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IT技術者と地域の溝:地方自治体のDX推進とデジタル人材育成の現状(既存の自治体職員の心に火をつけるには)
2026-10-05 18:18

IT技術者と地域の溝:地方自治体のDX推進とデジタル人材育成の現状(既存の自治体職員の心に火をつけるには)

既存の自治体職員の心に火をつけ自治体DXを推進するための統合ブリーフィング・ドキュメント

エグゼクティブ・サマリー

地方自治体におけるデジタル・トランスフォーメーション(DX)の推進は喫緊の課題であるが、多くの自治体で現場の機運醸成や人材育成に難航している。総務省の調査によれば、全国の市区町村の**83.4%**が「DXの認識共有・機運醸成(ステップ0)」を主な課題として挙げており、73.7%が「職員の育成方針策定が困難」と感じている。また、人口5万人以下の市町村の292団体では、DX・情報関係業務の担当職員が1人以下という厳しいリソース制約に直面している。

既存の自治体職員の「心に火をつける」――すなわち、職員が主体性を持って変革に立ち向かう状態を創出するためには、単なるデジタルツールの操作研修や外部専門家への頼り切り(「白馬の王子様」待ち)から脱却し、以下の構造的アプローチを推進することが極めて重要である。

  1. 技術の導入ではなく「ありたい姿(ビジョン)」の共有: 大分県DX推進戦略が「『変革(X)』ですら目的ではない。ありたい姿(ビジョン)が重要」と掲げるように、デジタルスキルを特定部署のものとせず、自らの業務や地域課題をどう変えるかというビジョンを提示・共有する。
  2. 「当事者意識」の醸成と外部人材との「協働」: 日々の業務プロセス、独自の組織文化、住民関係に最も習熟しているのは自治体の現場職員である。福井県鯖江市における「コーポレートフェローシップ(地域フィールドラボ)」のように、民間企業(SAP、NEC、Yahoo!、富士通、大鵬薬品等)からの人材を組織内に迎え入れ、現場職員とチームとして対等に協働・共創することで、職員の問題解決力とシビックソウル(主体性)を喚起する。
  3. 日常の「不満」を解決に繋げる成功体験の創出: シビックテック(Code for Sabae等)やシニア・子供向けプログラミング教室(IchigoJam等)の取組で見られるように、日常業務における不満や課題を起点とし、手元でのプロトタイピングや課題解決を実践させることで、「自分たちのまちは自分たちで創る」精神を職員内部に育成する。
  4. 階層別の明確な人材像と目標の設定: 総務省の指針に基づき、職員を「高度専門人材」「DX推進リーダー」「一般行政職員」の3つの階層に定義し、特に「全課に1人」といったDX推進リーダーの育成目標を明確化する。リーダーには高度なITスキル以上に、業務とデジタルの双方を理解し、周囲を巻き込む対人コミュニケーション能力と変革マインドが求められる。
  5. 体制整備・HR(人事)政策・広域連携による環境構築: 首長の強いコミットメントのもと、DX推進部局と人事・人材育成部局が緊密に連携し、自治体の強みである「総合性(ローテーション慣行)」を活かしたキャリアパスや複線型人事を検討する。また、高度な専門技能に対する正当な評価(給料調整額の活用等)や都道府県による広域的な人材共有・ネットワーク化を活用する。
  6. 民間のレガシーシステム脱却から学ぶ「丸投げ」の打破: 産業界では、システムや業務の「丸投げ体質」がブラックボックス化を生み、年間最大12兆円の経済損失をもたらす「2025年の崖」が懸念されている。自治体においても外部やベンダー依存を排し、経営層(首長・幹部)・DX部局・業務部門が一体となってシステムと業務の可視化・自律化を進める必要がある。

1. 地方自治体におけるデジタル人材育成とDXの現状・課題

1.1 統計データに見る自治体の現状と構造的打撃

総務省等の各種調査によると、地方自治体におけるデジタル化・DX推進を巡る現状は、人手不足と育成方針の不透明さによって深刻な状況にある。

調査項目対象・条件統計値・データ課題の背景と示唆
DX・情報関係担当職員が1人以下人口5万人以下の市町村(令和4年度)292団体兼任を含めて1人未満のケースもあり、体制構築自体が極めて困難。
職員育成の取組を実施全市区町村1,311団体(75.3%)何らかの研修や取組は行われているが、質・実効性に差がある。
育成方針の策定が困難全市区町村1,283団体(73.7%)「何を目標にどのような人材を育てるべきか」の方針が立っていない。
DXの認識共有・機運醸成が課題全市区町村(令和5年8月調査)1,452団体(83.4%)個別施策(標準化・BPR等)以前の「ステップ0」で停滞している。

市区町村の大多数においては、基幹システムの標準化・共通化やBPRといった具体的作業以前に、「DXの必要性の浸透」「組織内での認識共有・機運醸成(全体手順書におけるステップ0)」が最大の障壁となっている。

1.2 現場に蔓延する誤解と「白馬の王子様」幻想

現場の自治体職員の間には、「デジタルスキルは情報システム担当やDX担当の職員だけが身につければよい」という不全感や人事不省が存在する。

総務省の調査では、現場の市区町村から「目の前の業務を楽にしてくれるデジタル人材を外部から派遣してほしい」という趣旨の回答が多数寄せられた。しかし、以下の理由から外部頼み(「白馬の王子様」的発想)によるDXは不可能とされる。

