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2025-09-02 20:45

miiboサイト掲載事例から学ぶ:横須賀市が実現した非エンジニアによるAI対話システム開発

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miiboの公式サイトに掲載されている横須賀市の導入インタビューから、自治体におけるAI対話システム開発の実践的なアプローチが明らかになりました。本メルマガでは、横須賀市デジタル・ガバメント推進室の村田遼馬氏へのインタビュー内容を基に、非エンジニアの職員がどのようにしてRAG(検索拡張生成)技術を活用した専門特化型AI対話システムを構築したのか、その開発プロセスと運用ノウハウを整理してお伝えします。

横須賀市は2023年4月のChatGPT全庁利用開始後、100社以上の報道機関からの取材と他自治体からの継続的な問い合わせへの対応という課題に直面しました。この課題解決のためにmiiboを採用し、「他自治体向け問い合わせ対応ボット」と市民向けお悩み相談ボット「ニャンぺい」という2つのAIアプリケーションを開発。数千件以上の問い合わせ対応の自動化を実現し、LGWAN(総合行政ネットワーク)という自治体特有の制約をkintoneなどのノーコードツールとの連携で克服した事例として、今後の自治体DXの方向性を示しています。

RAG技術との出会いが変えた自治体AI開発の方向性

村田氏が語った開発の出発点は、上地克明市長が掲げる「誰も一人にさせないまち」というビジョンの実現でした。横須賀市は2020年4月に「デジタル・ガバメント推進方針」を策定し、利用者中心の行政サービスの実現と新たなイノベーションを創発できる地域の実現を目的とした取り組みを進めていました。議会の議事録を活用した答弁検討支援など、特定分野に特化したAIへのニーズが組織内で高まっていたのです。

当初検討したファインチューニング(微調整)という手法には、学習元として多くのデータが必要で、コストもかかる上、必ずしも望んだ答えが得られないという課題がありました。この課題についてAI戦略アドバイザーの深津貴之氏に相談したところ、RAGについて教えてもらい、その流れでmiiboを紹介されたと村田氏は振り返っています。

miiboを選択した理由として、村田氏は3つのポイントを挙げています。第一に、当時RAGを簡単に構築できるサービスが少なく、あるとしても導入のハードルが高いものばかりだった中、Web上で登録すればすぐに使える手軽さ。第二に、画面が全体的に柔らかな印象で、技術に明るくない人でも使いやすいUI。第三に、RAG環境を簡単に構築できる機能性でした。

段階的アプローチで実現した2つのAIアプリケーション

横須賀市は2023年から2024年にかけて段階的に2つのAIアプリケーションを開発しました。2023年4月から検証を重ね、同年8月に本格運用を始めた「他自治体向け問い合わせ対応ボット」は、最終的に市民向けのアプリケーション開発を目指しながらも、まずはある程度の誤差を理解したうえで使ってもらえる自治体に向けて開発したものでした。

村田氏によれば、開発当初はシンプルなFAQ形式のテキストを使用していたものの、質問に対して望む回答がなかなか得られませんでした。そのため、わかりやすい形に整えたり、複数の表現で言い換えた知識を追加したりするなどの工夫が必要だったとのことです。現在はGPT-4oを使用しており、そのような工夫をしなくても、かなり高精度な回答を得られるようになったと説明しています。

2024年5月にリリースした「ニャンぺい」については、AIのハルシネーション(事実に基づかない情報の生成)などの課題を考慮し、あらかじめ現在のチャットボットの自動回答には誤りが生じるリスクがあることを開示し、不具合を「見つけてほしい」という実験的な形でリリースしたと村田氏は語っています。この公開実験のレポートは今後公表する予定で、多くの人に試してもらい、いくつかの不具合の報告を受けたとのことです。

