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2024-11-21 16:13

199 書誌 | 今井むつみ・秋田喜美『言語の本質』(2023)

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今井むつみ・秋田喜美『言語の本質——ことばはどう生まれ,進化したか』中公新書,2023.5,277p

https://www.chuko.co.jp/shinsho/2023/05/102756.html

参考:188 書誌 | 今井むつみ『学力喪失』(2024)

本エピソードのAIによる要約

2023年5月に刊行された今井むつみさんと秋田喜美さんの共著『言語の本質――ことばはどう生まれ、進化したか』(中公新書)は、全277ページにわたる内容の濃い一冊です。この本に興味を持ったきっかけは、今井さんの著書『学力喪失』を読んだことでした。今井さんの他の本も読んでみたくなり,この本の前年に出版され,2024年の新書大賞を受賞するなど話題にもなっていた本書『言語の本質』を購入して読んでみました。

本書はタイトル通り「言語の本質」という壮大なテーマに挑んでいますが、オノマトペ(擬音語や擬態語)を手がかりに、その本質を探るというユニークな視点で書かれています。内容は非常に豊富で、一度読んだだけでは十分に理解しきれない部分もありますが、著者の伝えたいメッセージはおおむねつかめたように思います。

本書を読みながら、以前読んだ『学力喪失』の内容も思い出しました。『学力喪失』では、現代の子どもたちが本来持っている「学ぶ力」が失われつつある状況が問題視されています。しかし、子どもたちは幼少期に、誰から教えられるでもなく自分の力で言葉を習得するという驚くべき能力を発揮しています。この本では、その「学ぶ力」と言語習得の関係性について掘り下げられていました。

その中でも、特に印象に残ったのが「記号接地」という概念です。これは、言葉を身体的な感覚と結びつける人間特有の力を指します。そして、この力を育むには「経験」が重要だと説かれています。ただし、単に経験すればいいのではなく、「失敗」が学びにおいて非常に大切だという点が強調されていました。

例えば、子どもが言葉を誤解したり、言い間違いをしたりすることは、大人から見れば単なる「間違い」に見えますが、実際は子どもなりに推論を働かせた結果であり、非常に理にかなったプロセスです。このような「失敗」を繰り返すことで、子どもは正しい言葉の使い方を学んでいきます。

また、この本を読み進める中で、科学の歴史との関連性も思い出しました。たとえば、トーマス・クーンの『科学革命の構造』で提唱された「パラダイム」の概念です。この言葉は、もともと科学史における思考の枠組みを示すものでしたが、現在では一般的に「思考の枠組み」という意味で使われるようになりました。

クーンの議論によると、新しい科学的知識は仮説を立て、誤りを修正しながら発展していきます。このプロセスは、子どもが言葉を学ぶ際に失敗から学び取るプロセスとよく似ています。つまり、科学的探究と言語習得には「アプダクション(仮説形成と修正)」という共通の方法論があるのです。

このような学びの本質を考えると、大人が失敗を恐れることが、学びの障害になることがよく分かります。特に外国語学習では、間違えることを恥ずかしく感じるあまり、言葉を発することさえ躊躇してしまう人が多いのではないでしょうか。しかし、失敗を恐れずに挑戦できる環境があれば、大人でも学びを深められるはずです。

例えば、AIを活用して外国語を練習することも一つの方法です。AIなら失敗を笑ったり否定したりしないため、自由に試行錯誤できます。もちろん、理想的には人間同士で気軽に失敗できる環境が望ましいですが、AIは恥ずかしさを克服する手段として有効でしょう。

『言語の本質』は、言語学や学びの本質について深く考えさせられるだけでなく、関連する多くのテーマに思いを巡らせるきっかけを与えてくれる刺激的な一冊でした。この本を読みながら改めて、学ぶためには失敗を受け入れる環境づくりが重要だと感じました。これからの教育や学びにとって、大切なヒントを与えてくれる本だと思います。

#書誌 #言語 #学び #今井むつみ

サマリー

今井むつみさんと秋田喜美さんによる『言語の本質』は、言葉の誕生と進化を探求している重要な作品です。人間が言葉を学ぶ過程や経験の重要性、そして失敗からの学びについても深く考察されています。