  • 日々の業務プロセス、運用システム、自治体固有の組織文化、意思決定の仕組み、住民との関係性に**最も精通しているのは他ならぬ「現場の自治体職員」**である。
  • 現場職員自らが関与・努力することなく、外部人材が導入されるだけで業務が効率化・変革することはあり得ない。
  • 外部人材の役割は業務の肩代わりではなく、職員とチームを組み、協働して変革を推進すること(伴走)にある。

2. 既存自治体職員の主体性と情熱を引き出すコア要件

既存職員の「心に火をつける」には、受動的な研修を受けさせるだけでは不十分であり、モチベーションと当事者意識を構造的に刺激する工夫が必要である。

【既存職員の意識変革と主体性創出の流れ】

  [従来の誤解・受動的姿勢]
  ・「デジタルは専門部署任せ」
  ・外部からの「白馬の王子様」依存
              │
              ▼
  [ビジョンの共有と意識改革]
  ・「ありたい姿」の明確化(大分県例:変革は手段、ビジョンが目的)
  ・自らの業務・地域の課題をデジタルで変える当事者意識の確立
              │
              ▼
  [共創・協働による体験(成功体験)]
  ・コーポレートフェローシップ(民間人財との市役所内チーム結成)
  ・日常の「不満」に基づくハッカソン・プロトタイピング(鯖江市例)
              │
              ▼
  [主体的なDX推進者への成長]
  ・「行政」と「デジタル」の両方がわかるDX推進リーダーの台頭

2.1 「変革(X)の先のビジョン(ありたい姿)」の明確化

職員にデジタル化の必要性を理解させるためには、「デジタル技術の導入」そのものを目的にしてはならない。

  • 大分県DX推進戦略の事例: 同戦略では『「変革(X)」ですら目的ではない』『ありたい姿(ビジョン)が重要』と明確に記述している。行政や地域社会の将来像(どのような課題を解決し、どのような付加価値を創出し、行政サービスを維持するか)を提示し、職員自らの言葉で表現・理解させることが、苦手意識を払拭する第一歩となる。

2.2 民間人財との協働:コーポレートフェローシップ(地域フィールドラボ)の活用

福井県鯖江市などで展開された「コーポレートフェローシップ(Code for Japan推進)」は、民間企業の社員が一定期間「臨時市役所職員」として常駐し、行政課題の解決にあたる取り組みである。外部のプロフェッショナルが現場に深く入り込み、職員と「同じ目線」で課題に向き合うことで、既存職員の意識を劇的に変化させる。

鯖江市におけるコーポレートフェローシップ(地域フィールドラボ)の受入実績

実施時期参画企業担当者・テーマ成果・波及効果
2014年10月〜11月SAPジャパン奥野氏(世界初のトライアル)市役所に常勤し、企業研修と自治体留学を融合させた問題解決力の検証。
2015年12月〜2016年2月NECソリューションイノベータ石崎氏地元シビックテック(Code for Sabae)と連携し市役所業務をバックアップ。
2016年11月〜2017年1月Yahoo! JAPAN廣瀬氏、葛城氏(2名)公共交通をテーマとした現場協働。
2017年11月〜2018年1月富士通三ツ山氏障がい者に寄り添うオープンデータ活用。Python3での市役所スクレイピングやハッカソン開催。
2018年10月報告大鵬薬品工業第5期地域フィールドラボ特定健診・がん検診のウェブ予約開始、サスメド社とのAI共同研究契約、Facebookでの事業可視化。

こうした民間企業との深密な共創体験は、行政の当たり前を覆し、職員に「自ら業務を変革するモチベーション」を注入する強力な触媒となる。

2.3 日常の「不満」を起点とするプロトタイピングとシビックテック精神

職員の情熱を呼び起こすには、大掛かりなシステム導入だけでなく、「日々の業務の不満や身近な課題」を自ら解決する成功体験が有効である。

  • 「自分たちのまちは自分たちで創る」精神(Code for Sabaeのモデル): 鯖江市では、シニアや子供向けにプログラミング(IchigoJam等)教室を展開し、日常の不満をベースにしたアプリ開発(プロトタイプ制作)を行うハッカソンが実施された。
  • 小さな課題解決の積み重ね: 消火栓検索、AEDナビ、トイレ徒歩ナビ、図書館の空席センサーアプリ(sabota)など、オープンデータを活用して身近な利便性を高める経験が、行政職員の「シビックソウル(市民・行政双方の主体性)」に火をつける。

3. 自治体DXを支える人材像の階層化と育成目標

総務省の「人材育成・確保基本方針策定指針」および改定された「全体手順書」では、自治体の実情に合わせて職員を3つの階層に定義し、計画的に育成・確保することを推奨している。

3.1 3つの人材像の定義と求められる資質

┌─────────────────────────────────────────────────────────┐
│                    ① 高度専門人材                       │
│  ・DX戦略、データ分析、セキュリティ、システム監視等       │
│  ・主に外部人材(アドバイザー等)を活用・確保             │
└──────────────────────────┬──────────────────────────────┘
                           │ 指導・アドバイス
┌──────────────────────────▼──────────────────────────────┐
│                    ② DX推進リーダー                      │
│  ・行政実務 × デジタルの知識を兼備                          │
│  ・対人スキル、コミュニケーション、関係者の合意形成          │
│  ・「全課に1人」等の目標設定により全庁配置を目指す          │
└──────────────────────────┬──────────────────────────────┘
                           │ 伴走・フォロー
┌──────────────────────────▼──────────────────────────────┐
│                    ③ 一般行政職員                       │
│  ・デジタルリテラシー、ツール(RPA・BI等)の実践的活用     │
│  ・一次対応能力を高め、専門部署の負荷を軽減                 │
└─────────────────────────────────────────────────────────┘

