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  2. 花火【第36号音声版】 #2.18

夏といえば(今年は見られないけれど)花火.今週は花火のルーツである狼煙,打上花火の秘密,そして花火に使われる炎色反応についてお話します.最後に,内側に向かって爆発する花火,つまりプルトニウム型原爆についてもお話します.(ニュースレター本文

※花火の音はこちらから引用しました.

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毎週金曜日朝7時にアート,リベラルアーツと科学技術に関するニュースレター『STEAM NEWS』を発行しています.詳しくは STEAM.fm をご覧下さい.

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(音楽)
いちです、こんばんは。
このポッドキャストは僕が毎週お送りしているSteam Newsの音声版です。
今回は花火にまつわるリベラルアーツ、それから科学、ケミストリーの方も科学ですね。
その話をしていこうと思っています。
夏といえば花火なんですが、今年はというか今年も花火大会の中止が相次いでいます。
先行花火ぐらいは楽しみたいところなんですが、屋内だとそれも難しいということで、ここは一つですね、一番大事なところは想像で補うという日本の様式日を思い出して花火の音だけを楽しんではいかがでしょうか。
サウンドクラウドというユーザー投稿型のウェブサービスで花火の音を見つけたので少し聞いてみてください。
(花火の音)
(花火の音)
いやー花火っていいですね。概要欄に
今お送りした音源へのリンクも貼っておりますのでよかったらご覧になってください。
今回はこの花火にまつわる話をお届けしてまいります。
花火のルーツは中国ののろしにあるとされています。
紀元前214年に新の始皇帝によって建設が始まった万里の頂上にものろし台があり、
唐の時代618年から900年の間になるとのろしを使ったという文字記録もあります。
この当時はもっぱら遠隔通信用に用いられていたようです。
僕の中国人師匠は万里の頂上ののろしを世界初の光通信と呼んでいました。
日本でも武田信玄がのろしを活用したことで有名です。
一昨年のことになるんですが、学生をですね、世界遺産でもある長崎の野崎島という島に引卒したことがあるんですね。
野崎島は事実上の無人島になっていて、
緊急時ですね、近隣のお隣の小塚島に船を呼ばないと脱出できないんですね。
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もちろん電気のない島ですから、学生には連絡手段を教えておかないといけなくて、
のろしの上げ方を教えておきました。昼用と夜用と2種類です。
のろしってなんか白い煙のイメージがあるんですけども、昼間は白い煙って意外と見えづらいんですよね。
昼間はゴム製品を少し混ぜて黒いのろしを上げるということが推奨されるので、その話を学生させていただきました。
唐の時代、あるいはそれより少し早くに火薬が発明されると、すぐに爆竹が開発されたようです。
焚火に竹をくべるとバチバチと爆発しますよね。以前、ベルギーから来た友人と、別の無人島なんですけれども、
無人島で焚火をしたところ、「お、これが日本のバンブーか」と喜んでくれてたんですけども、
この竹の弾け方と似ているので、爆竹、爆発する竹というふうに呼んだそうです。
長崎はもうすぐお盆の焼爐流しを迎えるんですが、その時に街中で爆竹を鳴らすんですね。
この爆竹が現代に続く花火の最古の形というふうに言われています。
宋の時代と言いますから、950年から1279年の間になるんですが、鑑賞用の打ち上げ花火が誕生していたようです。
1264年の記録によると、南宋の皇帝李宋が開いた式典で、打ち上げ花火が
皇太后の近くに飛んでいったことがあるそうで、これは文字記録が残っています。
大変なことになってしまってますね。花火職人、なんか処刑されたんじゃないかとか、ちょっとヒヤヒヤしてしまいます。
宋の花火は記録によると、打ち上げられる側、つまり花火玉の方に推進用の火薬が使われていたようなので、現在のロケット花火と同じものだったようです。
