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フランス革命を生き抜いた科学者ピエール=シモン・ラプラスが残したアイディア「ラプラスの悪魔」をご紹介します.もし,究極の知性あるいは悪魔が,この世のすべての物質の状態と,その物質に作用する力とを知っていたとすると,その知性は完全に未来を予測できるというアイディアです.   ニュースレター「STEAM NEWS」  

金谷一朗(いち)

TEDxDejimaStudioファウンダー・パイナップルコンピューター代表・長崎大学情報データ科学部教授

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市ですおはようございますこのポッドキャストは僕が毎週お送りしているニュースレター
スティームニュースの音声版ですスティームニュースでは科学技術工学アート数学に関する話題をお届けしています
スティームニュースはスティームボート乗組員のご協力でお送りしています
[音楽]
[音楽]
改めまして市ですこのエピソードは2022年11月24日に収録しています
このエピソードではスティームニュース第105号からラプラスの悪魔というテーマでお届けします
1794年のフランスで一人の偉大な科学者が処刑されました
フランス革命によって設置された革命裁判所が
近代科学の父これは化学の方の科学ですね
近代化学の父アントワーヌ・ラボアジェに死刑判決を下したんです
ラボアジェはフランス国王ルイ16世の下で科学アカデミー会員
国家財政委員そして朝政請負人をしていたため彼は革命政府に辞書したんですね
弁護人はラボアジェの科学的業績を訴えたのですが
裁判長は共和国に科学者は不要と言って彼をギロ賃貸に送りました
近代科学の父ラボアジェはこの時処刑されてしまったんです
1794年にフランスで科学者として生きるということは
例えて言うならピアノ線の上を音速で綱渡りするようなものだったのかもしれません
何せ革命の奇襲マクシミリアン・ロベス・ピエールによる恐怖政治の真っ只中だったんです
なおロベス・ピエール自身もラボアジェ処刑の2ヶ月後
テルミドール9日のクーデターで処刑されています
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ラボアジェももう少し逃げ回っていればとも思ってしまいますよね
ラボアジェについてはいずれこのポッドキャストでも取り上げたいと思っています
でもこのエピソードではラボアジェではなくもう一人のフランス人科学者
ピエール・シモン・ラプラスについてお話をします
彼もまたこの激動の中を生き抜いた科学者なんです
ラプラスはフランス革命前から天文学、地学、数学において多大な貢献をしていたのですが
フランス国王とは距離を置いて一切政治に関与せず
科学アカデミーに入会することもありませんでした
そのためロベス・ピエールによる恐怖政治も見事にスルーすることができたようです
しかしエジプト遠征中だったナポレオン・ボナパルトが1799年11月9日に
ブリュメール18日のクーデターを起こして
フランス政府トップ、彼は第一コンスルあるいは第一執政と名乗ったのですが
これフランス政府のトップですね
トップにつくとナポレオンはラプラスをフランス内務大臣に指名するんですね
現代の日本で言えば
総務省と警察庁と国家公安委員会を合わせたような組織です
もうなんか聞いただけでもストレスで死んでしまいそうですね
しかも上司がナポレオン・ボナパルトですよ
まあ現代で言うとイロンマスクに使えるようなものですかね
いやもっと話通じなさそうですよね
こんなハードコアな職場に叩き込まれたラプラスなんですが
ひょうひょうと生き抜いていきます
この時ナポレオンは30歳、ラプラスは50歳でした
ナポレオン・ボナパルト自身が晩年このようにラプラスについて感想を述べています
第一級の数学者であるラプラスが平均より悪い行政観であることを示すのに時間はかからなかった
彼の就任後の最初の行動から我々は間違いに気づいた
ラプラスはどんな問題も正しい角度から捉えず
至る所に微細構造を見つけ問題ばかりを考えつき
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ついには無限小の精神を行政に持ち込んでしまった
いやーナポレオンもなかなかの数学者ですね
あちこちに数学用語を散りばめています
ナポレオンが皇帝になるとラプラスは白尺に除せられ元老院議員にもなっています
興味深いのはナポレオン失脚後です
フランス王政復興という時代がやってくるんですがこの時ラプラスはルイ18世の元で皇尺に除せられてるんですね
これむしろワンランクアップしてるんですね
ラプラスは弱ったりか上手だったのかというとおそらくはそうではなくてうまく距離を置くのが上手だったんじゃないかなと思います
東洋のことわざに36形逃げるにしかずという言葉があるんですが
ラプラスはまさにそれを地で言ったんじゃないかなとこれは僕の想像です
悪魔のようなムーブで激動のフランスを生き抜いたラプラスですが
彼はまたラプラスの悪魔という一種の世界観でも知られています
ラプラスの悪魔とはこの世のすべてを知っているため未来のすべてを予測できる存在
ということなんですね ラプラスは1814年の辞書で次のように述べています
