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他自治体の活動を知ることのメリット:自治体におけるEBPMの推進と活用事例
2026-10-10 22:24

他自治体の活動を知ることのメリット:自治体におけるEBPMの推進と活用事例

近年、地方自治体や行政機関においてデータや客観的エビデンスに基づいた政策決定手法であるEBPMの重要性が急速に高まっています。従来の経験則や勘に頼った行政運営から脱却するため、国全体で推進が進められており、少子高齢化や財政難といった複雑化する地域課題に対応する有効な手段として注目を集めています。具体的な取り組みとしては、BIツールを用いたダッシュボードの構築やビッグデータの活用により、行政データの可視化や職員自身による分析業務が推進されています。また、施策の有効性を精緻に検証する仕組みとして、ロジックモデルの策定やランダム化比較実験、人流データの分析ツールなどの手法が積極的に導入される傾向にあります。こうしたデータ駆動型の行政運営を通じて、限られた予算や人的資源の効率的な配分と、住民サービスおよび行政に対する信頼の向上が図られています。

EBPM(証拠に基づく政策立案)および自治体DX推進に関する総合ブリーフィング・ドキュメント

エグゼクティブ・サマリー

本ドキュメントは、全国の地方自治体および行政機関において急速に推進されている**EBPM(Evidence-based Policy Making:証拠に基づく政策立案)および自治体DX(デジタルトランスフォーメーション)**の概念、推進背景、分析手法、導入課題、ならびに先進事例を統合的に分析・整理したものである。

人口減少、少子高齢化、人手不足、財政制約といった深刻な社会課題に直面する日本の自治体において、経験や勘(エピソードベース)に頼った従来の行政運営から、客観的なデータや科学的根拠(エビデンス)に基づく政策立案への転換が急務となっている。厚生労働省や内閣府の指針のもと、ロジック・モデルや計量経済学手法(RCT、RDD、DIDなど)を用いた政策の設計・検証が求められるとともに、ICTの発達やビッグデータ(人流データ、車載データ等)の普及がこれを後押ししている。

一方で、現場におけるデジタル化の遅れ、統計専門人材の不足、投入コストと得られる効果(ベネフィット)のバランス維持が主要な課題として浮き彫りになっている。これに対し、先進的な自治体ではBIツールの全庁導入(神戸市)、ビッグデータ統合データベースの構築(関市)、人流データやオープンデータの活用(徳島市、加古川市等)、ならびにクラウドツールやスマートデバイスの導入(網走市、前橋市等)により、行政効率の向上と市民サービスの質的改善を両立させている。

1. EBPMの定義と推進背景

1.1 EBPMの基本概念と定義

EBPM(Evidence-based Policy Making)とは、行政が保有するデータや事業効果を示す証拠(エビデンス)に基づき、政策の企画・決定・実行・効果検証を行う政策立案手法である。従来の「見聞きした事例」や「過去の経験・勘」に依存するエピソードベースの立案スタイルからの脱却を目指す。

厚生労働省の定義において、EBPMを推進する上で以下の3要素の明確化が重要視されている:

  1. 政策立案の前提となる事実認識
  2. 立案された政策とその効果を結びつけるロジック
  3. 政策のコストと効果の関係

また、医療分野におけるEBM(Evidence-based Medicine:根拠に基づく医療)の概念が派生元となっており、適切なエビデンスに基づくアプローチは行政に対する国民・住民の信頼確保にも直結する。

1.2 EBPMおよび自治体DXが注目される背景

EBPMおよび自治体DXの導入が急速に拡大している背景には、複因的な内外環境の変化が存在する。

【外部環境の圧迫】
・深刻な少子高齢化・過疎化・人口減少
・社会保障費やインフラ維持費の増大
・複雑化・多様化する住民ニーズ

【内部環境の課題】
・自治体職員数の削減と人手不足
・保守的な組織風土と評価システムの不備
・厳しい財政見通しと行政資源の限界

 ▼(合理的アプローチの必要性)

【EBPM・DXによる解決】
・客観的データに基づく費用対効果の高い予算配分
・ICT・ビッグデータ(IoT、AI、位置情報)の利活用
・行政業務の自動化・効率化とサービス品質向上
  • 社会構造の変化と資源の制約:人口減少や職員不足の進展に伴い、限られた財源と人的資源を最も効果的な事業へ集中投下する必要が生じている。
  • ICT・データ環境の進化:AI、IoT、位置情報(人流ビッグデータ)、SNS、各種センサーの普及、クラウド基盤の整備により、高精度かつリアルタイムなデータ収集・分析が低コストで可能となった。
  • 政府の推進体制:内閣府の「統計改革推進会議最終とりまとめ」(2017年)や「EBPM推進委員会」の設置、総務省による「自治体DX推進計画」の策定、デジタル田園都市国家構想交付金の展開など、国主導の枠組みが整備されている。

