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地域コミュニティとテクノロジーの融合:山古志村のNFTと地域創生(都市部での活用事例)
2026-10-16 17:36

地域コミュニティとテクノロジーの融合:山古志村のNFTと地域創生(都市部での活用事例)

地域創生・自治体DX・デジタルコミュニティ推進に関する総合ブリーフィング資料

エグゼクティブ・サマリー

日本の地方自治体および地域コミュニティは、急激な人口減少、高齢化、行政・地域運営の担い手不足、ならびに地域経済の域外流出という構造的課題に直面している。これに対し、最新のデジタル技術(Web3/NFT/DAO、データ分析ダッシュボード、デジタル地域通貨、自治会DXツール)を活用し、リアルとデジタルを融合させた持続可能な地域社会の構築を目指す取り組みが全国で本格化している。

本資料は、過疎化が進む限界集落の再生事例から、デジタル庁が主導する政策評価手法、全国各地の地域通貨・自治会DXの動向まで、最新の活用事例と成果・課題を包括的に集約・分析したものである。

主要な知見(Key Takeaways)

  • Web3・NFTによる関係人口の創出と「トラストレス」な地域づくり 新潟県長岡市山古志地域(旧山古志村)では、電子住民票を兼ねた「Nishikigoi NFT」の発行により、リアルな人口(約720人)を大きく上回る1,700人以上の「デジタル村民」を獲得した。地域名という無形資産をデジタル化・コモンズ化することで、移住や血縁に依らない新たな関係人口・共感者をグローバル規模で集め、DAO(分散型自律組織)によるプロジェクト推進を実現している。
  • 「地域幸福度(Well-Being)指標」によるデータ駆動型まちづくり デジタル庁が推進する「Well-Being指標」は、住民アンケートによる「主観指標」とオープンデータに基づく「客観指標」を組み合わせ、地域の強み・課題を多角的に可視化する。主観と客観のギャップ(例:客観的数値は高いが住民の満足度が低い分野)を分析することで、根拠に基づいた政策立案や官民連携の意思決定が可能となる。
  • 持続的な地域内経済循環(マネーの域外流出防止と乗数効果)の構築 法定通貨の域外流出(「漏れバケツ」現象)を防ぎ、地域内での購買・再投資を促すデジタル地域通貨の導入が広がっている。成功の鍵は単なる決済機能にとどまらず、行政ポイント付与(健康増進・ボランティア)、加盟店間決済、地方税・公共料金支払い、観光・EC連携など、自立した収益モデルと多様な利便性の付与にある。
  • 自治会・町内会DXによる地域運営負担の飛躍的軽減 全国の自治会長への調査(有効回答76件)によると、デジタル化に最も期待する効果は「回覧・配布作業の負担軽減(40.6%)」および「役員のなり手不足対策(21.7%)」である。また、8割以上が「自治体との連絡のデジタル化」を求めており、LINE等の身近なツールの活用や、行政広報物の電子化(CHIKUWA!等の統一システムの導入)が不可欠となっている。

1. Web3・NFT・DAOを活用した関係人口創出(「ネオ山古志村」モデル)

1.1 背景とプロジェクトの展開

新潟県長岡市山古志地域(旧山古志村)は、2004年の新潟県中越地震による全村避難、2005年の長岡市との市町村合併を経て、急速な少子高齢化と人口減少に直面してきた。2018年に人口が1,000人を割り込み、2024年10月時点で約720人にまで減少している。

この限界集落の存続をかけ、住民団体「山古志住民会議」(3代目代表:竹内春華氏)は、一般社団法人Next Commons Lab代表理事の林篤志氏や株式会社TART(現NEORT株式会社)代表の高瀬俊明氏らと連携し、2021年10月より「仮想山古志村プロジェクト」を開始した。

  • Nishikigoi NFTの発行: 2021年12月および2022年3月に、山古志名産の「錦鯉」をモチーフとしたデジタルアートに電子住民票機能を付与した「Nishikigoi NFT」を暗号資産Ethereum(ETH)で発行。
  • 初期実績(2022年12月時点):
    • 発行量: 1,470 / デジタル村民数: 1,037名(リアル村民の数を上回る)
    • 初期売上: 41.4 ETH(約1,449万円 ※1ETH=35万円換算)
    • フロア価格: 0.22 ETH / 総取引量: 82 ETH / 二次流通List率: 2%
    • 帰省(リアル訪問)人口: 延べ約140名
  • 進展(2024年10月時点):
    • デジタル村民数: 1,700人以上(うち約2割が欧州・アジア等の海外購入者)
    • 累計売上: 約1,500万円
  • 自律的ガバナンス(山古志DAO):
    • チャットツール「Discord」内での議論を通じ、デジタル村民総選挙を実施。12件のアクションプランから投票で選ばれた上位4プランに対し、NFT売上から各100万円の予算を配分してプロジェクトを始動させた。
    • メタバース空間の構築、地域祭りや追悼イベントの現地お手伝い、さらにはリアル山古志村での就職事例も発生している。

1.2 課題分析と構造的試行錯誤

1年間の運用を通じ、ファウンダーチームは以下の課題と構造的要因を抽出している。

  • グローバルマーケティングの難しさ: 海外ファン獲得を目指したものの、「限界集落の存続」「地方創生」というテーマはグローバル市場においてハイコンテキストすぎ、海外ホルダーの参画は「道半ば」の状況にとどまる。
  • 収益モデルと経済的持続性: 二次流通手数料(ロイヤリティ)を継続的な収益源として期待していたが、実際はNFTのList率が2%と極めて低く、初期購入者が保持し続ける「ガチホ」傾向が強かった。人的リソースの獲得には大成功したものの、二次流通手数料によるDAO単体の財務的自立には至っていない。

