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いちです。こんばんは。
このポッドキャストは僕が毎週お送りしているニュースレター、スティームニュースの音声版です。
スティームニュースでは毎週、科学、技術、工学、アート、数学に関する話題をお届けしています。
今週は東京オリンピックの開会式でも使われたドローンディスプレイについて少しお話をしていこうと思っています。
東京オリンピック始まりましたね。開会式の演出をご覧になった方も多くいらっしゃると思います。
普通この手のショーは花火に全部持っていかれてしまうものなんですが、それでも特にドローンを使った特大の空中ディスプレイというのは圧巻だったと思います。
一方で、このドローンを使った表現についてちょっと間違った感想も寄せられているようなんですね。
さすが日本の技術とかですね、逆に日本の技術はもっと進んでいるとかですね、こういった感想もネットではちらほらと見かけるわけなんですね。
今週はこの東京オリンピック開会式の演出に使われた技術について公開されている資料から解説してみます。
まずですね、東京オリンピック開会式で使われたドローンディスプレイなんですが、これは公式発表があった通りアメリカのインテルという会社が作ったシューティングスターというシステムです。
インテルというとパソコンのCPUなんかで有名なんですけれども、実はこのドローンショーでも有名な会社です。
シューティングスターは約5年前からショーに使われています。当初は500機のドローンを使っていたのですが、東京オリンピックでは1824機が使われました。
民生用ドローンで有名なのは中国のDJIという会社なんですが、インテルは独自設計のドローンを使っています。
インテルはイスラエルにも研究所を持っているので、ひょっとしたらイスラエルの開発チームによるものかなぁと思って資料を漁ってみたのですが、
ハードウェアはアメリカ開発、ソフトウェアはドイツのマビンチという会社を買収によって獲得したもののようでした。
イスラエルは世界最強と言われる空軍力を持っていますし、インテルもイスラエルに有名な研究所を持っていますから、
ひょっとしたらイスラエルで開発していたのかなと思ったのですが、違ったようです。
一方のDJIの方なんですけれども、2020年に3051機のドローンを使った空中ディスプレイを成功させています。
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こちらはギネス世界記録に登録されていまして、2021年に新しい記録で塗り替えています。
この時は3281台のドローンを使ったそうです。
こうなるともう前天を覆うドローンディスプレイというのも出てくるかもしれないですね。
SF小説3体みたいな世界になってくるかもしれません。
我々エジプト調査チームはDJI製のドローンを使っています。
ご存知の通りエジプトはイスラエルと緊張関係にありますから、ドローンの使用には特にセンシティブで、
ドローンを遺跡上空で飛ばすためには特別な許可が必要です。
日本製ドローンに関してはヤマハの農業用ドローン以外はあまり試乗を取れていないみたいです。
オリンピック開会式は無観客だったので、客席上空に農業用ドローンで農薬散布のシステムがあります。
農薬じゃなくてお水を入れておいて、お水を撒いて、霧を発生させて、
そこにプロジェクターで観客を映し出すとバーチャル観客ということになりますから、
日本の技術の演出になったなぁと勝手な妄想をしています。
中国の竹トンボであるとかレオナルド・ダ・ビンチのスケッチが起源と考えられるヘリコプターなんですけれども、
こちらは空中で静止できる航空機の一種です。
ドローンに代表されるマルチコプターが普及する前は空中で機体を静止させようと思えば、ヘリコプターがほぼ唯一の選択肢でした。
従来は小型ラジコンヘリの独壇場だった無人航空機のフィールドも現在は急速にマルチコプターに置き換えられていっています。
バッテリーの小型化や電動モーターの高出力化といった技術革新も一因なんですが、それだけではないんですね。
通常のヘリコプターはローターが一つなのに対してマルチコプターは4個以上のローターを使います。
マルチコプターに使われるブラシレスモーターというモーターは回転数を精緻に制御できるためにローターごとに揚力を調整することで、
マルチコプターの姿勢を精密に制御できるようになったわけです。
これは従来のヘリコプターではできないことだったので、この技術によって従来で難しかった、風のある環境中でも決まった位置に静止するということができるようになりました。
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従来のローターが一つしかないヘリコプターの場合、操縦者が熟練の技術で何とか静止をさせるということが行われていたんですけれども、
この4つ以上のローターのあるマルチコプターで、なおかつローターの回転数というのを非常に精密に制御できるということで、自動制御ということが現実的になってきたということですね。
