インタビュー音源をそのまま解析したもの
サマリー
市民科学研究室は、地域問題に直面する市民が専門家となり、主体的に問題解決に取り組むことを目指すNPO法人です。このエピソードでは、上田昌文さんが団体の設立経緯や具体的な活動、さらには今後の課題について語っています。市民科学研究室の取り組みを通じて、市民が専門家として活動する重要性が強調されています。生活の中で技術を意識し、主体的な視点を持つことで、地域の課題解決に繋がる可能性が広がります。
市民科学研究室の紹介
さて、今回はですね、あなたから提供いただいた、あるNPO法人のインタビュー記録を深く掘り下げていきたいと思います。
はい。
団体の名前は、市民科学研究室。で、この資料のテーマが、もうズバリ、市民が専門家になるっていうことなんですよ。
ええ。
科学とか技術が絡む複雑な地域問題ってあるじゃないですか。
ありますね。インフラの老朽化とか。
そうそう、まさにそれです。そういう時に、専門家任せにしないで、我々のような普通の人々がどう立ち向かうのか。
この団体の設立経緯から具体的な活動、そして直面している課題まで追いかけて、私たちが社会とどう向き合うべきかのヒントを探っていきます。
この団体の面白いところって、単なる学習サークルとか、そういうので終わってない点なんですよね。
ああ、なるほど。
資料を読むと、市民が自ら主体になって、調査して、研究して、問題解決まで目指すっていう、かなり実践的なアプローチを取っているのがわかります。
ほう。
調査研究グループの活動
何より、代表の方の個人的な問題意識が、どうやって社会的な活動にまで発展していったのか。
そのプロセスに注目すると、数多にとってもきっと多くの発見があるはずですよ。
では、さっそく見ていきましょうか。まず驚くのが、このNPOの始まり方です。
何か壮大な計画から始まったわけじゃなくて、代表の上田孫っていう方が個人的に始めた、本当に小さな勉強会、これが原点なんですよね。
まさにそこなんですが、経歴を見ると、もともと社会活動家ってタイプの方じゃないんですよ。
へー、そうなんですか?
もともとは大学で生物学を専攻して、生物学者を目指していたと。
へー。
そんな方が、なぜ大学の外に目を向けたのか。
資料によると、学生時代に経験したチェルノビー入りの原発事故、これが決定的だったと。
あー、なるほど。
大学の中に閉じこもって論文だけ書いててもダメだって、強く感じたそうなんです。
その強烈な原体験があったわけですね。
学んだことを社会に役立てたいっていう純粋な思いで始めた勉強会に、少しずつ人が集まってくる。
ここまではよくある話かもしれない。
ですよね。でもここからがユニークで、参加者の中から話を聞くだけじゃ物足りないなーと。
そうそう、自分たちで調べてみようよっていう声が。
へー、自然に上がってきたっていう。
しかも僕がここで特に面白いなと思ったのは、じゃあ専門家を呼んで教えてもらおうってならなかった点なんです。
あっ、そっちにはいかなかった。
自分たちでやるっていうそのDIY精神のDNAが、この最初の時点でもう生まれてるんですよね。
なるほど。この主体性が後で話す、調布の陥没事故の調査みたいな、非常にパワフルな活動に繋がっていくわけです。
最初から受け身じゃなかったと。で、組織になっていく過程もまた人間味があって面白い。
2005年にNPOを法人化するんですけど、その理由がまた。
すごいですよね。
別に組織も大きくしようみたいな野心があったわけじゃなくて、国の研究費に採択されたら法人じゃないと補助金が出ませんって言われて。
はぁはぁはぁ。
え、マジで?じゃあ急げて作らなきゃって慌てて法人化したって言うんですから。
この泥臭さ、いいですよね。計画性よりも目の前の必要性に突きよかされてる感じがすごくリアルです。
まさにボトムアップ。
ええ。それで具体的にどんな活動をしているのか見ていくと、これがまた地味でパワフルで。市民が科学技術との問題を自力で解決するサポート。
まあ言葉にすると硬いですけど、要は役所や企業がちゃんと動いてくれないなら自分たちで証拠を集めて声を上げようぜってことですよね。
そういうことですよね。その活動を象徴する非常にわかりやすい事例が資料にありました。
2020年に東京の調布市で起きた外貫道のトンネル工事に伴う陥没事故への取り組み。
ありましたね。ニュースで見ました。道路に突然大きな穴が開いたやつですよね。
ええ、そうです。
あの時住民の方々はすごく不安だったと思うんですが、記録によると事業者とか行政は被害状況の調査にあまり積極的じゃなかったと。
