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サマリー
高専カンファレンスは、技術者を育成する高等専門学校の学生と卒業生が中心となって、自主的に活動するコミュニティです。このポッドキャストで、佐藤潤さんはブランドの成長による成功のパラドックスや、新しい世代へのアプローチについて語っています。高専カンファレンスは、学生が他校の仲間と交流し、未知の技術に触れる機会を提供する重要なイベントです。佐藤さんは、高専のポテンシャルを広め、学生への支援を通じて社会との接点を増やすことの重要性を強調しています。
高専カンファレンスの概要
高専って聞くとあなたは何を思い浮かべますか。やっぱりあのテレビで見るロボコンのイメージ強くないですか。
あー強いですね。技術に特化したちょっと謎めいた学校みたいな。
そうそう。ソースを見てもそれが一般的な第一印象だそうです。
へー。でもそのイメージって実は全体像のほんの一部でしかないんですよ。
今回はですねそのイメージの奥にあるもっと複雑でなんというか生き物みたいに変化し続けている世界をちょっと深く見ていきたいなと。
面白そうですね。
手元にあるのが高専カンファレンスっていうコミュニティの事務局副代表の佐藤潤さんへのインタビュー記録なんです。
はい。
一見するとただの勉強会に見えるこの活動が実は成功したからこそのジレンマっていうすごく興味深い課題にぶつかってるんです。
あーなるほど。これは単に高専生の話っていうだけじゃなくてどんなコミュニティとか組織でも成長する過程で直面する普遍的なテーマですよね。
そうなんですよ。
ブランドが確立されるってことはどうして強みになって同時に足枷にもなり得るのかそのリアルなところが見えてきそうですね。
ではまず基本からいきましょうか。そもそも高専っていうのは高等専門学校の略で全国にだいたい60校くらいあると。
えー実践的な技術者を育てる教育機関ですね。
で今回のテーマである高専カンファレンスはその学生さんとか卒業生が中心になって自主的にやってる勉強会コミュニティっていう理解でいいんですよね。
その通りです。ただここでめちゃくちゃ重要なのがこれが学校主導では全くないってことなんです。
へー。
肝心に草の根ボトムアップで生まれてるんですよ。インタビューによると始まりはIT系の勉強会に参加してた高専の卒業生たちのちょっとした気づきだったそうで。
気づきですか。
あれなんかこの会場高専出身者の割合が妙に高くないかいって。
面白いですね。特に集めたわけでもないのに自然と。
そうなんです。そこで代表の方がじゃあ高専関係者だけで集まって勉強会やったらもっと面白い科学反応が起きるんじゃないかって呼びかけたのがそもそものきっかけで。
なるほど。
最初は本当に小さな集まりのつもりだったのが予想をはるかに超える人が集まっちゃって。そこから継続的な全国規模の活動にまで大きくなっていったと。
つまりどこか中央に本部があって次はここでやりなさいって指示するんじゃなくて。
はい。
やりたいって思った人が好きな場所で好きなテーマで高専カンファレンスっていう看板を掲げて開催できるすごく柔軟な仕組みなんですね。
表面上はそう見えますね。ただその誰でも開催できるっていう自由さは裏を返せばクオリティがばらついたりコミュニティの方向性が見えにくくなるリスクもあるとは言えます。
あーなるほど。
でもこの場合はその自由さこそがいろんな才能を引きつけて活動をここまで大きくした原動力になったということでしょうね。
成功のパラドックス
主催者それぞれの純粋な動機がエネルギー源になってると。
ええ。地元を盛り上げたいとか、この技術について朝まで語り合いたいとか、この自立分散的なエネルギーがこのコミュニティのまさに革新だと思います。
その自由なエネルギーがコミュニティを大きくしてきたと。でも不思議なのがここからなんです。
はい。
普通こういうコミュニティって立ち上げた卒業生たちがずっと中心にいることが多いじゃないですか。
まあそうですね。創設メンバーみたいな人たちが。
なのにこのソースを読むと、最近は主役が在校生に移るっていう、何ていうか、世代交代の逆転現象みたいなことが起きてるそうですね。これどうしてなんでしょう。