LGWAN環境での実装を実現した技術的アプローチ

村田氏が詳しく説明している技術的な課題は、自治体におけるAI活用の最大の制約である総合行政ネットワーク(LGWAN)の存在です。LGWANは電子メールやWebサイトをセキュアなネットワーク上で利用するための仕組みですが、同ネットワーク上に置かれた諸々のナレッジは、AIサービスのあるインターネットからは分断されてしまいます。

この課題に対し、村田氏は独自の解決策を説明しています。まず取り出したいナレッジをkintoneに移行し、それをCSVデータに変換するという方法を採用しました。元のデータはさまざまなファイル形式やフォーマットが混在していたため、これを集約し、AIが理解しやすい形式に変換する作業に労力を費やしたとのことです。

プロンプトの扱いについて村田氏は、はじめこそ試行錯誤していたものの、想像していたよりもスムーズにキャッチアップできたと振り返っています。村田氏自身がもともとITが好きで、AIについても情報収集していたことに加え、日ごろからDX推進において現場の課題をヒアリングしている各メンバーは言語化能力が高く、具体的な指示を出すことにも長けていたと評価しています。

数値で見る導入効果と組織文化の影響

村田氏が明らかにした導入効果として、「他自治体向け問い合わせ対応ボット」には数千件以上の問い合わせが寄せられており、ボットがなければその都度説明が必要だったことを考えると、時間の短縮が図られていると実感していることが挙げられます。昨年4月にChatGPTを全庁利用することを公表して以降、100社以上の報道機関に対応し、自治体からの問い合わせは現在も続いているという状況において、ごく基本的な問い合わせ対応をチャットボットがしてくれるようになったことは大きかったと評価しています。

「ニャンぺい」についても、不具合の報告は想定よりも少ない印象だと村田氏は述べています。より高度な機能を備え、個別化されたニーズに応えるものを作ろうとすれば多くの準備期間を要したと思われるが、気軽に使えるmiiboでミニマムに始めたからこそ、いちはやくこうしたAI活用の事例を作ることができたと振り返っています。

誤りが許されない地方自治体の取り組みで公開実験を行うことは珍しいかもしれないが、これまでの生成AIの活用の取り組みやDX推進に積極的に取り組んできたことが、こういった実験的な取り組みを許容する土壌になっていると村田氏は感じているとのことです。上地市長のビジョンを旗印として、リスクを取って未来に投資するカルチャーが組織内にあることが、今回の取り組みの後押しとなったと説明しています。

データ標準化が開く自治体サービスの未来像

村田氏が語った今後の展望は、AI活用の手前にあるデータ整理の重要性を基盤としています。ファイル形式を整える手段や、その効率化についての検討はすでに始まっており、データの標準化が進めば、AIでデータを活用することが容易になり、市民により良い行政サービスを提供することもできるのではないかと考えているとのことです。

村田氏が提示した「各種お知らせをパーソナライズする」というアイデアは具体的です。長距離を走るトラックドライバーの方であれば、自宅に届く郵便物よりもラジオのような音声を通じて自治体のお知らせを聞く方が楽かもしれない。SNSをよく見る人であれば、タイムラインに流れてくるショート動画でお知らせを受け取ることができたら、きっとスムーズに内容を知ることができる、といった形でAIを活用できれば、自治体が伝えなければならない情報がより伝わりやすくなり、情報を出す職員の手間やコストも大幅に削減できるのではないかと述べています。

すでに市長のスピーチを英語に変換して外国人居住者に向けた動画で情報を発信するといった試みにも取り組んでいることも明かされました。村田氏は、今後も技術進化の動向を追いながら、より市民が暮らしやすくなる技術活用を進めていきたいと語っています。

まとめ

miiboサイトに掲載された横須賀市の導入インタビューは、非エンジニアの自治体職員がmiiboを活用して実用的なAI対話システムを構築できることを実証した貴重な事例です。RAG技術による専門知識の付与、段階的なアプローチによる開発、LGWAN環境での実装工夫、そして組織文化の重要性という4つの要素が、この取り組みの成功要因として浮かび上がりました。横須賀市の事例は、全国の自治体がDXを推進する上で参考となる実践的な知見を提供しています。



