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2024-01-05 19:18

読書ラジオ『自転しながら公転する』山本文緒

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自転しながら公転する (新潮文庫) https://amzn.asia/d/61DEBBJ
(配信の冒頭部分は本の説明文・あらすじを読み上げています。)

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こんばんは、ゆうこです。このチャンネルでは、私の読書論や日々の学びを音声配信しています。
今日は、山本文緒さんの『自転しながら公転する』について話してみようと思います。
母の看病のため、実家に戻ってきた32歳の宮子。
アウトレットモールのアパレルで契約社員として働きながら、寿司職人の寛一と付き合い始めるが、
彼との結婚は見えない。職場は頼りない店長。上司のセクハラと問題だらけ。
母の具合は一心一体。正社員になるべき?運命の人は他にいる?
ぐるぐると思い悩む宮子がたどり着いた答えは、
揺れる心を優しく包み温かな共感で満たす傑作長編。
ということで、山本文夫さんの話ですね。
『自転しながら公転する』は、
島清恋愛文学賞・中央口論文芸賞を受賞されていて、
映画家になるのかなと思います。
女優さん、俳優さんでCMっぽいのがあったような気がしますが、
ちょっと太いのでわからない。
山本文夫さんのこの『自転しながら公転する』はですね、
私は大晦日の夜から読み始めまして。
紅白見なかったのでね、
本を読んで31日を過ごしたわけですが、
読み終わったら年が明けていてですね、
気づいたら全部読み終わってたんですけれども、
深夜でしたね。
もちろん金も気づかないぐらい集中して読んでしまった本です。
自転しながら公転するの主役は、
アウトレットモールのアパレルのお店で契約社員として働いている三谷子ですね、32歳。
お母さんが高年期障害で体調を崩していて、
なかなか一人で外出するのも難しい。
病院に行ったり、買い物に行くということが一人ではできない状態になっていて、
もちろん家事もできない状態。
ちょっと鬱っぽい感じなんですかね。
お父さんは働いていたんですけれども、
お母さんの看病のために仕事を給食して、
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母の介護をしていた。
そこにお父さんだけではちょっとしんどいので、
三谷子は別々に暮らしていたんですけれども、
実家に戻ってこないかと言われて、
おそらく茨城県に実家があると思うんですよね。
網のアウトレットが舞台になりますって。
実家に戻ってきて、お父さんと一緒にお母さんの世話をしてくれないかと言われて、
付き合っていた彼ともグダグダしていたところだったし、
仕事でもあんまり良い思いをしていなかったところだったので、
なんというか、ラッキーというか、
自分の辞める理由を探していたところだったのかもしれないですね。
渡りに船という感じで戻ってきて、
網のアウトレットで契約書員として働いている。
すし職人の寛一ともアウトレットで出会うんですけれども、
寛一は定職に就いていないというか、
アウトレットのお寿司屋さんが閉店するに際して寛一も無職になってしまう。
高校出ていないので、なかなか働く口を探すのが難しい。
プータラの期間が長くなっても寛一は一向に職探しに本気を見せないわけですね。
住んでいるところも割とボロい部屋で贅沢をするわけでもなくといって、
お金を貯めている風でもないわけですね。
プレゼントとしてティファニーのネックレス10万円ぐらいの
ポンと買っちゃうぐらいお金に執着がない。
かつ貯めようともしていない。
そんな寛一との未来に、自分が幸せになれそうだという確信がもけない不安があるわけです。
かといって宮古はアウトレットモールで契約社員だし、
自分がここで正社員になっていろんな面倒事を引き受けながら
大本に立ってやっていく覚悟があるかというとそうでもない。
職場では頼りない店長とか、職場の不倫、上司のセックハラ、
アルバイトの子たちが一斉に辞めるとか問題だらけなわけですね。
そんな中、宮古は寛一と付き合っていていいんだろうか、
このまま父と母の面倒をいやいや見ながら年をとっていいんだろうか、
アウトレットのアパレルで好きでもない服を売りながら、