1.3 今後の戦略・展開方針

山古志DAOでは、さらなる飛躍に向けてデジタル村民の投票(Snapshotによる「デジタル村民選挙」)を経た新たな方針を提示している。

  1. デジタル村民1万人構想: 「800人+10,000人の新しいクニづくり」を掲げ、関係人口を大幅に最大化する。
  2. ローカルDAOのゲートウェイ(ローカルDAOリーグ): 山古志DAO単体の発展にとどまらず、Nishikigoi NFTを「ゲートウェイ」とし、日本各地の貴重な文化や地域の営みを世界とつなぐエコシステムへ進化させる。
  3. 事業法人の設立と「DAO法」対応: 各地のローカルDAO立ち上げ支援およびリーグ運営を行う法人を2023年に山古志村内に設立。議員立法が検討される「DAO法」の動向を踏まえつつ、既存の法人スキームを活用した適切な組織形態へ移行する。
  4. 「トラストレスかつパーミッションレス」な地域づくり: 従来型の「顔が見えて信用が物を言う(トラストフル)」地域づくりに対し、地域名という無形資産をNFT化してデジタル空間でコモンズ化することで、縁もゆかりもない者が直ちにアイデンティティを表明し、オープンに参画できる新たな地域づくりの枠組みを確立する。

2. データ駆動型政策立案:地域幸福度(Well-Being)指標の活用

2.1 指舗の構造と概要

デジタル庁が推進する「地域幸福度(Well-Being)指標」は、住民の「幸福感(Well-being)」と「暮らしやすさ」を数値化・可視化した政策立案ツールである。

  • 主観指標: 住民アンケート(50問の質問。「現在どの程度幸せか」「地域の暮らしにどの程度満足しているか」等)から算出。
  • 客観指標: オープンデータ等から自治体の「暮らしやすさ」を測定。
  • 因子群とカテゴリー(全3因子群・24カテゴリー):
    1. 生活環境: 医療・福祉、買物・飲食、住宅環境、移動・交通、遊び・娯楽、子育て、初等・中等教育、地域行政、デジタル生活、公共空間、都市景観、自然景観、自然の恵み、環境共生、自然災害、事故・犯罪(16カテゴリー)
    2. 地域の人間関係: 地域とのつながり、多様性と寛容性(2カテゴリー)
    3. 自分らしい生き方: 自己効力感、健康状態、文化・芸術、教育機会の豊かさ、雇用・所得、事業創造(6カテゴリー)

2.2 データ分析による政策への還元

ダッシュボード(レーダーチャート等)を活用することで、主観と客観のデータを掛け合わせた分析が可能となる。

  • 潜在的強みの抽出: 「主観指標が偏差値50未満かつ客観指標が偏差値50以上」のカテゴリー(例:客観的インフラは整っているが住民が認知・評価していない分野)を発見し、住民の意識改革やプロモーションを通じて強みへと転化させる。
  • 幸福度向上への効率的アプローチ: 「健康状態」等において主観指標が低く客観指標が高い場合、認知の乖離を埋める施策を打つことで、効率的に地域全体の幸福度を引き上げることができる。

2.3 デジタル庁ワークショップと自治体支援施策

2024年12月、デジタル庁職員21名(5チーム)が参加し、実際の自治体データを分析して将来像を描くワークショップ(デジタル化横展開推進協議会主催)が実施された。

【ワークショップの標準プロセス】
[前半:分析パート]
  1. ダッシュボードによるまちの特徴の俯瞰
  2. 主観×客観分析による重要因子の抽出
  3. 幸福度・生活満足度と相関性の高い因子の特定
         ↓
[後半:意思決定パート]
  4. 重点分野(8つの政策領域)の決定
  5. 将来の都市像・キャッチコピーの言語化(3年後・8年後・20年後)
  6. チーム発表・ディスカッション
  • 議論の多様性: 同一の自治体を対象とした場合でも、あるチームは「子育て・教育」に着目し、別のチームは「文化・芸術」「移動・交通」に着目するなど、異なる政策優先順位と将来像が導き出された。本手法の目的は唯一の正解を出すことではなく、幸福度を起点としたオープンな対話の活性化にある。
  • 具体的な支援スキーム:
    • リファレンスロジックツリー: 課題分野(医療・介護、公共交通等)と施策群の相互関係を体系化したツール。全国20の自治体で導入・検証が進行中。
    • ファシリテーター養成・派遣事業: 2024年度に103名のファシリテーターを養成。2024年10月より自治体への紹介・派遣事業を開始。