2. EBPMの実践手法と推進プロセス

2.1 代表的な分析・評価手法

EBPMの実践においては、政策の効果や因果関係を客観的に測定するため、以下の4つの手法が多用される。

手法名概要・特徴活用事例・適した場面
ロジック・モデル政策の目的・投入資源・活動・成果(効果)の因果関係を体系的に図式化・整理するツール。政策設計全般、事業の見直し、目的と手段の整理
ランダム化比較実験(RCT)対象者をランダムに実験群(政策対象)と対照群(非対象)に分け、効果を比較する最高水準の実証手法。セミナーや保健指導の厳密な効果検証、境界地域での試行
回帰不連続デザイン(RDD)年齢や所得などの基準(閾値)前後における対象・非対象グループのデータを比較し、因果関係を推定する手法。所得制限や年齢条件が設定された補助金・給付策の検証
差の差分析(DID)施策の対象・非対象グループにおける「実施前後の変化量(差)」を比較し、外的要因を排除して真の効果を算出。地域限定の施策導入や制度改正の前後の効果比較

ロジック・モデルの標準構成要素

政策効果の因果関係を示す際、以下のステップで体系化を行う:

  1. 現状・課題:前提となる問題意識および解決すべき課題
  2. インプット(投入):予算、人員、施設などの資源
  3. アクティビティ(活動):投入資源を用いて実施する具体行政活動
  4. アウトプット(産出):活動の結果として提供されたサービス量・製品
  5. 直接アウトカム(直接成果):アウトプットが直接的にもたらす利益・変化
  6. 中間アウトカム(中間成果):直接成果から派生する二次的な成果
  7. インパクト(最終成果):政策が最終的に目指す社会的な影響・あるべき姿

2.2 EBPMの標準的な進め方(4ステップ)

政策立案から評価までのPDCAサイクルを循環させることが不可欠とされる。

[Step 1] 解決すべき課題の明確化
  └ 統計やアンケートに基づき、「〇%改善」等の測定可能な目標を設定
        ▼
[Step 2] データの収集・分析
  └ 関連データ(人口統計、経済データ、リアルタイムデータ)を幅広く精査
        ▼
[Step 3] 政策の立案・実行
  └ ロジック・モデルで構造化し、KPI(重要業績評価指標)を設定して実行
        ▼
[Step 4] 効果の評価と改善サイクルの運用
  └ KPIで成果を測定し、未達の原因を分析して次期施策へ反映

3. 自治体におけるEBPM・データ利活用の先進事例

各自治体では地域固有の課題に対し、多角的なデータ分析手法やデジタルツールを用いたEBPMを実践している。

3.1 医療・福祉・子育て・人口動態分野

  • 岐阜県関市(将来コストの予測モデルとデータベースの再構築)
    • 課題:少子高齢化による社会保障費増大の抑制と、医療・介護実態の把握不足。子育て支援の対象年齢拡大における将来コストの不透明さ。
    • 取組:ビッグデータを統合・再構築し「地域カルテ」「地図(マッピング)」「個人シート」を作成。申請主体の行政から「声なき住民」の課題抽出へ転換。また、独自の人口推計と助成額予測係数を組み合わせた医療費助成コストの予測モデルを構築。
    • 成果:避難行動計画への活用等、要支援者把握を強化。コスト予測モデルの推計値と実績値の誤差は±5%以内に収まり、精度の高いデータに基づく政策決定を実現。
  • 高知県(「Society5.0型農業」におけるデータ統合)
    • 課題:農家ごとの栽培管理の属人化、収量・品質のばらつき、若手への技術継承難。
    • 取組:産学官連携により営農情報を一元化する「IoPクラウド(SAWACHI)」を構築。県知事と1,420戸の農家間でデータ利用契約を締結。
    • 成果:SAWACHI利用農家は未利用農家に比べ年間出荷量が約3割増加。
  • 宮城県仙台市(救急搬送データに基づく医療連携)
    • 課題:コロナ禍における救急医療の逼迫と、消防・医療機関の連携不足。
    • 取組:救急統計データから「応需率(救急車受け入れ率)」を算出し、週次でモニタリングする仕組みを導入。
    • 成果:応需率低下のパターンを把握し、具体的データを根拠に医療機関と交渉。受け入れ体制が拡充され、応需率が改善。

3.2 交通・都市計画・人流分析分野

  • 徳島県徳島市(人流ビッグデータによる大規模イベント分析)
    • 課題:阿波踊り(4日間で延べ130万人来訪)開催時の市街地への影響、天候による集客変動、周辺交通の混雑可視化の困難さ。
    • 取組:ドコモdポイントクラブアプリの位置情報を基盤とした「Datawise Area Marketer」を導入。性別・年齢別・時間帯別の移動データを細部まで可視化。
    • 成果:周辺施設・道路の混雑状況や交通量を正確に把握。感覚値ではなく客観的エビデンスに基づく将来の政策立案体制を確立。
  • 兵庫県加古川市(移動データと市民参加ツールを活用した駅前再開発)
    • 課題:人口減少下での持続可能な都市構造(コンパクトシティ)への転換および駅周辺の行動実態把握。
    • 取組:市立図書館の駅前移転前後の移動データを分析。オンライン市民参加ツール「Decidim(デシディム)」で分析結果を公開。
    • 成果:駅来訪者の6割が自動車利用である実態を数値化。データ共有による市民共創型のまちづくりを推進。
  • 栃木県宇都宮市(カープローブデータによる交通安全対策)
    • 課題:潜在的な交通事故危険箇所の特定と、実効性のある交通安全対策。
    • 取組:通信機能付きICタグから急ブレーキ・急加速等のカープローブデータを収集し、ヒートマップやスタックチャートで可視化。
    • 成果:地域住民と「危険箇所の現地確認(まち歩き)」や「対策検討会」を実施し、ハード(ハンプ設置等)・ソフト(看板設置等)両面の対策を迅速化。