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サマリー

神奈川県横須賀市で、プログラミング未経験の市役所職員がAI対話システムを開発しています。この取り組みは、特にRAG技術とmiiboツールを活用し、行政サービスの効率化と市民との協力関係の構築を目指しています。横須賀市では、非エンジニアがミーボとRAG技術を活かして、AI対話システムを迅速に開発しています。この挑戦は、組織文化やリーダーシップの支えによって実現し、市民サービスの向上に貢献しています。

横須賀市のAI対話システム開発
プログラミング経験ゼロの市役所職員が専門的なAI対話システムを作り上げた、そんな驚きの事例が神奈川県横須賀市で生まれたんですよね。
今回はですね、この挑戦の裏側をじっくりと掘り下げていきたいと思います。 情報源なんですけど、AI対話システム構築ツール
miibo、これの公式サイトに載ってるんですね。 横須賀市デジタルガバメント推進室の村田龍馬さんへのインタビュー記事です。
この記事からですね、プログラミング経験がない職員の方が、どうやってこの挑戦を成し遂げたのか、その具体的なプロセスとか、どんな課題があってどう乗り越えたのか、
その成功の秘訣をあなたと一緒に詳しく見ていきたいなと。 彼らが開発したのは、他の自治体からの問い合わせに対応するボット。
それと市民向けの相談ボット、にゃんぺい、この2つなんですね。 これによってもう数千件もの問い合わせ対応を自動化して、さらには自治体特有の閉じたネットワークという難題もクリアしたと。
さあ、この楽器的な取り組み、どこから紐解いていきましょうか。 そうですね。まず注目したいのは、彼らが活用した
RAG、検索拡張生成と呼ばれる技術ですね。 これ、AIに特定の知識を与えて回答させる仕組みなんですけど、重要なのは、これを専門家ではない市の職員の方々が使いこなしたという点なんですよ。
いわば、AI活用のハードルを一気に下げる、なんか民主化のような動きとも言えるかもしれません。 そしてですね、この取り組み、単なる技術導入じゃないんですね。
横須賀市の上次市長が掲げる、誰も一人にさせない街、この明確なビジョンが根底にあるんです。 技術はあくまでそのビジョンを実現するための手段、そういう位置づけなんですね。
この点が、今回の成功を理解する上で非常に重要になってきますね。 なるほど、なるほど。技術が先にあるんじゃなくて、解決したい課題とか目指す街の姿がまずあるということですね。
では、そもそもなぜAI開発が必要になったんでしょうか? そのきっかけは何だったんですか?
インタビューによるとですね、大きな転機は2023年4月のチャットGPTの全庁導入だったようです。 これが予想以上の反響を読んじゃったんですね。
ああ、はいはい。 100社を超えるメディア取材とか、他の自治体からの問い合わせがもう殺到してしまって、その対応に職員の方々の時間がかなり分かれてしまったと。
まさに嬉しい悲鳴みたいな状況だったわけですね。でもそれだけではなかったんですよね。
ええ、そうなんです。実はそれ以前から、例えば議会の議事録データを使って答弁の検討を支援するとか、そういう特定の業務課題を解決するためのAI活用への期待が庁内で静かに高まっていたという背景もあったみたいですね。
問い合わせ対応の負担増がその動きを加速させたという感じでしょうか。 当初は別の方法も考えていたとか?
はい。AIに知識を教え込む代表的な手法として、ファインチューニング、これも検討されたそうです。
ただこれには大量の学習データを用意する必要があったり、コスト面の課題、それから何より手間暇かけても期待通りの回答精度が出ない可能性があったと。
そこでちょっと壁にぶつかっていたところに、AI戦略アドバイザーの深津孝一さんに相談する機会があったそうなんです。
そこで登場するのが先ほどお話に出たRAG、技術、そしてミーボーというツールだったわけですね。
まさにその通りです。深津さんからRAGについて聞いて、関連ツールとしてミーボーを紹介されたと。