まさにそこがこのコミュニティが直面している成功のパラドックスの入り口なんです。
成功のパラドックス。
佐藤さんの分析だと、これは構成カンファレンスという名前、つまりブランドが学生たちの間ですっかり価値を持つようになった証なんだと。
卒業生が作った、なんていう経緯を知らない学生でさえ、校先生なら参加すべき価値のあるイベントだって認識して、自分たちで主催するようになったんです。
ブランドが一人歩きして新しい世代を引きつけている。それは確かに成功の証ですね。
ええ。でもその成功がまた新しい、しかももっと根深い課題を生んでるんです。佐藤さんが一番心配しているのが、そのブランド名が持つ力と制約の二面性で。
力と制約。
はい。つまり、コミュニティを大きくした構成カンファレンスっていう名前そのものが、今度は学生たちの自由な発想の足枷になりかねないっていうジレンマですね。
ああ、なんとなくわかります。カンファレンスって名前がついていると、どうしても何かすごい発表しなきゃとか。
そうそう。
テーマは学術的なものじゃないとダメだみたいな、無言のプレッシャーが生まれちゃうってことですか。
その通りです。インタビューの中で佐藤さんは、今の甲先生はもっとすごい力を持ってる。だから無理にこのカンファレンスっていう型にはまらなくてもいいと。
もっと自由に、例えば音楽フェスでもアート展でも自分たちの名前で新しいことを始めていいんだよっていう、すごく愛情のエールを送ってるんですよね。
なるほどな。ブランドを守ることより次の世代の可能性を解き放つ方が大事だと。
運営側の強い意思を感じますね。
そのブランドの力って外側にも壁を作ってしまうのかもしれないですね。もう一つの課題として挙げられているのが、参加者の内輪化なんです。
これもコミュニティが成長すると必ず出てくる問題ですね。
敷居が高いと感じられてしまう。
アイデンティティが強くなればなるほど、この玉打ちの結束は固くなる。
高専出身者特有の専門用語とかあるあるネタで盛り上がれば、内輪の人間にはすごく居心地がいい空間になりますよね。
なりますね。でもその心地よさが一歩外から見ると入りにくい空気になってしまう。
そう。
本当は一般の人とか、これから高専を待たず中学生にも来てほしいのに、その熱量が結果的に彼らを遠ざけてしまうっていう皮肉な状況が生まれてるんですね。
若い世代へのアプローチ
まさに開かれた場でありたいという理想と共通言語がもたらす快適な閉鎖性との間の綱引きですよね。
このジレンマをどう乗り越えるかが彼らの次のステージの仮になりそうです。
じゃあそうした課題をわかった上で、このコミュニティはどこに向かおうとしてるんでしょう?
佐藤さんはいくつか具体的なビジョンを語っていて、一つはやっぱりより若い層へのアプローチだそうですね。
はい。高専に興味があるかもしれない中学生に、学校のオープンキャンパスみたいな公式の顔じゃなくて、学生たちが本当に楽しんでる普段着の姿を見せてあげたいと。
高専ってこんなに面白いんだって肌で感じてほしいと。
ええ。
理想は素晴らしいですけど、現実はまあなかなか難しいみたいです。
でしょうね。主催しているのはあくまで学業とか研究で忙しい学生たちですから。
はい。
彼らのモチベーションはやっぱり中元の技術的な交流とか知的な興奮にある。
中学生向けのコンテンツを考えて安全に配慮して運営するっていうのは、また別のスキルと労力がよりますからね。
ええ。そうせも佐藤さんはその点を冷静に見てますよね。
事務局としては文庫を開きたい理想はあるけど、現場の学生の自主性を重んじる以上、共生はできない。
ここにもトップダウンじゃない分散型コミュニティならではの理想と現実のギャップが見えますね。
もう一つの大きな目標は高専生自身に向けられたものですね。胃の中のカエルになるなと。
これはすごく重要な視点だと思います。
高専って専門性が高い分、どうしても自分の学校っていう小さな世界に閉じ込まりがちになるので。
はい。
高専カンファレンスの役割
だから、高専カンファレンスは他校の学生と出会って、自分の知らない技術に触れて、自分の常識は世間の常識じゃないなって知るための絶好の機会なんだと佐藤さんは強調していますね。
