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2025-03-22 11:51

#740 名詞抱合は逆受動態や適用態と似てる!? from Radiotalk

関連エピソード
https://radiotalk.jp/talk/1222062

主要参考文献
Croft, William (2022) Morphosyntax: Constructions of the World's Languages. Cambridge: Cambridge University Press.

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#落ち着きある #ひとり語り #豆知識 #雑学 #教育

サマリー

今回のエピソードでは、名詞抱合の概念とその日本語における未実現性、さらに逆受動態や適用態との類似性について探求しています。クロフトの文献を通じて、名詞抱合が動詞と名詞の統合的側面としてどのように機能するかを考察しています。

名詞抱合の概念
本日のテーマは、名詞抱合でございます。
内容としてはかなりマニアックなので、リスナーを言ってけぼり的な感じになるのではないかと思います。
名詞抱合については過去にエピソードを撮っております。
シャープ686 歯磨き的な言語学 名詞抱合というエピソードがあって、
こっちを先に聞いてもらってもいいし、後で聞いてもらってもいいんですけど、内容としてはやや被っているところはあると思います。
名詞抱合について、最近ちょっと新しい視点を得たというか、そういう本を読んだので、
クロフトという先生の書いている毛布シンタックスというケンブリッジの教科書があるんですけど、
そこで名詞抱合についてちょっと面白いことが書いていたので、それをお話ししようと思います。
まあまあ面白いんではないかと思うので、根気のある方は聞いてみてください。BGMです。
始まりました。4月15日のツボ。皆さんいかがお過ごしでしょうか。
飛んだゴメスです。この名詞抱合がマニアックなのは、一つは日本語にはない現象なので、
どうしても日本語の例が使えないので、そういった意味でちょっとマニアックになりがちじゃないかなと思います。
名詞抱合というのは、端的に言えば、動詞と名詞が一つの動詞を作るみたいなもので、
もうちょっと言うと、動詞と目的語が一つの自動詞になるというのが名詞抱合です。
関連エピソードの歯磨きがどうたらこうたらというのも、そういったことで、歯を磨くというのが多動詞ですね。
目的語の歯をというのがあるわけですけど、これが動詞と一緒くたになって、歯磨きみたいな言い方が日本語でできます。
日本語の歯磨きというのは、これは動詞ではないですね。歯磨きというのは一つの複合名詞というか名詞なので、
歯磨きをするとか、助詞のをとか付くわけなので、歯磨き自体は動詞ではありません。ですので名詞抱合ではありません。
が、イメージとしては歯を磨くから歯磨きができるようなのが名詞抱合です。
もうちょっと歯磨きを名詞抱合っぽく言うとしたら歯磨くみたいになります。
が、歯磨くとかはちょっと日本語では言えないですね。歯磨くみたいに助詞のをを取って、無助詞で歯磨くみたいな言い方はできますけど、
名詞抱合というのはそうではなくて、歯と磨くが一つの自動詞になって、一単語になって歯磨くみたいになることです。
日本語で名詞抱合は全くないわけでもないですけど、例えば名付けるっていうのがかなり名詞抱合に近いと思います。
というかそのものじゃないかなと思います。名を付けるから名付けるに一単語になってるんですよね。
逆受動態との関連
ただ名付けるっていうのはかなりレアなケースで、もうすでにそういう単語になっちゃってるっていう感じで、
名を付けるから名付けるを作ろうみたいに、そういう派生しようっていう感じではないと思うんですね。
ですので日本語には名詞抱合はないということになります。
が、イメージとしては歯を磨くから歯磨きができてるようなもんだと思ってくれたらいいと思います。
で、クロフトの文法シンタックスの本を読んでると、この名詞抱合っていうのは逆受動に似てるみたいなことが書いてたんですね。
逆受動についても関連エピソードが多分あるので、ちょっと探してできれば聞いてほしいんですけど、
逆受動っていうのは他動詞の主語が自動詞詞の主語になることを言うんですよね。
そういう現象のことを逆受動と言って、この逆受動も日本語にないのでちょっとマニアックな感じになってしまうんですけど、
確かに私が歯を磨くという他動詞から私が歯磨くみたいに言ったとしたら、
私っていうのは同じ主語で変わってませんけど、厳密に言えば他動詞の主語から自動詞の主語に変わっています。