宇宙の現在の状態はその過去の結果であり その未来の原因であると考えることができる
ある瞬間に自然を動かすすべての力と自然が構成するすべてのものの位置を知る知性は
もしこの知性がこれらのデータを分析にかけることができるほど広大であれば 宇宙の最大の天体の動きと
最小の原子の動きを一つの式に包含するだろう このような知性にとって不確かなものはなく
未来は過去と同様にその目の前に存在するのである
ラプラスが言いたかったのはありとあらゆる物質の現在の状態とそこにどのような力が加わっているかを
すべて知ることができれば決定的に未来を予測できるということです
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物理学という学問をものすごく簡単に説明すると ほんの少し先の未来をものすごく正確に予測するという学問です
この関係を数式に表したのはイギリスの物理学者アイザック・ニュートンで この式は運動方程式というふうに呼ばれています
この運動方程式をうーんと簡単に説明するとこうなります 式を思い浮かべてください
少しだけ先の未来の状態=今の状態+1秒あたりの変化×少しだけ先までの秒数
もう一度言いますね 少しだけ先の未来の状態=
今の状態+1秒あたりの変化×
少し先までの秒数
足し算と掛け算ができれば少しだけ先の未来のことはわかるということなんですね でこのラプラスの時代の物理学では状態といえば
物体の位置と速度のことなんです 実際この方法で天体の運行を驚くほど正確に予測することができました
でラプラスはその科学的な偉大さからフランスのニュートンとも呼ばれていたんですね
ありとあらゆる物質の状態を知ることもすべての力を知ることも現実的には難しいのですが
もしそのような悪魔のような知性がいたら その悪魔は未来を100%当てられるはずだというのがラプラスの主張なんです
我々が未来を予測できないのは単に無知なだけということなんですね
そんなラプラスの悪魔ですが現在の物理学ではどのように考えられているでしょうか 20世紀初頭に量子力学が急速に発展すると
物理的な状態という言葉の意味が変わってきました 我々はもはや位置や速度を正確に知ることはできないんです
したがって量子力学が扱うミクロの世界にはラプラスの悪魔はもういないんです ミクロの世界にラプラスの悪魔がいないことをもって例えば我々の自由意志の証明だと
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考える哲学者もいます しかしこれは論理の飛躍です
ミクロの世界は偶然が積み重なって必然が生まれているのですが マクロの世界では必然が積み重なって偶然が生まれているんです
ルーレットでどの数字が出るかはボールとポケットの物理状態とボールに加えられた 力を事前にすべて知っておけば
完全に予測可能だと考えられています ボールとポケットの状態はラプラスの時代の物理学つまりはニュートン力学に従っているので
初期条件を正確に知ることができれば結果も知ることができるんです
ルーレットが物理法則に従っている証拠として ドイツ系アメリカ人のリハルト・ジャレッキー医師の例が挙げられると思います
彼はルーレットをハックして一財産を築いたんですね これつまりルーレットの上をこうコロコロと回っていくボールですね これが物理法則に従っているので再現性があるということなんですね
彼はラプラスの悪魔による計算の代わりに統計的な手法を用いました しかし記者にその秘密を聞かれた時はまあうやむやにするために
コンピューターを使ってこのボールの動きを 計算しているんだというふうに
ラプラスの悪魔という言葉は使っていないのですがまあそれを匂わせる発言をしています 小さな悪魔はもういないのですが大きな悪魔はまだいるかもしれません
ところでラプラスとナポレオンの間には 真偽不明なもののこんな会話があったというふうに言われています
ナポレオンがラプラスにこう言いました あなたは宇宙の仕組みについてはこのような大張
これ天体力学論という本のことなんですが このような大張を書いたのですがその創造主神については一度も触れていないと聞きましたよ
これにラプラスが答えて 私にはそんな仮説は必要なかったんですよと
ラプラスはまぁ後にラプラスの悪魔というふうに呼ばれるような概念を生み出してはいるのですが ラプラス自身は知性というふうに呼んでいました
つまり神様ではなくて知性を持ったもの もちろん人間は到達できないかもしれないけれどもその究極の知性を持っていれば
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すべての未来を予測可能だと考えたんですね ラプラスがもし量子力学を知ることがあればどのような解釈をしたのか
興味がつきないところです ラプラスは1827年にパリで亡くなります
77歳でしたから天寿を全うしたと言えるでしょう
このエピソードではラプラスの悪魔について まあ触りの部分だけをお話をさせていただきました
ラプラスは非常に多くの科学的業績を残していてですね wikipedia の英語版なんかで見ると
フランスのニュートンみたいな書き方もされているんですね ただこれフランス人が見たら怒るんじゃないかなと思って
いやラプラスはニュートンより上だと思ってるんじゃないかなと思って wikipedia のフランス語版も調べてみました