太宝が発明されたのも13世紀の南宋で、14世紀には量産されていたようなのですが、太宝で花火の玉を打ち上げる技術というのがまだなかったようです。
花火玉を包む和紙さえあれば、太宝よりは打ち上げ花火の方がですね、技術的難易度は低いようなので、おそらくコストとニーズが合わなかったのかもしれないです。
花薬は14世紀になるとヨーロッパに伝わって、坂に製造されるようになります。フィレンツェではすぐに花火が作られるようになったそうです。
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花火を描いた絵画を見ていくと、花火をあらかじめ模様に沿って固定しておく仕掛け花火、それから筒から火花を吹き上げる吹き出し花火が長い間主流だったようです。
日本人が花薬に接したのは13世紀の元寇の時に使われた鉄羽。これ鉄砲のことですね。ただ今の鉄砲とは違って、主流弾のようなものだったんですが、鉄羽。
これは日本は一方的に使われただけでした。おそらく手あるいは透析器、カタパルトを使って投げられたのではないかと言われています。
長崎県の海中から実物が見つかっています。現行の時に使われた鉄羽の実物が見つかっています。
花薬の製造技術なんですが、これはヨーロッパと同じく14世紀頃日本に伝えられて、16世紀の鉄砲伝来以降本格的に製造されるようになりました。
この時代の花薬は全て黒色花薬という花薬で、木炭、硫黄、それから硝石、これは硝酸カリウムのことなんですけども、この3つを混ぜたものなんですね。
木炭と硫黄は日本には売るほどあったんです。木炭というのは木材を蒸して作るので、木材は日本にたくさんありました。
日本は火山大国なので非常にたくさん採掘できて、これは海外へ輸出もしていました。
ところが硝石は水に溶けるので、雨の多い日本ではほぼ産出しなかったんですね。
江戸時代に入ると、小枝目の壺の内側にいくらかできているところを回収するという技術が生まれるんですけども、基本輸入です。
なので木炭と硫黄は国産だけど、硝石はほぼ輸入に頼っていたということになります。
今のような打ち上げ花火、つまり筒に詰めた火薬で打ち上げて、上空で爆発するような花火が歴史に登場するのは、
アメリカの記録では1777年、アメリカ独立1周年を記念したお祭りでのことのようなんですが、実際にはもう少し早くから登場していたようです。
花火誌の武藤照彦によると、打ち上げ花火は1751年に日本の場合ですね、開発されたとされています。
また同じく花火誌の細谷正雄によると、1712年江戸で打ち上げられた「のろし花火」が打ち上げ花火の最も古い記録となります。
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雑な言い方をすると、大砲で爆弾を飛ばすことになる、榴弾。
初めて戦争で使用されたのが1376年、ベネチアでのことだそうなので、おそらくすぐに打ち上げ花火の原型も生み出されてはいると思うんですね。
その後、花火は西ヨーロッパ、ロシア、中国でそれぞれ独自進化していたようなんですが、日本でも打ち上げ花火が独自進化したんだと思います。
日本の打ち上げ花火というのは、筒がゆったりしていて、大砲というのはこの大砲の玉ですね、キャノンボールと大砲の隙間というのはないようにピッチリと設計するんですけれども、
日本の打ち上げ花火の筒がゆったりとしていて、花火玉は軽い和紙でくるんであって、それから花火師がですね、火種を投げ込んで耳を塞いでその場で地面に伏せるという、
結構命がけの打ち上げをするというのがユニークな特徴かなと思います。
色とりどりの花火が生まれたのは1830年代イタリア人花火師によって考案された時です。
現在の打ち上げ花火は、大きな花火玉の中に星と呼ばれる小玉を埋め込んでおいて、燃焼する時間を調整することで演出します。
この星に着色用の金属を混ぜておくことで色とりどりの花火が生まれます。 燃焼時間の調整は火薬の配合で行います。
花火は火薬と金属の粉末を混ぜたものなんですね。金属の一部は炎の中で独特の色を示すことから、花火の着色には欠かせないものになります。