そうなんです。家の傾きとか壁のひび割れとか住民が訴えても、なかなか本格的に取り合ってくれなかった。
そこでこの市民科学研究室が被害にあった住民の方々と一緒に調査研究グループを立ち上げたんですね。
ただ、専門家を呼んでくるんじゃなくて、住民自身が計測の仕方とかデータの記録方法を学んで、自分たちの手で被害の実態を地図に落とし込んでいったんです。
それはすごい。専門家や事業者が言う科学的合理性とか基準値以下とか、そういう言葉の裏で実際に暮らしている人たちの壁にひびが入って怖いとか、家がきつもうとかするっていうリアルの声はどうしても無視されがちですもんね。
それを自分たちで客観的なデータっていう、いわば武器を手に入れて可視化したわけですね。
まさに。専門家任せにしていたら、多分問題なしで終わってたかもしれない。
ここに、市民が主体的に科学に関わることの、とてつもなく大きな意義があると思うんです。自分たちの生活を守る知識や技術は、誰かに与えられるんじゃなくて、自分たちで獲得していくものなんだっていう。
参加者の高齢化と新たな取り組み
本当にそうですね。これだけ社会的に意義があってパワフルな活動をしている。だからこそインタビューで語られていた次の課題が、より一層深刻に聞こえてくるんです。
これだけの成果を上げている団体が、実は人が足りない、特に若い世代が全く来てくれないっていうものすごい悩みを抱えている。このギャップは一体何なんでしょうか。
本当に皮肉な話ですよね。会員数は約200名いるそうなんですが、活動のコアになっているのはほんの数十人。
あ、そんなに少ないんですか。
ええ。代表の上田さんの言葉を借りれば、NPOの活動だけで専門スタッフが数名食べていけるようにするには、最低でも千人規模の会員が必要だと。現状では全く足りていない。
うーん厳しいですね。そして、より深刻なのが参加メンバーの高齢化と固定化。
ああ。
これ、あなたも自分の周りで思い当たりませんか。地域の消防団とかPTA、庁内会、どこも同じような課題を抱えているじゃないですか。
おっしゃる通りです。このNPOの悩みは、今の日本の多くのコミュニティが直面している問題のまさに畜頭なんですよね。
ええ。
インタビューでも、地域の中核を担うべき40代50代の現役世代とか、それより下の若い世代の参加がほとんどないと、そういう悩みが率直に語られています。
いろいろ工夫はされてるんですよね。
ええ。事務所を開放して誰でも立ち寄れるようにしたり、若者向けにYouTubeで動画を発信したり、でもなかなか足を運んでもらえないと。
なぜなんでしょうね。仕事や子育てで忙しいっていうのはもちろんあるんでしょうけど。
それだけじゃない気もしますよね。
ええ。
これって多分どこのNPOも抱えているジレンマで、結局時間もお金も一番余裕がない現役世代が、社会を変える上では一番来てほしいそうっていう。
ああ、なるほど。
彼らにとって仕事や家庭以外の第三の活動の場が、いかに魅力的で参加する価値があるものなのか、そこを伝えきれていないのかもしれません。
なるほど。ただ彼らはこの課題にただ嘆いているだけじゃない。ここからの未来へのアプローチがすごく面白いんです。
一つは、仲間を増やすっていう発想自体を転換してるんですよ。
というと。
ここすごく重要な転換点だと思うんですが、彼らは仲間を増やそうとするんじゃなくて、仲間になれる人を育てようとしてる。
ああ、なるほど。
そのために、自分で調べる技術っていう、まさにノウハウを詰め込んだ本を出版したり、大学生向けに卒論の進め方を教えるワークショップを開いたりしてるんです。
それは賢い戦略ですね。魚を与えるんじゃなくて、魚の釣り方を教えると。
まさに。
問題解決のノウハウそのものを社会にばらまくことで、自分たちの組織に直接関わらなくても、同じような活動がいろんな場所で自然発生する、その土壌を作ろうとしてるわけだ。
そうなんです。やり方さえ身につければ、人はどこでも市民科学者になれると。
そしてもう一つ、この課題解決の大きなヒントになったのが、皮肉にもコロナ禍だったという話です。
ああ、オンライン化ですね。
定例会をほぼすべてオンラインに切り替えたそうなんですが、これがとんでもない変化をもたらした。
これが大きな転機になったようですね。
物理的な距離っていう制約がなくなって、地方や海外からも参加者が出てきて、活動が一気に全国区になった。
はい。
ここまでは想像がつきます。
でも僕が読んでいて、おっと思ったのは、高齢者向けの講座でのエピソードです。
