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始まりました、志賀十五の壺。皆さんいかがお過ごしでしょうか。志賀十五です。
さて、今日のトークテーマは、日本語の「は」と「が」のちがいということでね、やっていこうと思います。
実はね、この番組内でも、「は」と「が」についてのトークっていうのは、過去に結構やってるんですよね。まあ、やってるはずです。
なので、関連トークとして概要欄に載せてもいいんですけど、ちょっともう探すのがくたびれちゃうので、皆さん、もし興味があれば、過去のトークも探し当てて聞いていただけたらと思います。
思いますけど、一応、「は」と「が」については、このトークを聞けば、ある程度全体像みたいなのがわかるようにお話ししていこうと思っております。
なんでこう、やたらめたら「は」と「が」をね、繰り返し取り上げるかというと、
もちろん話しやすいからっていうのもあるんですけど、
「は」と「が」の使い分けっていうのは、日本語母語話者は本当に自然にやっていて、
ある意味で正しい形しか口から出てこないんですよね。母語ってそういうものですけど。
それでいて、どういう使い分けをしているかっていうのは全くわかってないんですよね。
ものによってはですね、こういうふうに使い分けてるんじゃないかなっていうものが母語の中にあったりするんですけど、
「は」と「が」はね、うまく説明しろと言われてもかなりしづらいものではないかなと思います。
例えば、今日の例文は一郎選手ってことでやっていこうと思いますけど、
一郎選手はヒットを打ったっていうのと、一郎選手がヒットを打った。
これは「は」と「が」を書いているだけですけど、何か意味に違いがあるんだろうかということですね。
一郎選手はヒットを打った。
この「は」を使った時は、なんか一郎選手を強調している気がする。
一郎選手がヒットを打った。
この一郎選手がで、「が」を使うと、なんか一郎選手を強調している気がする。同じじゃねえかってことですね。
この強調っていうのは都合がいい言葉で、言語学ではなるべく使わない方がいい表現なんですよね。
なのでこのトークでも、「は」と「が」の違いを説明するのに、できるだけ強調という言葉を使わずやっていこうと思います。
結論から先にもう言っちゃいますね。
「は」の方は急情報を表すもの、あるいは主題を表すとか言ったりしますね。
「が」の方は急情報に対して新情報を表すもの、あるいは焦点とか言ったりもしますけど、
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今回のトークでは、「は」は急情報、「が」は新情報ということで統一して説明していこうと思いますね。
もっと言うと、「は」の方はおなじみで、「が」の方は新登場って感じですね。
たださっきの例文だと一郎選手なんてみんなおなじみじゃないかと思われるかもしれませんが、
ここで言うおなじみっていうのは、談話の中でというか文脈の中でおなじみかどうかということです。
例えば、一郎選手はヒットを打った。
こういう文が出てくるのはどういう時かというと、一郎選手についてすでに話題にしているような場合ですね。
新聞記事でもニュースの語りでも何でもいいですけど、
本日マリナーズの試合があり、一郎選手が出場した。
その後に一郎選手はヒットを打った。
これはですね、前の文で一郎選手が出場したとあるので、次の文ではもう一郎選手はおなじみということになって、
つまり急情報ということになって、一郎選手はと、「は」で受けることになっています。
逆に今言った一文目の方の一郎選手が出場したの方は、初めて談話の中で一郎選手が出てきたので、「が」を使うんですね。
これはある意味で英語の定感詞みたいなものですよね。
「ざ」っていう定感詞は、一度文脈に出てきているものを受けるときは、「ざ」を使いましょうみたいなルールがありますよね。
あれとはっていうのは実は非常に近いものなんですね。
それに対し、「が」っていうのは新情報に使うということは、感詞の「あ」に近いともいうことができます。
今言ったように、「が」は新情報に使われるので、何の脈絡もなく発言するときは、「が」を使うことが多いですね。
雨が降ってきたとか電車が来たとかね。
ただ、実は、「は」と「が」は、情報が古いか新しいかを示す以上のことを本当はやってるんですよね。
例えば、「は」の方は、「一郎選手はヒットを打った。」
「松井選手は打たなかった。」みたいに対比の文脈で使われたりするので、そこも非常に複雑に入り組んでるんですが、
今回はひとまず情報構造っていう点に絞ってお話しております。
この、「は」と「が」の違いをはっきりさせるのによく使われるのは昔話ですね。
これ多分過去のトークでも同じ例を取り上げていると思いますが、
昔々あるところにおじいさんとおばあさんがいました。
おじいさんは山へ、おばあさんは川へとこうなっていくわけですよね。
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1文目の、「おじいさんとおばあさんがいました。」のところでは、
どちらも初登場なので、「が」が使われているんですよね。
2文目以降は、「おじいさんは山へ、おばあさんは川へ。」というふうに、
もうおなじみのメンバーってことになっているので、「は」を使っています。
あるいは疑問文っていうのでも、この「は」と「が」の違いっていうのは確かめられるんですよね。
「誰が来たの?」とは言いますが、「誰は来たの?」とは普通に言わないんです。
これはなぜかというと、「誰」というのは 不定の名詞ということになっていて、
つまり疑問詞は 急情報にはなり得ないんですよね。
だから、「誰は来たの?」とは言えず、「誰が来たの?」と言うしかありません。
これを順番をひっくり返して、「来たのは誰?」と聞くことはできるんです。
「は」の後にだったら疑問詞は出ることできるんですけど、「誰は?」というふうな言い方は普通は無理ですね。
あるいはこういう疑問文でも、「は」と「が」の違いっていうのは現れるんですよね。
つまり、「どちらが田中さんですか?」と聞かれた場合、「私が田中です。」と答えることもできるし、「田中は私です。」と答えることもできます。
これはどういうことかというと、質問された時点で、「どちらが田中さんですか?」ということで、「田中さん」というものはもうおなじみの急情報ということになるんですね。
答える側は、「私」という新情報を相手に届けなきゃいけないので、新情報を表す「が」をつけて、「私が田中です。」というか、
あるいはおなじみの田中、急情報の田中を先に出して、「田中は。」と言った後に、「私です。」と答えることもできます。
以上いろいろな例を出してきましたけど、今回お話しした例に共通しているのは、「は」は急情報を表して、「が」は新情報を表しているということです。
こういった新情報や急情報という情報構造がどのように表されるかというのは、当然言語によって異なります。
日本語は名詞の方に「は」とか「が」というのをつけることができますが、例えば英語みたいな言語はそういったものがないですよね。
では英語は何をやっているかというと、英語の文の構成として基本的に急情報・新情報というような流れがあるんですよね。
なので英語の主語は急情報であることが典型的なんですよね。
例えば、「本は机の上にある。」と日本語で言うような場合は、「The book is on the desk。」とか言えばいいんですよね。
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ただ、本が新情報である場合は、つまり本が机の上にあるみたいな場合は、「There is a book on the desk。」というちょっと変わったのを使って言いますよね。
つまり、「There is a 公文。」というのは、主語に新情報が出てくるのを避けるための公文とも言えるかもしれません。
というわけで、今日のトークは和とがの違いをいろんな例を見ながら考察してみました。
最後まで聞いてくださってどうもありがとうございました。
ではまた次回お会いしましょう。ごきげんよう。