1. 志賀十五の壺【10分言語学】
  2. #459 日本語は世界で孤立して..
2022-07-12 10:06

#459 日本語は世界で孤立している! from Radiotalk

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#落ち着きある #ひとり語り #豆知識 #雑学 #教育
00:07
始まりました、志賀十五の壺。
皆さんいかがお過ごしでしょうか。
鬼河原 ゴンゾウです。
今回お便りいただいているので、そちらまずご紹介しようと思います。
ケイトさんからいただきました。
いつも端的なトークに関心して聞いております。
ありがとうございます。
自分の研究では、日本語は世界中のどの言語とも仲間でないようだとおっしゃっていたのが驚きでした。
韓国語やモンゴル語の仲間と思ってました。
あんなに語順など似ているのになぜ仲間でないということになったのか教えてほしいです。
ということで、ケイトさんどうもお便りありがとうございます。
おっしゃる通りですね。
韓国語やモンゴル語と日本語っていうのは語順とか結構似てたりするんですよね。
まさにこの話、よくアルタイ諸語とか言われたりするんですけど、
アルタイ系の言語の話は近々収録を配信する予定なのでお楽しみにということでね。
で、その文法的に似ている韓国語やモンゴル語、そこにトルコ語なんかが加わることもあるんですけど、
確かに似ています。
似ていますが、なぜ仲間でないっていうことになったか。
これはもしかしたら衝撃的かもしれないんですけど、
言語が文法的に似ているっていうことと、言語が同系統であるっていうのは全く関係ないことなんですね。
言語が似ているっていうことは、共通の祖先を持っていたということの証明には何にも使えないんですね。
これはね、言語学をやっている人間でも、もしかしたら勘違いしている人っていうかね、そういうふうに考えている人もいるかもしれません。
なので言語学っていうことを全く知らない人からすると、そう思って当然と言えば当然かもしれません。
これは実際の言語を見てみると分かって、英語っていうのはSVO語順ですよね。
SVO、主語、動詞、目的語。
ですが、同系統であるアイルランド語はVSO語順だし、
さらに別の同系統のヒンディ語やウルドゥ語っていうのはSOV語順です。
03:00
まあ語順って結構変わりやすいんですよね。
そもそもインドヨーロッパ祖語っていう、英語にしろアイルランド語にしろヒンディ語ウルドゥ語にしろ共通の祖先の言語っていうのはSOV語順だったんですね。
これ意外に思われるかもしれませんが、もともとSOV語順だったものが英語をはじめとする、
結構目立つ言語っていうか、我々がイメージするヨーロッパの言語ではSVOに変わっちゃったので、なんとなくそっちの方が元の形っていうか主流っていう感じがするんですけど、
語順ってこういう風に変わることがよくあるんですよね。
日本語が韓国朝鮮語やモンゴル語と似てるっていうのは、まずこのSOV型の言語だからっていうのがあるのと、
それに付随して前知詞ではなく後知詞を使うとか、漢詩を持っていないとか、大きな本みたいに形容詞名詞の順になるとか、
そういったことから文法的に似ていると言われるんですけど、
そういった特徴っていうのはSOV型の言語だったらよくあることなんですよね。
つまりこれはね、系統が同じだから文法的に似ているんではなくて、SOVという語順だから他の語順もそういった語順になっていると、
そういう説明ができるものが大量にあります。
そういうこともあって、言語が同系統であるかどうかっていうのは、そういう語順とかね、文法的な類似性っていうのは当てになりません。
使うとしても補助的だと思います。
ではどういうふうに言語が同系統であるかっていうのをね、証明するかというと、
これは規則的な音対応を見つけることです。
これがものすごく誇張して言うと、唯一にして最大の手法だと思います。
規則的な音対応っていうのは、これ関連エピソードあるんでぜひ合わせて聞いていただきたいんですけど、
例えばラテン語と英語を比べたときに、ラテン語で父親っていうのはPater、英語はFatherですよね。
こういうふうにラテン語でPの音で出てくるのが、英語ではF、Faの音で出てきます。
これは非常に規則的で、必ずラテン語ではPっていう音で出るものが英語ではFっていう音になっています。
まあこれは釈用とかをね、除いて考えなきゃいけないんですけど、
PaterとFather自体は、もしかしたら形っていうのは全く似てないように見えるかもしれませんけど、
06:06
似てるかどうかは全く問題ではないんですね。
音が規則的に対応しているっていうのが、同系統であることの証明になります。
てかそれしかやりようがないと言ってもいいと思います。
日本語の場合は韓国語やモンゴル語とそういった音対応っていうのを見つけることができないので、
いくら文法的に似てても同系統とは言えないんですね。
日本語の場合は琉球語とそういった音対応が見つかっています。
例えば琉球の言語の中には、日本語の葉行に相当する音がPの音パピプペポーで現れます。
花のことをパナーと言ったり、人のことをピトゥーと言ったりするんですよね。
でこれは規則的に対応しています。
日本語でHの音で出るものがPの音に出てくるっていうことで、
これは日本語と琉球語が同系統であるっていうことの証明になっているんですね。
でこれはもともとPっていうPの音だったものが日本語本土の方で一斉に変化したっていうふうに考えられて、
つまり琉球語と本土の日本語と分かれてから日本語の方だけそういった変化が起こったっていうことで、
もともとは一つの言語であったっていうことが想定されるんですね。
ここで大事なのは、こういう規則的で組織的な音対応がないとダメっていうことで、
一部だけそういう音の対応があってもダメなんですね。
でこれは音が対応しているっていうことが大事なのであって、
音とか形が似ているっていうのは二の次です。問題にはならないんですね。
例えば、韓国朝鮮語で国のことを奈良と言って、これは日本の昔の都奈良と同語言だとかね、
例えば言ったとしてもそれは偶然です。
むしろこれだけ音や形が似ているんだったら、偶然と考えた方がいいと思います。
そういう一部の単語だけを見るんじゃなくって、
ラテン語のプーの音が英語でフーに対応しているみたいに、
いついかなる場合もそういう組織的な対応がなければ、
同系統とは言えないんですね。
なかなかね、信じ難いことかもしれませんけど、
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繰り返し言っとくと、言語の類似性っていうのは、
必ずしもその言語が同系統であるということを支持するもの、証明するものでは全くありません。
全くっていうと、あれかもしれないですけど、
それぐらいはっきり言っていいんじゃないかと思います。
言語が同系統であることを証明するんだったら、
規則的な音対応っていうのをまず提案しなきゃいけないんですね。
というわけで今回は、お便りにお答えする形で、
比較言語学ですかね、のお話をいたしました。
こういったことからね、日本語はよく系統的に孤立しているというふうに言われます。
少なくとも現段階ではですけどね。
それではまた次回お会いいたしましょう。
お相手はシガ15でした。
またねー。
10:06

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