ああ、あの話はしさに飛んでますよね。掲示板、つまりオンラインフォーラムを導入したっていう。
ええ。普通、高齢者はデジタルに弱いっていう先入観があるじゃないですか。
ありますあります。
技術とコミュニケーション
でも蓋を開けてみたら、その掲示板での受講制同士とか講師との意見交換が対面の時とは比べ物にならないくらい活発になったというんです。
それは驚きですね。なぜそうなったんでしょう。
おそらく対面の場だと発言をためらってしまうような人でも、オンラインの掲示板なら自分のペースで考えをまとめて書き込める。
それに他の人の意見を読んでから自分の意見を言える、この時間差と非同期性がむしろ熟慮したコミュニケーションを生んだんじゃないでしょうか。
面白いなあ。
適切な場と仕組みさえデザインすれば、世代なんて関係なく人は主体的に動き出すんだっていう見事な証明ですよね。
なるほど。テクノロジーが思わぬ形で世代間の壁を溶かした、と。
さて、インタビューの最後。話はぐっと私たちの足元、日常生活と技術との関わり方に移っていきます。
はい。
私たちの生活って考えてみれば、水道、ガス、電気、通信、ほぼ全て何らかの技術に支えられてる。でも、普段それを意識することってほとんどないですよね。
ええ。蛇口をひねれば水が出るのが当たり前。でも、その水を運んでくる水道管が実は全国的に老朽化してて。
聞きますね。その話。
ええ。いつ大規模な漏水や断水が起きてもおかしくない。そういう目に見えない問題が静かに進行してるわけです。で、一度事故が起きると生活に甚大な影響が及ぶ。
だからこそ、インタビューで強調されていた専門家任せにしないっていう姿勢がここで効いてくるんですね。
そうなんです。
自分の家の前の道路が最近よく工事しているとか、水道水が少し濁ってる気がするとか、そういう身の回りの小さな気になることを報じしない。
そうです。それをちょっとスマホで調べてみたり、近所の人と話してみたりする。その小さな一歩が実は大きな問題の兆候をつかむきっかけになるかもしれない。
うーん。
技術っていうのは恩恵をもたらす一方で、スマホへの過度な依存が子どもの発達に与える影響みたいに、予期せぬ副作用を生むこともありますから。
まさに技術をただ受け身で消費するだけのお客様でいるのか、それともその仕組みを少しでも理解して問題点を指摘したり、より良い使い方を考えたりする当事者になるのか。
その主体的な視点が今私たち一人一人に問われているということなんでしょうね。
そしてその当事者意識を育むためのユニークなアプローチが、この団体の活動の中にもう一つ隠されていました。
今回このインタビュー記録を読んでいて、僕が個人的に一番やられたと思ったのが、彼らの活動に子ども料理科学教室っていうのがあることです。
ああ、はいはい。
陥没事故の調査とかインフラ問題とか、そういう広派なテーマを扱っている団体が、なぜ子ども向けの料理教室を?って、一見全く関係ないように思えますよね。
思えますね。でもその根底にある哲学がこれまでの話全部をつなぐんですよ。
自分の食べるものを自分の手で作るという経験、これは単に料理のスキルを教えるだけじゃないんです。
と言いますと?
食材がどこから来るのか、どういう調理法が安全でおいしいのか、残ったゴミはどうなるのか、その全プロセスに自覚的になるということです。
なるほど。自分の生活の根幹である食を誰か他人任せにしない?その一番身近なトレーニングが料理から始まるんだと。
その通りです。その小さな成功体験が、やがては食料問題や健康、引いてはエネルギー問題、農業、といったより大きな社会システムへの当事者意識を育む、まさに最初のステップになるという考え方なんです。
いやー深いなー。
この団体の活動の根底にあるのは、一貫して自立した市民を育てるという思想なんですよ。
専門家に全てを委ねて文句を言うだけじゃなくて、自分の頭で考え、自分の手で調べ、仲間と一緒に行動する。そのためのスキルと勇気と、そして場を提供する。それが彼らの本当の役割なんですね。
さて、ここまで市民科学研究室の活動を深く見てきました。最後にあなたにこんな問いを投げかけて今回の話を終わりたいと思います。
あなたが仕事で使っている専門スキルや、あるいは日々の生活の中で当たり前にやっている家事や趣味の知恵、それってあなたが専門家だと思い込んでいるだけで、実はあなたのすぐそばにある地域の課題を解決する、思いがけない鍵になるかもしれません。
主体的な市民意識の育成
うーん、あなたの身の回りで気になっているのに見て見ぬふりをしている問題はありませんか?
13:52
コメント
スクロール