当時の状況を考えると、RAGを簡単に試せるサービスってまだ少なくて、技術的なハードルが高いものが多かったらしいんですね。
その中でミーボーが選ばれた理由、これは主に3つあったと村田さんは語っています。
まず1つ、ウェブ登録ですぐに試せる手軽さ。
すぐできるっていう。
それから専門知識がない人でも直感的に操作できるわかりやすい画面デザイン、UIですね。
そして3、RAGの環境構築が非常に簡単であること。
まさに非エンジニアのチームにとって、これなら自分たちでもできるかもって思わせてくれるツールだったわけですね。
そのRAGという技術、もう少し具体的に教えていただけますか?
検索拡張生成って言われても、ちょっとピンとこない方もいるかもしれないので。
そうですよね。
簡単に言うと、RAGっていうのは、AIが回答を生成する前に、まず関連する情報をデータベースから検索してくる、リトリーバルって言うんですけど、そういう仕組みなんです。
イメージとしては、AIにこの資料を参考にして答えてねって、カンニングペーパーを渡してあげるようなものですかね。
あ、カンニングペーパー。
これによって、AIがもともと持っている漠然とした知識だけじゃなくて、私たちが与えた最新の情報とか、特定の業務に関する専門知識に基づいて、より正確な回答を生成、ジェネレーションできるようになるんです。
ああ、なるほど。AI自身が関連情報をちゃんと調べてから答えるみたいなイメージなんですね。
ファインチューニングみたいに、AI自体を再教育するんじゃなくて、外部の知識を参照させると。
ええ、そういうことです。
それは確かに導入のハードルが低そうです。
そうなんです。
特に今回のように、自治体が持っている特定の情報に基づいて回答させたいっていう場合には、非常に有効なアプローチだと思いますね。
市民向けボット開発の進展
手軽さと使いやすさが決め手だったと。
では、実際の開発プロセス、これはどのように進んだんでしょうか。
やっぱり試行錯誤もあったんでしょうね。
ええ、もちろん。
いきなり市民向けサービスに踏み切ったわけじゃなくて、非常に慎重に段階を踏んで進められていますね。
まず、2023年8月に本格稼働したのが、多自治体向け問い合わせ対応ボット。
これ、ちょっと興味深い選択ですよね。
あ、そうですね。いきなり市民じゃなくて、他の自治体向けから。
ええ、最終的な目標は市民向けサービスなんですけど、
まずはAIの回答にある程度の不確実性があることを理解してもらいやすい相手、
つまり他の自治体の職員さんですね、そういう方を対象にしたわけです。
いわば身内というか、まあ事情をわかってくれる相手で試運転を始めたみたいな感じですね。
リスク管理の観点からも、これは賢明な判断だったと思います。
その試運転段階での苦労というのは?
やはり最初は思ったような回答を引き出すのにかなり苦労されたようです。
例えばFAQ形式の簡単なテキストデータをミーボーに読み込ませても、
AIがうまく情報を拾ってくれなかったり、ちょっと待ち外れな回答をしてしまったりとか。
具体的にはどんな工夫をされたんですか?
これがまた地味な作業だったようなんですけど、
AIが理解しやすいようにFAQの表現をより平易な言葉に書き換えたいとか、
あとは同じ質問内容でも想定される様々な言い回し、
これを知識としてどんどん追加登録していったり、
そういった調整を繰り返したそうです。
まさに手塩にかけてAIを育てていくような、そんな感覚だったのかもしれないですね。
ただ技術の進歩がその苦労を和らげてくれたというお話もありましたよね。
そう、そこがね非常に面白い点なんです。
開発当初に使っていたAIモデルから、より高性能なGPT-4Oへと、
その基盤モデルが進化したことで状況が一変したと。
以前は必要だったそういう細かな表現の調整とか、
言い換えの追加みたいな作業をほとんどしなくても、
かなり高い精度で的確な回答が出せるようになったそうなんですよ。
技術の進化が運用現場の手間を劇的に改善した、本当に良い例だと思いますね。
