スティームニュースの特別配信
いちです。おはようございます。今回のエピソードでは、少し特別な内容をお送りしたいと思っています。このポッドキャストは、僕が毎週メールでお送りしているニュースレター、
Steamニュースの音声版です。Steamニュースでは、科学、技術、工学、アート、数学に関する話題をお届けしています。
このエピソードは、2025年9月6日土曜日の夜に収録しています。明日の朝、2025年9月7日日曜日から、僕たちはエジプトの遺跡調査に行ってくるので、
しばらく、このポッドキャストを更新できないかもしれません。ニュースレターの方は、定期的に毎週金曜日朝7時に、日本時間の朝7時にお送りしていくんですが、
ポッドキャストの方は、何とか現地でも収録できるように機材とかは持っていこうと思っているんですが、周りの騒音というか、僕が声を出して収録できるのかという問題があるので、まだ予定が立っていないんですが、できるだけ更新したりとか、ひょっとしたらYouTube動画とかも送りできたらいいなとは思っています。
今回のエピソードでは番外編になるんですが、実はかつてスティームニュースメールでお送りしているニュースレターの方でお送りした内容を、さらに遡ると大昔にノートに書かせてもらった内容をお届けしようかなと思っています。
スティームニュース第56号、これは特別配信として、2021年12月25日にスティームニュースの、僕たちはスティームニュース乗組員というふうに呼ばせてもらっているんですが、サポーターの方にお送りさせていただいた内容から、
いくつかピックアップしてお届けをしようと思っています。これどんなタイトルだったかというと、「研究費はボールペンで」というタイトルなんです。研究費はボールペンで、どういうことでしょうか。
なぜこの話をしようかと思ったかというと、最近のことなんですけれども、昔のツイッターでこんな投稿を見かけたんですね。九州大学の言語学のご研究をされている先生だと思うんですけれども、
ついに研究費がゼロになりましたというようなことを書かれていて、また別の衆議院議員の政治家の先生の方が、弘前大学で研究費がこんなに減っているなんてというツイートを、ツイートじゃないですね、Xのポストをされていたことがあって、
10万円という単語を聞かれて、月10万円じゃ消耗品も買えないですよねと思ったら、年10万円ですかみたいに驚いたということを言われていたというポストがあって、その2つから刺激を受けて、インスパイアされてというんですかね。
僕自身が1999年、和歌山大学、これは国立大学で僕が初めて就職した大学でもあるんですが、そこで見たある種壮絶な風景というのを、
このポッドキャスト、リスナーの皆様にも共有しておけたらなと思ってお話をさせていただきます。先ほどの広崎大学の年10万円とか九州大学の
年間ゼロ円というのは、運営費交付金という資金になります。これは研究教育費というふうにも呼ばれているんですが、研究費だけではなくて教育にも使うお金になります。
教育に使うお金というのは、例えば教材を購入したりとか、あるいは学生に配付したりであるとか、主に研究室単位で渡されるお金ではあるんですが、他にも教室の維持とかにも使われるお金です。
九大の先生のゼロとおっしゃっていたのは、授業に使うお金というのはまた別にはあると思うんですが、大学の場合、多くの大学では国立大学だと4年生からの配属が学部によらず多いですかね。
人文系の学部だと3年生から、あるいは3年生の後期からというところもあるかもしれないんですが、そういった学生の卒業研究、卒業論文を書くために必要なお金、本一冊買うにしても、今本ってもう千円以下では買えないですからね。
そういったお金、あるいは資料のコピーを取るであるとか、それからアルバイトを雇って情報整理をするといったこともありますから、それが年間10万円ではもうとても教育にもならないというような話、今九大の話だとゼロ円というようなことがありましたが、
この1999年、これは例外的なことだと思っていたいんですが、和歌山大学のシステム工学部、これも現存する学部です。
そこであったことをお話しさせていただくと、詳しくはニュースレターの方に、これ、有料公読していただけないと読めない号なので、第56号ですね。
ボールペンの重要性
本当に興味ある方、あるいはそんなかわいそうな教育者をサポートしたいと思われる既得な方は、ご寄付、有料公読をいただければと思うんですが、このポッドキャストを聞いてくださっている方にも、いくつか情報共有をさせていただきたいと思って、こうやってお話をしています。
これ何かというと、和歌山大学の年間予算が、その年一桁減らされたそうなんですね。9割カットがあったそうなんですね。
僕はもう本当に20代だったので、キャリア始めたばっかりでペーペーで、上の方でどんなことがあったのかというのは、もうあずかり知らぬというか噂でしか知らないことではあったんですが、とにかく予算が9割カットされた、10分の1になったということだけを聞かされて。
僕はその年の6月に着任したんですね。4月ではなくて、6月末に着任をしたんですね。
