日本語の方言の特徴
日本語の方言は、よく東と西に分けられます。 文法的にも、音声的にも、あるいは語彙的にも、
それぞれ東と西で違う特徴が見られて、 例えば、動詞の音韻と言われる現象が東と西で違って、
東で払ったとか歌ったというところが、 西の方では払おた、歌おたとなったり、あるいは否定、
食べないと東で言うところを西では食べんと言ったり、 これはあくまで一例ですが、様々な
側面でね、日本語の諸方言は東と西に分けられます。 が、
アクセントという面から言うと、 スパッと東と西に分けられるものでもないんですね。
ここで言うアクセントというのは、 巷ではイントネーションと言われているもので、
この番組でもね、過去のエピソードで何度か取り上げたことがあります。 今日はそんな日本語諸方言のアクセントの地理的な分布と、
そこから導き出せる日本語の歴史の仮説についてね、 お話ししていこうと思います。
BGM、行けい。
始まりました。4月15日のツボ。 皆さんいかがお過ごしでしょうか。
はるくほうがんです。
日本語のアクセントっていうのは、先ほども言ったように、 東と西という風に二分割できるというよりは、
波紋状に分布しています。 関西を中心として、
関西方言のアクセント。 その外側に東京式のアクセント。
さらに外側に無アクセント地帯と言われるような、 ちょっと特殊なアクセントの
パターンが分布しています。 波紋状というか、玉ねぎと考えてもいいですけど、
中心の関西方言のアクセント。 京阪式と言われることもあります。
京阪式のアクセントが中心。 その周りを取り囲むように、東京式のアクセントが分布しています。
ですので、東と西には分けられなくて、 愛知県なんかは東京式のアクセントです。
それが関西地方に入ると京阪式アクセントになって、 岡山に入るとまた東京式に戻るというような分布になっています。
京阪式のアクセントは、その名の通り京阪、 関西地方に分布しているわけですが、四国地方も含まれます。
ただ、僕の出身である岡山県は 東京式のアクセントなんですよね。
その東京式アクセントのさらに外側に、 ちょっと特殊なアクセントのパターンが見られて、
例えば鹿児島方言のアクセントの仕組みっていうのは、 非常にこれが変わっていてですね、
関連エピソードがあるのでぜひ聞いて欲しいんですが、 京阪式とも東京式とも異なるアクセントの型を持っています。
他にも、鹿児島は違うんですけど、 宮崎県とかあるいは南東北北関東では、
無アクセントという現象が観察されます。 無アクセント地帯とか言われるんですね。
無アクセントとか無型アクセントとか、 あるいは崩壊アクセントと言われることもありますが、
イメージとしては、有事工事とか雷とか、 こういったお笑い芸人さんの喋り方を思い浮かべてみるといいと思います。
日本語の歴史とアクセント
いずれにせよ、京阪式とも東京式とも違うアクセントのパターンが、 九州や南東北北関東で観察されるんですね。
このようなアクセントの分布から、 日本語の歴史について何が言えるかというと、
一つ思いつくのは方言集権論という考え方で、 これも過去のエピソードで柳田邦夫の方言集権論の話をしたことがあるんですが、
これは中央が一番新しい言語形式を持っていて、 その外側がその次に2番目に新しいもの、
3番目、4番目というふうにだんだん日本で考えれば、 日本列島の外側に行けば行くほど古い形式を保持しているというような、
そういった考え方があるんですよね。 柳田邦夫が方言集権論で用いたのは、かたつむりの呼び方で、
でんでん虫というのがかたつむりの呼び方として、近畿地方でよく観察されて、
でんでん虫のちょっと外側にまいまい、その外側にかたつむり、 一番外側、列峡の端っこの方でなめくじというのがかたつむりを指しているというのを示して、
このような分布から、なめくじというのが一番古くて、でんでん虫というのが一番新しくて、
都があった近畿地方から新しい形式がだんだん外側にこう、 動詞円状にって言うんですかね、広がっていったという主張が下行行内施方言集権論と言われるものです。
しかし日本語のすべての現象がこの方言集権論で説明できるわけではなくて、冒頭言ったように東と西で大きく分けられるっていうパターンもあるので、
すべてがこの方言集権論で解決できるわけではありませんが、
アクセントの分布を見る限り方言集権論的なその仮説っていうのが適用できそうなんですよね。つまり関西方言、近畿地方の京阪式アクセントが一番新しい形で、
その外側の東京式アクセントが2番目に新しくって、一番古いアクセントの型というか仕組みが無アクセントであるということになります。
つまり日本列島の端っこの方で見られる無アクセントというのが日本語本来の姿であって、
日本語っていうのは本来的にアクセントを持っていなかったということになります。
現代日本語を特徴づけているアクセントというのは、後々身につけたというか、獲得された特徴であるということになるんですね。
しかしこの日本語のアクセントの地理的分布の成立過程については諸説あって、
例えば近代値晴彦という先生は今と逆のことを想定しています。
無アクセントというのが一番新しい形で、近畿地方で見られる京阪式アクセントが日本語の本来的な姿、一番古い体型を保持していると考えているんですね。
これは方言集計論と逆で、方言集計論というのは中心部から新しい形が生まれて、そこから外側に行けば行くほど古い形ということなので、
一番外側で観察される無アクセントが一番新しいというのは方言集計論と逆です。
これとはまた別の考え方もあって、服部志郎という先生は京阪式と東京式が日本そこからそれぞれ分岐したんだというふうに考えるんですね。
京阪式から東京式が生まれたり、東京式から京阪式が生まれたわけではなくて、日本そこから、同時にというとあれですけど、そこの段階から二つに分かれたと考えています。
まあこのあたりはいろいろ諸説あるという感じですが、どうですかね?皆さんはどう感じるでしょうか?
もともとアクセントを持っていなかったのが獲得したのか、あるいはもともとアクセントを持っていたのがある地域に限ってなくなってしまったのか、
どちらもあり得るシチュエーションな気はするんですよね。
で、後からアクセントを獲得したという説の中で、トライジンの影響によってアクセントを獲得したという説もあります。
トライジン、すなわち中国大陸からやってきた人々は、中国語のような成長を持つ言語を話していて、
その影響で、言語接触の結果、日本語はアクセントを持つようになって、アメとアメが区別できるようになったと、そういった説もあるんですね。
僕は個人的には、日本語はもともと無アクセントで、それがトライジンの影響かどうかはわかりませんけど、
後からアクセントを獲得したという方が、なんとなくありそうかなという感じがします。
というわけで今回のエピソードは、日本語のアクセントの地理的な分布と、そこから想定される歴史についてのお話でございました。
それではまた次回のエピソードでお会いいたしましょう。番組フォローまだの方はよろしくお願い致します。
お相手はシガ15でした。
またねー!