書籍の紹介とテーマ
書誌情報メモ。今井むつみ・秋田喜美『言語の本質——ことばはどう生まれ、進化したか』中公新書、2023年5月刊、全277ページ。以上です。
この本は、今井さんの『学力喪失』という新書を読んで、とても興味を持ち、その前の年に、『学力喪失』の出版された2024年の前の年の23年に(出版され)、(2024年の)新書大賞第一位という賞を受賞しているようですが、
とても有名な本のようですが、これを読みたくなりまして、早速購入し、今日読み終わりました。
結構ボリュームのある本でして、内容豊富で、一度読んだぐらいでは十分に消化できていないかもしれませんが、
でも、だいたい、著者の言いたいことは理解できたかなというふうに思います。
タイトルが『言語の本質』ということで、とても大きなテーマなんですけれども、
それを身近なオノマトペという言葉を手がかりにして、言語の本質に迫っていく、そういう探求の過程が書かれていまして、
とても面白くて、こういった賞を取るというのもよくわかる気がします。
この本ですね、前に読んだ学力喪失、つまり学ぶ力が今の子どもたちから奪われている、そういう状況に対して、
いやしかし、そういった子どもたちも赤ん坊の頃から素晴らしい学ぶ力を持っていたんだと。
つまり、何も教えられずに自分の力で言葉というものを獲得していった、そういう力がほとんど全ての子どもにあったはずなのに、
それがどうして学ぶ力が失われてしまっているのか、という問題につながっていく話で、
もともと人間はどうして言葉を学ぶことができるのか、これは言葉だけではなくて全てのことに言えるんですけれども、
あらゆることを学んでいくことができる、その学ぶ力というのは何なのかということを明らかにしたもので、
これは一言で言えば、記号接地ですね。つまり言葉というものと、それから身体的な感覚を結びつける、そういう力が人間にはあるということですよね。
ですので、その経験というのがとても大事だと。
特に私が印象に残ったのは、この経験というのは単に経験すればいいということではなくて、失敗というのがとても大事だということですね。
言葉の上での失敗と言いますと、いわゆる誤解とか言い間違いとかいうものなんですよね。
子どもはよくそういった言葉の誤解をしますね。大人から見るとちょっと変わった言葉の使い方をするわけです。
それを大人は正してあげて、子どもはだんだんと正しい言葉遣いを学んでいくんですけれども。
でもこの子どもの言い間違いというのは非常に理にかなっているということですね。
単純に子どもだから間違えるという、そういう単純な話ではなくて、これは子どもなりに非常に素晴らしい推論を行っていて、その推論によって間違ってしまったんだということです。
この推論をして間違うというのは、別に子どもだけではなくて、あらゆる新しい知識を獲得する人には共通のものなんですね。
科学の歴史、学問の歴史というのもまさにそういうものであったと。
さまざまな仮説を提出する。その仮説が間違っていたということがわかる。
それによって仮説を修正し、またそれをさまざまな検討に付してということで。
そうやってだんだんと妥当な考え方に進んでいくわけですよね。
これはまさに子どもが間違った言い回しから正しい言い回しを学んでいくのと同じことなんだという話で。
これは私、科学の歴史を学んでいるものなんですけれども、そういえば、ということで思い出したことがあります。
それはもうずいぶん前になくなったと思うんですけれども、トーマス・クーンという非常に有名なアメリカの科学史家がいました。
AIとの学び
日本でも『科学革命の構造』という本で非常に有名になり、その中でパラダイムという概念が使われていて、
そのパラダイムという概念は一般の人でも普通に使う言葉になったかと思います。
もともとはこの科学史のさまざまな発展を説明する概念だったんですけれども、一般に思考の枠組みぐらいの意味で使われるようになりました。
そしてパラダイム・チェンジ、その思考の枠組みを変えなければいけないというような、そういう文脈でよく使われる言葉になったんですけれども。
このクーンがパラダイムという言葉を使った元は、もともと言葉の話なんですね。
ある西洋の言葉だと活用というのがありますけれども、その活用のパターンのことをパラダイムというふうに言ったりするわけですね。
それで外国語を学ぶにはそのパラダイム、活用のパターンをまず覚えて、それでそれをいろんな言葉に適応していく、そういう学び方をするわけです。
これは子どもが学ぶときはそういうやり方はしないんですけれども、大人が外国語を学ぶときには大体そのパターンを先に学んで、
それをいろんな言葉に適応していく。もちろん例外もいろいろあるわけですけれども、不規則な活用というのもあるので例外を覚えなければいけないですが、例外以外は大体そのパターンでうまく対応ができるわけです。
