2023-03-11 20:48

#37 枕草子(春はあけぼの)

清少納言の枕草子から、「春はあけぼの」の内容を紹介しております。短い文章の中に、豊かな内容と自由な表現が生きています。


【原文の引用・参考文献】

角川書店(編)『ビギナーズ・クラシックス日本の古典 枕草子』(2001)角川ソフィア文庫

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それでは、始めてまいります。
今回は、枕草子という作品を読んでいきたいと思います。
特に古文をあまり勉強したことがないという方がお読みになるには、
特に随筆と、あとは節話というのが非常に読みやすいかと思うんですね。
随筆というのは、いわゆる枕草子、そして方丈記、そしてつれづれ草、
この3つのことをよく言うことが多いんですね。
それを味わっていきたいかなと思っております。
今回は、枕草子という作品。
こちらは、清少納言という平安時代に天皇のお妃様、
中宮といいますけれども、その中宮にお仕えした女房である。
女房というのは、そういった高貴な方にお仕えする女性のことです。
その清少納言という方が書いた枕草子という随筆を読んでいきたいと思います。
出展は、門川ソフィア文庫、ビギナーズクラシックス、日本の古典から撮っております。
定本はそちらを使っております。
さて、その中でも今回は、春は明け物から始まる、こちら第1弾になっております。
弾というのは、一つの節目ですね。
一つのお話のまとまりのことを弾という風に言ったりします。
小弾と呼ばれるものですね。
今回見てまいりますのは、その枕草子の一番最初に入っているものです。
春は明け物から始まる場面です。
ではまず一通り読んでまいります。
そんな内容です。
春は明け物。
ようよう白くなりゆく。
山際少し明かりて、紫だしたる雲の細くたなびきたる。
夏は夜。
月のことはさらなり。
闇もなお、蛍の多く飛び違いたる。
また、ただ一つ二つなどほのかに打ちひかりてゆくもおかし。
雨など降るもおかし。
秋は夕暮れ。
夕日のさして山の葉、いとちこうなりたるに、
カラスの寝どころへゆくとて、
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三つ四つ二つなど飛び急ぐさえあわれなり。
まいて蟹などのつらねたるが、
いと小さく見ゆるは、いとおかし。
日入り果てて、風の音、虫の音など、
はたゆうべきにあらず。
冬はつとめて。
雪の降りたるは、ゆうべきにもあらず。
霜のいと白きも、またさらでも、
いと寒きに、日など急ぎ起して、
すみもてわたるも、いと月づきし。
昼になりて、ぬるくゆるびもていけば、
すびつ日よけの日も、
白き灰がちになりてわろし。
さあ、ここでは、春、夏、秋、冬について、
えがかれております。
春は、あけぼの。
春は、あけぼのとあります。
あけぼのというのは、ちょうど、夜明けのことです。
夜明けのころに、ようよう白くなりゆく。
ようようというのは、だんだんとということです。
だんだんと白くなっていく。
そうですね。夜明けっていうのは、
だんだんと明るくなっていきますが、
その様子を白くなっていくと表現しております。
山際、少し明かりて。
山際、これはちょうど山の際ということですから、
山の稜線、山の、その、
ふちのことでございますね。
山際がだんだんと明るくなっていく。
おそらく、この山のほうから太陽が昇るんでしょうか。
ですから山がだんだんと明るくなっていきます。
紫だちたる雲の細くたなびきたる。
そのあたりに見える雲は、紫だっている。
紫色に染まっているというんですね。
それが細くたなびいている。
この細くたなびいているというのが、
まさに春の情景なんでしょうね。
他の季節では、もしかしたらまたちょっと違った形の雲が表現されているかもしれません。
雲が細くたなびいているように、ゆらゆらと細々と見える様子。
そんな春の情景をまず描いております。
続いて、夏は夜。
今度は夏の夜について描かれます。
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月の頃はさらなり。
さらなりというのは、言うまでもないということですね。
月の頃、月が出ていることは言うまでもなくというんですね。
言うまでもなく、ただ闇もなお。
闇の中でいっそ蛍の多く飛び散がいたる。
蛍が多く飛び散っている、飛び交っているということですね。
ですから夏といえば夜なんですが、
夜の中でも月が出ている頃。
これもまた夏らしい、夏の夜の風物詩でしょう。
ただ、その月がおそらく見えない。
月が見えないというのは、いろんな場合が考えられます。
例えば、雲がものすごく濃く出ていて、月を隠してしまっているかもしれません。
もしくは、新月ですね。
夏の頃には月の明かりが少し柔らぎますね。
満月の時には、こうこうとてって、まるで昼の明るさのように見えるかもしれませんが、
ですが、新月ともなりますと、あまり明るくはありません。
そんな闇が多い時期かもしれません。
