清沢洌の『非常日本への直言』
書誌情報メモ。清沢洌『非常日本への直言』千倉書房、1933年3月、414ページ。以上です。
この本は国立国会図書館デジタルコレクションでインターネットで公開されています。
この本を私が注目したのは、孫泰蔵さんの『冒険の書』という本の冒頭部分でですね、
「父からの手紙」という文章がありまして、これが読者へのメッセージのようなものになっているんですけれども、
自分の子どもにあてた手紙のような体裁なんですね。
この部分に参考文献が示されていまして、それが清沢洌の『非常日本への直言』という本なんですね。
この本がどうして父からの手紙の参考文献になっているのかなということで、ちょっとよくわからなかったので、
それを知りたいなと思いまして、この本を探してみたんですけれども、
ネット上で読めるということで、ちょっと読んでみました。
この本といっても、この本の序文にあたる部分、実際には「序に代へて」というふうになっていましたけれども、
その部分を見てですね、これを参考にしたんだなということがすぐにわかりました。
この清沢の本の「序に代へて」というのには、さらに「わが児に与ふ」というタイトルがついています。
つまり、自分の子に与える文章、手紙、そういうような形をとっているんですね。
その内容はここでは詳しく述べませんけれども、
当時の社会の風潮を自分の子どもの発言から知りまして、
知ったというか、それを強く感じてですね、
その時に思ったことを文章にして、この本全体の序にしたということなんですけれども、
当時のですね、日本と中国の対立関係ですね、そういったものが明らかになっている。
また、ある種の軍国主義というんでしょうか、そういった感じもするような話ですね。
この本が出たのが満州事変の2年後の年ですので、
そういう日本の大陸進出、そういうものが進んでいった時代ですからね、
中国との対立は当然あったわけです。
それで、この本自体とても面白そうなので、また機会があればゆっくり読んでみたいんですけれども、
「禁安1-588」という記号について
この本の扉のページですね。
本の表紙をめくって、本文の一番最初のところにあるページですけれども、
そこにですね、右上のところに手書きで「禁安1-588」というですね、
そういう番号が書いてありまして、これは何なんだろうというふうにちょっと疑問に思ったんですね。
図書館の本ですから、いろんな記号がついているんですけれども、
この「禁安」というのがちょっと気になりまして、本で禁というからにはこれは発禁なんじゃないかと。
で、安ですから、安寧秩序って言うんでしょうかね。
社会の安定、これを乱すという話なんじゃないかなというふうに想像しまして、
ちょっと調べてみましたらば、やっぱりそうで、当時の検閲でですね、
発禁になった本に付けられる一つのジャンルということのようです。
で、もう一つはですね、風俗を乱すというのもあるそうで、「禁風」というのがあるそうですけれども、
こちらは禁安でした。
で、一旦発禁になるとですね、その後一般の人はもう読めなくなってしまうんですね。
で、ですからこれ昭和8年、1933年に出版されましたけれども、
それは1945年以降、敗戦以降にですね、また読めるような形になったということのようですね。
ということで、ちょっとですね、歴史家としてなんかいろんなところにが気になってですね、あれこれ調べだすと、
それだけでまた時間が経つんですけれども、こういうのがとても楽しいんですね。
そういう細部というものが非常に面白い。
これが歴史家の楽しみなんですけれども、そんなことやってるとなかなか先進まないんですが、
ちょっと面白い発見があったのでここで語ってみました。
以上です。