その事情もあったんですが、いずれ、なぜ4月じゃないのかというのもお話はいずれしたいなと思っているんですが、とにかく国立大学の予算というのがある程度固まってくるのは年度を明けてからなので、ちょうど9割カット10分の1になったというのが明らかになった直後ぐらいだったんですよ。
それでもう皆さんパニックで、何があったかというと、僕着任したのに、学生と一緒の部屋ですけれども、ここ使ってくださいという部屋はあったんですが、机がない、椅子がない、え?って思われるかもしれないですけれどもね。
机も新設の学部で、学部創設2年目とかだったんですかね。まだまだ教員も全員着任してないし、教員の机とか椅子とかもこれから買うぞというところで予算カットがあったので、机も椅子もないと。
机は会議室用の机があったので、本当に良かったのかどうか分からないんですけども、勝手に会議室から机を借りました。椅子も会議室に椅子がないというのを、一応人数に合わせて並べているので、1個足りないとかさすがにまずいかなと思って。
一時期は勝手に持って行っちゃったこともあったんですけれども、取り返されちゃったりとかして、しょうがないので荷物を持って行った段ボールですね、書類が入っていたので段ボールの箱に座っていました。
椅子は融通できるということで、会議用の椅子を1個回してもらったんですが、そんな状況だったんですね。椅子が段ボールとか、和歌山だったのでみかん箱とかはずいぶん融通してもらえる環境ではあったんですけれども、それから本棚がないんですよ。
やっぱり大学の研究者って本は、今でこそだいぶ電子化されていますけれども、当時は論文とかも紙でしたから、たくさん持って行っていて、でも本棚がなくて、ゴミ捨て場に多学部の先生が捨てられた水や食器棚があったので、それをもらってきました。
食器棚に書類を並べていました。
いろいろ足りないものがあって、プリンターも中古の英語しか印刷できないプリンターを、僕の上司が中国人の先生だったんですけれども、スーパーハッカーでソフトウェアをインストールし直して、プリンターのですよ。
ソフトウェアをインストールし直して、日本語が出るようにしてくれたりとかしたんですけれども、プリンターに入れる紙がないんですよね。ひどい話で。紙がないので、なんとですね、母校に裏紙をもらいに行って、クズ広いですよね。
裏紙をもらいに行って、裏紙に印刷するとかしてたんですが、紙がないということはコピーも取れなくて、コピー機に入れる紙がないんですよね。
本来コピー機って裏紙は入れない方が良くて、紙詰まりを裏紙は起こしやすいので、新しい紙を入れた方がいいんですが、それも背に腹はかえられぬということで裏紙を使ってたんですが、裏紙だって枚数に限りはありますから、コピーもお急れとは取れないと。
当時スキャナーも非常に高かったので、コピーを取るというのが文献副社の唯一の方法だったんですが、リース会社さん、確か富士ゼロックスだったと思うんですが、月最低何枚コピーを取ってくださいよと。
これも消耗品ビジネスだからしょうがないことだと思うんですが、その枚数に達しなかったので、コピー機を引き上げられちゃったんですよ。コピー機がもうなくなるっていう、あれもうしょんぼりですよね。
コピー機もなくなっちゃって。他に6月に僕は着任したので、4月から予算が来るだろうと思って、いろいろ一部は僕のために発注しといてくれたものもあるんですけれども、例えばこういうものがいりますとか言って事前にお伝えしておいて発注してもらったものもあるんですけれども、
着任したら発注しちゃったものは返品してくださいと。納品前のものはキャンセルしてくださいと。納品されたものは返品してくださいと。返品できないようなものは業者さんと支払いの猶予の交渉してくださいみたいなね。それが最初の仕事でした。
ジムの方からボールペンの箱を見せられて、ボールペンが本当に100本ぐらい。赤ペンとか黒ペンとかですね。100本ぐらい入ってて、ボールペンだけは去年のうちに発注してて支払ってるので、これはもう好きなだけ持ってってくださいって言われて。
確かにね、赤ボールペンって、当時もあったんですけどゲルインクってね、よく滑らかに滑るインクあるじゃないですか。確かゲルインクのボールペンだったと思うんですけども。
採点するとね、ほんとすぐなくなるんですよ。1回ね、例えば100人の採点とかするとボールペン1本じゃ全然足りないので、それは助かりましたけれども。
いやほんとね、だから研究費はボールペンでっていうタイトルつけたのはその意味で、ボールペンだけはもう好きなだけ持ってってください。好きなだけって言っても限りはありますけれども。
僕も年間ボールペンは、ボールペンで芯だけ買えるんですけれども、どうでしょう、10本ぐらいは使ってますかね。
だから10本ぐらい持ってていいですよっていう風には言ってくれたんですけれども、それ以外自由にならないというので、研究費はボールペンでというお話をスティームニュースの特別編に書かせていただいたわけです。
大学の予算削減
いやでもちょっと衝撃というか、九州大学もちろん旧定大といって、日本の中では予算が比較的ある方の大学というふうに目されていたんですが、
それでも人文系の先生だというのを割り引いても、予算ゼロっていうのは、研究費ゼロっていうのはちょっとありえないなというふうな気はしています。