これは科学においても同じで、科学でもいろんな問題、例えば物理学の問題なんかもある現象を説明する、あるいは現象を科学的に解析する場合に、典型的な例題のようなものがあるわけです。
その例題を学生は学び、それをいろんな他の問題に適応していって、その科学上の法則とか概念とかをきちんと身につけていくということをやるわけですね。
そのパターンの全体みたいなものが、これもある種のパラダイムなわけですね。個々の事例もパラダイム、全体もパラダイムで、ちょっと同じ言葉をいろんな意味で使っているということはよくないので、そこは批判なんかもあったんですけれども、言いたいことはよくわかります。
その言葉を覚えるというのと、それから科学上の概念を覚えるというか、使えるようになるということは基本的に同じことなんだということを、クーンは言っていたように思うんです。
本当に科学史の様々な発展を言語学の比を使って解明したのがクーンの特徴かなというふうに思うんですけれども、ですので、この言語の本質というところで書かれている様々なことは非常に私にとってはピンとくるものでした。
私が学生時代にクーンの本を読んで感銘を受けたことが、単なる言語を学ぶときにそういうふうにやっているということを使って科学の方の説明をしたんですが、その言語自体を子どもはどうやって学ぶのかという、そこのところの解明ができた。
この本によってなされて、私としてはこれを基本として様々な科学的なあるいは学問的な概念の習得などにもつなげていくことができるのではないかなというふうに思うんですね。
そのときにとても大事なのがアプダクションという概念でして、何らかの事例からそこから一般化して、ある種の法則、これはまだ仮説なんですけれども、自分なりの仮説を組み立てて、
その仮説が正しいかどうかをいろいろ試して、ダメな仮説もあるわけですけれども、修正しながら正しい理論に近づいていくという、その考え方は全てのことを学ぶ上で大事なことだなというふうに思いました。
ですから本当にこれ思うんですけれども、失敗を恐れるというのが一番良くないんですね。失敗を恐れたらば何も学べないということですね。
気楽に自由に失敗ができる環境をいかに用意するかということが、人の学びを最大限に実現する一番根本的なものなのだなということもこの本を読んで感じたことですね。
大人になるとなかなか言葉を覚えるのは大変になりますよね。特に外国語、小さい子どもの頃から学んでいる英語を、多くの日本人はなかなかうまくしゃべれないという状況があると思います。
その理由は何かというと、やっぱり失敗を恐れるわけですよね。この言い方おかしいんじゃないかというふうにちょっとでも思うと言葉を発せられなくなってしまう。
特に大の大人と言いましょうか、失敗をあまりすることはカッコ悪いみたいな、専門家なんかもそうですよね。専門家、あるいは社会的に地位の高い人、そういう人たちが気楽に失敗できるというのはなかなかないので、
そうしますと、まだ習得できていない言語をしゃべって、失敗というか変な言い方をして、あれ間違った言い方をして恥をかくのは嫌だということで失敗を恐れると言葉を発せられないわけで、そうするといつまで経ってもしゃべれるようにはならないわけですね。
ですから、逆に言いますと大人でもいくらでも失敗していいような状況になれば、これはだんだんと学びが進むんじゃないでしょうか。
もし恥ずかしいというのがあるのであれば、今はAIというのがありますから、AIとしゃべってみるというのがいいんじゃないかなと思うんですね。
AI相手でしたら、いくら失敗しても恥ずかしくはないんじゃないかなと思うんですね。
ですので、思いっきり失敗しながらですね、AIと会話をし、外国語を習得するなんていうのもこれからはできるんじゃないかなと。
これは外国語だけではなくてあらゆることを学ぶ上でですね、AIと一緒に学ぶっていうのは一つの方法かなというふうに思います。
どんなに初歩的なことであってもですね、AIはバカにしたり笑ったりせずにですね、優しく教えてくれるはずですよね。
ですので、本当にこれは、特に恥ずかしがりや恥をかきたくない人にとってはですね、いい学習ツールが出てきたなというふうに思うわけですね。
ただ、本当はできれば生身の人間同士でですね、いくらでも失敗できるような環境が本当はあったほうがいい。
これは大の大人、社会的に地位の高い人でもですね、気軽に失敗できるようなそういう場がですね、本当はあったほうがいい。
今もですね、ないとは言えないんじゃないでしょうか。いわゆるサード・プレイスですね。
普段の人間関係とはちょっと違うところにですね、そういう自由な失敗が気楽にできる学びの場を作るっていうのも一つの方法かなというふうにも思いました。
ということで、この本はですね、いろんなことを思い出させてくれますし、また発展的に考えさせてくれる、そういう刺激に満ちた本だなというふうに思いました。
それではまた。
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