量子化学の基本概念
やまラボポッドキャストへようこそ。
どうも。
さて、今回はですね、あなたが共有してくれた量子化学の講義、資料。
えーと、書き起こしテキストとスライドPDFがありまして。
えー、ありましたね。
これをもとに、ちょっと深掘りしていきたいなと。
まあ、科学科の学部3年生レベルぐらいの内容ですかね。
そうですね。そのレベルを想定した講義内容だと思います。
で、特に分子軌道の解釈から、科学反応性を予測するというあたり。ここが面白そうだなと感じました。
えー、まさに。この講義で特に強調したいのは、複雑な計算そのものよりむしろ出てきた結果、つまり分子軌道の形を図で見てですね、そこから分子の性質を読み解いていく。
ふむふむ。
まあ、一種の図解思考の技術とでも言うんでしょうか。
それに加えて、やはり福井健一先生のフロンティア軌道理論ですね。この2つが中心になるかと。
なるほど。図解思考、それとフロンティア軌道理論。
はい。なので今回の深掘りでは、講義のポイントをしっかり掴んで、分子軌道を図から理解して、科学反応性をこう予測する、そういう考え方を身につける手助けができればなと思っています。
了解です。図解思考ですか。
なんかこう、計算を全部やらなくても本質がわかる、みたいなイメージでしょうか。
まあ、そういう側面もありますね。
講義だと、まず前回の復習として、ブタジエンカチオンの結合時数とか電子密度の計算の話が出てましたけど。
ええ、ありましたね。展開係数を使って計算するやつです。
あれと図解思考っていうのはどう繋がってくるんですか。
はい。計算自体はもちろん基本なんですけど、講義だと特に言いたかったのは、その計算結果をどう見るかという視点なんです。
どう見るか。
例えば、ブタジエンのπ軌道、一番エネルギーが低い安定な軌道は、まあ4の炭素原子全部に広がってて、全体として結合的な形をしていますよね。
ええ。
その次、2番目に安定な軌道、これが規定状態では電子が一番高いエネルギー順位に入っている、いわゆるホモ最高非線軌道になるわけですけど。
ホモですね。
このホモの形を見てみると、分子の真ん中、C2とC3の間で原子軌道の一層が逆転してるんです。つまり、そこが半結合的な性質を持ってる。
ああ、真ん中だけ。
そうです。この軌道の形、図を見るだけで、両端のC1、C2、C3、C4は結合的で強そう。真ん中のC2、C3は半結合的で弱そう。つまり、強い、弱い、強いっていう結合次数のパターンが見えてくるわけです。
へえ、計算しなくても、その軌道の羽の重なり方というか、一層だけで。
そうなんです。実際に精密な計算をしても、この強い、弱い、強いという傾向はちゃんと出てくる。だから、図で考えることが有効なんですね。
面白いですね。じゃあ、例えば冷気状態とか、あるいは抗議にあったみたいに、カチオンになったときの結合の長さの変化なんかも。
まさにそこがポイントです。ブタジエンがカチオンになるということは、一番エネルギーの高い電子、つまりホモに入っていた電子が一つ取り除かれるわけですよね。
はい、抜けますね。
そのホモは、さっき言ったように、真ん中のC2、C3間が半結合的だった。
そこから電子が一つなくなると、その半結合的な器用が弱まるわけです。
ということは、相対的に真ん中の結合は強くなる。つまり、結合長は短くなるはずだと。
なるほど。
これが、計算をせずとも電子がどの軌道から抜けるか、その軌道の形はどうだったかというのを、図で追うだけで定性的に予測できる。これが図解思考の威力かなと。
いや、これは強力な考え方ですね。計算いらずで傾向がわかるというのは。
ブタジエンと反応性
それで講義は次に、具体例としてナフタレンの二トロ化反応の話に進んでいました。
はい、ありましたね。
実験的には、1位、いわゆるα位と呼ばれる位置が優先的に二トロ化されると。でもそれはなぜかという問いかけでした。
最初に考えがちなのは、π電子密度が高いところに反応するんじゃないかということですよね。電子が多くなところに電子を求める主役、給電子材が行くと。
まあ素直な考え方ですよね。
でも、実際にナフタレンのπ電子密度をヒュッケル法なんかで計算してみると、α位もβ位もどちらも密度は1.0で差はないんですよ。
あれ、そうなんですか。じゃあ電子密度説では説明できない。
そうなんです。これだと、なぜα位が選ばれるのか説明がつかない。
うーん、そこで出てくるのが?