1. 高度専門人材

  • 定義:DX戦略、データ分析・利活用、ユーザー環境、セキュリティ、システム監視・管理など専門性が高度に分化された分野で指導的役割を果たす人材。
  • 育成・確保手法:基本的に外部デジタル人材の活用が想定される。プロジェクト期間や内容に応じて採用し、継続的に知識が必要な場合は「アドバイザー」等として活用する体制を整える。

2. DX推進リーダー

  • 定義:一定のデジタル知識と行政実務の深い経験・知識を兼ね備え、一般職員と高度専門人材の橋渡しとなって実務を取りまとめる中核人材(情報システム課・DX担当課の職員のみに限定されない)。
  • 求められる資質:高度なIT技術そのものよりも、課題を抽出して解決策をデザインする力、関係者を巻き込んで説得・合意形成する対人スキル、民間IT企業と行政職員の間を取り持つコミュニケーション能力が最重要となる。
  • マインド:デジタル技術に強い関心を持ち、「既存のやり方をいかに変えるか」という変革マインドを養う。「デジタル」と「行政」の双方がわかる人材の育成が肝要である。
  • 目標設定の例:先進自治体では「全ての課に1人ずつ」や「全職員の〇%(一定割合)」といった具体的な数値目標を設けて育成を進めている。

3. 一般行政職員

  • 定義:導入されたデジタルツールを正しく有効に活用し、業務の効率化と住民サービスの向上を図る全ての職員。
  • 具体的なスキル・役割:テレワーク、ペーパーレス、オンライン会議の積極的実施のほか、日常業務でのRPAやBIツールの活用。必要なセキュリティ対策やトラブル発生時の初動対応に関する知識。
  • 組織的インパクト:一般職員のリテラシーが低いと、初歩的な質問がDX担当課に殺到し、企画立案業務が圧迫される。一般職員のスキルの底上げは、全庁的な余力創出(BPR)に直結する。

3.2 スキル基準の設定と「自治体DX推進のための外部人材スキル標準」

  • 経済産業省・IPAの「デジタルスキル標準」は民間企業向けであり、多様な領域をカバーしているため、そのまま自治体現場に適用するのは難易度が高い。
  • このため、総務省が策定した**「自治体DX推進のための外部人材スキル標準(令和4年9月)」**等を参考に、自治体職員が身につけるべきスキル項目やレベル、スキルの組み合わせを各団体で独自に定義・設定することが推奨される。
  • 若手職員の方が管理職よりもデジタルスキルが高いケースが多いため、自己申告等により把握したスキルが行政現場で活用可能かを判断し、適材適所で活かす仕組みが必要である。

4. 既存職員を生かす組織体制・HR施策・広域連携

4.1 首長のコミットメントと部局間連携

自治体DXは、短期間で未経験の領域に全庁横断で挑むプロジェクトである。目の前の通常業務で多忙な原課(業務担当課)を動かすには、首長をはじめとする幹部職員の強いコミットメントが不可欠である。

また、「DX推進部局」と「人材育成・人事担当部局」の緊密な連携が絶対条件となる。

  • 自治体が目指す将来像・DX計画と、人事の育成方針を直結させる。
  • 現行職員のスキル把握、将来の業務量・必要配置数の推計、既存職員の目標育成人数の設定、全体研修計画への盛り込みを両部局が主体的に議論し、「人材育成・確保基本方針」に明記・改正する。

4.2 自治体の「総合性」を活かしたキャリアパスと複線型人事

地方自治体の最大の強みは、福祉、介護、環境、消防、教育、税務など幅広く住民課題を「総合的」に解決できる点にある。このため、多くの自治体では**「3年程度のジョブローテーション」**を通じて幅広い行政経験を積ませる人事慣行が根付いている。

デジタル人材の育成においては、この「総合性」と「デジタル専門性」をいかに融合させるかが鍵となる。

  • 専門性と行政実務の両立:単なるシステムの構築・保守(従来の情シス業務)にとどまらず、デジタルを活用して「行政そのものを変革する」人材を育てるため、複数の行政分野を経験させつつ、デジタル分野の専門性を高めるキャリアパスを設計する。
  • 複線型人事の導入:従来のゼネラリスト育成ルートとは別に、デジタル専門スキルを高く評価・活用する複線型人事を導入する自治体が登場している。国(政府デジタル人材)においても中長期的な視点での人事ローテーションの工夫が提示されている。
  • 正当な評価と処遇:育成したデジタル人材が民間企業等へ流出(退職)するリスクを防ぐため、やりがいやエンゲージメント向上施策に加え、「給料の調整額」の活用や高度な研修機会の提供など、専門性に対する適切な処遇と評価検討が必要である。