3.3 行政運営・広報・地域活性化分野

  • 兵庫県神戸市(全庁型BIダッシュボード「神戸データラウンジ」)
    • 課題:データ入手や資料作成における職員の業務負担、全庁的なエビデンス活用不足。
    • 取組:BIツール(Tableau等)を用いて複数データを一覧・可視化するダッシュボードをLG-WAN上に構築し職員へ公開。職員自ら分析を行う「DIY型」を推進。
    • 成果:資料作成時間が短縮され、政策議論の時間が増大。コロナ感染状況やワクチン接種実績の即時更新・分析を実現(総務省「Data StaRt Award」にて総務大臣賞・特別賞を受賞)。
  • 栃木県真岡市(3C分析とデジタルマーケティングによる魅力発信)
    • 課題:特産品(いちご)の認知度向上に向けたデータ不足とプロモーション効果の未検証。
    • 取組:3C分析を用いて戦略を立案。Webサイト・SNSの表示回数やクリック数をダッシュボードで数値化し、PDCAサイクルを展開。
    • 成果:特設サイト訪問数が約3倍、観光いちご園利用者数が1.5倍、ふるさと納税返礼品のいちご申込件数が20倍に増加。

4. 自治体DX推進の最新動向とサービス導入モデル

自治体DXは、行政手続きのオンライン化や業務効率化にとどまらず、マイナンバーカードや最新ICTを活用した住民利便性の飛躍的向上を目的としている。

4.1 総務省「自治体DX推進計画」の重点事項

自治体が推進において取り組むべき主要事項として以下が掲げられている:

  1. 自治体フロントヤード改革の推進
  2. 「国・地方デジタル共通基盤」に基づくシステム共通化・標準化
  3. 公金収納におけるeL-QRの活用
  4. セキュリティ対策の徹底およびテレワークの推進
  5. マイナンバーカードの取得支援・利活用推進およびAIの利用促進

4.2 ツール・基盤別の自治体DX先進事例

【業務効率化・働き方改革】
・北海道網走市:Google Workspace導入(チャット化、備品予約の効率化、自席外業務の実現)
・群馬県前橋市:Chromebook導入(定例会議のオンライン化、ペーパーレスによる印刷コスト削減)
・岩手県一戸町:Chromebox導入(図書館端末の小型化・管理簡素化、大画面化による高齢者利便性向上)
・石川県羽咋市:データ連携基盤(積雪監視、防災、通学路交通量などのオープンデータ公開サイト構築)
・富山県富山市:BIツール(Tableau)活用(年代別人口・世帯分布の可視化によるコンパクトシティ政策後押し)

【住民サービス・窓口改革】
・神奈川県横浜市:施設予約Webサービス「みんなのミチシルベ」(保育施設等のオンライン検索・予約)
・東京都豊島区:オンライン接客ツール「ビデオトーク」(ひきこもり相談・専門家相談等のリモート化)
・兵庫県姫路市:窓口キャッシュレス決済「stera terminal」(各種証明書発行手数料の非接触支払い)
・鹿児島県奄美市:電子契約「GMOサイン」(離島地域における郵送日数削減、印紙代・人件費・紙資源削減)

4.3 マイナンバーカード利活用・共通基盤連携サービス事例(デジタル庁カタログより)

デジタル田園都市国家構想交付金を活用した、マイナンバーカードと連携する各種サービス分野の例:

【公共交通・MaaS分野】
・BOLDLY:LINEアプリによる自動運転バス予約+マイナンバー認証による属性別特典・地域ポイント付与
・ユニ・トランド(TicketQR):マイナンバーカード登録による市民限定の運賃割引(三角運賃対応)や地域クーポン発行
・ICTまちづくり共通プラットフォーム推進機構:タクシー運賃割引補助(JPKI・空き領域を活用した資格・利用回数管理)
・JR東日本メカトロニクス / 東日本旅客鉄道:Suica等交通系ICカードとマイナンバー情報の紐付けによる1タッチ割引決済
・博報堂(ノッカル):住民ドライバーを活用した自家用有償旅客運送+マイナンバー決済+見守りLINE通知
・建設技術研究所(シティMobi):AIオンデマンド交通アプリ+マイナンバー読み取りによるアカウント作成軽減・割引適用

【医療・健康・子育て分野】
・母子モ(母子モ子育てDX):全国550以上の自治体で導入。予防接種・乳幼児健診のデジタル化、申請工数削減
・エヌ・ティ・ティ・データ関西(アスリブ):健康マイレージアプリ。マイナンバータッチによる本人確認とポイント交換
・TIS(ヘルスケアパスポート):PHR基盤。マイナポータルAPI連携による健診・医療情報の双方向共有
・MONET Technologies:マルチタスク車両(医療MaaS)内でのマイナポータル参照による精度の高い健康相談・保健指導