はい、そこで登場するのが、福井先生のフロンティア軌道理論ですね。
言いましたね。
考え方としては、反応に本当に重要なのは、分子全体の電子とより最前線にいる電子、つまり一番エネルギーの高いところにある電子じゃないかということです。
最前線、フロンティア。
ええ。給電子反応、つまり電子を欲しがるニトロキのような主役との反応では、分子の中で一番エネルギーが高くて不安定、言い換えれば最も奪われやすい電子、これがホモにある電子ですね。
このホモの電子が反応の鍵を握るというわけです。
なるほど。全体の平均的な電子密度じゃなくて、一番反応しやすい不安定なホモの電子がどこに多くいるかが大事だと。
まさにその通りです。で、実際にナフタレンのホモの電子分布、つまり各原子上の原子軌道の係数の二乗を計算してみると、これが答えを教えてくれるんです。
ほう。
計算上も、それから講義のスライドにあったような実際の軌道の図を見ても、αiの原子におけるホモの係数、これがβiの係数よりもずっと大きい。
図で言うとαiについてる丸がβiより大きいみたいな感じですかね。
そうそう、そういうイメージです。丸の大きさが電子の存在確実密度を表していると思えばいい。
だから、電子を奪いに来る急研自在は、ホモの電子がより豊富に存在するαiを優先的に攻撃する。これで実験結果が見事に説明できるわけです。
おお、なるほど。これはスッキリしますね。π電子密度という全体の指標じゃなくて、反応の種類に応じて注目すべきフロンティア軌道を形、特にホモの極材が反応位置選択性を決めていた、と。
ええ、そういうことです。
じゃあ、今のは電子を求める急研自反応でしたけど、逆に分子に電子を与えるような急核反応の場合はどう考えればいいんですか。
いい質問ですね。急核反応の場合は、分子が攻撃されて電子を受け取る側になります。
はい。
この場合は、今度は空いている軌道、つまり電子が入っていない分子軌道の型で一番エネルギーが低いもの、これが電子を一番受け入れやすい場所と考えられます。これがルモですね。
ルモ、Lowest Unoccupied Molecular Orbital。
その通りです。なので急核反応では、ルモにおける原子軌道の係数の二乗、つまりルモの電子密度が大きい原子が急核材からの攻撃を受けやすいと考えることができます。
なるほど。急堅持反応ならホモ、急核反応ならルモ、反応の最前線にいるからフロンティア軌道。これが福井先生のノーベル賞につながったシンプルだけど非常に強力な考え方なんですね。
そうなんです。もちろんこれらの考え方をさらに定量的に扱って、例えば反応性指数といったものを計算することもできますが、その根底にあるのはやはりホモやルモの形、そして係数の大きさ、つまり図を見て反応性を判断するという今回のテーマである図解思考なんですね。
いやー、今回の資料を深掘りしてみて、量子科学の計算結果ってなんか難解な数字の羅列に見えてたんですけど、そうじゃなくて分子の性質とか反応性を解き明かすためのいわば地図なんだなというふうに実感しました。
特にフロンティア軌道リゾンとその軌道の形を図として読み解く図解思考、この重要性がすごくよくわかりましたね。
そうですね。ナフタレンの例のように、一見するとなぜそこが反応するんだろうって不思議に思えるような反応の選択性も、ホモやルモといった鍵となる軌道の形に注目すれば、案外シンプルに予測できることがあるんです。
反応性の予測と応用
計算の詳細を緻密に追っていくスキルももちろん大事なんですけど、出てきた結果を図として捉えて、そこから科学的な意味、洞察を引き出す力、これは研究や開発の現場でも非常に役立つ力だと思いますね。
本当ですね。この図で考えるアプローチって、今回見たような有機化学の反応予測はもちろんなんですけど、もしかしたらもっと複雑な生態分子の機能の理解とか、あるいは全然違う分野、例えば経済とか社会現象とか、そういうものの本質を見抜く上でも何か応用できる普遍的な考え方なのかもしれないなぁなんて思ったりしました。
ああ、それは面白い視点ですね。確かに複雑な系の中から、どこが一番影響を受けやすいか、あるいは他に影響を与えやすいかというフロンティアを見つける考え方は応用が効くかもしれません。
あなたの研究や学習の中で、この図解思考みたいなアプローチが活かせそうな場面って何か思い当たりますか?ちょっと考えてみるのも面白いかもしれませんね。
そうですね。考えてみたいと思います。
はい。ということで、今回の深堀はここまでとしましょう。ありがとうございました。
ありがとうございました。