3. 地域電子通貨・ポイント基盤による地域内経済循環の促進

3.1 理論的背景と全国動向

地域通貨は、限定された地域・コミュニティ内で流通する決済手段であり、法定通貨の「地域外流出」を防ぐツールとして機能する。

  • 漏れバケツ理論(Leaking Bucket Theory): 英シンクタンク「New Economics Foundation」が唱えた概念。域外からの資金調達(観光、企業誘致等)を行っても、域外資本チェーン店での購買やエネルギー購入等により資金が漏れ出てしまえば地域経済は潤わない。高知県の地域経済循環率は78.7%(2018年RESASデータ)であり、所得の約2割が県外へ流出している。
  • 減価する通貨(乗数効果の向上): 1932年のオーストリア・ヴェルグルでのスタンプ式貨幣の実験のように、期日経過により価値が減価する(保有コストがかかる)仕組みを設けることで、貯蓄を防ぎ早期消費を促進するインセンティブが働く。
  • 全国の稼働推移: ブロックチェーンやアプリ等の技術普及で運用ハードルは下がったものの、全国の稼働数は2005年の306箇所をピークに、2021年12月時点では183箇所へと減少している(下図参照)。

図表1: 全国の地域通貨稼働数の推移(1999年〜2021年)

年月99年4月01年4月02年4月02年8月03年4月05年1月05年12月06年12月07年12月08年12月16年12月17年12月18年12月19年12月20年12月21年12月
稼働数1156130152197275306298290262227205191188182183

資料:泉留雄・中里裕美(2022)「2021年度版地域通貨稼働調査の結果について(速報版)」より

  • 衰退の要因と持続可能な運営条件:
    1. 導入目的の不透明化: 渋沢栄一が播磨国で藩札を発行した際のように、特産品(木綿)の買い付け・流通を促す明確な制度設計が不可欠。
    2. 補助金依存からの脱却: 英ブリストル市の「ブリストル・ポンド」(2012〜2021年)は電子決済との競合により流通量が減少、月額1万3,000ポンド(約212万円)の運営コストを維持できず終了した。決済手数料や加盟店手数料を軸とした自律的収益モデルの確立が必要である。

3.2 高知県内における地域通貨活用事例

高知県内では、目的や機能の異なる多様な地域通貨が運用されている(2022年8月時点)。

【高知県内の主な事例の機能比較】
■ Meji-Ca(土佐清水市):経済活性+行政給付+チャージ機能型
■ kamica(香美市)     :商店街振興+行政ポイント+チャージ機能型
■ とまぽ(日高村)     :Society5.0推進+スマホ普及インセンティブ型(現金チャージ未実装)
■ ぼっちり(高知市)   :関係人口可視化+ボランティア非換金型(アプリ専用)
  • Meji-Ca(土佐清水市):
    • 基盤: トラストバンク「chiica」 / 2020年10月開始。
    • 実績: 全市民(約1.2万人)にカード配布。累計利用額約10億3,000万円(うち住民による追加現金チャージ額約6億7,000万円、1人あたり平均約5.6万円チャージ)。
    • 施策: 5店舗以上回遊キャンペーン、飲食店応援還元、特定健診受診ポイント、観光客向け「Shimizuサポーターズカード」(5,000ポイント付与)。
  • kamica(香美市):
    • 基盤: 凸版印刷「地域Pay®」 / 香美市商工会運営、2021年4月開始。
    • 実績: 全市民(約2.5万人)へ2万円分付与。がん検診(300pt)、読み聞かせボランティア(50pt)、スポーツ大会(50〜3,000pt)等で付与。
    • 課題: 目標取扱額月4,000万円に対し実績は1割程度(約400万円)。チャージ専用タブレットが大型店舗の特定レジに限定されていることが要因。個人商店での高齢者利用は定着。
  • とまぽ(日高村):
    • 基盤: トラストバンク「chiica」 / 2021年6月開始。
    • 目的: KDDI等と推進する「村まるごとデジタル化事業(Society5.0)」の一環。スマホに切り替えた住民へ付与し、普及率を64.5%(2021年6月)から75.7%(同年10月)へ引き上げた。
  • ぼっちり(高知市):
    • 基盤: カヤック「まちのコイン」 / 2022年4月開始。
    • 目的: 鏡川流域の関係人口創出・可視化。換金性・チャージ機能を持たせず、清掃ボランティアやSDGs活動への参加、スポット訪問で獲得。活動実績をランキング化してゲーム感覚で促進。