5. EBPM・DX推進における現状課題と成功のポイント

政策立案および行政DXの推進において、自治体が直面する特有の課題とそれを克服するための成功要因は以下の通り整理される。

5.1 現状の課題

┌────────────────────────────────────────────────────────┐
│ 1. デジタル化の遅れとデータ活用の基盤不足              │
│    ・行政内部データの形式が不揃い、マイナンバー連携の停滞 │
│ 2. 統計学・データ分析人材の深刻な不足                   │
│    ・計量経済学等の専門知識を持つ職員が乏しく登用も困難 │
│ 3. コストとベネフィットのミスマッチ                    │
│    ・投入資源(予算・人)に見合う成果(ベネフィット)の測定不全│
└────────────────────────────────────────────────────────┘
  • デジタル化の遅れ:行政が保持する膨大な情報が未デジタル化、あるいは分断されており、迅速なエビデンス構築の阻害要因となっている。
  • 統計・分析人材の不足:EBPMの実践には統計学や計量経済学などの専門的知見が不可欠であるが、一般行政職員が通常業務と並行して修得することは難しく、専門人材の確保・育成が中長期課題となっている。
  • コスト・ベネフィットの不均衡:ツールやシステムを導入しても、明確な目標(KPI)やターゲット(「誰にどのようなベネフィットがあるか」)が逆算設計されていない場合、無駄な支出につながるリスクがある。

5.2 自治体DX・EBPMを成功に導く5つのポイント

  1. 職員の業務効率化と住民の利便性の両立 行政内部の負担軽減(バックヤード効率化)と、住民側の快適性向上(フロントヤード改革)を等しく目的に設定する。
  2. 住民ニーズと地域特性の正確な把握 一律のシステム導入ではなく、事前にアンケートやデータ分析を通じて地域固有の課題を抽出する。
  3. 組織的な職員教育・研修の実施 一部のデジタル担当部門だけでなく、全庁的なITリテラシー向上およびデータ利活用スキルの育成を行う(富山市のBI研修等)。
  4. 操作性に優れた利用しやすいシステムの選定 直感的に操作可能で、ITに不慣れな職員や高齢の住民でも迷わず活用できるツール(クラウド、スマートフォン連携アプリ等)を選択する。
  5. 従来の業務プロセスの根本的見直し(BPR) 単に現行業務をデジタルに置き換えるのではなく、ボトルネックとなっている既存の手続きや工程自体を再構築した上でシステムを適用する。

感想

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サマリー

人口減少や職員不足で限られた資源の配分が迫られる中、経験や勘ではなく証拠に基づいて政策を立案するEBPMが解説される。ロジックモデル、RCT、RDD、DIDによって政策の因果関係や効果を測る方法が紹介され、仙台市の救急医療、加古川市の駅前再開発、高知県の農業データ活用などの事例が示される。自治体DXでは、神戸市のBIツール、クラウドやペーパーレス化、オンライン相談などを通じて職員の業務効率と住民サービスを両立させる取り組みが語られる。マイナンバーカードと連携した交通・妊娠届出・健康相談など、住民向けサービスの具体例も紹介される。最後に、最適化された行政の利用者にとどまらず、自分のデータと政策決定を理解して街づくりに参加する共同創造者になる必要性が提起される。