4.3 都道府県を軸とした「広域連携」

小規模自治体や単独での人材確保・育成が困難な団体に向けては、都道府県が主導する広域連携が極めて有効である。

【都道府県をハブとした広域連携モデル】

               ┌─────────────────────────┐
               │        都道府県         │
               └───────────┬─────────────┘
                           │
    ┌──────────────────────┼──────────────────────┐
    │ (1) 高度人材シェア   │ (2) 共同研修・講師   │ (3) 職員ネットワーク
    ▼                      ▼                      ▼
┌──────────────┐    ┌──────────────┐    ┌──────────────┐
│ 市町村 A     │    │ 市町村 B     │    │ 市町村 C     │
│ (小規模団体) │    │ (小規模団体) │    │ (小規模団体) │
└──────────────┘    └──────────────┘    └──────────────┘
  1. 高度デジタル人材のシェアリング:都道府県が一括して高度な外部人材を確保し、域内の市町村間でシェア・派遣する体制の構築。
  2. 共同研修の実施:研修ノウハウが不足する小規模自治体のため、都道府県が主導して基礎研修・共同研修を企画、または講師を派遣する。
  3. DX担当職員のネットワーク化:情報担当者が1人しかいないような自治体の孤立を防ぐため、都道府県が場をセットし、市区町村のDX担当者が情報交換や課題解決を共同で行うコミュニティ・ネットワークを形成する。

5. 企業のDX・レガシー脱却から学ぶ組織変革の示唆

経済産業省・IPAの「レガシーシステムモダン化委員会」等のレポートに見る民間のDX支援・システム刷新の事例は、自治体における組織改革・ベンダーコントロール・意識変革においても多くの示唆を与えている。

5.1 「2025年の崖」と外部依存(丸投げ)のリスク

民間企業では、老朽化・複雑化・ブラックボックス化したレガシーシステムを放置した結果、デジタル技術の活用が進まず、**年間最大12兆円の経済損失が発生する「2025年の崖」**が警告されている。

  • レガシーシステムの保持率:全産業のユーザー企業の**61%がレガシーシステムを保有しており、特に大企業では74%**に達する。
  • 「丸投げ構造」による低位安定:ユーザー企業がITをコストと見なし、企画や構築、保守の全工程をベンダー企業に「丸投げ」してきた結果、自社内にIT対応能力やノウハウが蓄積されず、システムがブラックボックス化する悪循環に陥った。
  • 自治体への示唆:自治体行政においても、システムやBPRを「外部ベンダーに丸投げ」している限り、自庁の職員のスキルも意識も向上しない。外部人材はあくまで「伴走者」であり、主導権(自律性)は自治体自身が握らなければならない。

5.2 経営層(首長)・IT部門(DX部局)・業務部門(現場)の3者共有の必須性

調査データ分析によると、レガシー脱却やDXに成功している企業と停滞している企業の間には、**「情報共有」と「ガバナンス」**において決定的な相違が存在する。

民間企業のDX調査に基づく成功企業と停滞企業の相関分析

分析項目成功・進展している企業の特徴停滞・未着手の企業の特徴
関係部門間での情報共有経営層・情報システム部門・業務部門の3者で計画や仕様、投資対効果(見積)を共有(**38%**が順調)。関連部門間での定期的な情報共有がなく、情シス部門のみ等で閉じている(**12%**のみ順調)。
可視化とブラックボックス対策システム仕様の可視化やドキュメント化を実施している企業は、**内製化(自律的運用)が87%**進行。仕様がブラックボックス化しており、ベンダーに全工程を委託している割合が83%。
CxO(最高情報責任者等)の設置CxOを設置している企業は、設置なし企業に比べてシステムの可視化が進み、モダン化が順調(71%)。CxO未設置の企業は、ITガバナンスが機能せず、ブラックボックス化(81%)や停滞が進む。
中期計画(経営方針)への反映大規模システムの刷新・DXを経営計画の重要方針として明確に位置付け。中期経営計画で大規模システム導入に触れている企業はわずか**12%**にとどまる。

この民間企業における実態は、自治体組織にも完全に当てはまる。「首長(経営者)」「DX推進部局(情報システム部門)」「各課原課(業務部門)」の3者が一堂に会し、リスクや投資対効果、目指すべきビジョンを常時共有する体制をつくらなければ、現場職員の意識改革もシステムの刷新も達成できない。

6. 結論:既存職員の心に火をつけ自治体DXを推進するための指針

既存の自治体職員の心に火をつけ、持続可能な自治体DXを実現するための要諦は、以下の統合的ロードマップに要約される。

【既存自治体職員の情熱と主体性を引き出す推進指針】

1. 意識改革(ビジョンと当事者性の確立)
   ・「デジタル技術の導入」ではなく「ありたい姿(ビジョン)」を提示する。
   ・外部人材への「白馬の王子様」依存を脱し、自らが変革の主役である認識を持たせる。

2. 成功体験の創出(共創とプロトタイピング)
   ・「コーポレートフェローシップ」等により、民間人材と現場職員が対等に組むチームをつくる。
   ・日常業務の「不満」や地域課題を起点に、シビックテックの手法で身近なアプリ・改善策を形にする。

3. 明確な人材像と目標設定(3層モデル)
   ・「高度専門人材(外部活用)」「DX推進リーダー(全課配置目指す)」「一般行政職員」に階層化。
   ・DX推進リーダーには、IT技術以上に「行政実務」「対人・合意形成スキル」「変革マインド」を求める。

4. 組織・人事(HR)基盤の刷新
   ・首長の強いコミットメントのもと、DX部門と人事部門が強固に連携する。
   ・自治体の強みである「総合性(ローテーション)」を活かしたキャリアパス・複線型人事を導入する。
   ・高度専門技能を正当に評価(給料調整額等)し、エンゲージメントとモチベーションを高める。

