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2024-05-12 10:47

77 メモ | AIが書いたような感想を高く評価する学生たち

授業で講義ビデオを観た感想を書いてもらい,オンラインで共有し,よいと思ったものに「いいね」を付けさせました。そうして多くの学生からいいねをもらった感想が,AIが書いたようなもの(文章としてはきれいにまとまっているが,心が感じられない文章)だったので,物足りないとコメントしました。また,このことが,いまの若者の「いい子症候群」(金間大介さん)と関連しているのではないかと思いました。

参考:金間大介『静かに退職する若者たち』(PHP研究所, 2024)

#授業 #AI #いい子症候群

サマリー

学生は講義ビデオの感想を共有し、コメントしています。学生の文章は整っていますが、私はもう少しユニークな意見を求めています。学生たちは無難で目立たない意見を高く評価しています。

学生の感想とコメント
私は、授業で学生に私の講義ビデオを視聴させまして、そのビデオに関する感想を課題として提出させています。
これを毎週行いまして、毎週の授業の最初では、その学生が提出した課題をオンラインでクラスの中で共有させまして、いいなと思ったものにはいいねをつけさせて、そのいいねがたくさんついたものを私が取り上げて、読み上げ、そしてコメントするということを行っています。
その中で、私がちょっと違和感を感じまして、学生に話したことをここで紹介したいと思うんです。
まずはですね、私のコメントから聞いてもらいたいんですが、そもそも私は学生に何を求めているかということを知っていただくために、まず、設問を紹介します。
私は講義ビデオを見た後に、次のようなものを書くように言っています。
読み上げますと、「第3週の教材を学ぶことにより、新たに気づかされたことや感じたこと、これまでよりも深く理解できたこと、関連して考えさせられたことなどを具体的に書いてください。
授業に関連した感想、意見、質問などを自由に書いてください」。
このような設問です。
ここでは第3週の教材に関して書いてもらうという、そういう設定でした。
そして、それについて学生が書いたもので、クラスの中でたくさんのいいねをもらったものを私は紹介したんですけれども、その文章は学生が書いたものですので、ここでは紹介できませんが、
それに対して私がどのようなコメントをしたかということは、その授業のビデオを作ってありまして、それをここで再生することで紹介することができますので、ちょっと紹介したいと思います。
「この感想、感想というのかな、この文章、とてもよくまとまっていますね。
ビデオで学んだことをうまく言葉に表現してくれていまして、まとめとしてはとてもよく書けていると思います。
そのことを多くの人がいいねという判断をして、これがトップに来たんだと思いますけれども。
でも私としてはこの文章、よく書けてはいるんですが、ちょっと物足りない感じもしますね。
というのは、こういったここに書かれているいろいろなことを知った上で、この文章を書いた方が何を感じたかということは書かれていないからです。
総花的にビデオの内容をうまくまとめてありますが、その中で特にどこに関心を持ったのか。
一か所だけでいいんです。こんなにたくさん書く必要はないので、一つを取り上げてそこに関してもっと自分の言葉で自分の感じたことを書いてくれたらば、もっとよかったかなというふうに思いました。
実際にそうしたかどうかはわかりませんが、最近よく使える人工知能、これを使ってデータを入れてまとめさせると、こういうような非常にきれいにまとめられた文章が出てくるんですが、もっと人間らしいと言いましょうかね。
つまり、うまくできていないほうがいいんです。文章として整っていないほうがむしろいいんですね。そういう文章を私は読みたいなというふうに思っているんですけどね」。
はい、こんな感じのコメントですね。学生がいいというふうに言っているトップに来たものですので、文章としては確かによく書けていたんですけれども、しかし私が求めていた講義ビデオを見て感じたこと、そしてそこから触発されて考えたこと、
というものが自分の言葉で語られているようには思えなかったんですね。非常に抽象的な表現で、文章としてはきれいにまとまっています。
私は人工知能、ChatGPTなどを使っていろいろ文章を生成させたことがありますので、人工知能が生成する文章の特徴というのはある程度把握しているんですが、基本的に非常に抽象的なんですね。言葉の上ではうまくまとまっていますけれども、そこに心がこもっていないというか、そういう感じがしました。
これは本当に私の感覚で感じるものなので、なかなかどこがどうなっているのかというのは表現しにくいんですが、読めばだいたいわかります。
学生が書いた文章もですね、本当に人工知能に書かせたかどうかはわかりませんけれども、そのような感じを受ける文章だったので、そういう文章を見ると思わず私は何か言いたくなってしまうんです。
このような文章が他の学生から見てもいいというふうに判断されるということはどういうことなんだろうか、というふうに考えたんですね。
これは、今の学生のある種の価値観というか、あるいは行動パターンというか、思考パターンですかね、考えですので、それと関係があるのではないかというふうに思い始めていまして、
学生の価値観と意見
最近ですね、ある本を読みました。金間大介さんという方の『静かに退職する若者たち』という面白いタイトルの本なんですけれども、今年出版されたものなんですけれども、
その中にですね、この本は1on1というんでしょうか、1対1で面接をする、ミーティングをする、そういう職場での上司というんでしょうかね、その若者と面談する人に向けて書かれたような本なんですけれども、
今の若者はどういう特徴を持っているのかということを解説するような本なんですが、そこにですね、こういうことが書かれていました。ちょっと読み上げてみます。
「今の学生は、対大人向けコミュニケーションの『テンプレート』を持っているということ。そしてそれは、目の前の大人への配慮であり、同時にその配慮は、目立つ世界へ引きずり込まれないための自己防衛なのだと悟った。
感じよく、そつなく、その場に適した返答をする。しかし、決して本音は明かさない。目立ちたくもないし、その他大勢の中に埋もれていたい。僕はこれを、若者たちの『いい子症候群』と呼んでいる」。こう書いているんですね。
私が学生に自分の意見を書いてほしいというふうに言いますと、まさにここで書かれているような、ある種無難な意見、誰もが否定しないような、ある種の常識的な意見なんですが、そういう意見を書いてくるし、またそういう意見が、
学生の間で高く評価されるという傾向があるんです。つまり、学生たちは、ある種の目立たない、みんなが言いそうな意見というものを、いいものだというふうに考えているのかなというふうに思うんですね。
私が求めているのはむしろ逆で、みんなが考えないような、そういうユニークな意見を求めているんですが、なかなかそういう意見は出てこないし、また出てきたとしても、学生の間でいいねがつけられない、浮かび上がってこないという傾向があります。
これはまだ授業が始まったばかりですので、私が求めているものが学生にうまく伝わっていないということもありますので、学期の終わりぐらいになりますとまた変わってくるのかもしれませんけれども、今の学生の、あるいは若者の特徴を表しているのかなと思いまして、ちょっとここでお話ししてみました。
10:47