まさに日進月歩ですね。
そしてその経験を経て、いよいよ市民向けのボット開発に進んだわけですね。
はい、そうです。
2024年の5月にリリースされたのが、市民向けの相談ボットにゃんぺいですね。
で、こちらはですね、より慎重なアプローチが取られました。
というのも、AIにはハルシネーション、
つまり事実に基づかない情報を、さも本当化のように生成してしまう現象、
これが起こり得るわけです。
あー、ありますねそれ。
ええ、市民向けサービスでこれを放置するわけにはいきなせんからね。
そこで横須賀氏が取った策が非常にユニークですよね。
そうなんですよ。これちょっと驚きなんですけど、
最初からこのチャットボットの回答には誤りが含まれる可能性がありますと公表しちゃったんです。
えーっと、公表ですか?
ええ、さらに市民に対して不具合を見つけたら教えてくださいと協力を呼びかけるっていう、極めて実験的な形でスタートしたんですね。
これは普通なら避けたいリスクをあえて前面に出したという形です。
行政サービスとしてはかなりダイタムな決断ですよね。反発とかはなかったんでしょうか?
その点は後ほど触れますが、結果的にこの公開実験ともいえるアプローチはうまくいっているようです。
実際に利用した市民の方からいくつかの不具合報告が寄せられて、それが迅速な改善につながっていると、
リスクを開示することで逆に市民との共同関係を築いてサービスを育てていくという、
なんか新しい形を示したと言えるかもしれないですね。
今後この実験のレポートも公開される予定だそうですよ。
へー、透明性を確保して市民を巻き込んど改善していくスタイル、なるほどですね。
さて、もう一つ自治体ならではの大きな壁があったと聞きました。LG1という存在ですね。
はい、これですね、多くの自治体が直面する大きな課題です。LG1、総合行政ネットワークですね。
これは住民情報なんかを扱うための非常にセキュリティが高い、インターネットから隔離された閉域ネットワークなんです。
つまり、町内にある重要な情報、それこそAIに学習させたいナレッジの多くが、このLG1の中に閉じ込められている、と。
一方で、miiboのようなクラウドベースのAIサービスはインターネット上にある。
この2つをどうやってつなぐかが大きな問題になったわけですね。
まさにそこです。そこで、村田さんたちのチームが編み出したのが、非常に独創的な橋渡しの方法でした。
まず、町内の様々な部署に散在していて、ファイル形式もバラバラだった知識データを、ノーコードツールであるKintone、これの上に集約整理したそうです。
あ、Kintone、プログラミングなしで業務アプリが作れるあれですね。そこにまず情報を集めた後。
そして、そのKintoneに集約したデータを、AIツールであるmiiboが読み込めるシンプルな形式、つまりCSVファイルですね。
CSV、はい。
緩脈切りのテキストデータです。それに変換して書き出した後、そのCSVファイルを担当者の方が手動でmiiboにアップロードするという手順を踏んだわけです。
なるほど。直接はつなげないけど、Kintoneでデータを成形して、CSVっていう共通言語に翻訳して、それを手動で運ぶみたいな。
そうなんです。
アナログな工夫で乗り越えたんですね。
そうなんです。で、この元データの形式を統一して、AIが理解しやすい形に整える、データの全処理って言われる部分ですね。
ここに実はかなりの労力が投入された後を村田さんは強調しています。
AIというとどうしても華やかな機能面に目が行きがちですけど、こうした地道なデータ整理こそが、AI活用の製品を分ける鍵になるということですね。
確かに、どんなに高性能なAIでも、元になるデータがぐちゃぐちゃだったら力を発揮できませんもんね。
一方で、AIへの指示、いわゆるプロンプトの作成についてはどうだったんでしょうか。これも専門知識が必要そうなイメージがありますけど。
それがですね、意外にもプロンプトに関しては比較的スムーズに対応できた、と村田さんは振り返っています。