もう一つ、ドローンを決まった位置に持っていくためには、ドローンが自分の位置を知っていることがどうしても必要になります。
我々がエジプトでピラミッドやスフィンクスの計測をする場合には、計測対象の周囲に地上コントロールポイント、グラウンドコントロールポイント、GCPという四角マーカーを設置して、ドローンから空撮します。
GCPは別途測量しておくので、これがピラミッドやスフィンクスの絶対的な位置の指標になります。
なので我々はエジプトでドボグ工事もやっています。
Intelのシューティングスターの場合、GPSを含む衛星測位システム、GNSSがドローンに使われています。
ただ民間用GPS単体だと位置制御に必要な精度が出ないため、追加の工夫は行われています。
Intelのドローンが2018年のタイムシーの表紙を飾った時は、スケールを考慮してもまたドローンが揺れているように見えたのですが、その後だいぶ改善されたようです。
このようにして位置を正確にすること、位置関係を保ったまま静止することができるようになったことで、ドローンは空中ディスプレイとして使えるようになりました。
ここでちょっとマニアックな話をします。日本語で検索すると、IntelはRTKと呼ばれる技術を併用しているのではないかという推測をよく見かけます。
RTKはリアルタイムキネマティックスという略ですが、GPS信号を受信する地上固定局と同じくGPS信号を受信しているドローンとの間で、信号のズレを求めて位置精度を高めるものです。
これによって水平面で数センチメートルの誤差まで抑えられます。
ただし、IntelはRTKを用いているということは表明していません。
だからこれはちょっと憶測に過ぎないということになります。
また、ここのドローンの絶対的な位置というのは実は必要なくて、お互いのドローンの位置関係だけ正確にわかっていれば良いので、おそらくRTKは行っていないんじゃないかなと思います。
さらにもっとマニアックなお話をすると、Intelの発表によるとシューティングスターに使われるドローンはカメラを搭載していないんですね。
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例えばロボット掃除機、ルンバなんかはカメラを使って自分の位置を求めているんですけれども、シューティングスターはそれができない。
ただし、地上に設置したカメラに向かって光信号を送ることで自分の位置を知らせることは可能なんですね。
この点の研究はIntelも実際にやっているんですけれども、ただ地上にカメラを含む基地局を置かないといけないということも説明書に出てこないので、おそらくこれも使っていないんじゃないかなと思います。
ドローンをディスプレイとして使うというアイデアが初めて公の場でお披露目されたのは、2012年のことでした。
オーストリアのリンツにあるアルス・エレクトロニカの研究所FutureLabというところだったんですね。
アルス・エレクトロニカというところはインタラクティブアートで有名な機関なんですけれども、ここが初めてドローンディスプレイというものを世に知らせたということになります。
一種アートとテクノロジーの融合したものという意味では、発表の場にふさわしい場所だったんじゃないかなと思います。
もう一つニュースレターでご紹介させていただいているのが、2012年のテッドトークでして、
BJ・クーマー先生という方がドローンを群れとして飛ばすというデモンストレーションの紹介で、この中ではディスプレイじゃなくてドローンによって楽器を演奏するという、
鍵盤を弾いたりドラムを叩いたりですね、というデモンストレーションを見せてくれています。
こちらも2012年なんですね。ちょうどこの年何かブレクスルーが起こったような気がします。
そういう意味ではそれから9年、およそ10年というところですかね。
オリンピックでのドローンディスプレイという点でも、2018年の東京オリンピックで使われていますので、さほど目新しいというわけではなかったんですね。
ただ全体的な演出の中で、一つの技術としてドローンディスプレイというのは元々は使われていたんだと思います。
ご存知の通り五輪のオリンピックの開会式の演出が大きく変わっていく中で、
最後は見せ場として花火と並んで見せ場として残ってしまったのかなという印象を僕は受けました。
ニュースレターの方ではドローンディスプレイ以外の3Dディスプレイ、人々がどういったものを作ってきたのかということに関してお話を、
YouTubeへのリンクとか写真とかたくさん掲載していますので、よろしかったらまたご覧になってください。
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というわけで今回も聞いてくださってありがとうございました。 また次回お目にかかりましょう。
いちでした。
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