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安倍晋三元首相が奈良の大和西大寺駅近辺で銃弾に倒れるという痛ましい事件がありました.犯行には「自作の」銃が用いられました.この号は銃の作り方のヒントを共有することで,銃を自作しようとする方に「諦めて」もらうことを願うものです.   ニュースレターはこちらから👉 https://steam.theletter.jp/   Photo by Toxic Player on Unsplash
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いちです。おはようございます。
このポッドキャストは僕が毎週メールでお送りしているニュースレター、Steamニュースの音声版です。
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SteamニュースはSteamボートの取り組みのご協力でお送りしています。
改めましていちです。このエピソードは2022年7月14日に収録しています。
このエピソードでは「ホームセンターで銃は作れるの?」という話題をお届けします。
結論は「作れなくはないけれども命がけ」
痛ましい事件がありました。
2022年7月8日、安倍晋三元首相が奈良の大和最大地域近辺で銃弾に倒れました。
元首相のご冥福を祈りするとともに、ご遺族、関係者、支援者の皆様に心よりお見舞い申し上げます。
銃撃事件の凶器は自作の銃と報道されています。
このエピソードでは自作銃の作り方についてお伝えします。
銃の製作は武器と製造法によって法律に反し、製造途中であっても罪に問われます。
くれぐれも自作を試みないようにお願いいたします。
なお報道によっては、本事件の自作銃は3Dプリンターによって製作されたとしていましたが、本事件に関しては3Dプリンターは本質ではありません。
すでに3Dプリンター業界に冷たい風が吹き始めていますので、先にお伝えしておきます。
さて、なぜ僕が銃の自作について語れるのか、まずは説明をしておきたいと思います。
僕は元自衛官でもありませんし、軍事マニア、つまりミリオタでもありません。
というか、銃に詳しいわけでもありません。
ただ、一人のエンジニアとして、そしてベレッタモデル92という拳銃を撃った経験と、軍人でエンジニアだった祖父から聞いた話と、
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そして僕自身がかつて銃を自作した経験からお話をしたいと思います。
銃の原理は驚くほど単純です。
まず弾丸ですが、これは十分に小さくて重ければ役を果たします。
例えば江戸時代に使われた火縄銃には、鉛製の10g程度の丸玉が使われていますが、十分な殺傷能力を持っていました。
最も単純な銃は一方を塞いだ筒です。
この筒の開いている側から火薬を詰め、その上から弾丸を込めます。
この火薬は発射薬と呼ばれています。
そしてどうにかして発射薬に点火すると、筒から弾丸が飛び出します。
原理としてはこれだけのことです。
ただし原理が簡単だからといって作りやすいかというと話は違います。
ここら辺はダムの建設に似ているかもしれません。
ダムだって原理は単純ですが、その建設は良いではありません。
銃を自作する場合に問題になるのは、発射薬をどのように点火するのかということと、
筒の片方をどのように塞ぐかということです。
この2点は大変に難しいものなんです。
近代的な銃では弾丸と発射薬をひとまとめにしたカートリッジという弾薬を使います。
発射薬にはプライマーと呼ばれる、衝撃で発火する別種の火薬が仕込んであります。
このプライマーをハンマーで叩くことでプライマーが発火し、その結果発射薬が爆発して弾丸が飛び出します。
この仕組みは大変効果的なものなのですが、自作するにはハードルが高すぎます。
まず、カートリッジは銃砲刀剣類処置等取り締まり法によって処置が禁じられているため、入手は困難です。
また、もしカートリッジが入手できたとしても、プライマーを叩くハンマーの作成は相当に困難です。
少なくとも僕にはできそうにありません。
しかし、より簡単な抜け道があります。
プライマーを使わず、電気で発射薬に点火するんです。
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最も入手しやすい火薬である黒色火薬に市販の電熱線を接触させておき、電熱線に電流を流して一気に高温にすると黒色火薬が爆発します。
黒色火薬の販売は火薬類取り締まり法によって規制されていますが、
玩具円下に分類されるおもちゃ花火は一般に流通しています。
おもちゃ花火の火薬を集めて発射薬にすることは、この法律によって禁止されてはいるのですが、ただ密造は防げないでしょう。
なお、黒色火薬の原料は焼石、木炭、硫黄と入手しやすいのですが、
自身で製造することは違法であるばかりか、手指切断のような大変な危険を伴うため、全く推奨できません。
ちなみに僕は指先を切ってしまったことがあるんですが、死ぬほど痛いです。
発射薬の点火に電気着火を使う場合、銃の構造はかなりシンプルになります。
導火薬を使って点火する火縄銃にしても、プライマーを使う近代的な銃にしても、筒の底にある発射薬に点火するために、穴を開けておかなければならないのですが、