3.3 全国の先進・多機能モデルおよび都市部・広域での活用事例

全国の主要事例では、B2B決済、行政手続き、EC連携、見守りサービス等、多角的な機能拡張が進んでいる。

  • さるぼぼコイン(岐阜県高山市・飛騨市・白川村):
    • 基盤: フィノバレー「Money Easy」 / 飛騨信用組合運営、2017年12月開始。
    • 実績: 累計決済額約55億円(2022年3月時点)。チャージ時1%還元。
    • 先進機能:
      1. 加盟店間決済(B2B流通): 店舗間の仕入れ決済に利用可能。換金手数料(1.5%)より送金手数料(0.5%)を安く設定し、二次・三次取引の地域内循環を誘導。
      2. AliPay連携: 飛騨信用組合が立替払取次となり、インバウンドのAliPay決済手数料を事業運営費に還元。
      3. 行政・交通連携: 市県民税・固定資産税・水道料金・証明書発行手数料の決済に対応。防災情報配信、周遊バス決済、限定商品EC「さるぼぼコインタウン」を展開。
  • 気仙沼クルーカード(宮城県気仙沼市):
    • 基盤: サイモンズ「サイモンズ・ポイントサービス」 / 気仙沼観光推進機構(DMO)運営、2017年開始。
    • 特徴: 売上高の3%(ポイント原資1%、DMO運営費2%)を加盟店が負担。有効期限切れポイントは市に寄付される。1,500以上のECサイト(Yahoo!ショッピング、伊勢丹等)と連携し、全国の気仙沼ファンから外貨を獲得。コロナ禍の「地元還元キャンペーン」により、市外会員の利用減を店内会員の利用増(110.9%)でカバーし、全体の売上(107.2%)を伸ばした。
  • ほ・ろ・か(広島県庄原市東城町):
    • 基盤: 日本カード「SHIAGEL」 / 東城町商工会運営、2019年4月開始。
    • 実績: カード保有率約90%(人口7,160人)、年間利用額約15億円(1人あたり約20万円)。加盟店手数料1.5%。中国電力ポイントとの連携。
    • 見守り機能: 小学生が登下校時にカードをタッチすると保護者へメール送信(1pt付与)。高齢者が1週間未利用の場合に家族へ通知する見守りシステムを統合。
  • めぐりん / わたしのデジタル財布(香川県・高松市・三豊市):
    • 基盤: サイテックアイ / 2009年6月開始。WAON機能・学生証・職員証と一体化。
    • 多機能展開: カマタマーレ讃岐(寄付)、香川ファイブアローズ(プロ選手による指導体験)、加盟店清掃ボランティア(300pt)、四国電力・四国ガスポイント交換、高松空港決済。
    • 都市部でのスマートシティ活用(高松市FACT): 高松市の「フリーアドレスシティたかまつ(FACT)」実証事業(2022年10月開始)において、「My Digital Wallet(わたしのデジタル財布)」アプリを導入(加盟店1,000店舗)。デジタル給付金の迅速発行に加え、購買データ、公共交通乗降データ、ヘルスケア情報(PHR)等のパーソナルデータを連携・分析し、データに基づく効果的な政策立案・官民連携サービスを推進している。

4. 自治会・町内会における運営DXと行政連携

4.1 地域コミュニティの現状と課題

全国の自治会・町内会では、少子高齢化やライフスタイルの多様化に伴い、「役員のなり手不足」と「紙の回覧板・配布物作成などの事務負担」が深刻化しており、従来の運営体制の維持が困難となっている。

4.2 自治会長への意識調査結果(CHIKUWA! 調査)

スパイラルローキャス株式会社が実施した自治会長向けアンケート(2026年4月1日〜5月20日、有効回答76件)により、現場の具体的な意識が明らかとなった。

図表2: 自治会DXに関する意識調査のまとめ

調査項目最多回答・主要データ示唆・分析
デジタル化に期待する効果回覧・配布作業の負担軽減: 40.6%<br>役員のなり手不足対策: 21.7%単なる効率化にとどまらず、役員負担を減らすことで担い手不足を解消する手段として捉えられている。
現状の連絡手段(紙以外)LINE: 60%以上高齢者の多い地域であっても、受信中心の利用であるためLINE等の普及率は既に非常に高い。
現実的な運用形態デジタル中心+一部紙の併用: 45.2%現時点では移行期の「併用」が現実的。ただし導入1年で全員アプリ登録・紙全廃に至った事例も存在。
自治体連携のデジタル化負担軽減につながる: 80%以上自治会内部だけでなく、役所への提出・受取作業のデジタル化が強く求められている。
行政に求めたい支援回覧物・広報物の電子化: 60%以上自治会単体のツール導入では市役所へ出向く手間が減らないため、自治体一括のシステム導入が切望される。

4.3 自治体導入事例(滋賀県大津市)

滋賀県大津市が実施した住民調査においても、支援要望の第1位は「回覧板等の情報伝達のデジタル化」であった。

これを受け、大津市では令和6年度(2024年度)より自治会・町内会運営支援システム「CHIKUWA!」を一括導入した。現場からは「市役所に出向く手間やデータ化の手間を削減するには、市が一括して統一システムを導入し、一斉連絡できる仕組みが不可欠である」との評価がなされている。

5. 主要プロジェクト・施策の比較要約表

本資料で取り上げた全国の主な地域活性化・DX施策の全体像を以下の表にまとめる。

図表3: 全国主要プロジェクト・施策の総合比較

プロジェクト名 / 地域主体・基盤技術主な目的成果・定量的実績独自機能・成功要因
ネオ山古志村<br>(新潟県長岡市山古志)山古志住民会議<br>Nishikigoi NFT / Ethereum関係人口創出<br>限界集落の存続デジタル村民1,700名超<br>NFT売上約1,500万円<br>リアル訪問約140名電子住民票NFTによるDAO運営。デジタル村民総選挙による予算配分とプロジェクト実行。
Well-Being指標<br>(デジタル庁 / 全国)デジタル庁<br>ダッシュボード / ロジックツリーデータ駆動型政策立案<br>住民幸福度の向上全国20自治体で検証中<br>2024年度103名研修受講主観(50問)×客観(オープンデータ)の分析。リファレンスロジックツリーとファシリテーター派遣。
さるぼぼコイン<br>(岐阜県飛騨地域)飛騨信用組合<br>Money Easy地域内経済循環<br>行政コスト削減累計決済額約55億円<br>(2022年3月時点)B2B加盟店間決済(手数料0.5%)、AliPay連携、税金・水道料金決済、ECサイト「さるぼぼコインタウン」。
Meji-Ca<br>(高知県土佐清水市)土佐清水市<br>chiica(トララストバンク)経済活性・行政給付<br>キャッシュレス推進累計利用約10.3億円<br>(チャージ約6.7億円)全市民へカード・ポイント配布。加盟店による高齢者への丁寧なサポート、観光客向けカード連携。
気仙沼クルーカード<br>(宮城県気仙沼市)気仙沼観光推進機構<br>サイモンズ・ポイント観光地経営(DMO)<br>域外資金獲得会員売上107.2%増<br>(対2019年度比)手数料2%をDMO運営費化。失効ポイントの市寄付。1,500以上のECサイト連携による外貨獲得。
ほ・ろ・か<br>(広島県庄原市東城町)東城町商工会<br>SHIAGEL(日本カード)商店街振興<br>地域見守り保有率約90%<br>年間利用約15億円加盟店手数料1.5%。購買データの店舗還元。児童の登下校タッチ通知・高齢者安否確認機能。
FACT / My Digital Wallet<br>(香川県高松市)高松市 / サイテックアイ<br>FeliCa Pocket Marketingスマートシティ<br>パーソナルデータ連携加盟店1,000店舗<br>(2022年10月開始)デジタル給付金発行、購買・公共交通移動・ヘルスケア(PHR)データを統合したEBPM推進。
CHIKUWA!(自治会DX)<br>(滋賀県大津市等)スパイラルローキャス<br>自治会DXプラットフォーム役員負担軽減<br>行政広報電子化大津市で令和6年度導入<br>8割が行政連絡連携を希望回覧・広報物の電子化、自治体と自治会の双方向連絡一元化による紙・対面業務の削減。

