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サマリー
CoderDojo小田原は、子どもたちがプログラミングを通じて「正しく絶望し、失敗から学ぶ」価値を体験するユニークな場です。ここでは、大人は「業務員」として見守り、決められたカリキュラムはなく、子どもたちは自らの手で試行錯誤を繰り返します。マウスが使えないという意外な「絶望」を乗り越え、物理的な名札や名刺といったアナログな報酬が、子どもたちのモチベーションとコミュニティへの帰属意識を高めます。効率化が求められる現代社会において、あえて非効率な回り道や失敗を許容する環境が、真のレジリエンスと深い学びを育むことを示唆しています。
導入:効率化社会への問いかけと学びの本質
- ええ、リスナーのあなたは、最近何かをするときに 最短ルートを探すのに疲れていませんか?
- ああ、わかります。仕事でも生活でも、 とにかくコスパとかタイパばかり求められますからね。
- そうなんですよ。絶対に失敗しないための正解を 常に求められている気がして、
あの、全ての行動にマニュアルがあって、 そこから1ミリでも外しちゃいけないみたいな、
そういう息苦しさを感じている人も多いと思うんです。
- 確かに、現代社会の構造自体が、 無駄を省くことを意思上明大にしてますからね。
特に最近は、AIとか自動化ツールもあって、 私たちはプロセスをすっ飛ばして、
結果だけを手に入れることに慣れきていますし。
ただ、その極端な効率化の過程で、ひょっとすると私たちが、 学ぶことの本質みたいなものを切り捨ててしまっているんじゃないか。
そういう視点は非常に重要だと思いますね。
- だからこそ、今日深掘りしていく ソース資料が面白いんです。
そんな効率一乗主義を根本からひっくり返すような、 驚くべき学びの場についてなんですよ。
最新のテクノロジーを扱う場でありながら、
あえて回り道とか失敗を、 意図的にシステムに組み込んでいるんです。
今回は、子どもたちのためのヒエイリプログラミングクラブ、 コーダードジョー小田原の取り組みと、
その運営責任者である山本さんの対話記録を紐解いていきます。
私たち大人の日常にも直結する失敗の価値について探っていきましょう。
コーダードジョー小田原の独自性:教えない大人と自主性
- この資料は本当に読み進めるほどに唸るされましたね。
子ども向けのプログラミング教室というパッケージでありながら、
そこで行われているのは、人間としてのレジリエンス、 つまり回復力をどう育てるかという、
非常に高度な社会実験のようでした。
- そう、まさにそんな感じですよね。
まず前提として、コーダードジョーという組織について少し紹介させてください。
これは2011年にイギリスで始まって、
日本では2014年頃から200カ所以上に広がったグローバルなコミュニティーなんです。
- かなり広がっていますよね。
- はい。今回フォーカスする小田原道場は、
2025年の3月に立ち上げられたばかりなんですが、
面白いのがその成り立ちなんですよ。
- 保護者の方が立ち上げたっていうお話ですよね。
- そうなんです。山本さん自身がもともと、
自分の子供を片道30分かけて隣町の伊勢原の道場まで通わせていた保護者だったんです。
新庄地区に道場がなかったので、
地元にないならもう自分で作ってしまおうという熱量でスタートしているんですね。
- なるほど。そしてここで非常に興味深いのは、
この場が私たちが想像するようなプログラミング教室とは全く違うという点です。
- というと。
- いわゆる学校の授業のように、
今日はこれを作りましょうみたいな決められたカリキュラムが存在しないんですよ。
参加する子供たちは忍者と呼ばれていて、
彼らの自主性が完全に場を支配しているんです。
- 忍者が主役なんですね。
- そして何より大人は教えないんです。
- 教えない。資料を読んでいて私もそこが一番驚きました。
運営責任者の山本さんは、
ご自身の役割を先生ではなくて、
業務員のおじさんみたいな立ち位置だと語っているんですよね。
- 業務員、いい表現ですよね。
- 会場を開いて、機材を並べて、あとは見守るだけだと。
「砂場」と「厳格なコード」:非効率なプロセスが生む熱量
これ、つまりどういうことなのか、私なりに考えてみたんですが、
完成予想図と手順書がセットになったプラモデルを与えるんじゃなくて、
広い砂場にスコップとかバケツといった道具だけをポンと置いて、
さあ好きに遊んでごらんって見守るようなものですよね。
- ああ、砂場というアナロジーは出発点としてはすごくわかりやすいですね。
ただ少し補足すると、現実の砂場の砂って柔らかいじゃないですか。
- ええ、まあ適当に積んでもそれなりに形になりますよね。
- そうなんです。でも彼らが扱っているプログラミングの高度は非常に厳格なんですよ。
一文字間違えれば即座にエラーを吐き出して全てが止まってしまう。
- ああ、なるほど。砂場よりもはるかにシビアですね。
- はい。だからこそ大人が業務員に徹するっていうのは、実はとてつもなく残酷で忍耐のいる役割なんですよ。
- 言われてみれば確かに、エラーが出て子供がフリーズしているのを見たら、
大人としてはすぐに、あ、ここのスペルが間違ってるよって最短ルートを教えたくなっちゃいますよね。
- そうなんですよ。ついつい手を出したくなる。
- リスナーのあなたも職場で新人を指導するときに、
ああもう自分でやらせるより教えた方が早いって手を出してしまうことありませんか?