EBPMが必要になった背景
スピーカー 2
ちょっと想像してみて欲しいんですけど,今これを聞いているあなたの住む町が,あなたが納めた欠税から,なんと10億円を使って駅前に巨大な新しい広場を作ると発表しました。
10億円ですか。それはかなりの規模ですね。 そうなんですよ。で,なんで作るんですかって理由を聞いたらですね,これが市長の直感で,なんか観光客が来ると思ったからっていう。
ああなるほど。データも何もないわけですね。 そうなんです。明確なデータも成功する証明もない。ただの観なんですよね。ちょっと恐ろしい話に聞こえるかもしれませんが,実はつい最近まで,行政の世界ではこれがごく当たり前の光景だったんですよね。
スピーカー 1
そうですね。おっしゃる通りです。隣の町で流行ってるからとか,昔からずっとこのやり方でやってきたからみたいな,そういう過去の慣例とか誰かの思い込みだけで私たちの生活に直結する重要なルールとか予算が決められてきたんですよね。
スピーカー 2
それって住民からするとものすごく不安ですよね。
スピーカー 1
客観的な根拠がないっていうのはやっぱり非常に怖いことだと思います。
スピーカー 2
本当ですよね。でも今日このデスクに積み上げられた分厚い資料,自治体ワークスとかデータワイズ,TISI,あと伝算システムのレポートですね。それにデジタル庁の最新カタログなんかを読んでいると,行政の現場で今なんというか静かで巨大な革命が起きていることがわかるんです。
スピーカー 1
まさに革命と言っていいと思います。しかもこの革命は単に市役所の裏側のシステムが変わるっていうそういうシステムだけの話じゃないんですよね。
スピーカー 2
というと?
スピーカー 1
あなたが毎日歩く道とか乗るバス、それに受ける医療や子育て支援といった日常の景色を根本から変える力を持っているんです。
スピーカー 2
なるほど。ということで今回の深掘りのミッションですが,行政に押し寄せているEBPMと呼ばれる意思決定のパラダイムシフトとそれから自治体DXの最前線を解き明かすこと。
そしてそれがあなたの生活をどう変えるのかを探ることです。よしこの膨大な情報の束を一緒に紐解いていきましょう。
スピーカー 1
はいよろしくお願いします。まずですねあのなぜ今になって行政の現場が新しい意思決定の方法を迫られているのかその背景から整理させてください。
スピーカー 2
はいお願いします。
スピーカー 1
今の日本はご存知の通り少子高齢化で人口が減っていますよね。それに伴って税収っていう財源も市役所で働く職員の数もどんどん減っているんです。
スピーカー 2
もう本当にどこも人手不足って言いますもんね。
スピーカー 1
そうなんですよ。つまり限られた資源をいかに無駄なく本当に必要な場所に届けるかっていうのがもう待ったなしの課題になってるんです。
スピーカー 2
昔みたいにとりあえず良さそうだから予算をつけて全部やってみようみたいにお金をばらまく余裕はもうどこにもないってことですよね。
スピーカー 1
ええその通りです。そこで今国を挙げて推進されているのがEBPMというアプローチなんです。
スピーカー 2
EBPMですね。
スピーカー 1
はい。エビデンスベースドポリシーメイキングの略で日本語だと証拠に基づく政策立案と呼ばれます。
先ほどの市長の直感みたいにたまたま見聞きした事例とか過去の経験これをエピソードベースと呼ぶんですがそこから完全に脱却しようという抜きですね。
スピーカー 2
つまりエピソードからエビデンスへってことですね。響きは似てますけど中身は真逆というか。
スピーカー 1
そうなんです。
スピーカー 2
でもあの証拠に基づくってなんだか病院とか科学の実験室みたいな言葉に聞こえますよね。
スピーカー 1
そこすごく鋭いですね。実はこの考え方ってもともとは医療の分野のEBMつまり根拠に基づく医療っていうところから来てるんです。
やっぱりそうなんですか。
スピーカー 1
お医者さんの個人的な勘とか昔はこの手術がうまくいったみたいな経験だけに頼るんじゃなくて膨大な臨床データっていう客観的な証拠に基づいて最も効果的な治療法を選ぶこの厳密なアプローチをそのまま行政にも持ち込んだんですよね。
スピーカー 2
なるほど。でもそれを行政でやるとなるとどうするんですか。
ロジックモデルと政策効果の測定
スピーカー 1
そこで政策のコストと効果を可視化するための強力な設計図となるのがロジックモデルという考え方なんです。
ロジックモデル。それって具体的にどういう設計図なんですか。
スピーカー 1
政策のスタートからゴールまでを因果関係でつないでいくんです。まずインプットとして予算とか人員をどれくらい投入するかを決めます。
スピーカー 2
はいはい。
次にアクティビティとしてどんな事業を行うか。その結果どれだけの人が参加したかっていうアウトプットを出します。ここまでは従来の行政も普通にやっていました。
イベントに100人来ました。大成功みたいなやつですよね。
スピーカー 1
そうですそうです。でもロジックモデルが重要なのはその先なんですよ。参加した人にどんな具体的な変化があったのかっていうアウトカム。そして最終的に社会全体にどんなインパクトを与えたのか。ここまでを連続して評価するんです。
スピーカー 2
なるほど。まさに薬の知見みたいに予算を投じたら本当に効いたのかまでをデータできっちり追うわけですね。
スピーカー 1
その通りです。
スピーカー 2
でもここで一つ根本的な疑問があるんですけど、人間の行動とか行政のサービスってどうやってその本当に効いたかを正確に測るんですか。イベントの後にアンケートを取って満足しましたかって聞くくらいしか思いつかないんですけど。
スピーカー 1
まさにそこがEBPMの肝なんですよね。アンケートだけだとイベントに参加してその時だけ気分が上がったみたいな他の要因を排除できないんです。
スピーカー 2
確かに。
スピーカー 1
ここで非常に興味深いのは、今の行政の現場に驚くほど厳密な科学的測定手法が導入され始めているってことなんです。その代表的なのがランダム化比較実験、通称RCTと呼ばれるものです。