5. 三者一体のガバナンス確立(民間レガシー脱却の教訓)
   ・ベンダーや外部への「丸投げ体質」を排除し、業務とシステムの可視化(内製化・自律化)を進める。
   ・首長(経営層)・DX部局・現場原課の3者が常にリスクと目的を共有する体制を構築する。
   ・小規模自治体は都道府県との「広域連携(人材シェア・共同研修・ネットワーク)」をフル活用する。

国の手厚い支援策(地方財政措置、地域情報化アドバイザー、DXアドバイザー派遣、J-LIS研修、自治大学校研修、各種ガイドライン)を積極的に取り入れつつ、外部人材との共創を通じて現場職員自身が「自分たちの行政・地域は自分たちで変える」という達成感を獲得することこそが、職員の心に火をつけ、自治体DXを真の成功へと導く鍵である。

感想

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サマリー

自治体DXでは、人口5万人以下の市町村の約300団体でDX・情報担当が1人以下となるなど、人材不足が深刻です。83.4%の市区町村が、BPR以前の「DXの認識共有・機運醸成」というステップ0を課題に挙げています。外部の専門家に丸投げするのではなく、現場職員が地域の文脈を踏まえて主体的に関わることが重要だと語られます。大分県の「ありたい姿」重視、失敗時の心理的安全性、広島県の共同採用や群馬県の人材シェアリングが事例として紹介されます。さらに、専門職としての評価や給与を保障する複線型人事など、火を持続させる制度設計の必要性が論じられます。