感想

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サマリー

都市の通勤風景に象徴される孤独を出発点に、テクノロジーが市民参加と地域コミュニティを再構築する可能性を考える。バルセロナのDecidim、東京都品川区のシナトーク、兵庫県加古川市の事例では、デジタルで幅広い市民の意見を集め、公聴AIで整理し、対面の熟議につなげている。デジタル地域通貨では、尼崎コインや飛騨地域のサルボボコインを例に、行政施策との連動や地域内循環の仕組みを紹介する。新潟県長岡市山古志地域のNishikigoi NFTと山古志DAOは、居住していない人もデジタル村民として参加できる仕組みを示す。最後に、地域幸福度指標やNFT・DAOを通じて、居住地とコミュニティ、経済圏の関係が変わる未来を問いかける。

都市の孤独とテクノロジーによるコミュニティ再構築
スピーカー 1
ちょっと想像してみて欲しいんですが、朝の通勤ラッシュですね。
スピーカー 2
えー、すごい人ですよね。
スピーカー 1
そうなんです。東京の品川駅でも、スペインのバルセロナの広場でもいいんですが、何万人という人がすれ違っているのに、お互いの名前も知らないし、何を考えているかもわからない。
スピーカー 2
確かに、毎朝の光景ですね。
スピーカー 1
物理的には信じられないほど密集しているのに、コミュニティとしては完全にバラバラじゃないですか。
なんかそれぞれが見えない防音カプセルに入って歩いているみたいな。
スピーカー 2
ああ、まさに都市の孤独を象徴する風景ですね。
現代の大都市は、まあ効率と引き換えに、人間同士の有機的な繋がりを切り捨ててきたところがありますから。
スピーカー 1
ええ。
スピーカー 2
私たちは毎日スマートフォンを覗き込んで、世界中のニュースには一瞬でアクセスできるのに、隣に住んでいる人がどんな困りごとを抱えているかは全く知らないわけです。
情報型が皮肉にも人々を孤立させているんですよね。
スピーカー 1
そう、そこなんです。
でも、今回このディープダイブでお預かりした膨大な資料、シビックテックとかデジタル地域通貨、あとWeb3とかデジタル庁のレポートなんかを読み込んでいくうちに、あれって思ったんですよ。
スピーカー 2
何か気づきがありましたか?
スピーカー 1
その透明なカプセルを内側から壊すような全く新しい動きが起きているなって。
これまで私たちを孤立させてきたテクノロジーそのものを使って、都市のコミュニティが再定義されようとしているんです。
スピーカー 2
なるほど。今回の資料全体を貫く大きなテーマがまさにそこにあります。
スピーカー 1
特に人口が過密で、多様な価値観が入り乱れる都市部において、テクノロジーが市民であることの意味を根本から書き換えようとしているんです。
スピーカー 2
市民であることの意味ですか。
スピーカー 1
はい。これは単なる行政のデジタル化みたいな表面的な話ではなくて、私たちがどうやって他人と共存して経済を回して幸福を感じるかという社会のOSのアップデートと言える動きなんですよ。
というわけで、今回のディープダイブの最大のミッションはズバリこれです。
デジタル市民参加と公聴AI
スピーカー 1
テクノロジーは情報型でバラバラになった私たちのコミュニティをどうやって再構築するのか。
あなたも自分が毎日歩いている街の風景とか、よく行くスーパーの様子なんかを思い浮かべながら聞いてみてください。
スピーカー 1
おそらく、あと数年であなたの生活圏の仕組みそのものが全く違うルールで動き始めるはずですからね。
よし、ではここから少し具体的に紐解いていきましょう。
地域の経済とかコミュニティを良くしようと思った時、最初にぶつかる壁って、
結局都市に住むこの膨大な数の人々が本当は何を求めているのか誰もわからないということだと思うんです。
えー、多すぎて声が拾えないんですよね。
スピーカー 1
そうなんです。そこで資料の中にスペインのバルセロナで生まれたデシリムという参加型プラットフォームの話がありました。
これカタルーニャ語で我々で決めるという意味らしいんですが、この参加規模がちょっと異常なんですよ。
スピーカー 2
本当にすごい規模ですよね。バルセロナでは人口160万人のうち約15万人がこのプラットフォームに直接参加しています。
15万人って人口の約1割ですよね。
スピーカー 1
そうなんです。市民から都市計画とか気候変動対策に関して、なんと34万件もの提案やコメントが寄せられていて、
それが実際の政策・予算に直接結びついているんです。
34万件も。
スピーカー 1
つまり一部の政治家や官僚が会議室で決めるんじゃなくて、市民の巨大な集合知をダイレクトに都市運営のエンジンにしているわけです。
スピーカー 2
住人に1人が直接まちづくりに参加しているって、東京の規模で考えたらとんでもない熱量ですよね。
そしてこれ、実は日本でも都市部を中心に広がり始めているんですよね。
スピーカー 1
はい、導入が進んでいますね。
スピーカー 2
例えば、東京都の品川区はシナトークというデジタルプラットフォームを導入しています。