スピーカー 2
RCT、なんか難しそうですね。
スピーカー 1
いや意外と短ですよ。よくYouTubeとかでサムネイル画像を2つのパターン用意して、どちらが多くクリックされるかテストするABテストってありますよね。
スピーカー 2
はいはい、よく聞きますね。
スピーカー 1
あれと同じです。対象者をくじ引きみたいに完全にランダムに2つのグループに分けて、一方にだけ新しい政策を行って、もう一方は何もしないんです。そして結果を比べることで、政策そのものの純粋な効果だけを炙り出すんですよ。
スピーカー 2
あーなるほど。YouTubeのサムネイルのテストを行政サービスでやるわけだ。でも例えばこのグループにはサービスを提供しませんって、意図的に分けるのって行政だと不公平じゃないかって言われませんか?
スピーカー 1
おっしゃる通りです。倫理的にも制度的にも難しいケースが多々あります。そういう時に活躍するのが回帰不連続デザイン、RDDという手法なんです。
スピーカー 2
回帰不連続?
スピーカー 1
名前はちょっと固いんですけど、仕組みはすごく合理的でして、例えば年収300万円以下っていう明確な基準で補助金を出すとしますよね。
この時、年収299万円で補助金をもらった人と、年収301万円でもらえなかった人を比べるんです。
スピーカー 2
あーなるほど。たった2万円の差なら、その人たちの生活環境とか属性ってほぼ同じはずですよね。
その通りです。基準線のギリギリにいる人たちを比べれば、無理にランダムに分けなくても補助金の純粋な効果が見えてくるんですよ。
スピーカー 2
すごい賢いやり方ですね。
スピーカー 1
さらにもう一つ、差の差分析、DIDという手法もあります。
例えば、隣り合う似たような2つの街があったとして、A街は新しいスマート街頭を導入して、B街は導入しませんでした。
はいはい。
スピーカー 1
DIDは、今のA街とB街を単純に比べるんじゃなくて、過去1年間でそれぞれの街がどれくらい変化したかっていう変化の差を比べるんです。
スピーカー 2
変化の差ですか。
スピーカー 1
ええ。例えば、ガソリン代の高騰とか天候の影響って、A街にもB街にも同じように影響しますよね。
スピーカー 2
そうですね、隣町なら。
スピーカー 1
ですから、それぞれの街が時間経過でどう変化したかの差の差を見ることで、そういった外部要因をきれいにフィルターにかけて、スマート街頭の純粋な防犯効果だけを抽出できるんです。
スピーカー 2
それはすごいですね。つまり、直感とかたまたまうまくいったっていう偶然を排除して、本物のエビデンスだけを取り出せるわけですね。
スピーカー 1
そういうことです。
データで解決する自治体の事例
理屈はすごくよくわかりました。でも、それが実際にどうやって私たちの街のリアルな問題を解決しているのか。
スピーカー 2
資料を読んでいて、実際にデータが街を救った成功事例に驚いたんですけど。
スピーカー 1
はい、いくつか面白い事例がありますよ。
スピーカー 2
例えば、医療現場の崩壊みたいな深刻な問題って、データ分析なんかで解決できるものなんですか?
素人考えだと、とにかくベッドの数を増やすしかない気がするんですが。
スピーカー 1
実はですね、宮城県仙台市がまさにその危機に直面して、データで見事に乗り越えたんです。
スピーカー 2
仙台市ですか?
スピーカー 1
コロナ禍で救急医療が逼迫したとき、最初は下医療機関に対して何とか受け入れてくださいってお願いするしかなかったんです。
スピーカー 2
お願いだけじゃ現場パンクしたままですよね。
スピーカー 1
そうなんですよ。そこで仙台市はベッドを物理的に増やすのではなく、救急統計データから応受率、
つまり救急車が来たときに病院が受け入れられる確率を算出したんです。
スピーカー 2
応受率、なるほど。
スピーカー 1
そして過去のデータと照らし合わせて、いつどのような状況でこの確率が急激に低下するのかっていうパターンを可視化しました。
スピーカー 2
なんと、それでつまり、逼迫する兆候を予測したってことですか。
スピーカー 1
ええ。来週のこのタイミングで医療資源が不足しますっていう具体的なデータを見せられたことで、医療機関側も具体的な対策を打てるようになったんです。
単なるお願いっていうエピソードベースから予測データに基づく戦略への見事な転換ですよね。
スピーカー 2
救急車の受け入れっていう命に関わる問題がデータで解決に向かったわけですね。
じゃあ最初の市長の直感で10億円の駅前広場を作るみたいな物理的なまちづくりについてはどうですか。商業施設を作れば人が集まるっていうのは直感というか常識に思えますけど。
スピーカー 1
兵庫県加古川市のJR加古川駅前再開発の事例がですね、まさにその常識を覆したんです。
スピーカー 2
え、そうなんですか。
スピーカー 1
市も最初は駅前に商業施設を置けばにぎわうだろうっていう前提で考えていたんですが、念のために人々の移動データを分析してみたんです。
すると驚くべき事実が判明しました。
スピーカー 2
どんな事実ですか。
スピーカー 1
駅周辺を訪れる人の実に6割が電車じゃなくて車で来ていたんです。
スピーカー 2
え、駅前なのに6割が車ですか。それは誰も予想していなかったでしょうね。
スピーカー 1
はい、このエビデンスを前に加古川市は商業施設さえあればいいという神話をあっさりと捨てました。
思い切りましたね。
スピーカー 1
そして道路網とか駐車場の整備など交通ネットワークと一体化した街づくりへと大きく方針を転換したんです。
まさにデータが無駄な運物行政を未然に防いだ事例ですね。
スピーカー 2
なるほどな。さらに資料を読むと一時産業の世界でもデータが活躍しているんですよね。高知県の農業の話とか。
スピーカー 1
ああ、高知県のIOPクラウド、通称サワチの取り組みですね。これは本当に画期的ですよ。
農業ってどうしてもおじいちゃんの長年の勘みたいな俗人的な技術になりがちじゃないですか。
スピーカー 2