自治体DXの人材不足とステップ0
スピーカー 2
あのー,ちょっと想像してみて欲しいんです。 ある町が数億円というものすごい予算を継ぎ込んで,最新鋭のデジタルインフラを導入したとしますよね。
えっ,よくニュースなんかでも聞く話ですね。 ピカピカのシステムとか,クラウド環境とか,あと最新のタブレット端末なんかをバーンと揃えて,でも,いざ運用しようとしたら,それを専門に動かせるスタッフが町役場にゼロだったとしたら,どうですか?
いやー,それはもうかなり絶望的な状況ですよね。せっかくのシステムがただの箱になっちゃう。 そうなんですよ。でもこれ,笑い話でもなんでもなくて,今の日本で実際に起きていることなんです。
まさにデジタル化っていう華やかな言葉の陰に隠れてしまっている一番深刻な盲点と言えますね。 というわけで,今日の深掘りのテーマはですね,非常にエキサイティングです。
今回総務省がまとめた自治体DX推進に関する膨大な報告書とかガイドライン,それから行政情報システム研究所の特集記事,あとは2025年の崖に関する分析記事ですね。
このものすごい量の資料の束から見えてきた今日の私たちの究極のミッション,それはズバリ,既存の自治体職員の心に火をつけるにはです。
いいですね。この資料の束を読み解いていくと,なんというかシステムっていう箱を作る議論ばかりが先行していて,それを実際に動かす人についての議論がいかに抜け落ちているかっていうのが本当に痛いほどわかりますからね。
スピーカー 2
そうなんですよ,本当にそう思います。
いや本当にそうなんです。これ表面上は何かお堅い行政のデジタル化の話に見えるじゃないですか。
スピーカー 1
まあそう見えがちですよね。
スピーカー 2
でも本質は既存の組織で働く人たちのモチベーションをどう引き出して未知の領域に向かわせるかっていう話なんですよね。
おっしゃる通りです。組織を変えるっていう点においては官民問わず全く同じ構造を持っていますから。
スピーカー 2
だから今これを聞いているあなたがビジネスパーソンであれチームのリーダーであれ,必ず直面する普遍的なテーマに直結しているんです。
スピーカー 1
ええ,誰にとっても一言ではないテーマですよね。
スピーカー 2
さてじゃあまずは資料にあったすごくショッキングなデータから紐解いていきましょうか。
スピーカー 1
はいあのデータですね。
スピーカー 2
令和4年のデータなんですけど人口5万人以下の市町村でDXとか情報関係の業務を担当している職員がなんと1人以下。
これ他の業務との兼任も含めてですよ。
兼任も含めて1人以下ですよね。
スピーカー 2
そうなんです。そんな団体が全国に約300もあるって言うんです。
スピーカー 1
いやあつまり通常業務で手一杯な職員が片手間であついでに街全体のデジタル化もよろしくって言われているような状態ですよね。
スピーカー 2
そうそう無茶振りもいいところですよね。しかも驚くのはこれだけじゃないんです。
全国の市区町村に対してDX推進の課題を調査したところ実に83.4%約1440もの団体がステップゼロでつまずいているって答えているんですよ。
スピーカー 1
出ましたねステップゼロ。要するに組織内におけるDXの認識共有とか機運醸成っていう段階ですね。
スピーカー 2
そうなんです。よくDXの文脈でBPRって言葉が出てくるじゃないですか。
スピーカー 1
業務プロセスの改善ですね。
スピーカー 2
はい。今ある無駄な作業をただデジタル化するんじゃなくて仕事のやり方そのものを根本から設計し直すっていうプロセスですよね。
スピーカー 1
本来のDXには不可欠な要素です。
スピーカー 2
でも83.4%の自治体はそのBPRどころかシステムの標準化の検討すら始められていない。
そもそもなぜデジタル化が必要なのかっていうスタートラインにすら立っていないんです。
スピーカー 1
現実は本当に厳しいですよね。そして資料に記録されている現場の職員たちのリアルな声を見るとその理由がすごくよくわかるんです。
と言いますと?
スピーカー 1
DXはデジタル担当課がやることでしょって完全に人任せにしてしまっている。
あるいは自分たちとは関係のない別世界の出来事として捉えられている現状が浮き彫りになっているんですよ。
スピーカー 2
ああ、なるほど。私なりの例えで言うとですね。
外部依存ではなく現場職員を主役にする理由
スピーカー 2
街に最新鋭のマシンが揃った超高級トレーニングジムをドーンと建てたのに、
そもそも街の住人に運動して健康になろうっていう機運が全くない状態ですよね。
スピーカー 2
ジムの設備が素晴らしいかどうか以前に誰もジャージに着替えようとすらしていないっていうか。
まさにその通りです。それに加えて彼らの日常業務の過酷さっていうのも想像してあげる必要があると思うんです。
スピーカー 2
ああ、公務員の方々の日常ですね。
はい。地方公務員の方々って日々窓口で住民のクレームに対応したり、山のような紙の申請書に判子をしたりして、目の前の業務を回すだけで本当に精一杯なんですよ。
スピーカー 2
ですよね。
スピーカー 1
そこに突然目的もよくわからないままタブレットをポンと渡されて、今日からこれで効率化してくださいなんて言われたらどうなるか。
スピーカー 2
それはただでさえ忙しいのに新しい操作を覚える負担が増えるだけじゃないかって防衛本能が働いちゃいますよ。
スピーカー 1
ええ。健康になりたいとも思っていない人に今日からこの複雑な最新マシンで毎日筋トレしろって言っているようなものですからね。
そりゃ反発して当然です。
スピーカー 2
そうなんですよ。だから決して彼らが怠慢なわけではなくて、これは完全に構造的な問題なんですよね。
スピーカー 1
でもここで資料を読みながら、私の最初の直感として思ったことがあるんです。
スピーカー 2
何でしょう。
スピーカー 1
内部の人たちがそこまで忙しくてITの知識もないんだとしたら、なんで外部からシリコンバレー返りみたいなめちゃくちゃITスキルが高い民間のプロを高い給料で引っ張ってきて、全部その人に任せちゃわないんだろうって。
スピーカー 2
ああ、なるほど。実際総務省の調査に対しても、目の前の業務を楽にしてくれるデジタル人材を外部から派遣してほしいっていう現場の声は多数寄せられているんです。
スピーカー 1
やっぱりそうなんですね。
スピーカー 2
はい。でも資料はこのアプローチが失敗に終わる可能性が高いことを明確に指摘しているんですよ。これがいわゆる白馬の王子様症候群ですね。
白馬の王子様、つまり外部からやってきたITの天才が魔法の杖をピッと振って、全ての非効率を解決してくれるっていう幻想ですか?