でも大人が教えずに白紙の状態からやらせると、とんでもなく非効率で時間がかかるんじゃないでしょうか。
- もちろん時間はかかります。
でもなぜ山本さんが効率の良いセオリーをあえて教えないかというと、
大人が用意した最短ルートを通らせてしまうと、
子供がゼロからなぜ動かないんだって回り道をした末に生まれる、
あの独自の熱量を持った作品が死んでしまうからなんです。
- 熱量が死んでしまう。
- ええ。
彼は子供らしさは大切にするけれど、子供扱いはしすぎないと語っています。
これをさらに広い視点と結びつけてみると、
一人の人間としてリスペクトして、自分で道を切り開く泥臭いプロセスを大人が横でただ面白がる。
これって現代の効率一乗主義に対するものすごく強力なアンチ訂正ですよね。
ツール選びの哲学:オープンソースと「ボンネットを開ける」感覚
- そうですね。
その泥臭いプロセスを生み出すために、小田原道場には絶妙な道具、ツールが用意されているんです。
- どんなツールですか?
- 例えば3DプリンターとかUI APD UINの数千円で買える安価なマイコンボードですね。
さらにはあの高価なマインクラフトの代わりにルンティーという代替ソフトを推奨しているんです。
- ルンティー?ルアンティーですか?
- はい。これは保護者の財布に優しいというメリットもあるんですが、あの…。
- ルンティーを採用している理由はきっとコスト面だけではないですよね。
- はい。
- ルンティーってオープンソース、つまりプログラムの設計図が公開されているソフトウェアなんですよね。
- ええ、そうです。
- 商業的にパッケージ化された製品と違って、システムの内側、いわゆるボンネットの中を開けて自分たちで根本からルールを書き換えるような、ちょっとハッキング的な遊び方が推奨される環境なんです。
- ボンネットの中を開ける感覚ですか?
- はい。与えられたゲームで遊ぶ単なる消費者から、世界の裏側をなどる創造者へ移行させるための、非常に利にかなったツール選びだと言えますね。
「正しく絶望する」価値:マウスが使えないデジタルネイティブ
- なるほど。いや、でもここからが本当に面白いところなんですが。
- 何でしょう?
- そんな最先端のツールとか、オープンソース環境を用意した道場で、立ち上げ当初に起きた意外な最大の失敗体験が何だったと思いますか?
- うーん、コードが難しすぎたとか、機材のバグとかですか?
- 違うんです。なんと、パソコンのマウスを用意しなかったことだったんですよ。
- マウスですか?いやー、それは非常に象徴的ですね。
- そうなんですよ。私この部分を読んで思わず、アハハって笑っちゃったんですけど。
- 今の学校現場って、GIGAスクール構想のおかげで、子どもたちはクロームガックなんかのタッチパネル端末を一人一台持っているじゃないですか。
- ええ、画面を直接指で触る操作ですね。
- はい。だから彼らはスワイプとかには異常に慣れているんです。
でも、いざスクラッチなんかのプログラミング環境に向き合った時、必須となるマウスでのドラッグ操作が全くできなかったそうなんです。
結果として、プログラミングどころじゃなくて、全然楽しめずに終わってしまった子もいたと。
- つまり、デジタルネイティブと呼ばれる今の子どもたちが、実はマウスが使えないという物理的な壁にぶつかっているわけですね。
- ええ、まるで最新の自動運転車には乗れるのに、自転車のペダルの漕ぎ方を知らないみたいな、そんな感覚ですよね。
- 素晴らしい例えですね。最新のAIとかアクリを直感的に使いこなせる子どもたちが、物理的なデバイスの限界に染まれた。
ここで山本さんが資料の中で使っている、正しく絶望するというキーワードが非常に重みを持ってきます。
- 正しく絶望する、この言葉はすごくインパクトがありますけど、どういうメカニズムなんでしょうか。
- 現代の直感的なITツールって、まるで魔法のように見えますよね。指先一つで何でも思い通りに動く。
- ええ、確かに魔法みたいです。
- でも、プログラミングの世界に入ると、コンピューターは単なる融通の効かない馬鹿な機械に過ぎないことに気づくんです。
- 馬鹿な機械ですか?