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一方では今まで自分が好きだったユルフワ系の服も似合わなくなってきて、
一体何を着ればいいのかよくわからないまま、
毎シーズン服を買ってしまう自分の計画性の無さにヘキヘキしながら、
周りの友達は真意を持って婚活に取り組んだり、仕事で結果を出している。
どんどん自分の周りが停滞していき足元が泥沼になっていくような、
そんな閉塞感、停滞感、周りに置いていかれる焦燥感みたいなものがあって、
読んでいてとても辛い思いになりましたね。
ちょっとイラッとしてしまったりもしました。
もともとですね、誰かが幸せにしてくれる、
どこかに古い言い方ですけれども、私の王子様がいるんじゃないかみたいな、
そんなふうに思っている。
それがダメなんじゃないのって、読んでいて言いたくなっちゃう本なんですけれども、
それでもイライラを抑えながら物語に入り込んで没頭して読んでしまったのは、
自転しながら後転するということの意味が、この小説の中でどういう意味を持つんだろうということが、
ずっとわからなかったからですね。
自転しながら後転するというのは、宮古と寛一が出会ってすぐぐらいの冒頭の最初の方のシーンで、
寛一が口にします。
宮古が親のこととか周りの友達のこととか考えながら、
でも不平不満が爆発しそうで、なんで私がここまでやらなきゃいけないんだとか、
そんなふうに思いながら頭がぐるぐるしているという話をすると、
寛一が自転しながら後転しているんだなって言うんですよね。
宮古ははぁと言います。
寛一は自転と後転の説明をするんですけれども、
宮古はさっきから何言ってんのと理解できないわけですよね。
さらに寛一は赤道角っていうのかな、地球の軸が少し二十何度傾いていることも含めて説明しだして、
さらに自転しながら後転している自分たちがいる地球っていうのは、
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二度と同じ軌道を通ることはない。
一瞬も二人とも同じ軌道には戻ってこれないみたいなことを一生懸命話し出すわけです。
で、宮古はさっきから何が言いたいのと言うんですけれども、寛一も俺もわかんなくなってきたと。
ここで自転しながら後転するっていうキーワードが出てくるんですけど、
この後全然それが何が自転で後転なのか、自転しながら後転しているものは何なのかっていうのは全く出てこないんですよね。
で、さっきも言った通りちょっと宮古ちゃんに読んでる、私としてはイライラしながら、
しかも宮古ちゃんの職場とか家族にもイライラしながら進めていくんですけれども、
宮古には二人女友達がいて、そのうちの一人後輩の子がですね、割としっかりしたことを言うんですよね。
宮古に対して、世間のいう一般的な結婚ってものに縛られすぎなんじゃないですかと。
寛一との結婚、結婚しようなんて言われてないのに悩んでる宮古に対してその後輩が言うんですよね。
寛一さんの人間としての良さが理解されないような気がして、結婚という制度にこだわらせる必要ないんじゃないですか、そんなふうに言うんですよね。
で、宮古はここまで読んできて気づいたんですけれども、宮古は誰かと意見をぶつけ合うということが非常に苦手なんですよね。
ディベートができないというか、ディベートどころか、誰かに対して自分の意見を言うことができない。
自分が抱え込んで嫌な思いをしながらまあいいかと思ってしまったり、見ないふりをする。
そうやってやり過ごしていったツケが回ってきていることに少しずつ気づいていくんですよね。
で、後輩もそれが分かっていて、宮古さんこういうの苦手なんですよね、ごめんなさい、こういうの議論というか。
そして宮古は力なく息を吐くわけです。
で、宮古は人が言い合っているのを見るのはすごい苦しくなるし、自分も意義を唱えるのが苦手だと。
そうしたら河内さんとそんな話をしたことないんですよねとズバリ言われてしまうわけです。
で、その通りとなって、宮古はズバリ言われてかなり落ち込むわけです。
そこからまたですね、かなり宮古がスパークするんですよね。
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今まで自分の中にある不満不平みたいなものはブツブツと唱えるように、もしくは口に出さないまでも顔に出したりとかして態度に出して、
はっきりと意見として言えなかった宮古なんですけれども、
それが自分の頭の中で爆発してしまう瞬間がきます。
私は本当にクズだと突然叫ぶように思った。
幼稚すぎる。話にならない。何にも決められない。