その通りです。
スピーカー 2
ああ、でもこれ民間企業でもしょっちゅう起きてますよね。社長が外部から花々しい経歴のコンサルタントを連れてくるんだけど、現場の社員が猛反発して。
ええ。
結局誰も使わない分厚いマニュアルだけが残って、プロジェクトが静かに終わるみたいな。
スピーカー 1
全く同じ構図です。そして、行政においてはそのハードルがさらに高くなるんですよ。
スピーカー 2
なんでですか?
スピーカー 1
なぜなら、各自治体独自の組織文化とか、議会を通す複雑な意思決定プロセス。
そして何より、地域住民との長年の歴史や関係性に最も習熟しているのは、他でもない既存の自治体職員だからです。
スピーカー 2
ああ、なるほど。どんなに優秀なITコンサルタントでも、この街のこの地区のお年寄りは、こういう案内だと混乱しちゃう、みたいな泥臭い文脈は知らないですもんね。
おっしゃる通りです。そこで、資料の中で非常に重要なキーワードとして指摘されているのが、地方自治体の深刻調は総合性にあるという部分なんです。
スピーカー 2
行政の真骨頂が総合性、どういうことでしょう?
スピーカー 1
民間企業であれば、特定のサービスをターゲット層に打って終わりかもしれません。でも、自治体は違います。
例えば、経済的に非常に困窮している住民が窓口に来た場合、どうなると思いますか?
スピーカー 2
えーと、生活保護の案内とかですかね。
スピーカー 1
もちろんそれもあります。でも、単にお金を給付するだけでなく、子どもの学校教育の支援とか、税金の減免手続き、公営住宅の案内など、
多様なアプローチを総動員して、一人の住民の生活を総合的に支える必要があるんです。
なるほど。バラバラの部署が個別に動くんじゃなくて、一人の人間の生活を全方位から支えるパッケージを作れるということですね。
スピーカー 1
ええ、そうです。
それって、現場の業務を横断的に理解している内部の職員しかできない芸当ですね。外部のシステム屋さんがポッと入ってきて設計できるものじゃない。
スピーカー 1
その通りです。だからこそ、DXというのは、この総合的な課題解決の質を良くするための単なる手段に過ぎないんです。
ビジョンと心理的安全性で職員の火をつける
スピーカー 1
外部のプロに丸投げするのではなく、業務に精通した内部の一般職員自身の心に火をつけて、彼ら自身がデジタルを使ってどう住民を救うかを考えなければ、真の変革は起きないんですよ。
スピーカー 2
つまり、主役はあくまで既存の職員たちなんだと。
スピーカー 1
はい。
スピーカー 2
では、ここからがいよいよ本題です。
じゃあ、その手一杯でモチベーションも低い職員たちの心に火をつけるには具体的にどうすればいいのか。
資料の中にあった大分県のDX推進戦略の事例がすっごく面白かったんですよ。
彼ら、どうやらデジタル化そのものをアピールするのをやめたみたいなんです。
ああ、メッセージの転換ですね。
スピーカー 2
大分県が強調しているのは、変革、つまりXすら目的ではない。ありたい姿、ビジョンが重要だというメッセージなんです。
スピーカー 1
素晴らしい視点ですね。
スピーカー 2
DXって言うと、どうしてもシステム導入とか変革そのものに目が行きがちですけど、
彼らは何のためのデジタル化かを語ることに不信している。
この街をこんな姿にしたいっていうビジョンこそが職員のモチベーションの源泉になるんだと。
スピーカー 1
結局目的意識の欠如こそがステップゼロの最大の壁でしたからね。
なぜこの苦労をしてまで新しいことを学ぶのか、それに対する明確な答えを示すことが最初の着火剤になるわけです。
スピーカー 2
いやー、本当にそうですよね。
ただ、ここからが私が一番引っかかったところなんですけど。
スピーカー 1
はい、何でしょう。
スピーカー 2
トライエッティング社の2025年の崖に関する対策資料の中で、
経営層の意識改革として失敗を許容する文化の醸成が必要だって書かれていますよね。
小さな失敗から学ぶ試行錯誤が不可欠だと。
スピーカー 1
イノベーションを生む組織の絶対条件として書かれています。
スピーカー 2
いやでも、ちょっと待ってください。
一般企業ならわかりますよ。でも、相手は行政です。
1円の税金の無駄遣いも許されないとか、ミスは絶対にあってはならないっていう、
無謬性が絶対的なルールになっている世界じゃないですか。
スピーカー 1
はい、無謬性の神話ですね。
トップの首長がいくら口で失敗してもいい、挑戦しろって言ったところで、
スピーカー 2
いざ10円でも会計ミスが起きたら、議会やメディア、市民が束になってその職員を吊るし上げますよね。
スピーカー 1
まあ、現実問題としてそういう風潮はありますね。
スピーカー 2
そんな状況で、現場の職員が、よしリスクを取ろうなんて本当に思えるんでしょうか。
この失敗を許容するっていうのは、お題目としては綺麗ですけど、現実には無理じゃありませんか。
スピーカー 1
非常に鋭い、そして現実的な視点だと思います。
実はそこが、行政DXにおける最大のジレンマであり、最大のタブーなんですよ。
スピーカー 2
タブーですか。
スピーカー 1
ええ。単にトップが失敗してもいいよって口で言うだけでは、絶対に変革は起きません。
スピーカー 2
ですよね。じゃあ、成功している自治体はどうやってそのタブーを突破しているんですか。
スピーカー 1
評価の指標そのものを根底から変えているんです。
スピーカー 2
評価の指標。
スピーカー 1
はい。これまでの行政の評価軸は、コスト削減とか、ミスなく前年踏襲で業務をこなしたかっていう、いわば守りの姿勢でした。
スピーカー 2
はいはい。
スピーカー 1
トップはこれを、新しい価値を想像するための挑戦をしたかっていう、攻めの評価軸に切り替えて、しっかりと明文化しなければならないんです。
スピーカー 2
なるほど。口先だけじゃなくて、人事評価のルール自体を変えてしまうと。
スピーカー 1
その通りです。そしてさらに重要なのは、トップが、新しい取り組みによる失敗の責任は私が全て取る、と議会や市民に対して公言する強烈なコミットメントなんです。
スピーカー 2
私が責任を取ると。
スピーカー 1
ええ。現場の職員が一番恐れているのは、ミスをした時に自分一人に責任を押し付けられて孤立することですからね。
このトップによる防波堤があって初めて、職員の心理的安全性が担保されるんです。
スピーカー 2
トップが自ら矢面にに立って安全地帯を作るわけですね。これでようやく職員の心に火がつきそうです。
ええ。
スピーカー 2