このような化学反応、化学反応を「炎色反応」と言います。 大学受験でもたびたび出てくるので、化学を受験する人は覚えておかないといけません。
といっても語呂合わせで覚える方法もありますから、 このポトキャストの中でもご紹介したいと思います。
花火に必要な色の種類なんですが、3原色である赤、緑、青のほかに、 真理的な順色として黄色と白を加えて、赤、黄色、緑、青、白の5種類になります。
これ、黄色と白があるとより綺麗に見えるということですね。
ニュースレターの方では、代表的な「炎色反応」の色を収めた写真も載せていますので、 そちらも見ていただければと思います。
まず赤なんですが、赤はストロンチウムとカルシウムという金属によって描かれます。
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ストロンチウムの方が深い赤になって、 カルシウムの方はどちらかというと橙色に近い色になります。
受験では、ストロンチウムは紅、カルシウムは橙色と覚えさせられるんですけれども、 それからリチウムが赤というふうに覚えさせられるんですけれども、
リチウムはもちろん単体では非常に不織性が高くて、毒性もあることと、 リチウム化合物も扱いが難しいので通常花火には使われないです。
花火に使われるのはストロンチウムとカルシウムですね。 赤系で言えば。
ストロンチウムはセレスタインという美しい鉱物に含まれています。 これは水色のきれいな鉱物なんですけれども、
この鉱物、粉末にしたものを使っても炎色反応を示すんですが、 熱に分解されやすい小酸ストロチウム、あるいは炭酸ストロンチウム、 臭酸ストロンチウムが使われます。
カルシウムはもちろん骨の主成分なんですが、一番ありふれた入手先は石灰岩、 ライムストーンと大理石、マーブルですね。
石灰岩の方が柔らかいです。どちらも古代エジプトでお馴染みの建材です。 花火には石灰岩を砕いて生成した炭酸カルシウムや石膏の主成分である硫酸カルシウムが使われます。
黄色なんですが、花火の黄色にはナトリウムが使われます。 最もありふれたナトリウムは塩化ナトリウム、つまり食塩なんですが、 食塩は湿気を吸ってしまって、
黒色化薬ってね、ただでさえ湿気を吸ってしまうんですが、 湿気を吸うと燃焼しないので、代わりに
周酸ナトリウムを使います。 花火の緑色にはバリウムが使われます。
バリウムといえばエクスセン検査の増栄剤として使われる、 硫酸バリウムが一番身近なんですが、花火には小酸バリウム、炭酸バリウム、 周酸バリウムが使われます。
増栄剤に使われる硫酸バリウムは異液によって一切溶けず、 人体に吸収されないため飲んでも大丈夫なんですが、
バリウム異音、つまり水に溶けたバリウムですね、 硝酸バリウム、炭酸バリウム、周酸バリウムは水に溶けてバリウム異音になるので、
毒性を持ちます。 日本の法律でも激物に指定されています。
花火の青には銅が使われます。 銅の粉末が用いられることもあるんですが、硫酸銅や炭酸銅も用いられます。
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銅を主成分とする、マラカイトという石も粉末にして用いられることがあります。
ただですね、銅が炎色反応で放出する光の波長が510ナノメートルで、 これはかなり緑に近い波長です。
例えば青色LEDは450ナノメートル、 緑色LEDが520ナノメートル前後使っているので、
銅の青というのはかなり緑に近いです。 将来青い花火が実現できるのか、それともドローンディスプレイが花火を
置き換えていくのか、どっちが先になるのかっていうのはまだわかりません。
花火で白色を出すためにアルミニウムやマグネシウムの粉末を使って 高温の火炎を作ることが行われています。
これは炎色反応ではなくて、炎の温度が高いほど青白くなるという物理現象を利用したものです。
少し番外編ですが、花火というのは見て楽しむものですが、 実は目に見えない花火もあります。これは赤外線を出す花火です。
赤外線を出すためには小酸セシウムが使われます。 どうしてわざわざ目に見えない花火を作る必要があるかというと、これは軍用なんだそうです。
赤外線を追いかけるミサイルなんかをそらすために使われる花火だそうです。