電気着火の場合は電線を通す穴だけで済むからです。
とはいえ、簡単と言えるのは穴開けの部分だけです。
筒の底をきっちりと塞ぐことはそれなりに難しいものなんですね。
通常の設計ならばパイプの外周にネジを切ってボルトをはめ込むことになるんですが、実はここがノウハウの塊のような部分なんですね。
弾丸の発射とは、要するに筒の中で火薬を爆発させることですから、底のボルトを吹っ飛ばす方向にも圧力がかかります。
そして銃口をターゲットに向ける以上、ボルトは自分に向きます。
極端な話をすると、自作銃の場合、撃った時に弾が前へ飛び出すのか、ボルトが後ろへ飛び出すのか、あるいは両方なのか、わからないんです。
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そのためには火薬の分量やボルトの強度を変えて何度も実験をする必要があります。
また、近代的な銃では発射の瞬間にボルトに相当する優低がバックして発射の衝撃を緩和しますが、
ボルトを締め上げた自作銃だと反動が大きすぎ、連射が困難になります。
そこで発射薬は必要な威力を保つギリギリの量まで減らす必要があります。
ここらへんは繰り返し実験して最適な量を決める必要がありますし、
それでも実際に撃つまでは絶対にボルトが自分に向かって飛んでこないとは言えないんです。
ナイフは至近距離なら銃より速いという漫画のセリフを聞かれたこともあるでしょう。
僕は子供の頃、エンジニアであり元軍人であった祖父から、近接戦闘では銃よりもナイフの方が有利と教わったことがありました。
その理由は漫画のセリフとちょっと違ったんです。
速さではなく、旧日本軍の銃、99式小銃の信頼性の問題でした。
整備状態の悪い銃ではなんと、弾が前へ飛ぶかボルトが後ろへ飛ぶか撃つまでわからなかったそうです。
試作を経て量産された銃でさえこのような事故が起こり得るんです。
銃口をターゲットに向ける時、もう一方の銃口は自分に向いていることをいつだって思い出さなければなりません。
自作の銃を人に向けるということは、それだけで銃を自分にも向けていることになるんです。
ところで、近代的な銃には自作銃では到底乗り越えられない工夫がいくつかなされています。
そのうち代表的な3つのエンジニアリングについてご紹介します。
まず銃の筒。バレルの内側に螺旋状の溝を切る刺状あるいはライフリングした銃が現れました。
ライフリング自体は15世紀に登場しているのですが、実用化されるのは19世紀のミニA銃登場まで待たねばなりませんでした。
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ライフリングによって弾丸が回転しながら飛び出すため、銃の有効射程が飛躍的に伸びたのですが、
一方で銃口から弾丸を込めるのに手間が増えてしまったからです。
ミニA銃は銃口から押し込みやすいミニA弾という弾丸を使うように設計されていました。
なお日本の幕末に幕府軍、新政府軍の両社が使ったのはミニA銃を改良したエンフィールド銃でした。
17世紀には高層式あるいは元御名式と呼ばれる銃が開発されています。
1836年に開発された回転式遊艇は実用的な元御名式ライフル銃を可能にしました。
競技用ライフル銃では回転式遊艇を使い続けているものもあります。
元御名式だと弾薬を銃口から詰めるのではなく、手元で詰められるので素早く次の弾薬に交換できるわけですね。
最後に自作銃ではあまり気にすることではないのでしょうが、量産の問題を挙げておきます。
1851年のロンドン万博でアメリカのコルト社は自社の銃2丁を一旦部品に分解し、部品を混ぜ合わせた後、再び元の銃に組み上げるデモンストレーションを行いました。
それまでの銃の製造は職人が部品を一個一個手合わせで製作していたので、部品に互換性があることは大きな衝撃でした。
こうすることで銃の大量生産が可能になったわけですね。
このアメリカンシステムはすぐに銃以外のあらゆる工業製品に導入されました。
なお面白いことに現在のアップル社は、生産された部品のサイズを超精密計測して、サイズの合う部品同士でiPhoneを組み立てています。
なんか一周して職人芸に戻ったみたいですね。
というわけでこのエピソードでは銃の自作についてお届けしてみました。
7月8日の安倍晋三元首相襲撃事件なんですが、僕は学生時代奈良市に住んでいたことがありまして、事件現場の最大自衛機周辺というのもよく歩いていました。
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また安倍晋三元首相と、もちろん個人的な面識というのはなかったんですが、文化庁メディア芸術祭の受賞式の折に同席させていただいたことがありました。
このように今、ご縁が全くないわけではない方がですね、このような形で命を落とされたということは、まあやはり衝撃でした。
それに輪をかけて衝撃だったのが、犯行に使われた狂気が自作の銃だったということですね。
新しい報道によると、火薬、発射薬まで自作だった可能性があるようです。
NHKをはじめとするメディアがですね、犯行に使われた銃がどのように作られていたか、そして発射薬がどのような原料から作られていたのかということをですね、詳細に紹介をしているわけですね。
