成瀬の魅力と物語の構成
はい、tantotの時々読書日記第30回です。ゆるゆる続いてまいりました。
今日はですね、こちら、宮島奈々さんの
成瀬は信じた道をいく、こちらについて取り上げたいと思います。
これは、皆さんもよくご存知の、成瀬は天下を取りに行く、公野大将も受賞した作品の続編ですね。
で、成瀬の天下を取りに行くの方は、もう私も2年、1年前ぐらいには読んでいて、非常にご多分にもおもしろいなというふうに思ったんですけど、
この第2作目、読めか読まないか、買うか買わないかみたいな、ちょっと迷って、本屋に行くたびにどうしようかな、でも1600円か、みたいな感じで思ってたんですけど、
たまたまですね、古本屋で見つけて、これはもう運命だと思って、という感じなんですけど、これね、読んでよかったです。すごくおもしろかった。
5編の短編、第2作と同じように、基本的にちょっとテーマの違う短編で成り立っているんですけど、
5編の短編で、それぞれ違う語り手、語り手が違う、そのあたりも第1作と同じだなという感じです。
1つ目はトキメキっ子タイム、これは成瀬に、なぜか成瀬に憧れる小学生の未来ちゃんが語り手。
2話目、成瀬義彦の憂鬱、これはなんと成瀬のお父さんが語り手。
成瀬が家でどんな風に扱われているのとか、家でどんな風に振る舞っているのか、みたいな気になりますよね、という感じです。
3つ目がやめたいクレーマー、これは、
そうですね、地元のスーパーで、ついついお客様の声にクレームを書いてしまう主婦のクレマー、
ことみさんだっけな、ちょっと名前がふざけてますけど、ことみさんが語り手。ここにも実は成瀬が登場してくる。
4つ目はコンビーフはうまい、
これが表紙にもなっている、成瀬が琵琶湖大津観光大使になるというお話で、
その一緒に観光大使をやる、誰さんだっけ、
篠原可憐さんが語り手です。
こたぶんに漏れず成瀬の言動にギョッとして、でもなぜかいつの間にか引き込まれて、成瀬のペースにはまってしまって、
しかも成瀬によって言う傷付けられたり、貢献傷付けられたりしてしまうという不思議なお話。
読んでいてケラケラ笑ってしまいそうな。
最後の5つ目が探さないでください。
これがちょっとだけネタバレになるんですけど、
今ここまでの4話に出てきた、全然関係ない小学生だったり、主婦だったり、観光大使だったり、お父さんだったり、
一作目にも出てきた島垣がみんな大集合するというようなお話で、これもすごく面白い。
成瀬がどこまでも成瀬節が炸裂していて、ちょっと作者さん悪ノリじゃないですか、成瀬さんはみたいな感じなんですけど、
やっぱりこのキャラクターの魅力が素晴らしいですよね。
本当にこの成瀬のシリーズは成瀬あかりという、このキャラクターを生み出した、そこが全て。
この魅力的な成瀬が次何してくれるんだろうとか、どんな風に僕らのことを驚かせてくれるんだろう。
しかも成瀬が非常に自然体でやっているという、それがもう素晴らしいなと思って、本当にどんどん物語が走っているというような感じがしますし、
結構これは2作目に限り留まらず、ぜひもうちょっと長いシリーズ化してくれたりするんじゃないかなという気がしました。
二作目の進化とお勧め
そんな感じで、あまり具体的な中の話にここだけ入ると、やっぱりすごいなと思うのが、ちょっとここから先少しだけネタバレになるんですけど、
成瀬の周りの巻き込み力というか、自然体で周りをいつの間にか巻き込んでしまっていて、成瀬が人を巻き込んでやろうとか、自分のやりたいことのために誰かを利用してやろうみたいなことを一切考えずに、
その場その場であるべきだと思う行動を自然体で取る。だからこそ周りが勝手に巻き込まれてしまう。やっぱりそれ自然体すぎるし、ある意味善意というか、こうするのが当たり前だろうという感覚から来ているので、否定することもできない。
例えば、最初のトキメキックタイム、小学生の女の子は成瀬に誘われて、いつの間にかその子もパトロール、周囲のパトロールを始めちゃうとか。成瀬・吉彦の憂鬱、この話面白いですね。
京都大学を受験しに行くんですけど、そこの京都大学で野宿をしようとしている謎のユーチューバーをなぜか成瀬が声をかけて、なぜか家に泊めることになっちゃう。それに対してお父さんがどういうことどういうことみたいな感じでわちゃわちゃする。
お父さんだけがわちゃわちゃしていて、成瀬は一切動じない。周りはわちゃわちゃするんだけど、成瀬は信じた道を行く。まさに信じた道を行く。それが面白いなと思います。
こんな風に、それでさっきも言ったんですけど、何が素晴らしいかって、成瀬に巻き込まれることによって周りの人たちはすごく前向きになったりとか、一方自分自身のいいところというか、自分に対してくよくよしてたりとか、ちょっと嫌なことを考えてたりとかっていう、
そういう気持ちがすっと晴れて、明るい前向きな気持ちになれる。そういう風に周りをすごくポジティブな方向に持っていく力がある。それが描かれているのがこのお話の面白いところだなと思いました。
ということで、一作目は本屋大賞になったというところもあって、かなり多くの人が読んでいるかなと思うんですけど、二作目どうしようかな、読みたいけどどうしようかなという風に迷っている方に向けて言うと、これは買いです。買いだと思いました。
一作目が面白かったら絶対に二作目読んだほうがいい。まんねりというか、作目が売れたから二作目だったみたいな、まんねりだったらどうしようみたいなこともちょっと一瞬思ってたんですけど、そんなことはなかったです。一作目を上回るような、さらに上を行く進化したお話だなという風に感じたので、なるぜのことが気になる方は読んでみていただけるといいのかなという風に思いました。
はい、では今日はこんなところですかね。今日は宮島奈々さんの「なるぜは信じた道を行く信長者」という本について、取り上げました。それではありがとうございました。