ご自身がもともとITに関心が高くて、AIについても情報収集されていたというのもありますが、それ以上にチームメンバーの存在が大きかったようです。
と言いますと。
チームには日頃からDX推進担当として、町内の様々な部署を回って、現場の職員さんが抱える課題とか困り事をヒアリングしているメンバーがいたそうなんですね。
彼らはその現場の具体的な課題を的確に捉えて、それを言語化する能力に長けていたと。
つまり、AIに何をして欲しいのか、どんな情報が必要なのかを具体的かつ分かりやすい言葉で支持する能力が高かったということですか。
まさにその通りです。これは非常に示唆に富む点だと思いますね。
AI活用というとプログラミング技術ばかりが注目されがちですけど、実はそれ以上に現場の業務とか課題を深く理解して、それを的確な言葉で表現できる言語化能力とか課題設定能力、これが重要になってくるんだなと。
技術者でなくても、こうした能力を持つ人材がAI活用で大きな役割を果たせる可能性を示していますよね。
現場理解と言語化能力、それはどんな組織にも応用できる視点かもしれませんね。
AI対話システムの効果
さて、これだけ苦労して独自の工夫も凝らしたわけですが、果たしてその効果は実際に業務は楽になったんでしょうか。
まず、他事態向け問い合わせ対応ボットですが、こちらはすでに数千件以上の問い合わせに対応しているそうです。
数千件?
ええ。もしボットがなければ、これらの問い合わせ一件一件に職員さんが個別に対応していたわけですから、その時間削減効果は非常に大きいと実感されているようです。
特に、チャットGPTの全庁利用を発表した後、メディア対応と並行して、他の自治体からの基本的な質問が今も続いている状況だそうです。
そこをボットが肩代わりしてくれるインパクトは測り知れないと。
それは大きいですね。市民向けのニャンペイの反響はどうでしょうか?誤りがあるかもと公表した影響はありましたか?
こちらもですね、まあ想定していたよりも不具合の報告は少ないという印象だそうです。
そして村田さんは、もし最初から完璧を目指して、もっと高度で個別化されたニーズに応えようとしていたら、準備に膨大な時間がかかって、いつまで経ってもリリースできなかっただろうと総分析していますね。
なるほど。ミーボというツールで小さく始めて早く試す、そういうアジャイルな開発ができたからこそ、このスピード感で世に出すことができて、実際の利用を通じて改善していく、そのサイクルを回せているということですね。
ええ、まさに。そのスピード感と実験的なアプローチは、やはり特筆すべき点だと思います。
特に先ほども少し触れましたが、誤りは許されないというイメージが強い地方自治体の業務においてですね、なぜこのような公開実験ともいえる大胆な取り組みが可能だったのか、その背景には何があったと思われますか?
うーん、やっぱりこれまでの実績とかでしょうか。GPTTの全庁導入とか、DX推進に積極的に取り組んできた、そういう土壌があったから?
ああ、それは大きいでしょうね。村田さんもこれまでの生成AI活用とか、DX推進の実績が組織内に新しい挑戦を許容する雰囲気のようなもの、まあ心理的な安全性を醸成していたのではないか、とそう感じているようです。
加えて、やはりトップの姿勢というのも重要ですよね。
まさにそこですね。ここでも植地市長が掲げる、誰も一人にさせない街という明確なビジョンが判断の距離揃い、いわば旗印になっていた、と。
単に効率化を進めるだけじゃなくて、その先にある市民サービスの向上という目標に向かって、ある程度のリスクを取ってでも未来に投資する、そういうカルチャーが組織全体にあったことが今回の挑戦を強く音足した、と村田さんは説明しています。
技術だけではこのプロジェクトは実現しなかったでしょうね。
技術、ツール、そしてそれを支える組織文化とリーダーシップ、成功の要因は本当に複合的なんですね。
データ整理の重要性
これだけの成果が出ているとなると、やはり次の展開も気になりますね。横須賀市はこの成功を今後どう生かそうと考えているんでしょうか。