さて、炎色反応の覚え方です。 受験生の皆さんはぜひご利用いただければと思います。
これですね、どんな語呂合わせかというと、
リアカーなきケイムラ 動力借りると するもくれない馬力で行こう
なんかちょっと無理のある日本語なんですが、もう一回言いますね。
リアカーなきケイムラ 動力借りると するもくれない馬力で行こう
これどういう意味かというと、リアカーというのがリチウム赤
という意味です。 リアカーなきのなきはナトリウム黄色
ケイムラはカリウムケイが紫 動力はドが緑
カリルトウというのはカーでカルシウムですね。 トウで
トウ、大大という漢字で書くとトウという字になりますね。
カルシウムで大大。 するもくれないというのがストロンチウムSRがくれない
紅色ですね。 馬力で行こうというのはバリウムが
黄緑色で、馬力の力というのは緑と読みますから
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馬力でをバリウム緑というふうに覚えるわけですね。
かなり苦しい語呂合わせなんですが、これ僕が受験した頃とあまり変わってないです。
これ調べて2020年前後のweb ページで見つけたんですけども、こんなことが書いてありました。
原子に関する知識だけでは、遠色反応を導けないので、これは語呂合わせだろうとなんだろうと覚えるしかないです。
受験生の皆さんですね。頑張ってください。
最後に花火のもう一つの使い方というお話をさせていただきたいと思います。
打ち上げ花火は中心部に割り火薬と呼ばれる火薬が仕込んであって、この火薬が周囲の星を吹き飛ばす、外に吹き飛ばすことできれいに広がるように
作られています。 逆にこの割り火薬を花火の周囲に配置しておくと
内側に向かって一気に圧力をかけることができます。 つまり内側に向かって爆発する花火を作ることができるんですね。
これを爆縮と言います。爆発して縮めるので爆縮と言います。 むらなく爆縮を実現するためには、周囲の火薬を完璧に同じタイミングでむらなく点火する必要があります。
また燃焼は同時に中心部に到達しなければならないんですね。これは非常に厄介な制約条件で、よほどのことがない限りこんな爆縮を
しようという動機はありません。しかし人類史において一度だけこの問題をクリアする必要が生まれたんです。 それは何かというとアメリカによる
原爆開発です。 プルトニウム原爆では放射性物質であるプルトニウム239の玉を火薬で包み込みます。
そして爆縮を用いてプルトニウム239を一瞬で圧縮します。 圧縮されたプルトニウム239は超臨界と呼ばれる状態になり核爆発を起こします。
コンピューターのない時代この厄介な計算を成し遂げたのは火星人とも呼ばれた異能の人ジョン・フォンの今でした。
最初のプルトニウム原爆は1945年7月16日 アメリカのニューメキシコ州で行われたトリニティ実験によって爆発しました。
2個目のプルトニウム原爆は同年8月9日長崎市に投下されました。 アメリカの核開発に絶大な貢献をしたフォン・ノイマンも核兵器による被爆によって命を落としています。
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戦争による被爆というと日本が唯一の被爆国というイメージで語られることが多いんですが実際には 原爆を落とした側のアメリカもですねもちろんその
オペレーターたちですね爆撃に乗っていた パイロットエンジニアオペレーターたちそれから核開発に関わったアメリカの頭脳たち物理学者たちも被爆して命を落としています
僕たちは例えばテレックスを通して広島長崎の被爆者の体験というものを世界に向けてお伝えするということをしてきているわけなんですが
アメリカの頭脳と言われた科学者たちもまた 原爆を落とした側開発した側ではあるけれども被爆して命を落としているということもお伝えしていければと思っています
今回のポッドキャストではそういったお話も含めて お伝えさせていただきました
今回も聞いてくださってありがとうございましたまた次回お会いできればと思います
いちでした
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