私なんか誰の役にも立ってない。自分の人生なのに誰かが何とかしてくれると思っている。
私には価値がない。だから自信満々な男に胸を掴まれたりする。価値がない。
それまでずぶずぶと沼の底に埋まっていた感じがしていたのに、ここから宮古は苦情していくわけですよね。
非常に体調が悪くて、もう自分の中で自暴自棄になっていて、頭の中でスパークするような状態だったんですけれども、
ある出来事があって、それで宮古はふっと苦情していくわけです。
それが何なのかっていうのはちょっと読んでみてほしいんですけれども、
何でもないことで宮古はずぶずぶの泥沼の足も抜けないようなところから浮いていくわけですよね。
そして寛一とのバトルがあるわけです。
ここで宮古はその時自分が泥沼から浮いていたような感覚と同じような感覚を寛一との言い合いの中でもう一度追体験するわけです。
その以前自分が目が覚めた時のような清々しさがパキッと割れた心の中から湧き出してきた。
この人がいなくなっても生きていけると典型を受けたようにはっきり思った。
そして宮古が出した答え、そんな宮古に対して寛一がどういうふうに答えるのかというところでかなりラストの方に向かっていくわけですね。
ここまで読んで時転と交点って何のことだったんだろうとちょっとわかったような気がしたのは、
時転っていうのは諸説あるそうなんですけれども、星と星がぶつかり合ってそれでも引力で引き合ってしまったからぐるぐる回転し始めたという説があるそうなんですよね。
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例えとしては、人と人が全速力で正面からぶつかり合ったその瞬間に左手と左手をつないでいたら、そのまま二人は同じ方向に回転し始めるだろうと。
それが時転ですというようなわかりやすい説明があって、つまり宮古っていうのは今まで衝突を避けてきたから時転もしていなかったわけですよね。
なんですけど、こんな友達や関一とぶつかって、家族ともぶつかり合うことでやっと誰かと手をつないで時転することができ始めてきた。
そしてその地球の角度っていうのは二重難度に傾いていて、その軸を周りにいる人に対して少し斜めに向けることで自分の中で全てを正面から受けるのではなく、そこで四季が生まれるようにいい時もあれば悪い時もあるというような柔軟さがもしかしたら身についたのかもしれない。
そして後転するということの意味は、自分や周囲の人、関一や友達や家族と手をつなぎながらぐるぐる回転しながらもいろんな出来事が起きていくわけですよね。
それを乗り越えながら同じ軌道を通ることは二度とない。この一瞬一瞬で自分で軸を持って一つ一つに判断をしていきながら、大事なものから目を反らさずに生きていくっていうことが後転するということの意味なのかなというふうに思いました。
宮子は後半の方で何一つ自分で決断をしたり意見を言ったり、自分で道を切り開いていくという何かから逃げないということができなかった。
宮子が少しずつ変わっていくそんなシーンを見るにつれてこれが自転しながら後転するということの意味なのかなというふうに私は思いました。
そしてこの小説の構成の面白さとして一番冒頭のシーンは誰なのかわからない人の結婚式のシーンで始まるんですね。
場所はベトナムです。
誰なのか明かされない人の語りで、おそらくこれは花嫁だと思うんですけれども、語りで始まるんですよね。
このベトナムでの結婚のシーンがどういう意味を持つのかというところが最後に明かされていくので、小説としての構成の面白さも存分にある。
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何重にも面白さが重ね合わされた重厚な小説で、私が大晦日の夜に引き込まれた理由も十分あるのかなというふうに思います。
何よりも山本文夫さんが最後に書かれた小説自転しながら肯定する。
これを書かれた時は体調不良を感じていらっしゃらなかったのかなとは思いますが、最後の作品として読むとまた違った読み応えというか、素晴らしい作家さんだったんだな。
非常に残念な思いがより込み上げてくる。そんな読書感想だったかなと思います。
ということで今日は山本文夫さんの自転しながら肯定するという本について話してみました。
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今日も最後まで聞いていただいてありがとうございました。
ではでは。
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