そのための具体的なサポートも考えてるんですよね。
地方の学生が都市部のイベントに参加するための旅費の支援とか。
ええ。学生にとって交通費とか宿泊費って大きいですから、その壁を少しでも取り除いて、より多くの学生に外の世界を見てほしいと。
そして、そういう学生への直接的な支援がもっと大きな目的、つまり、高専という教育機関そのものの価値を高めて世の中に広めたいっていうビジョンにつながってるんですね。
そうなんです。高専の教員でもある佐藤さんは、高専が持つポテンシャルの高さと世間での知名度の低さのギャップに強い問題意識を持ってるんです。
確かに各都道府県に原則1個くらいですから、関係者じゃなければ存在すら知らないってことも少なくないでしょうね。
ええ。だからこそ、高専カンファレンスは単に学生が成長する場であるだけじゃなく、高専という未知の世界に社会が触れるための貴重な接点を増やす役割もになっていると。
学生たちの活動を通じて、高専全体の未来を切り開こうとしている。
そういうことです。
そして、インタビューの終盤、佐藤さんは、高専関係者だけじゃなくて、私たちリスナー全員に向けたすごく大切なメッセージを投げかけてるんです。
はい。
テクノロジーのブラックボックス化に対する継承です。
ああ、ありますね。私たちは毎日スマホから家電までその仕組みを全く理解しないまま、魔法みたいに便利な技術を使っていますから。
彼はこう言ってるんです。
普段当たり前に使っているものの蓋を開けて、隠れている部分が見えてくると、世界の見え方がガラッと変わってくる。
だから、少しでも興味を持ってその中を覗き込んでみてほしい。
これは単なる技術教育の話じゃないですね。
そうなんですよ。
もっと大きな視点で見れば、これは知的好奇心への招待状ですよね。
工学とかプログラミングって聞くと、多くの人は難しそうって思っちゃいますけど。
ええ、敬遠しちゃいます。
でもその裏側にある原理とかアイデアの欠片を少し知るだけで、世界はもっと解像度の高い面白い場所に見えてくるはずだと。
まさに。で、高専カンフォレンスはその中を覗くための絶好の入り口になっているみたいで、最近はテーマが驚くほど多様化しているそうですよ。
へえ、例えばどんな?
ソースによると、ある学生が自作のアナログシンセサイザーの構造について熱弁したり、別の場所ではアマチュア無線の技術を応用して地域の災害時情報ネットワークを構築するなんていう発表もあったそうです。
すごいですね。もはや単なる勉強会っていうより、未来の発明家たちの発表会みたいな熱気がありそうですね。
ええ、これなら専門家じゃなくても自分の好奇心をくすぐるテーマがきっと見つかりそうですよね。
そうですね。
こうして見てくると、高専カンフォレンスって当初のロボコン好きの集まりっていうイメージとは全く違うものでした。
ええ。
自主性を確認した分散型のコミュニティで、しかも自らが気づいた成功というブランドがもたらす課題と真摯に向き合いながら、次の世代にバトンを渡そうとしている、まさに生きている活動でしたね。
はい。非常にダイナミックで資産に富んだコミュニティでした。今後の開催予定なんかは公式サイト、kosenconf.jpで確認できるそうです。
今日の話を聞いていろいろ考えさせられました。
最後にあなたにも一つ考えてみてほしい問いがあるんです。
はい。
佐藤さんは、高専カンファレンスというブランドネームが持つ力と制約、その両場の件について語っていましたよね。
ええ。人を引きつける磁石であると同時に、活動の形を限定してしまう折にもなり得ると。
そこでこの問いです。
あなたが関わっている職場、コミュニティ、あるいは家族や友人関係でも構いません。その集団を定義している名前や歴史、暗黙のルールを思い浮かべてみてください。
それって、新たな可能性を広げてメンバーを力づける翼になっていますか?
それとも、無意識のうちに変化を恐れて挑戦をためらわせる心地よいだけの折になってはいないでしょうか?
11:55
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