コメント

学生にとって、ユニークであることがメリットではない、むしろデメリットである、と思われますね。多くの日本の学生は群がり、同調し、無難に過ごす、ある意味冷めた人が多いと思います。ユニークであること、特異であることをメリットと感じない人が多いと思います。 私はむしろ人と同じというのを嫌っていましたし、ユニークであることが良いことだと考えていましたが、学生のときは少々孤独だった気もします。 では先生としてどのように働きかけたらいいか、うまくは伝えられないですが、先生がこういう場合にこういう発言をもらったらユニークで嬉しかった、というのを伝えるのがいいのかな?すいません、いい解決策は浮かびませんでした。。。

たな たな

コメントありがとうございます。SNSが発達し,少しでも問題がある発言をするとみんなにたたかれるという状況が,無難を選ぶ傾向に拍車をかけているようにも思います。若者だけでなく,社会の風潮がそうなってきていて,それを若者は敏感に感じているのかもしれませんね。 私としては,一般常識に反するようなことを言ってもいいんだという場をつくるように心がけています。心理的安全性というのでしょうか。たとえば,ブログで実名を明かさずに発言できるようにするのもその一つです。ユニークな発言があると嬉しいという気持ちを伝えるのも大事ですね。そうやって,何でも発言していいんだという雰囲気を作っていきたいです。

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