さらに面白いのが、中高生が区長に直接提言を行うリバースメンター事業というのと連動させているところで、
若者世代から住み続けたい街の提案をデジタルで受け付けているんです。
スピーカー 1
兵庫県の加古川市でもこのシステムが導入されていますが、ここで非常に興味深いデータがありまして、
スピーカー 2
何でしょうか。
スピーカー 1
稼動後約2ヶ月で参加者の約4割を10台が占めたんですよ。
スピーカー 2
4割が10台ですか。それはすごい。
スピーカー 1
これまで平日の昼間に市役所で開かれるような住民説明会には、学生とか現役世代は絶対に参加できませんでしたからね。
結果として都市の未来を担うはずの層が完全にサイレントマジョリティになっていたんです。
スピーカー 2
ああ、なるほど。その声なき声をテクノロジーが救い上げているわけですね。
スピーカー 1
まさにそういうことです。
でもここで少し意地悪な質問をさせてください。
スピーカー 1
そういったデジタルな意見箱って、結局は声の大きいクレーマーとかネットの嵐が勝つだけの混沌とした掲示板になりませんか?
スピーカー 2
やはりそこは心配になりますよね。
スピーカー 1
私たちがよく知るSNSのコメント欄なんかを想像すると、それがそのまま行政の政策決定に使われるなんて正直ちょっと怖いというか。
そこが単なる多数決のシステムではない非常に面白いポイントなんです。
スピーカー 2
彼らは公聴AIと呼ばれる生成AIの技術をシステムに組み込んでいまして。
スピーカー 1
公聴AIですか?
スピーカー 2
はい。何万件というバラバラの意見、中には感情的な批判や極端な主張も含まれているわけですが、そういう情報をAIがクラスタリング、つまり構造化してくれるんです。
スピーカー 1
構造化っていうのは具体的にはどういう処理をしているんですか?
スピーカー 2
例えば、公園の木を切るなという怒りの声と、落ち葉の掃除が大変だから木を減らしてくれという苦情があったとします。
スピーカー 1
完全に意見が対立していますよね。
スピーカー 2
人間のファシリテーターだと対立して終わってしまうことが多いんですが、AIはこれらの意見の背後にある安全で快適な公共スペースを維持したいという本質的なニーズを抽出するんです。
スピーカー 1
なるほど。
スピーカー 2
そして、どこが本当の対立点で、どこに共通の利益があるのかを感情を排除して可視化マップにしてくれるんですよ。
スピーカー 1
つまり、何万という声が飛び交う巨大なスタジアムで、AIが超優秀なモデレーターとして意見の交通整理をしてくれるわけですね。
怒りのツイートみたいなものから、政策の種だけを抜き出してくれると。
スピーカー 2
その通りです。
そして、その上でさらに重要な仕組みがありまして、これをオンラインの画面上だけで完結させないんですよ。
スピーカー 2
え?完結させないんですか?
スピーカー 1
はい。AIが整理した論点をベースにして、今度は対面でのオフラインのワークショップを有機的に結びつけるハイブリッド運用を行っているんです。
スピーカー 2
デジタルで集めて、最後はリアルで話すっていうことですか?
スピーカー 1
ええ。デジタルが苦手な高齢者の方などを議論から取り残さないためでもありますが、何より顔を突き合わせて熟議することで納得回を生み出すためなんです。
スピーカー 2
納得回ですか?
はい。AIがすでに皆さんの意見の共通点はここですと整理してくれているので、リアルな場での議論が不毛な言い争いにならず、建設的な解決策に向かいやすくなるんです。
スピーカー 2
なるほど。声の大きい人が勝つんじゃなくて、みんなが納得できる着地点をデジタルとリアルの両輪で探るわけですね。
市民の声をどう集めてどう形にするかという仕組みはすごくよくわかりました。
ええ。
デジタル地域通貨と地域内経済循環
スピーカー 2
では、アイデアが出たとしてそれを実行するにはお金と行動が必要です。都市の経済をどうやって地域に結びつけるのか。ここで資料に登場するのがデジタル地域通貨なんですよね。
スピーカー 1
そうですね。大都市圏の特別区から地方都市まで今急速に導入が進んでいる仕組みです。
スピーカー 2
ここからが本当に面白いところなんですが、例えば人口約45万人の兵庫県尼崎市が導入している尼崎コイン。これ単なる商店街のお買い物ポイントとは根本的に違うんですよね。
スピーカー 1
行政の目的としっかり連動していますからね。
はい。
スピーカー 1
ボランティア活動への参加とか健康診断の受診、あとは省エネ家電への買い替えなんかSDGsや市の課題解決に直結する行動に対してポイントが付与されるんです。
スピーカー 2
素晴らしい取り組みですよね。
現在利用者数は10万人以上、加盟店は1300店以上で累計発行ポイントはもう40億を突破しています。
スピーカー 1
それに東京の巨大な区、例えば人口91万人の世田谷区の世田谷ペイとか板橋区の板橋ペイなんかも急拡大しているんです。
スピーカー 2
単なる決済手段ではなくて行政の施策と連動させることで市民の行動変容を促している点が現代の地域通貨の最大の特徴ですね。