- はい。魔法なんて存在しなくて、マウスという物理的な装置を使って、X軸とY軸の座標を正確に支持しないと動かない。
この期待値と現実のギャップに直面させることが正しい絶望なんです。
- なるほど。
- システムは魔法じゃなくて、限界を持った単なる道具であると知る。期待値だけで動くわけじゃないと。
そこから始めて、じゃあどうやってこの道具を使いこなそうか。改善策を練ろうか、という論理的な思考がスタートするんです。
- 直感でスワイプするだけの世界から、機械の仕組みを理解する世界へのパラダイムシフトがマウス一つで起きているんですね。
モチベーション維持の秘訣:アナログな報酬とゲーミフィケーション
でも、絶望した子供って普通はそこで心が折れて、もうやめたってならないんでしょうか。
- そこですよね。重要な疑問が浮かび上がってきます。どうやってモチベーションを維持させるのか。
- 実は彼らにその絶望を乗り越えさせて、継続させるための仕組みがあるんです。
- どんな仕組みですか。
- コーダー道場小田原では、一定回数参加した子供に、業者に発注した立派な名札を渡すんです。
- 名札ですか。
- はい。さらに、他の子に教えるようになった子にはプチメンターという役職を与えて、なんと正式な名刺をプレゼントしているんですよ。
- ちょっと待ってください。デジタル空間でプログラミングを学ぶ場で、物理的な名札とか名刺が報酬になるんですか。
- そうなんです。アナログな手法ですよね。でも、この物理的な名刺をもらった瞬間、今まで過目だった子が目をキラキラ輝かせて打ち解けたり、より誇りを持ってプログラミングに取り組むようになるそうなんです。
- なぜそれがほろほど強烈なインセンティブになるのか、心理学的に非常に興味深いですね。
- へえ。
- 承認欲求を満たして、他者とのコミュニティのつながりを生み出すために、あえてアナログで質量のある報酬を使っている。
仮想空間でのデジタルの称号よりも、手渡しされる紙の名刺の方が自分のアイデンティティを強固に現実へとつなぎ止めてくれるんでしょうね。
- まさに現実世界でのRPGのレベルアップや称号を獲得みたいですよね。山本さん自身、現体験としてネットゲームのエピソードを語っていまして。
- どんなエピソードですか?
- 若い頃に、お金と時間をかけて強くなったプレイヤーに無課金で勝つにはどうすればいいか。それを追求するために裏の仕組み、つまりアルゴリズムを理解しようとしたことが現在の仕事につながっているそうなんです。
- なるほど。
- このゲームの仕組みを現実のモチベーション管理に転用しているのが見事だなって思いました。
- 学んだことを他者にフィードバックする、一人で抱え込まずにみんなでやるという文化を育てるためにゲーミフィケーションをうまく活用しているんですね。
失敗を前提としたマインドセットと深い学び
- そうですね。さて、これまでのお話を聞いてくると、高田道場小田原の活動を貫くある核となるメッセージが見えてきます。
- はい。
- 資料にもあるんですが、できない、わからないは恥じゃない。そして失敗して当たり前という2つのキーワードです。
- プログラミングという環境自体が失敗が即座にエラーとして可視化される世界ですからね。だからこそレジリエンスを育むのに非常に適しているんです。
- 失敗を避けるんじゃなくて失敗した後にどうすればいいかを考え続けること。大人に話しかけられない子の顔色をうかがって躊躇していれば声をかけるという絶妙なサポート体制もあるんですよね。
- ねえ。ここで先ほど話に出たUIAAP Duinoのような安価な機材が生きてくるんです。
- ああ、なるほど。
- 壊しても数千円だから罪悪感がない。この失敗しても致命傷にならない環境を用意することが子どもたちの心理的安全性につながり、結果として深い学びを生んでいるこの構造は本当に賞賛に値します。
- しかも山本さんは今後の展望としてこんなことも語っています。昔の電卓のような古い実機を触らせて技術の進化を体感させたいと。
- つまり発展のプロセスを学ばせたいわけですね。
- そうです。完成された最新のITだけじゃなくて。
- スマートな結果だけを与えられるとその背景にある膨大な失敗の歴史が見えなくなりますからね。
- 最初は最新のITを学ぶ場だと思っていたのですが、蓋を開けてみると彼らが教えているのは転んだ後の立ち上がり方なんですよね。
- まさにその通りです。
- だからリスナーのあなたの日常生活や仕事においても、わからないからやらないではなくて、わからないからこそ手を動かすという姿勢はすぐに活かせるはずです。
- ITへの正しい絶望と失敗を前提としたマインドセット、これは大人にとっても非常に重要ですね。
まとめ:効率化社会への問い直し
- ということで、そろそろまとめに入りましょう。
- 業務員として見守る大人の姿勢、名刺によるモチベーションアップ、ITへの正しい絶望、そして失敗して当たり前というマインドセット、どれも本当にしさに飛んでいました。
- ええ、効率化につかれた現代人への強力なメッセージでした。
- では最後に、あなたに一つの問いを投げかけて終わりにしたいと思います。
- 山本さんは今後子どもたちに、昔の電卓のような古い技術を触らせて、進化を感じさせたいと語っていました。
- はい。
- もし、あえて非効率な回り道や失敗しやすい環境が究極の学び場になるのだとしたら、
私たち大人が日々の仕事や生活の中で、効率化やAIの名の下に自動化し手放してしまった、かつての非効率な作業の中にこそ、実は手放すべきではなかった学びの回り道が隠されているのではないでしょうか。
- 非常に考えさせられるといいですね。
- ことは何ですか?ぜひ考えてみてください。
それでは今回の深掘りはここまでです。また次回お会いしましょう。
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