村田さんが今後の展望として特に強調しているのは、AI活用のいわば手前にあるデータ整理の重要性ですね。
町内に散在する情報のファイル形式を統一したり、近藤園への集約プロセスをさらに効率化したり、といった基盤整備を進めること。
これが実現すれば、AIによるデータ活用がもっと容易になって、結果としてより質の高い市民サービスにつながっていくと、そう考えているようです。
まさにAI活用の土台作りですね。具体的なサービスのアイディアについても語られていましたね。
これ非常に面白い視点だなと思ったんですけど、市民一人一人に合わせた情報提供のパーソナライズという構想です。
例えば、長距離を運転することが多いトラックドライバーの方には、自宅に郵便物を送るよりも、ラジオのように市の情報を提供する。
ああ、音声で。
あるいは、SNSを頻繁に利用する若い世代には、タイムラインに自然に流れてくるような短い動画で情報を届けるとか。
なるほど。情報の受け手である市民のライフスタイルとか、好みに合わせて最適なチャンネルと形式で情報を届けるということですね。
これは市民にとっても便利ですし、情報を発信する市役所側の手間とかコスト削減にもつながりそうです。
すでにそのモガネとなるような取り組みも始まっているようですよ。
例えば、市長の定例会見のスピーチ内容をAIや英語に翻訳して、テロップ付きの動画にして外国人居住者向けに発信するといった試みです。
へー、技術の進化をちゃんとキャッチアップしながら、それをどう市民生活の向上に結びつけていくか、常に模索し続けている。そういう姿勢が伺えますね。
非専門家によるAI活用の可能性
市民がより暮らしやすくなるための技術活用をこれからも進めていきたいという村田さんの言葉は、今後の自治体DXの一つの理想形を示しているように感じますね。
これは単なるチャットフォット導入という個別の事例にとどまらない話だと思います。
データをいかに整備・標準化して、AIという強力なツールを駆使して、市民一人ひとりに最適化されたより人間なし行政サービスを提供していくか、という壮大なテーマへの挑戦とも言えるでしょうね。
さて、今回は横須賀市の先進的な事例を通してですね、プログラミング経験のない職員の方々が、
ミーボのようなツールとRAG技術を武器に、段階的なアプローチとそれから創意工夫によって、LG1という自治体特有の壁も乗り越えて、実用的なAI対話システムをスピーディーに開発した、その軌跡を追ってきました。
そうですね。振り返ってみると、やはりRAGという技術が非専門家によるAI活用を可能にした点、
そしてそれを支えた地道なデータ整理作業、それから段階的なプロセス、LG1への対応策、そして何よりも挑戦を恐れずに後押しする組織文化とリーダーシップ、これらがうまく噛み合った結果と言えそうですね。
この横須賀市の挑戦から、あなたはどんなことを感じましたか?
特に専門家でなくてもAIを活用できたという事実は、多くの組織や、もしかしたらあなた自身の仕事にも何か新しい可能性を示唆しているのではないでしょうか?
ええ。学びのポイントを挙げるとすれば、まず完璧を求める前に小さく始めて早く試すという考え方、これが一つ。
そして技術そのものが目的になるのではなくて、常に解決したい課題は何かという原点から出発することの重要性、まあこの辺りかもしれませんね。
今日のお話を伺って、最後に一つあなたにも考えてみてほしい問いがあります。
チャットボットに限らず、こうした専門家でなくても使いこなせるAIツールがもっともっと身近になった未来をちょっと想像してみてください。
あなたの職場やあなたの関わるコミュニティで、今あるどんなプロセスやサービスが根本から変革される可能性があるでしょうか?
そしてもう一歩踏み込んで、あなたの手元にあるあるいはアクセスできるデータにはまだ気づかれていないどんな価値が眠っていると思いますか?
ぜひこの問いを持ち帰って少し考えてみてください。
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