そんな中で、夏といえば蛍でしょう。
多くの蛍が飛び交っている様子。
また、ただ一つ、二つなどほのかに打ち光りていく雲お菓子とあります。
ただ、一匹、二匹。
その蛍がいっぱい見える様子もいいんだけれども、
たった一匹、二匹がほのかに光っていくのも、また素敵だなというんですね。
お菓子というのは、これもいろんな役ができる言葉です。
これは何となく、いろんな小説がありますけれども、
例えばお菓子というのは、なんかこれは面白いなと、
非常に興味深いなというような感動する心、
そのようなものを描いているとも言われます。
ですから、ただ蛍がいっぱい飛び交っているのもいいんですけれども、
何となくほのかに蛍が一匹、二匹光ってうどちょろしている、
飛び飛んでいる様子も、またいいねと、興味深いと言うんですね。
またですね、雨など降るもお菓子とあります。
夏の夜の雨が降っているのも、また面白いなと言うんですね。
非常にその、要するにまずは月が出ているの。
また闇の中で蛍が飛び交っている。
またその蛍がたった一匹、二匹しかいない様子。
さらには雨が降っている様子。
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そんなものをまた非常に面白い、思い浮き深いというようなことを言っているんですね。
さあ、続いて秋にまいります。
秋は夕暮れ。秋は夕暮れを思い浮かべましょう。
夕日の差して山の肺と地溝を成りたるに。
夕日がだんだんとこの山の方に入っていきまして、山の肺がとても近くなる。
これちょっとどう解釈するか難しいところですが、
おそらく夕日が山の方に近づいている様子を言うんでしょうか。
そんな中で、カラスの寝床へ行くとて、
カラスが寝床に行くということで、
このようにカラスのというのをカラスがという風に読むという時があります。
のをがと訳すんですね。
カラスが自分の寝床へ行くといって、
三つ四つ二つなど飛び急ぐさえ哀れなり、
三つ四つ二つ、つまり三羽四羽二羽などが
飛び急いでいる様子などまでもが非常に哀れだと言うんですね。
哀れというのは、これは非常に心が動かされる様子を言います。
これは非常にいろんな時に使われまして、
例えば驚いた時にも哀れと言いますし、
悲しい時にも哀れ、残念という感じでも使われます。
また嬉しい時にも哀れと言うんですね。
いろんな哀れがありますが、とにかく共通しているのは心が動かされるということです。
ですのでここでも、まるでカラスが寝床へ行く様子までもが、
非常に心が動かされる様子であると言うんですね。
言ってみればカラスという何気ない生き物です。
非常に身近にいる生き物ですね。
そういった生き物がただ寝床に帰っていくという、
おそらく一年中を通して自然に見られるようなものでさえ、
哀れに感じられる、非常に心が動かされると言うんですね。
それが秋の夕暮れなのだということでしょうか。
また続いて、撒いて、撒いてというのはましてや、
狩りなどの連ねたるが、狩りってこれ鳥の狩りですね。
狩りが連なっている。狩りというのは変態を組みますよね。
要するに列を作るわけです。
列を作って飛んでいる様子が、いと小さく見えるわ。
とても小さく遠くに見えるんでしょう。
その様子がいとおかし、おかし、興味深いと言うんですね。
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非常に面白いと言うんです。
さらには、火入り果てて、風の音、虫の音など、はた言うべきにあらず。
また、日が入り果ててとありますから、
もう日が沈んでしまった後の秋の夕暮れです。
そんな時に風の音や虫の音、
この音とか音という使い分けがどうやらあったようですね。
現代でも音と言ったり音と言ったりいたします。
両方とも音を指しますけれども、
どうやらここでは風のような自然の音は音、
虫のような鳴き声のことを音と表したようです。
言ってみれば風の音のような自然の音や虫の声というような鳴き声のような
動物の鳴き声、動物、虫の鳴き声などもまた言うべきにあらず。
言うべきにあらずというのは、
なんかこれは言ってはならないということではなくて、
非常にもう言葉にはできないような素晴らしさであるというんですね。
ですからこの秋に限っては夕暮れの夕日が入って、
少し暗くなってきたあたりから、
日が沈んでしまった後までが描かれているんですね。
さて最後は冬でございます。
冬は勤めてでございます。
勤めてというのはこれは早朝のことです。
朝早くの非常にもうまだ暗い時間からようやく明るくなったくらいでございますね。
早朝です。勤めて。
雪の降りたるは言うべきにもあらず。
雪が降っているのはもう言うことができないくらい、
非常にもう素晴らしいというんですね。
冬といえばやっぱり雪ですよね。
ですから雪が降り積もっているのはまたいいですよねということなんですが、
それだけではないと。
たとえ雪が降っていなくても、
霜の意図白きもまた更でも、
日と寒きに日など急ぎ起こして積もて渡るも、
いと月月しと続いています。
