ノアの方舟と宇宙船クリサリス号
いちです。おはようございます。今回のエピソードでは、ノアの方舟には何人乗せるべきという話題をお届けします。
このポッドキャストは、僕が毎週メールでお送りしているニュースレター、Steamニュースの音声版です。
Steamニュースでは、科学、技術、工学、アート、数学に関する話題をお届けしています。
Steamニュースは、スティームボート乗組員のご協力でお送りしています。
このエピソードは、2025年9月5日に収録しています。
Steamニュース第249号から、ノアの方舟には何人乗せるべきという話題をピックアップしてお届けしていこうと思っているのですが、
結論を先に申し上げると、現代のノアの方舟です。
人類存続のための宇宙船を想像してほしいのですが、2400人乗せればいいということが徐々にわかってきています。
この2400人という数字なのですが、現在デザインを募集している宇宙船クリサリス号の乗員数でもあるのです。
宇宙船クリサリス号というのは、地球からおよそ4.9光年離れた恒星を目指す宇宙船の登場人数です。
正確な目標地点は、アルファ・ケンタウリー・ケンタウルス・ザ・アルファ星の近くのプロキシマ・ケンタウリー・Bという太陽系に最も近い基地の太陽系外の惑星です。
生命居住可能領域にある、ハビタブルゾーンにあると考えられている惑星です。
地球からの距離はおよそ4.246光年だそうです。クリサリス号はおよそ400年をかけて到達する計画になっています。
400年というのは気の長い話ですが、計画の主導者たちは、最初の登場者たちが船内で寿命を迎えても次の世代、その次の次の世代が旅を続けるとしています。
人間を透明させる技術はまだないので、他世代で旅を続けるという方が現実的かもしれません。
それにしても、他世代で旅を継続するとなると、2400人で良いのかというのが気になると思います。
日本には人口1000人から5000人の間の自治体が200以上あるので、人口2400人の街というのは珍しいわけではないのですが、そのほとんどが隣町と陸続きです。
人口2400人だと本当に次世代を残せるのかと心配になることだと思いますが、結論を言うと、人口2400人というのは次世代を残すのにギリギリ大丈夫だろうと言われています。
このクリサリス号、あるいは未来のノアの箱舟の乗員数は最低2400人からということになるかもしれません。
遺伝的多様性とボトルネック効果の影響
実は人類は過去にこの最小限の人数まで絞り込まれた可能性もあるのです。
およそ7万4千年前、インドネシアの超巨大火山トバ火山が破局噴火を起こし、原生人類をほぼ絶滅に追い込んだとする説があります。
この説の正しさはいまだ検証中ですが、複数の学説がおよそ7万4千年前に人類が1万人以下、ひょっとすると2千人程度にまで減少したことを指示しています。
2千人というと、日本の利島で言えば長崎の小塚島や鳴島ぐらいの規模なんですが、本当にね、両方とも言ったことあるんですが、こじまりした島です。
この人数から地球を追うほどの原生人類が生まれたというのは、直感的には考えづらいのですが、7万4千年の歴史がそれを可能にしたということなんでしょうかね。
以前、この鳴島にある鳴高校で、この島の人数から人類が再出発したという話をしたことがあります。
世界人口は現在80億人を超えているので、7万4千年かけて、2千人から400万倍に増えたということになります。
これは毎年人口がだいたい0.03%、人口1万人につき3人増えれば十分という計算になるので、長い目で見れば意外と少ない人口からでも盛り返せるということなのかもしれません。
ジャイアントパンダ、オーパンダの統数が2千から3千頭前後と確認されています。
そのために、絶滅危惧種を網羅するレッドリストにおいて、このジャイアントパンダの危機ランクが1つ下げられました。
今から7万4千年かけてパンダが80億頭になるというのは、もちろん考えづらいことではあるのですが、今日明日にでも絶滅するかもという危機は脱したということになるのでしょう。
日本産のクズやワカメが世界で猛威を振るっていることを考えると、植物ほどの繁殖力を持たない動物でも、わずかな個体数で世界を支配することもできるんだろうなぁと言うことはイメージできるかもしれません。
ある種が存続できるにあろう最小の個体数のことを、最小存続可能個体数と呼びます。
最小存続可能個体数の研究は主に島部、つまりは島を対象に行われています。
