特別な競技を持たずして
自ら修行して切り開いていくタイプの方であったと
その開安禅治ですが
美濃の国の両大寺に一芸を満たしめ
旅の途中と恐れ
美濃の国の両大寺というお寺で
一芸一つの夏と書いて一芸と読ませていますが
ひと夏を満たした
つまり夏の修行をそこで行ったというんですね
夏の修行を行った
そしてこの秋は秋になって大雨の方に住むとて
大雨の方大雨山脈とかありますよね
東北の方ですね
東北の方に住むそちらで秋は修行しようと思って旅立ちなさった
ゆきゆきてしもつけの国に入りたもう
そこでしもつけの国にたどり着いたというんですね
ですからここではしもつけの国というのが
これがですね今の栃木県のことですね
栃木県の方に入っていったということです
富田という里にて日入り果てぬれば
その中で富田という場所
こちらは現在も富田という場所があるみたいですね
栃木県の大平町の富田という場所があるようです
そちらの里で日入り果てぬれば
もう太陽が沈んでしまって暗くなってしまったので
大きな家のにぎわわしげなうに立ち寄りて
一夜を求めたもに
大きな家でにぎわっている様子を
にぎわってというのはこれは多分
そもそも中に人がいて気配がするということもあるでしょうし
この小さな家に行くよりは大きな家に行った方が
おそらく一晩泊めてもらうにはちょうどいいというかね
経済的にも多分大丈夫だと思ったんでしょうね
そういうこともあって一夜を求め
一晩泊めてもらうことを求めに頼みに行ったんですね
そうした時に多分
そうした時に
田畑より帰る男ら
黄昏にこの層の建てるを見て
大きに恐れたるさまして
田畑おそらく農家なんでしょうね
田や畑から帰ってくる男たちが
黄昏時というと夕方のあたりを指しますが
ここでは日がもう入ってしまっているので
要するに視界がほぼない状態
昔ですから伝統などもありません
ですからもしかしたら時間帯的には
ギリギリ太陽の跡があって
ほのかに光がある時間帯かもしれませんね
そんな時間帯ですが暗いわけです
暗い中でその層
海岸全時が立っているのを見て
大きに恐れたるさまして
とても恐れた
すごく怖がったんですね
その様子でこう言います
山の鬼こそ来たりたれ
人見ないでよと呼び罵る
山の鬼が来たと言って
みんな出てこいと言って
呼んで騒いだというんです
山の鬼が来たぞということで
騒ぎになったと言うんですね
その男たち
外にいる男たちが騒ぐので
家の内にも騒ぎ立ち
女わらべは泣き叫び
こいまろびてくまぐまに書く
家の中の人たちも騒ぎ立って
そこにいたであろう女わらべ
女や子たちが
泣き叫んで
そこから出てきて
いろんなところに隠れたと言うんですね
おそらく明かりをつけているような
家の中から出てきて
いろんなところに隠れた
物陰に隠れたと言うんですね
ですから山の鬼が来たということで
騒ぎの原因と結末
騒ぎになって
家の中にいる人たちも
恐れおののいて
いろんなところに隠れたという場面です
なぜこの開安禅寺が訪れていたことで
騒ぎになったのか
当時からもちろんこういったお坊さんが
訪ねてくることは一般にあったことでしょう
ただそこで山の鬼が来たから騒ぐ
というのはちょっと不思議なことなんですね
一体この山の鬼とは何者なのか
なぜそれに恐れおののいているのか
それがこの後わかってまいります
今回は青頭巾の冒頭部分をご紹介しました
最後にもう一度本文をご紹介しましょう
昔開安禅寺という大徳の秘寺をわしましけり
若きより境外の旨をあきらめたまいて
常に身を雲水にまかせたも
身野の国の両大事に一義を満たしめ
この秋は王の方に住むとて旅立ちたも
ゆきゆきて霜月の国に入りたも
富田という里にて日入り果てぬれば
大きなる家のにぎわわしげなるに立ち寄りて
一夜を求めたもに
田端より帰る男ら
黄昏にこの草のたてるを見て
大きに恐れたるさまして
山の鬼こそ来たりたれ
人見ないでよと呼びました
家の内にも騒ぎたち
女わらべは泣き叫び
鯉まろびてくまくまにかくる
今回の古文の原点の出典は
門川文庫の改訂版うげつ物語からお送りいたしました
ご案内は吉村ジョナサンでした
ご視聴ありがとうございました
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