雪が降らずとも寒い冬でしたら霜が降りることがありますね。
霜というのもですね、あまり体験されていない方も結構いらっしゃるということを聞きましたね。
私も結構その説明をしていて霜って何ですかって聞かれたことがございます。
霜というのは確かにですね、
暖かいところにお住まいの方だとあまり出くわすことがないかもしれませんが、
特に寒い日、寒い冬なんかだと雪のように空から落ちてくるものではなくて、
地上が非常に気温が下がりますので、
待機中の水分が固まるわけですね。
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葉っぱの上とか地面の土の上などにびっしり小さな氷の粒がつくんですね。
それを霜と言ったりいたします。
それで非常にそれを触ったりしていて、手が冷たくなってしまって、
非常にこのやけどをしたように痛むことを霜やけということを言ったりいたしますね。
その霜が、これは見た目にもやや白く見えるんですね。
場合によっては非常にびっしりと雪が降ったように白く見えるような時もございます。
そのような霜が降りている、これ降りるといいかどういたしますね。
霜が降りている時も非常に面白いですよね。
またさらでもそうではなくとも、
糸を寒気に、糸というのはとてもということですね。
とても寒い中で火など急ぎ起こして、
火などを急いで起こして、
隅も手を当たるとは続くのですが、
当時この平安時代においてどうやって暖をとったか、温まったかというとですね、
当時あまり温めるものというのはあまりなかったようで、
今のところ分かっているのは、
すびつというものはあったようなんですね。
お筆のようなものの中に炭を敷きまして、
その炭で温まるということをしたようなんですね。
なので火を起こして、だからこれは焚き火のようなものではなくて、
炭に火を起こすんですね。
その炭を持って渡るというのは、
その炭を動かして暖房の準備をするということでしょう。
そんな冬の朝の慌ただしい様子もまた、
いとつきづきしというんですね。
このつきづきしというのは、
につかわしいとかぴったりだという意味です。
非常にその冬の光景としてぴったりですね、というんですね。
確かに雪だるまにせよ、鎌倉にせよ、
鎌倉は分かりますかね。
これも分からない方とか結構いらっしゃいましたね。
外国からいらっしゃる方なんかだと雪は分かるんだけれども、
鎌倉というのはこれはピンとこないという方結構いらっしゃいます。
鎌倉というのは、これは大きな山を作るんですね。
人間が入れるくらいの山を作るんです。
その中に穴をほって、
それで雪で作った小さな家のようなものを作るんですね。
それを鎌倉と言ったりいたします。
そんなものを作っている様子なども、
もちろん寒いということだとか、
非常にこの冬の朝の厳しさなんかもあるんですけれども、
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一方で非常に冬らしい光景だということも言えるわけですね。
昼になりてぬるくゆるびもていけば、
すびつひおけのひもしろきはいがちになりてはろしとあります。
昼になると、その後昼になっていくとぬるくゆるびもていけば、
これはだんだんと気温がぬるくなって寒さがゆるんでいくと、
すびつひおけ、すびつのことでございましょうね。
それも、しろきはいがちになりて、
すみもはいっぽくなって、しろくなっちゃってなるということですね。
もうだいぶ燃え切ってしまうということで、わろし。
わろしというのは、よくないというふうに訳したりいたします。
あんまりよくないなと。
悪いとまでは言わないんだけど、あんまりよくないよねと。
ですから、ここに来て最後にこういうのはよくないよねなんてことも言っているわけですね。
どこか、いわゆる論文調で淡々と事実を挙げているのではなくて、
必ずしも春、夏、秋、冬で統一感があるわけでもない。
ただ一方で、それぞれの味わい方というものを、
この言葉少ない短い内容で伝えているということなんですね。
実はこのような、いわゆる季節を読んだりとか、
なんとなくふんわりした、おりおりに考えたことを書いているような場面というのは、
決して枕野草子の中で言えばメインというわけではないんですね。
枕野草子は大きく分けて、3つの種類に内容が分けられています。
大きく分けると、一つは今回読んだような、
随想的商談と呼ばれる、ふんわりといろんな時々の思いを書いたようなものです。
それ以外にも、いわゆる日記的商談とか、
あとは回想的商談と言われるように、
中宮との思い出を語ったような場面。
そしてもう一つは、ものづくしと呼ばれる、
なんとかなものをいっぱい集めたようなもの、
なんていういろんな商談があるんですね。
そのようなさまざまなバリエーションがあるのも、この枕野草子の面白さでございます。
なのでそういったことをご紹介していけたらいいかなと思っております。
今回はここまでにいたしましょう。
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