言語類型論の概要
言語類型論という言語学の分野があります。
類型論、類型を論じるということですが、
英語だとタイポロジー、タイプ分けするということですね。
この言語類型論は、言語をタイプ分けするのですが、
そのタイプ分けの基準はいくつか考えられます。
が、系統関係によってタイプ分けするということはやりません。
それは歴史言語学、比較言語学で行われることで、
要は共通の祖先の言語に遡れるから、
もともと一つの言語だからということで、
言語をタイプ分けするというのは、歴史言語学のやることなんですね。
それに対して言語類型論は、
言語の系統に関係なく言語をタイプ分けする、そんな分野です。
わかりやすいのは語順ですね。
英語はSVO、主語、動詞、目的語という語順です。
同じような語順の言語は、中国語とかインドネシア語なんかが含まれますが、
この英語、中国語、インドネシア語は共通の祖先に遡れるわけではありません。
SVOという特徴によって分類できる。
言語の系統を無視してタイプ分けする。
それが言語類型論です。
今回のエピソードは、この言語類型論の歴史について遡っていこうと思います。
初期の言語類型論の研究
BGM、行けい。
始まりました。4月15日のツボ。
皆さんいかがお過ごしでしょうか。
エミネムです。
お便りいただいております。
マルさんからラジオトーク宛てにギフトいただきました。
そしてエピックさんからもラジオトーク宛てにギフト、そしてメッセージいただきました。
過去のエピソードの概要欄の5色ご指摘いただきました。
ありがとうございます。
収録で有意義に勉強させてもらってます。
ということで、何度も聞きたい収録書ギフトとともにいただきました。
ありがとうございます。
初期の言語学、特に19世紀の言語学は、すなわち比較言語学、歴史言語学でした。
冒頭少しお話ししたように、歴史言語学というのは、
共通の祖先の言語、祖語を遡る、再現するというのが主な仕事の一つです。
ヨーロッパの言語はほとんど親戚同士で、その共通の祖先の言語、インドヨーロッパ祖語の研究が盛んに行われていました。
グリム童話で有名なグリム兄弟も、そういった歴史言語学の研究者だったのです。
そんな中、言語の系統にかかわらず、言語をタイプ分けしようという研究も生まれたのです。
すなわちそれが言語類型論です。
初期の言語類型論の研究者として、フンボルトとかシュレゲルといったドイツの言語学者が代表的な人物として挙げられます。
フンボルトは弟も学者で、博物学者で、もしかしたらそっちの弟のフンボルトの方が一般にはよく知られているかもしれません。
兄フンボルトは世界の言語をタイプ分けしていくわけですが、その思想のベースとして、言語は有機体である。
言語有機体論みたいなものがあったのです。
有機体というのは要は生き物だということで、言語もあらゆる生命体と同じように成長したり、進化したり、活動したりしていると考えていました。
さらに言語は人間の精神的な活動、思考を考えること、認識とか、そういった精神活動の範囲であると考えていました。
こういった考え方は20世紀以降のサピア・ウォーフ仮説に代表されるような言語相対論へと引き継がれていきます。
フンボルトの言語有機体論、言語を一つの有機体と見る、生命体と見るという考え方は現代ではあまり受け入れられていないと思いますが、当時はそのように考えていたのです。
具体的にどのように言語をタイプ分け分類していたかというと,主に単語の構成の仕方,どのようにして一つの単語を作り上げているかという専門的には形態論と言われる視点に基づいていました。
現代でも同じような分類の仕方がなされることがあって,古典的,伝統的な類型論と言えば,この形態論的な類型論を指します。
例えば,日本語みたいな言語は口着型言語と言われて,食べさせられたみたいに,使役のさせ,受け身のられ,過去のた,こういった節字,単語のパーツというのがぺたぺたくっついて組み合わせられて一つの単語を作っている。
これが口着型言語と言われるものです。
ヨーロッパの古典語は屈折型と言われるタイプに分類されます。
ギリシャ語やラテン語は動詞にしろ名詞にしろ変化形が多いわけですけど,日本語のさせられたみたいに,一つのパーツに一つの意味や機能が乗っかっているわけではなく,一つのパーツに複数の意味機能が乗っかっていることがよくあります。
一つの設備字の情報として,認証,1認証,2認証,3認証,単数とか複数,現在,過去といった点数,直接放課,接続放課といったムード,そういった情報が一色他に一つの設備字に乗っかっているということがヨーロッパの古典語でよく見られるタイプです。
イメージとしては,例えば英語のbe動詞みたいなのを考えてみるといいかもしれません。
I amといったときのbe動詞のamには,1認証,単数,現在という情報が乗っかっているわけです。
そこから1認証だけ,単数だけ,現在だけというのを切り分けることができません。
そういったタイプの言語は屈折型と言われます。
逆に孤立型と言われる言語では,単語の語形変化がほとんどありません。
中国語やベトナム語がよく孤立型言語の例として挙げられます。
中国語のI love youをI needといったときに,この動詞のIというのは主語が誰であろうと,時勢が現在だろうが過去だろうと変化することはありません。
このように単語があまり変化することがない言語のことを孤立型と言います。
今言った孤着型,屈折型,孤立型というのが初期の言語類型論の分類の基準となった分け方です。
初期の言語類型論は,こういう形態論,単語の作り方に着目していたというのが大きな特徴の一つですが,
そこに価値観みたいなのが関わっているというのも特徴的です。
当時の言語学では,古典語,ギリシャ語,ラテン語,あるいはサンスクリット,こういった古典語が言語の理想型と考えられていました。
ですので,屈折語というのが良い言語とされていて,一番良くない言語,悪い言語が,
単語の変化がない孤立型言語と考えられていたのです。
孤着型言語はその中間に位置するというような,そういった良い悪いみたいな価値判断が関わっていたというのも初期の言語類型論の特徴です。
この考え方は現代の言語学では否定されています。
グリーンバークの貢献
20世紀に入って,それも戦後になってから,言語類型論は新たな展開を見せます。
さっきも言ったように,初期の言語類型論は形態論ばかり注目していたわけですが,
グリーンバークという言語学者によって統合論にも注目するようになりました。
統合論というのは単語の並べ方ですね。
簡単に言えば語順ということです。
冒頭で少しお話ししましたけど,英語,中国語,インドネシア語は全てSVO,主語,動詞,目的語という語順である。
そういう語順による分類がグリーンバーク以降,盛んに研究されるようになります。
日本語はSOV語順ですね。主語,目的語,動詞,私はパンを食べる。
こういうSOV語順の言語も世界中にたくさんあります。
グリーンバークの研究で重要なのは,そういった文の語順が他の要素の語順と相関している,関わり合っていると指摘したことです。
例えば日本語みたいなOV,目的語,動詞という語順の言語は高知詞を使いがちで,
逆に英語みたいなVO,動詞,目的語という語順の言語では全知詞を使いがちだ。
そのような一般化ができるのですね。
このグリーンバークの研究から言語類型論はさらなる展開を見せていきます。
というわけで今回のエピソードはここまでということで,最後まで聞いてくださってありがとうございました。
番組フォローまだの方はよろしくお願いいたします。
お相手はシンガ15でした。
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