そうですよね。この風の匂いは雨が降るみたいな熟練の技というか。
スピーカー 1
高知県はそこを産学勘で連携して、県知事と1400戸以上の農家がデータ利用契約を結んだんです。
スピーカー 2
1400戸も?
スピーカー 1
はい。日射量とかハウス内の温度、水やりのタイミングなど、熟練農家のノウハウをすべてデータ化して一元管理したんです。
その結果、このシステムを利用した農家は利用していない農家に比べて年間出荷量が約3割も増加したという驚異的な結果を出しました。
スピーカー 2
3割増しは劇的ですね。医療、都市開発、そして農業、データが文字通り街のインフラを救っているんですね。
スピーカー 1
本当に様々な分野で成果が出ています。
自治体DXの現場と課題
あの、でもちょっと待ってください。データを見れば解決策がわかるというのはすごく理想的ですが、そもそも市役所の職員さんたちってデータサイエンティストの集団じゃないですよね?
スピーカー 1
はい、もちろん違いますね。
スピーカー 2
そんな高度な分析をいきなり求められて現場はパンクしないんですか?
スピーカー 1
おっしゃる通りです。そこがまさにEBPM推進の最大の壁になっているんですよ。現状多くの自治体が3つの課題を抱えています。
スピーカー 2
3つの課題?
スピーカー 1
1つ目はそもそも紙ベースの業務が多くて分析できるデータとして存在していないこと。2つ目は統計分析の専門スキルを持つ人材の不足。そして3つ目が分析を外部のコンサルタントに該注すると莫大なコストがかかってしまうことです。
毎回コンサルに頼んでいたら、それこそ税金の無駄遣いになっちゃいますよね?
だからこそ、外部に丸投げするんじゃなくて、現場の職員自身が日常的にデータを扱える仕組みを作ることが重要なんです。
スピーカー 2
なるほど、でもどうやって?
スピーカー 1
その課題を見事に解決しているのが兵庫県神戸市の神戸データラウンジという取り組みなんです。
スピーカー 2
どうやって専門知識のない職員が分析をしているんですか?
スピーカー 1
神戸市はBIツールという複雑な数字の羅列を直感的なグラフとかダッシュボードに自動で変換してくれるソフトウェアを導入しました。
ああ、BIツール。
スピーカー 1
これにより一般の職員が自らDIY感覚でデータを分析できる環境を整えたんです。
スピーカー 2
プログラミングができなくても直感的にデータをいじれるわけですね。
でも、それってただ市役所の人の仕事が楽になっただけじゃないですか?
私たち住民にどう関係してくるんでしょうか?
スピーカー 1
それは非常に重要な視点ですね。
職員がExcelと格闘したり資料作成に何日も費やしたりする時間が減ればどうなるか。
スピーカー 2
どうなるんですか?
スピーカー 1
その浮いた時間はこのデータが何を示しているのかとか、それをどうやって住民の支援策に落とし込むかっていう本質的な議論や、
実際に住民の顔を見て支援する福祉の現場に振り向けられるんです。
スピーカー 2
なるほど。職員の作業時間が減るっていうことは、それだけ住民への直接的なサービスに時間を使えるようになるってことですね?
スピーカー 1
その通りです。
スピーカー 2
でも、そのDIYデータ分析を市役所全体で回すためには、そもそも日々の業務がきちんとデジタル化されている必要がありますよね。
いわゆる自治体DXって、AIだのスマートシティだの言う前に、もっと泥臭い職場の環境改善から始まっている気がします。
スピーカー 1
いや、まさにその通りなんです。
国も自治体DX推進計画を立てていますが、現状はまだ足元のインフラ整備の段階なんですよ。
例えば、北海道浜尻市の事例は、その泥臭い現実をよく表しています。
スピーカー 2
あの事例は生々しかったですね。市役所のネットワークが物理的な優先欄に縛り付けられていたっていう。
スピーカー 1
はい。パソコンがデスクに固定されているため、災害対策本部などの別の部屋にノートパソコンを持ち込んで仕事することができなかったんです。
スピーカー 2
いざという時に動けないのは致命的ですよね。
スピーカー 1
ええ。それをGoogleワークスペースというクラウドツールを導入することで、ようやく場所の縛りから解放されたんです。
同時にチャットツールも根付いて、電話とかハンコ待ちの時間が消えて、コミュニケーションが爆発的に早くなったそうです。
スピーカー 2
群馬県前橋市も、Chromebookというノートパソコンを導入して、軽兵装の会議をペーパーレス化したんですよね。
毎回何百枚も紙を印刷して配っていた手間と、それに伴う税金のコストを大幅に削減したと。
スピーカー 1
そうですね。あと、岩手県猪瀬町の図書館の例も興味深いです。
手のひらサイズの小型パソコンであるChromeboxを導入して、高齢者でも使いやすい大画面モニターを用意しつつ、システム管理者のメンテナンスの手間を大幅に減らしています。
スピーカー 2
へえ。
スピーカー 1
こうした町内の小さな痛みの解消が、やがて住民へのサービス向上へとつながっていくんですよ。
スピーカー 2
確かに、町内の変化がだんだんと住民との直接の接点にも及んできているんですよね。
例えば、東京都豊島区では、ビデオトークというツールを入れて、引きこもりの方などが自宅からスマホのカメラ越しに、区の相談員と顔を見て話せる環境を作りましたよね。
スピーカー 1
ええ、素晴らしい取り組みだと思います。
スピーカー 2
それから、鹿児島県天見市では、電子契約の仕組みを入れて、離島ならではの書類を郵送して何日も待つという時間とコストの問題を一気に解決しています。
スピーカー 1
こうしたDXの成功例を全体像と結びつけて考えると、非常に重要な共通点が見えてくるんです。
住民サービスを変えるデジタル化
スピーカー 1
それは、職員の業務効率化と住民の利便性の向上は、車の両輪だということです。どちらか片方だけでは絶対にうまくいきません。
スピーカー 2
単に最新のタブレットを配ればいいって話じゃないんですね。
スピーカー 1