スピーカー 1
でもやっぱりここで素朴な疑問が湧くんです。
あなたが東京や大阪みたいな大都市に住んでいるとして、ペイペイとかクレジットカードみたいな全国どこでも、何なら海外のネット通販でも使える超絶便利な支払い方法がすでに溢れているじゃないですか。
スピーカー 2
確かにスマホ一つで何でも買えますからね。
スピーカー 1
ですよね。わざわざその区やその市でしか使えない制限された不便な通貨を使う意味って何なんですか。
スピーカー 2
なるほど。それをより大きなマクロの視点で捉え直してみましょう。私たちが普段使っている法定通貨、つまり円は便利すぎて流動性が高すぎるんです。
スピーカー 1
流動性が高すぎる。
その結果どうなるかというと、あなたが地元のカフェでクレジットカード決済をした瞬間、その手数料や売り上げの一部はあっという間に東京の金融機関や海外の巨大IT企業に吸い上げられてしまいます。
スピーカー 1
地域で生まれた価値が一瞬で都市の外部に流出してしまうんですね。
スピーカー 2
その通りです。
スピーカー 1
地域で生まれた価値が一瞬で都市の外部に流出してしまうんですね。
スピーカー 2
その通りです。
スピーカー 1
だからデジタル地域通貨の最大の目的は、あえて意図的に不便にして地域に富を閉じ込めることにあるんです。
スピーカー 2
意図的に不便にする。なるほど。
スピーカー 1
これを最も強力な形で実現しているのが、岐阜県飛田地域のサルボボコインの事例です。
彼らは個人の買い物の決済だけでなく、加盟店同士の支払い、つまりB2Bの決済も可能にしたんですよ。
スピーカー 2
資料を読んで驚いたんですが、あの手数料の仕組みが絶妙なんですよね。
スピーカー 1
ええ、よくできていますよね。
お店が受け取ったサルボボコインを現金、つまり円に換金しようとすると、1.5%の手数料を取られるんです。
しかし、別のお店の仕入れなどの支払いに送金する場合は、0.5%で済むように設計されているんですよ。
スピーカー 2
ということは、八百屋さんがサルボボコインで受け取った売り上げをわざわざ現金に戻して銀行に預けるよりも、
そのまま隣の肉屋さんとか地元の農家への支払いに使った方が得になるわけですね。
スピーカー 1
はい。結果として、お金が地域の中で2時、3時とバケツリレーのように回り続けるわけです。
スピーカー 2
すごい。
スピーカー 1
通貨の上数効果と呼ばれるものですが、これを意図的に引き起こしているんです。
都市部における天崎コインなどの事例も、根っこは同じですね。
スピーカー 2
なるほど。エコな行動や健康的な生活をポイントで促して、そのポイントが地元の経済圏の中だけで循環する。
巨大な都市の中で失われがちな地域経済の血液をテクノロジーの力で人工的に輸血し続けている状態といえますね。
スピーカー 1
ええ。まさにそういうことです。
スピーカー 2
自分の良い行いがポイントになって、それが地元の焦点を潤す。
巨大な都市というカプセルの中で、お金というツールを使って強制的にご近所さんとの関わりを作り出しているんですね。
スピーカー 2
非常に興味深いアプローチですよね。
山古志のNFT・DAOとデジタル村民
スピーカー 1
さて、ここまで都市部の膨大な人口をテクノロジーでどうつなぎ止めるかという話をしてきました。
でも、今回の資料には、これと全く逆のアプローチで都市の未来の姿を浮き彫りにする、ちょっと極端な事例が含まれていましたよね。
スピーカー 2
ええ、過疎地の事例ですね。
スピーカー 1
はい。人口がいない地域がどうやってコミュニティを維持するのかという究極のハックです。
スピーカー 2
新潟県の山越村、現在の長岡市山越地域の事例ですね。都市部の未来を考える上で、この事例は強烈な示唆を与えてくれます。
スピーカー 1
中越地震で大きな被害を受けたリアルな人口が約800人の限界集落なんですが、
彼らはなんと、二式子位NFTというデジタルアートを発行して、それを電子住民票に見立てて、山越DAO、分散型自立組織を立ち上げたんです。
スピーカー 2
これは本当に画期的な試みでした。
スピーカー 1
驚くべきことに、リアルの村民800人に対して、このNFTを購入したデジタル村民が1037人になって、現実の人口をデジタルの人口が逆転したんです。
現在はさらに1万人を目指して活動を広げているそうで。
スピーカー 2
さらに特筆すべきなのは、そのデジタル村民の多くが、一度も山越村に足を踏み入れたことがない世界中の人々だということです。
スピーカー 1
一度も行ったことがないのにですか。
スピーカー 2
ええ、それなのに彼らは山越村民という強いアイデンティティを持って、オンライン上で村の課題解決について熱心に議論しているんです。
つまりこれってどういう意味を持つんでしょうか。
私の感覚で言うと、このDAOの仕組みって、まるでインディーズバンドのVIPファンクラブパスポートを買うような感覚に近い気がするんです。
スピーカー 1
面白い例えですね。
スピーカー 2