でもちょっと私独自の例えで言わせてもらうと、心に火がついて、よしやるぞって思った職員がいたとしても、
たった一人の焚き火だと、周囲の今まで通りでいいじゃないかっていう冷ややかな風に吹かれてすぐに燃え尽きてしまいませんか?
広域ネットワークと人事制度で火を保つ
スピーカー 1
ああ、とても良い例えですね。
スピーカー 2
この火を消さずに大きなキャンプファイヤーにするにはどうすればいいんでしょう?
スピーカー 1
まさにその孤立が多くの自治体担当者を潰してきた原因なんですよ。
特に小規模な自治体ではDX担当者が一人しかいないことも多いですからね。
スピーカー 2
最初のデータの通りですよね。
スピーカー 1
そこで今、資料にあるように都道府県が主導して、市町村の壁を越えた熱意を支えるネットワークを作る動きが加速しているんです。
スピーカー 2
市町村の壁を越える、具体的にはどうやってるんですか?
スピーカー 1
例えば、広島県のDXシップ広島という枠組みが非常に象徴的です。
ここではデジタル人材を県と市町で共同採用して、単独では人材確保が難しい小さな市町に配属しているんですよ。
スピーカー 2
共同採用ですか?それって現場の職員からするとどういうメリットがあるんですか?
スピーカー 1
小さな村でたった一人でIT担当になるのではなく、広島県全体のDXチームの一員として採用されるわけです。
スピーカー 2
所属意識が変わるんですね。
スピーカー 1
はい。定期的な合同研修があって、チャットツールで他の市町の担当者と常につながって相談できる。
同じ悩みを共有できる仲間がいることで、自分は一人じゃないって実感できるんです。
これは孤立を防ぐ上で決定的な違いを生みます。
それは素晴らしいですね。焚火同士をくっつけて互いの熱で燃え続けさせる構造ができている。
スピーカー 1
はい。他にも群馬県では県職員自らが市町村を訪問して伴走支援する人材シェアリング事業を行っているそうですよ。
スピーカー 2
上から目線で指導するんじゃなくて、同じ目線で汗をかくことで現場の火を絶やさないようにしていると。
スピーカー 1
その通りです。ただですね、こうした情熱とかネットワークという心の面だけでなく、
それを長期的に維持するために絶対に避けて通れないハード面の仕組みがもう一つあるんです。
スピーカー 2
ハード面ですか?なんだろう、パソコンのスペックとかですか?
いや、人事制度と給与の仕組みです。
スピーカー 2
あー、なるほど。お金の話ですね。でも公務員の給与体系って基本的に年功序列でガチガチに決まっているイメージがありますけど。
スピーカー 1
そこが最大のネックなんです。
スピーカー 2
やっぱり。
スピーカー 1
せっかく心に火がついて、デジタルスキルと行政知識の両方を身につけた優秀なDX推進リーダーが内部で育ったとしますよね。
はい。
でも、今の時代官民の人材獲得競争は熾烈です。
スピーカー 1
こんなに頑張ってシステムを改革したのに給料は全く上がらない、民間企業に行けば倍の給料で評価されるのにってなれば、
彼らは燃え尽きるかあっさり辞めてしまいます。
スピーカー 2
いや、それは痛すぎる。せっかく育てたのに外に引き抜かれてしまうわけですね。
行政特有の硬直化した給与テーブルが完全に足枷になっていると。
スピーカー 1
そのため、資料ではキャリアパスの支援と正当な評価制度の必要性が強く説かれています。
スピーカー 2
どうやって解決するんですか?
スピーカー 1
成功しつつある自治体では、法規制の枠内で給与の調整額を活用して、高い専門性に報いる工夫を始めています。
そして特に注目すべきは、複線型人事の導入ですね。
スピーカー 2
伏線型人事、それは従来の公務員の出世ルートとは違うものなんですか?
スピーカー 1
はい。通常、公務員が給与を上げるには、課長・部長といったマネジメント職、つまり管理職に出世するしかありません。
そうですよね。ピラミッド型というか。
スピーカー 1
しかし、複線型人事とは、管理職にならなくても、ITなどの特定の高度な専門性を極めるスペシャリストとして、管理職と同等の高い評価や給与を得られるルートを設けることなんです。
なるほど。人を管理するマネージャーにならなくても、現場で凄腕のITスペシャリストとして道を極めれば、ちゃんと給料で報われるルートがあるんですね。
それなら優秀な人材もモチベーションを保って残ってくれそうです。
ええ。ビジョンや心理的安全性といったソフトの面と、正当に評価して報いる人事制度というハードの面。
スピーカー 1
この両輪が揃って初めて、組織のデジタル変革は前に進み続けるんですよ。
スピーカー 2
いやー、全体像がくっきりと見えてきましたね。
自治体DXから学ぶ組織変革の普遍性
スピーカー 2
さて、今日は膨大な資料を紐解いてきましたが、驚くべきことに、既存の自治体職員の心に火をつけるために最も重要だったのは、最新のAIシステムでも全てを解決してくれる外部の白馬の王子様でもありませんでした。
スピーカー 1
ええ、全く違いましたね。
スピーカー 2
必要だったのは、この街をどうしたいかという明確なビジョン、そして無謬性という絶対的なタブーを打ち破り、自ら盾となるトップの覚悟。
さらに、火のついた職員を孤立させず、その専門性を正当に評価する広域ネットワークと複線型人事の仕組みでした。
スピーカー 1
今回の自治体DX推進が直面している苦悩と、それを乗り越えようとするプロセスは、実は今これを聞いている皆さんの日常と全く同じなんですよね。
スピーカー 2
本当にそう思います。所属する会社とかチームの古い慣習を変えようと孤軍奮闘している時、私たちは必ず忙しいからという無関心の壁にぶつかって、外部からの魔法の解決策を探し求めて、そして孤独に苛まれます。
この自治体のデータが教えてくれるのは、人間が未知の領域へ一歩を踏み出すために必要な非常に泥臭くて普遍的な組織の動かし方でした。
スピーカー 1
まさにその通りですね。
スピーカー 2
最後に、私から聞いているあなたに問いを残したいと思います。
もし、あなたが明日、最も保守的で変化を嫌うチームに対して新しいやり方を提案しなければならないとしたら、
あなた自身の心の中にいる白馬の王子様への幻想をどうやって捨てて、一体誰の心にどんな言葉で最初の火を灯しますか?
スピーカー 1
深い問いですね。
スピーカー 2
ぜひ、あなた自身の現場で考えてみてください。
単なる見えないシステムの話だと思ったら、最高に熱い人間の組織論でした。
それでは、次回の深掘りでお会いしましょう。
18:18

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