それらの研究によると、最小存続可能個体数は平均1000個体以上なのだそうです。
ただし、この数は種の多様性を考慮していないため、7万4千年という長期にわたる種の保存を考えると、もっと大きな個体数が必要になると考えられます。
いずれにせよ、これらの研究もまた、原生人類の人口がひょっとしたら2000人程度に落ち込んだ過去があるという可能性を指示しています。
ノアの箱舟にはノア自身と妻3人の息子と息子の妻たちだけしか原生人類としては乗らなかったようなのですが、
これではさすがに人数が少なすぎるようです。
また、種の存続には遺伝的多様性が重要という知見が多くの種の調査を通して知られています。
原生人類の遺伝的多様性は、現存する種の中では最低レベルと考えられていますので、
これから種を維持するために、もうこれ以上遺伝的多様性を失うわけにはいきません。
もし人類存亡の危機に面したならば、皆さんは私なんてと思わずに、私こそというふうに思って箱舟に乗り込んでください。
箱舟には多様性が必要なんです。
人類がかつて大幅に人口を減らした現象をボトルネック効果と呼ぶことがあります。
ボトルネック効果とは、ある集団の個体数が一時的に急激に減少し、その後再び増加した場合に、
遺伝的多様性が大きく失われてしまう現象を指します。
ボトルネック、つまり瓶の首ですね。瓶、ボトルの首、ネックのように集団が細い部分を通過することで、
元の多様性が失われてしまうイメージです。
例えば、自然災害や疫病、環境の急激な変化などで、もともと大きな集団が動く少数の生き残りだけになってしまうことがあります。
この時、生き残った個体の遺伝子だけが次世代に伝わるため、集団全体の遺伝的多様性が大きく減少します。
その後、個体数が回復しても失われた多様性はすぐには戻りません。
ボトルネック効果によって遺伝的多様性が減ると、病気や環境変化への耐性が弱くなり、絶滅のリスクが高まります。
例えば、チーター、ジャイアント、パンダなど過去に個体数が激減した動物は、遺伝的多様性が非常に低いことが知られています。
人類も東波火山噴火の際にボトルネック効果を経験した可能性があると考えられています。
クリサリス号計画のように限られた人数で新たな集団を作る場合、このボトルネック効果が大きな問題となります。
だからこそ、ハコブネやクリサリス号にはできるだけ多様な人々が乗り込むことが重要なんです。
未来の探査と人類の候補者
いつかクリサリス号の登場に募集があるかもしれません。
僕の場合は年齢制限に引っかかっちゃうかもしれないですが、それでも募集があったら乗ってみたいなと思います。
もちろん地球には帰ってこれない、息子世代、孫世代、もっと先の世代まで地球には帰ってこれない、長い片道切符にはなるでしょうし、
目的地、プロキシマ、ケンタウリ、ビーンが本当に生活できる星なのか、生活できる惑星なのかも当然わからないわけですが、募集してみたいなとは思います。
まずは無人機飛ばすんですかね。無人機で行って帰ってくるような調査になるのかもしれませんし、そんなことをする前に月面とか太陽系内の惑星とかに友人で行くというのが先なんでしょうが、
そういった可能性もあると、遠い未来にはそういった可能性もあるというお話でした。未来の箱舟には2400人以上、人間だけというわけにもいかないと思うんですが、人類に限って言えば2400人ということだそうです。
クリサリス号、今デザイン募集されていますが、どうするんでしょうね。人間以外どうやって積むのかといったところにも興味があります。
メールでお送りしているニュースデータ、スティームニュース第249号のほうには、そういった人間への生態系そのものをパッケージにするということに関するヒントになるテッドトーク、ジェーン・ポインター、バイオスフィアでの生活というリンクをお送りしていますので、そちらもよかったらご覧になってみてください。
というわけで、実は今日2020年9月5日なのですが、あさってから少し長期のエジプト調査に行ってまいります。予定よりは少し短くなったのですが、それでも1月ほどの調査に行ってまいりますので、今その準備。
このポッドキャスト、このエピソードはあさ撮っているのですが、今日はこれからその準備とか、屋内にいる間にしないといけない手続きとかお買い物とか、いろいろあるので、今日はこれで失礼したいと思います。
最後まで聞いてくださってありがとうございました。スティームFM1でした。