日本語だったら、他動詞でも自動詞でも主語だったら、「が」っていうのをつけますので、別に変化がないように見えるんですけど、
これもちょっとマニアックな話ですけど、これが例えば濃角型の言語だったら、
他動詞文の方の主語は濃角で、自動詞の主語は絶対角になるので、見た目で大きな変化があるんですよね。
実際、オセアニアのトンガ語という言語は濃角型の言語で、コーヒーを飲むからコーヒー飲みするみたいに名詞方語を作るわけですけど、
その時に主語は濃角表示から絶対角表示になるので、
そういった意味では他動詞の主語が自動詞の主語になるという、逆自動と似てるというか、かなり同じ構造になっています。
この名詞方語が逆自動に似てるなというのは、僕も過去に思ったことがあって、
名詞方語は一種のボイスであるということですけど、
ただ単に名詞と動詞が組み合わさって新しい単語を作る以上に、
統合的な側面でというか、主語や目的語の配置が変わるので、
他動詞の主語が自動詞の主語になるという一種のボイスとみなすことができます。
ボイスというのもまた専門的な話ですけど、
例えば受動態というのもボイスで、あれも主語や目的語の配置転換が起こる操作なので、
目的語が自動詞の主語になるというのが受動態ですよね。
こういったものをボイスと呼びます。
繰り返しですけど、名詞方語というのも他動詞の主語が自動詞の主語になるという配置転換が起こっているので、
適用態との類似性
これは一種のボイスであり、さらに逆受動態と同じ配置転換になっているということです。
名詞方語にはもう一つ種類というかパターンがあって、繰り返し同じ例ですけど、
歯を磨くから歯磨きする、歯磨くみたいに自動詞を作るというのが一つのパターンですが、
もう一つのパターンは子供を歯磨く、子供を歯磨きするみたいに、
名詞方語が新しい目的語を取るという、目的語を取る名詞方語という、
これは言い換えれば名詞方語が他動詞として機能しているということで、
歴史的にはというか、言語の発展の仕方としては、まず自動詞としての名詞方語というのがあって、
それが後に子供を歯磨くみたいに目的語を取る名詞方語へと発展していくということが指摘されています。
一つの言語に両方パターンがあることもありますけど、
他動詞の名詞方語だけ持っていて、自動詞の名詞方語を持っていないという言語は考えられないと言われています。
必ず他動詞の名詞方語があるなら、自動詞の名詞方語もある。
子供を歯磨くと言えるんだったら、私は歯磨くという自動詞の方もあるというふうに、そういったことが指摘されています。
他動詞の方の名詞方語、子供を歯磨きするみたいな名詞方語についても、クロフトはボイスと似ていると言っていて、
そのボイスというのが適用体、アプリカティブと似ているというふうに言っているんですよね。
これは僕はあまり考えたことがなかったなと思いました。
この適用体というのもまたマニアックで、日本語にはないものなのでちょっとピンとこないと思うんですけど、
この適用体、アプリカティブというのも一種のボイスで、つまり主語や目的語の配置転換があるんですよね。
アプリカティブというのは脇役の名詞を目的語にするという、目的語に昇格するというのが適用体です。
ですので、例えば道具とかが目的語になったりするんですよね。
無理やり日本語で適用体っぽいものを考えると、金槌でドアを叩くという文で、
金槌でというこの道具を表す名詞は脇役なんですよね。
でという日本語だったら各助詞がついているわけですけど、
これを主役にして金槌を叩くみたいに、金槌を目的語という主役級のものに押し上げるというのが適用体です。
子供を歯磨くみたいなこの名詞方法が適用体に似ているというのはどういうことかというと、
これは元々の文が子供の歯を磨くみたいになっていて、
子供の歯という名詞句全体が目的語なわけですけど、
そのうち歯というのが動詞と一緒具体になって名詞方法になって歯磨くになって、
子供の歯の子供の方ですね。
所有者の名詞は名詞句の中にあって脇役なわけですけど、
それを子供をという目的語に押し上げているというか昇格しているので、脇役を目的語にしているという意味で、
子供を歯磨くというのは適用体と似ているというのがクロフトの指摘です。
これはあんまり考えたことがなかったので、面白いなと思ったというお話でございました。
今回かなりマニアックな話ですけど、結構面白い話でもあると思うので、
よかったら関連エピソードも聞いていただけたらと思います。
それではまた次回のエピソードでお会いいたしましょう。
番組フォローも忘れずよろしくお願いいたします。
お相手はシガ15でした。
またねー!
11:51

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