ただ特に関東の大学だと電気代が非常に高くなってしまって、やはり電気代、西日本の方がまだ安いですから、東日本の方の大学っていうのは電気代も多分大学全体では何億円手に払っているところと思いますから、
それが何十%かかるだけでも払いが悲惨なことになるというのは容易に想像できますし、大学全体で見ても年々大学に支払われるお金、これは税金から支払われているんですが、
国立大学の場合は授業料と税金ですし、私立大学の場合は国立大学ほどの税金投入の比率ではないですが、私学助成金というのが支払われていて、それが年々減っているということですね。
文科省というよりは財布の紐を握っているのが財務省なので、財務省の方針だと思うんですが、国立大学の予算をずっと前から10%削減したいというのを目標にしていたようで、実際10%削減はされたはずなんですよ。
独立法人化して以降10%以上じゃないかなと思うんですけれども、当初それが2000年前後ですよね。
僕が和歌山大学に着任した頃とかもまさにそうだったんですけれども、国立大学は約100校あるんですよね。99校ですかね。
約100校あって、10校潰せば、もちろん大きい大学予算を大きく取ってますけれども、東京大学とか京都大学とか大きい予算を取ってますけれども、各都道府県にある地産大学でも10校ぐらい潰せば10%削減できるんじゃないかということで、
モデルケースとして和歌山大学が狙い撃ちされたんじゃないかという噂は聞きました。それが本当かどうかわからないんですが、和歌山大学とか、あと噂で出ていたのは福井大学ですかね。
教育とそれから理系が一つとそれから人文社会系が一つという三学部の比較的小さな大学だったので、モデルケースとしては扱いやすかったんじゃないかみたいなことは当時大学内では噂をされていました。
その後、いろいろ噂は流れたわけですよ。僕はその後は大阪大学の方に転勤したんですが、今度は大阪大学を潰そうとか、大阪大学と九州大学を潰そうとか、北海道大学と大阪大学とか、ちょっと組み合わせは時々噂によって変わるんですけれども、
全体で10%削るにはそこらへん、その2個を潰せばいいんじゃないかみたいな話もありました。その時の大学の選定の理由は旧帝国大学、予算規模が大きいですから旧帝大で、ノーベル賞が出てない大学を潰したらいいんじゃないかみたいな、もう適当すぎるでしょう。
日本の財務省に言いそうなことなんですけれども、財務省の官僚の方に失礼かもしれませんが、日本の大学を評価するのに海外の賞を出しに使うっていうのもどうかな、みたいなことは思ったんですけれども、
旧帝大でノーベル賞受賞者が出てない大学を潰したらどうか、みたいなこともあったように聞いています。大阪大学、湯川博士はでも兄弟に移ってからノーベル賞を取られたわけだしとか、そんなことをちょっと思いました。
研究費と論文発表
その後、やっぱり大学を1個潰すのは角が立つと思ったのかどうかわからないですが、人文系の何々系の学部を潰しましょうみたいな風に、徐々に徐々に圧力をかけてきているなという感じは受けます。
そこらへん、いろいろ思い出しながら大雑把にお話をさせてもらっていますが、この2021年の、4年前の記事になってしまうのですが、第56号、研究費はボールペンでという記事の中で書かせていただいているので、
国立大に限らないですよね。日本語大学、やばいんじゃないっていう風に思っていただける方は、情報共有としてお読みいただければ嬉しいなという風に思います。
本当にお金がないというか、特に理工系、実験系、お金がかかるんですよ。今、物価が非常に上昇しているじゃないですか。海外に向かって発信するにしても、ウェブに載せるとかはそんなにお金がかからないですが、
論文発表するということ、これは学術界では非常に大事なことで、ウェブに載せるだけではなくて、論文誌に掲載してもらうというのが非常に大きいプロセスになるんですけれども、これが非常にお金がかかるんですよ。
論文誌に掲載されるというのは、科学者同士の間でのピアレビューといっても、お互いに茶読するというプロセスがあるんですが、茶読にはお金がかからないです。
逆に言うと茶読者、僕も茶読をいつも引き受けているんですが、これは報酬が支払われないです。この論文について正しいのか正しくないのか、疑義を明らかにするというのは、もう科学者の責務として無料で引き受けているんですが、
ただ出版社が非常に高額の出版料を取るんですね。出版社にも良い分はあるんでしょうけれども、それにしても一本論文を出すのに、本当に平気で30万40万請求してきます。これは円が弱いという事情もあります。
だいたいドルだてで請求されるので、そのぐらいかかるということもあります。また僕なんかもそうですが、海外で調査をする、イジプトもそうですし、他にもヨーロッパで調査をしている研究もあるんですが、こういったものに関しては円の弱さもあって、研究費が本当に足りないので、そんなお話をさせていただきました。
ごめんなさい、こんな締めっぽい話で。また次回から楽しい話題をお届けしようと思います。最後まで聞いてくださってありがとうございました。Steamニュースの方もよろしくお願いします。SteamFMのイチでした。