パスポートを買うと、次のツアーのセットリストとか、ライブ海馬をどこにするかの決定権をファン同士で投票して決められるみたいな。
実際山越のデジタル村民たちは、NFTの売り上げをどう使うか、村の未来づくりの予算をブロックチェーン上の投票で決めているんですよね。
スピーカー 1
そのシステムがなぜ成立するのかという技術的な背景が重要なんです。
DAOという仕組みは、特定のリーダーや村長がいなくても、ブロックチェーン上のプログラム、スマートコントラクトによって、予算の管理や投票権の行使が数学的に保証されているんですよ。
スピーカー 2
数学的に保証されている。
スピーカー 1
はい。だからこそ、国籍も素性も知らない世界中の人々が互いを信用していなくても、システムを信用して資金を出し合い、プロジェクトに参加できるんです。
スピーカー 2
誰も不正ができない仕組みが、テクノロジーによって担保されているから、見ず知らずの人とでも、瞬時にコミュニティを作れるということですね。
ウェルビーイングと新しい地域アイデンティティ
スピーカー 1
そしてここに、デジタル庁が推進している地域幸福度、ウェルビーイング指標の考え方が深く関わってきます。
スピーカー 2
ウェルビーイング指標ですか。
スピーカー 1
はい。これまで自治体の価値って、GDPとか人口、あるいはいかに効率化するかという指標で測られてきましたよね。
スピーカー 2
確かにそうでしたね。
しかしウェルビーイング指標では、主観的幸福感や地域とのつながりといったデータを重視するようにシフトしているんです。
スピーカー 1
なるほど。都市と限界集落の違いがそこで明確になるわけですね。
スピーカー 2
その通りです。巨大な都市部には人はあふれるほどいますが、お互いのつながりやトラスト、つまり信頼は希薄です。
一方で、山越村のような限界集落には人はいないけれど、美しい自然や歴史、そして二色恋といった世界に通用する地域の無形資産、ブランドがあるんです。
これまでの地域づくりは顔見じり同士のトラストフルな関係が前提でした。
スピーカー 2
よそ者に対してこの村に骨を埋める覚悟はあるのか、と問うようなちょっと閉鎖的で重い世界だったわけです。
移住のハードルが高すぎるやつですよね。
スピーカー 2
しかしNFTやDAOといった技術によって、トラストレスかつパーミッションレス、つまり相手の顔を知らなくても誰かの許可を得なくても、共感というただ一点だけで瞬時につながり、経済的な価値を共有できる新しい地域づくりが可能になったんです。
スピーカー 1
それはすごい。
スピーカー 2
これは人類のコミュニティの歴史において革命的な変化だと言えます。
自分が生まれた場所とか、今たまたま物理的に住んでいる場所だけが自分のコミュニティではなくなる。
これって極端な村の話じゃなくて、都市部に住む私たちにも直結する話ですよね。
スピーカー 2
はい。あなたが大都市のタワーマンションの一室に住んでいようと、地方のこだてに住んでいようと、行政や地域との関わり方は劇的に変わっていきます。
スピーカー 1
市民権という概念そのものがデジタル化されて、居住地以外にも複数のアイデンティティを持てるようになるわけですから。
スピーカー 2
もしかすると来年には、あなたのスマホに入っているAIが、今度のあなたの住む区の予算案、あなたの関心に合わせて要約しておいたれどどう思う?なんて聞いてくるかもしれない。
スピーカー 1
十分あり得ますね。
それにタップして意見を出したら、その報酬としてエコ活動のデジタル地域ポイントを受け取って、そのポイントで地元の八百屋で買い物をする。
スピーカー 2
そんな未来はもうSFではなくて、すぐそこまで来ているんですね。
スピーカー 1
情報型で人々を分断したテクノロジーが、今度はブロックチェーンやAIという形で、見知らぬ人同士をもう一度つなぎ合わせる接着剤になっているんです。
非常にダイナミックな歴史の転換点に私たちは立ち会っていると言えますね。
居住地とコミュニティの未来
そこで最後に、あなたに少し挑発的な試行実験をしてみたいと思います。
スピーカー 2
オープニングで、私たちは巨大な都市の中で、透明なカプセルに入って孤立していると言いました。
でも、もしあなたが、毎日満員電車ですれ違っている物理的な都市の行政よりも、地球の裏側にあるデジタルな村のプロジェクトの方に、より強い絆と経済的な価値を感じるようになったとしたら、
私たちが当たり前のように使っている、住んでいる場所という概念は一体どうなってしまうのでしょうか?
スピーカー 1
物理的に肉体が眠る場所と心の拠り所、あるいは経済圏としての住所が完全に分離していく。
私たちはどこに住んでいると言えるのか、非常に深い問いですね。
スピーカー 1
あなたの本当のコミュニティはいまどこにありますか?
ぜひ、次に通勤ラッシュの波に揉まれた時、すれ違う人々の顔を見渡しながら考えてみてください。
その中の誰かも全く別のデジタルな村の住人かもしれません。
今回のディープダイブはここまでです。また次回お会いしましょう。
17:36

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