そしたらですねあのフランスのニュートンという書き方はされていませんでした でそのラプラスの業績なのですが
まあ工学系の大学だとそうですま電気とか 電気工学ですねとかやってると必ずのラプラス変換というのを
習うんですがまあそのラプラスです コンピュータグラフィックスなんかでよく使う9面調和関数という数学もあるんですが
こちらもですねラプラスが発明していたそうです またデータサイエンスで必ず勉強するベイズ統計学なんですが
これもですねラプラスがまあ骨組みを作ったものなんだそうですね ラプラスだから名前は残していないけれども
あの十分名前は残しているんですがその名前を残さなかった分野でも非常に大きな貢献を しているということになりますね
ナポレオンの部下にはもう一人著名な数学者がいます ジョゼフフーリエという方でラプラスよりもおよそ20歳ほど若いんですが
こちらもですね フーリエ変換という数学の式の名前で有名です
ラプラス変換もフーリエ変換も数学的にはまあ 積分変換の一種なので
特定の微分方程式を解くのにすごく便利な道具としても使えるんですね でやはり2人ともまあこの時代
18:05
だからということはあるのでしょうが 微分方程式を解くということに興味があったのかもしれません
微分方程式というのはこのエピソードの中でご紹介した 少し未来を予測する技術
まあその少し未来を予測する物理方程式に必ず使われる技術なんですね ガリレオガリレーまでは未来を予測するための道具というのは
気化学だと考えられていたのですが タイザックニュートン以降は未来を予測するための道具は微分方程式だということになっていくわけなんですね
そんな時代を踏まえてラプラスであったり フーリエであったりというのは微分方程式にものすごく関心を持ったのかもしれません
それにしてもこの時代にナポレオンに仕えた科学者ってどんな気持ちだったんでしょうね
ラプラスもフーリエも行政官としても有能ではあったと思うのですがそれにしても上司がナポレオンですよ
なんかこう地雷踏んだら処刑されそうじゃないですか で2人ともそのナポレオン失脚後はルイ18世に仕えていて
ラプラスの方はまあ年齢なのか性格なのかその後もひょうひょうと生きていくのですが フーリエは
まあ若かったこともあるんでしょうね結構ギラギラした人生を送っています 冒頭でご紹介したラボアージェ
ラプラスそしてフーリエとこのフランス革命期の科学者数学者たちの物語
すごくねこのフランス革命と時系列で追っていくと
本当に面白いので また改めて特集してみようかなぁと思いました
またその時はね聞いていただければなと思います メールでお送りしているニュースレタースティームニュースの方ではまあこの関連する記事として
第18号フランス革命とメートル法という記事をお送りしています あのメートル法っていうのはフランス革命の最中に生まれたのですが
そうなんですねこのメートルの基準を考え出したのもラプラスでした まあラプラス一人ではないのですが中心的な役割を果たしたのはラプラスでした
こちらもですねこのニュースレター第18号の方こちらはですねもう 完全に公開しているのでご登録いただかなくても読むことができます
21:11
でもまあ登録していただけると嬉しいです こちら読んでいただくと
メートル法の 制定の雰囲気そしてフランス革命の流れなんかも見ていただけるんじゃないかなと思います
最後はちょっと雑談です メールでお送りしているニュースレターではスティムニュースの方ではご寄付
受け付けていましてご寄付を下さった方にはの別冊ということでね ニュースレター週1回お送りしているんですが別冊も週1回お送りしていて
別冊にはあまりパブリックにできないような話題であるとかマニアックな話題なんかをご紹介しているんですが
だいたい本文と別冊はほぼ同時に書いているんですね で今回お送りしているニュースレターが第100号になるのですが第100号の別冊に書くことがもう決まっていまして
それがですねあの日本語でラプラスの文献の名前とか検索すると結構上位に出てくるのですが
地の巨人と呼ばれている松岡誠吾先生の千夜千冊っていうねまあこれあの素晴らしいブログなんですがその中で
ラプラスの著書に関するね コメントというか解説が書かれているんですがこれがですね
あの僕松岡誠吾先生のことすごく尊敬しています 千夜千冊も本当にすごいと思ってます
なんですが ラプラスについて書いてるのこれ
もうね見ていてねがっくり 来ちゃったんですよ
僕自身もねブログで何回か松岡誠吾先生のこの千夜千冊の中には結構な割合で 舌かぶり入っているんじゃないかっていう話をね書かせていただいたことがあったんですが
それに新たな証拠が加わりました いやほんとね地の巨人って呼ばれている人がこういうことしちゃいかんだろうっていうね
まあこれあの詳しくはね別冊読んでいただければなと思うのですが ちょっとねひどい内容でした
そんなことを気にせずラプラスのようにひょうひょうと生きていけばいいのかもしれませんね というわけでこのエピソードも最後まで聞いてくださってありがとうございました
素敵な週末をお過ごしくださいsteam.fmのいちでした
24:00
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ねえ
はい、どうも。
24:58

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