もちろんその報道されている内容だけで、じゃあ真似できるかというと、まず僕はできないと睨んでいるんですが、
それでも真似してみようかなと思う人に僕はお伝えしたいことがあって、このエピソード、そしてニュースレターを書かせていただきました。
ネットの反応とかを見ていると、この報道を受けてですね、なんだ、銃は簡単に作れるんだ、火薬は簡単に作れるんだ、発射薬は簡単に作れるんだというふうにね、思った方、あるいはそのような反応をされた方が多くいらっしゃったようなんですが、簡単じゃないんです。
火薬を点火すること、そして弾を前に出すこと、それはそんなに難しいことではないんですが、そうじゃなくて、後ろ向きにボルトが飛んでこないようにすること、これが大変に難しいんです。
もう一つ加えるならば、もし火薬を自分で製造しているのであれば、その製造も大変に難しいです。
ボルトの話に戻すと、銃っていうのは要するに筒ですよね。
鉄砲っていうぐらいですから、鉄の筒なんですが、筒っていうのは出口と入り口がありますよね。
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で、片側を塞いで、もう反対の空いてる側から火薬を詰めて弾を詰めるというのが、ひなわじゅうなんかで有名な先ごめ式の銃ですね。
で、片側が塞がっているパイプというのは、これは保護船隊って言っても、売ってるものではありませんし、
日本でもそのひなわじゅうが伝わるまでは作り方が知られていなかったんですね。
日本にはパイプの底をネジで締めておくという技術がなかったんですね。
まあそもそもネジもなかったと言われています。
当時のね、刀鍛冶とか、これ何なんだろうって思ったに違いありません。
現在でも片側が閉じたパイプというのはなかなか入手ができませんから、自分でねネジをねじ込んで。
市販されているもので言うと、パイプの外側にネジが切ってあるものがありますから、それに噛み合うボルトで締めていくことになるわけですが、
これがですね、要は爆発というのはネジを緩める方向に力が働きますから、
発射薬の量をよほど調整しないとボルトが自分に向かって飛んできてしまうんですね。
世の中にはもちろん無反動砲といって、ボルト側に圧力を逃すことで、
銃を撃った時の衝撃を和らげるような仕組みがあったりもするんですが、
無反動砲の場合はね、後ろに人が入れませんから、携帯して発射するというような使い方には向いてません。
またこの銃撃事件では、実行犯は2.6秒で2発目を撃ったそうなんですね。
実行犯が使った酷色火薬というのは比較的反動が大きい火薬で、しかも無反動砲でもなく、
近代的な銃が備えているような優点も持っていないので、銃を撃った時の反動というのが逃げないんですよね。
一方で流れ玉が20m先の看板を貫通したとか、90m先の壁に弾痕を残したのではないかとも言われていますから、
相当何度も火薬の量を調整したに違いないんですね。
そう考えると実行に至るまでに何度も自分の命を危険にさらしていることになります。
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もし僕が模倣するとしたら、確実に自分を撃ち抜いてしまうと思うんですね。
僕は火薬の知識もありますし、電気着火装置、これはもう何度も作ったことがありますし、
金属加工もしょっちゅうしていますが、それでも目的を果たす銃器を作れるかというと、多分無理でしょう。
やはり銃というのは本質的にパイプなので、銃口を誰かに向けるということは、そのパイプの穴は自分にも向かっているわけですね。
そしてたまたま僕の祖父が言っていたように、撃つまでどちらに弾が出るのかわからないということが当然起こるわけです。
だからもし報道に触発されて銃を作ってみようかなと思った人がいたとしたら、諦めてください。
本当に本当に難しいんです、銃は。
メールで送りしているニュースレターの方ではおすすめテッドトーク、そしておすすめ映画でアメリカにおける銃器制、ガンコントロールに関する話題をお届けしています。
特におすすめ映画は「女神の見えざる手」という素敵な映画を紹介しています。
今回のニュースレターはおそらく永久に読者限定にしておくと思うので、よかったらメールアドレスご登録いただいて読者になっていただいて、お読みいただければなと思います。
報道を見ているとね、学生時代に何度かお世話になった奈良西警察署が何度も映っていて、
正直言って結構のんびりした警察署だったんですよね。
捜査関係者の方も本当に大変だと思います。
改めて亡くなられた安倍晋三元首相、そしてご遺族関係者支援者の皆様、捜査関係の皆様にも心よりお見舞い申し上げたいと思います。
今回も最後まで聞いてくださってありがとうございました。
ぜひニュースレターの方も無料購読していただければと思います。
ではまた次のエピソードでお会いしましょう。
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いちでした。
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ご視聴ありがとうございました。
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