ええ、なぜそのシステムを入れるのか。それによって、長年凝り固まった業務プロセスをどう作り直すのか。
その痛みを伴う業務改革があって初めて、データがスムーズに流れ出して、最初のテーマだったEBPMを回す土台が完成するんです。
スピーカー 2
そうか、自治体DXという足場が固まって初めて、データに基づく政策決定が可能になるんですね。
はい。
では、その足場が完成した先で、私たち住民、つまり今これを聞いているあなたの日常的なサービス体験は具体的にどう進化していくのでしょうか。
デジタル庁のサービスカタログを見ると、未来の断片がすでに実装され始めていますよね。
スピーカー 1
そうですね。ここから先のフェーズでは、マイナンバーカードと最先端サービスの融合が大きな鍵を握っています。
スピーカー 2
まずは公共交通ですね。ボールドリーという企業が提供する自動運転バス。
これ、マイナンバーカードのアプリと連携していて、スマホ一つで乗車予約ができるんですよね。
スピーカー 1
本当に便利になっています。
スピーカー 2
さらにすごいのが、乗車すると地域ポイントが付与されて、移動先のスーパーで買い物に使えるんです。
移動と経済が一体化したエコシステムができているんですよね。
スピーカー 1
ユニトランドのチケットQRとか、タクシー運賃割引のシステムもすごく実用的ですよね。
スピーカー 2
はい。市内のバスやタクシーに乗るとき、専用端末にマイナンバーカードをピッとかざすだけなんです。
この人は市内に住んでいる高齢者だっていう認証が一瞬で行われて、自動的に市民割引が適用されるんですよね。
いちいち面倒な証明書を見せる必要がないんです。
スピーカー 1
医療や健康、子育ての分野でも住民の負担を劇的に減らすサービスが登場していますよ。
スピーカー 2
北九州市で導入されているボシモというアプリでは、妊娠の届出が完全にデジタル化されました。
なんと今では93.8%の妊婦さんがスマホからデジタル申請しているそうです。
スピーカー 1
93.8%ですか。それはすごい普及率ですね。
スピーカー 2
そうなんです。窓口で待たされるストレスがなくなり、結果的に私職員の業務工数も年間で460時間も削減されたそうです。
スピーカー 1
お互いにとってウィンウィンですね。
モネテクノロジーズの出張健康相談も画期的ですよ。
中を自由にカスタマイズできる車が地域を巡回して、車内でオンライン保険指導を受けられるんです。
スピーカー 2
巡回するクリニックみたいな感じですね。
スピーカー 1
しかもその場でマイナンバーカードを使って、自分の過去の診療履歴とか検診情報を離れた場所にいる専門医と正確に共有できるんですよ。
スピーカー 2
わざわざ遠くの病院に行かなくても、自分にパーソナライズされた質の高い医療サービスが向こうからやってくる感覚ですね。
スピーカー 1
ここで強調しておきたいのは、これらの技術が決して一部の人が得をする便利ツールではないってことなんです。
スピーカー 2
と言いますと?
スピーカー 1
例えば、岐阜県関市では集積したビッグデータを活用して、自ら助けを求めてこない声なき住民をマッピングしています。
災害時に本当に支援が必要な高齢者とか、障害を持つ方々がどこにいるのか、見えないリスクを可視化しているんです。
データがいざというときのセーフティーネットになっているんですね。
スピーカー 1
徳島市では、泡躍りに集まる130万人の人流データを分析しています。
人間の目視とか感では絶対に測りきれない混雑状況を可視化して、次回の警備配置とか安全対策の強固なエビデンスにしているんです。
これらはすべて、見えないところで私たちの命や生活を守る新しい都市のインフラとして機能し始めているんですよね。
住民が共同創造者になる行政
スピーカー 2
なるほど。さて、これらはすべて何を意味しているのでしょうか。
これまで見てきたEBPMと自治体DXは、単に市役所の仕事を自動化して楽にするというような冷たいデジタルの話ではありませんでした。
スピーカー 1
はい。
スピーカー 2
税収も働き手も減っていく厳しい現実の中で、本当に支援が必要な人、それはあなたやあなたの家族かもしれませんが、その人たちに的確に無駄なくサービスを届けるための温かいインフラを作ろうとしている。そういうことなんですね。
スピーカー 1
その通りです。ただ、この大きな進化がもたらす未来について、最後に一つだけ少し視点を変えて皆さんに考えてみてほしいことがあるんです。
スピーカー 2
何でしょうか。
スピーカー 1
データを駆使することで、行政はあなたのニーズを完璧に予測して、あらゆる無駄が省かれた最適化されたスマートシティが実現しつつあります。あなたにとっての最適解が先回りして自動で提供される時代です。
スピーカー 2
すごく便利そうですが。
スピーカー 1
しかし、その便利さの中で、私たち住民はただ口を開けてサービスを受け取るだけの消費者になってしまって良いのでしょうか。
スピーカー 2
すべてお任せのお客様状態ですね。
スピーカー 1
データの力で行政が透明化されるということは、私たち自身が自分の街がどう運営されているかを確認できるようになったということです。
確かに。
スピーカー 1
自分のデータを自らコントロールし、行政の意思決定のプロセスを理解した上で、ともに街の未来をデザインする共同創造者になるべきではないでしょうか。
スピーカー 2
本当にそうですね。もはや市長の勘だからとか、昔からそうだからっていう理由は通用しない時代です。
あなたの収めた税金の使い道が誰かの直感で決められる時代から、確かなエビデンスで描かれる時代へ。
次回、あなたの住む街で新しい政策や施設の建設計画が発表された時、ぜひこう想像してみてください。
その裏にあるエビデンスは一体何だろうかと。
スピーカー 1
その問いこそが、街を変える第一歩になるはずですからね。
スピーカー 2
そうですね。それでは今回の深掘りはこの辺で。
22:24

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