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2025-11-29 11:14

#812 日本語は「地方」で変化する?”逆”方言周圏論 from Radiotalk

主要参考文献
木部暢子・竹田晃子・田中ゆかり・日高水穂・三井はるみ 編著 (2013)『方言学入門』東京: 三省堂.

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#落ち着きある #ひとり語り #豆知識 #雑学 #教育

サマリー

方言周圏論と逆集権論について解説されており、日本の言語形式の変化に関する興味深い事例が示されています。特に、近畿地方を中心とした新旧の言語についての話や、地域ごとの言語の変化について具体的な例を挙げながら議論が進みます。

方言周圏論の説明
方言周圏論という考え方があります。この番組でも過去のエピソードで何度か取り上げたことがありますが、
新しい言語形式は中央部で観察されて、より古い言語形式は周辺部・辺境で観察されるという説です。
日本で言えば長らく中央は近畿・京都や奈良だったので、近畿地方で用いられている言語形式が最も新しく、
その近畿地方を取り囲む、例えば岡山とか東海地方の愛知とか、その辺で観察される言語形式が次に新しい。
一番端っこの方、九州の鹿児島とか東北地方の青森とか、そういった地域で観察される言語形式が最も古いものである。
これが方言周圏論です。 言語に限らずだと思いますが、
いわゆる流行というものは、中央部・都市部から始まって、それがだんだん地方に広まっていくというようなイメージですね。
現代であれば東京が中心ですが、言語について言えば近畿を中心に考えると、この方言周圏論でうまく説明できるという事例がたくさんあるんですね。
例えば民俗学者の柳田邦夫が指摘したのは、かたつむりの呼び方で、近畿地方ではでんでん虫、あるいはそれに似た形式が観察されて、
で、その周りを取り囲むように、まいまいみたいなものが観察されて、 一番外側、東北地方や九州地方では
かたつむりのことをなめくじと呼ぶんですね。 これはすなわち、
昔の日本語ではかたつむりのこともなめくじと呼んでいて、 その古い形式が列島の辺境に残っていると。
逆に現代、近畿地方で観察されるでんでん虫みたいなのが一番新しい形式で、 それが近畿地方の外側にはまだ広まっていないということですね。
ただもう今は標準語化みたいなのが進んでいるので、この方言集計論っていうのがどこまで 現代日本語の諸方言の
現状を説明できるかどうかは、もしかしたらちょっと微妙かもしれませんが、 伝統的な考え方としてあるんですよね。
逆集権論の概説
この方言集計論は かたつむりみたいな語彙的なものだけではなくて、文法的なものについても当てはまって、
例えば否定、いかないとか言った時のないは、 近畿地方ではいかへんみたいにへんっていうのを使う地域があります。
これは近畿地方のさらに中央で使われるものです。 その外側にはいかんっていうふうにんっていうのを否定で使う地域が分布してるんですよね。
これもやはりいかへんのへんが一番新しい形式で、んっていうのもかつては最先端にあったわけですけど、
今は近畿地方のやや外側に分布しているということです。
この方言集計論に対して逆集計論という考え方もあるんですね。 これはなかなか面白いので掘り下げていこうと思います。
BGMです。 始まりました。4月15日のツボ。皆さんいかがお過ごしでしょうか。アルベールカミエです。
ラジオトーク宛にギフトをいただいております。 マルさんからギフトをいただきました。ありがとうございます。
この番組では皆さんからのお便り、あるいはラジオトークというアプリで送ることのできるギフト
絶賛受け付けておりますのでお気軽にお送りください。 さて、逆集計論ですが
これは集計論の逆なので、もう一回おさらいしておくと、集計論っていうのは中央部で新しい形式が観察されて、
その外側に行けば行くほどだんだん古い形式が観察されるということでした。 それの逆なので、つまり
中央部の方がむしろ古い形式が観察されて、その周辺で新しい形式が観察される。
それが逆集計論です。 例えば母音の融合は逆集計論的な分布をしています。
母音の融合というのは2つの母音が 1つの長母音になってしまうというような現象で
これが中央部近畿地方以外の地域の方がよく観察されるんですよね。 例えば僕の出身地である岡山っていうのはこれが県庁で
赤いだったら明けになるし 寒いだったら寒いになるし
さらにそれでも形容詞だったら語感が固定されちゃっているので 赤かったっていうのも明けかったっていう風になるし
寒かったっていうのも寒かったっていう風に 明け寒いでも固定化してるんですよね。
こういった母音の融合 i が a になったり ui が e になったりするっていうのは近畿地方よりも
やや外側の地域で観察されます。 同様の現象は愛知県なんかでも県庁で
有名なところで言えばお前のことをおみゃーと言ったり エビフライがエビフリャーになったりするみたいな話もあったりしますが
これもやはり2つの母音が1個の長母音になっている 母音の融合という現象です。
こういった母音の融合は岡山とか愛知とか近畿地方のその外側の地域で観察されます。
江戸言葉でもそのような現象はあって 台所の大根とかは出所のデーコンとか
コテコテの江戸の言葉であればそういった言い方をします。 いずれにせよ中央の近畿以外でこういった現象が観察されます。
言語の変化という点から言うと 赤いより赤いの方が新しいし、お前よりおみゃー
台所より出所の方が新しいです。そういった新しい形式が 中央の近畿ではむしろあまり観察されない
それが逆集権論ということですけど、ではなぜそのような分布になっているのか これには言語の規範意識というものが関わっています。
言語規範意識の影響
言語の変化というのはある意味で間違った言い方なんですよね。 どんな言語の変化であっても最初は語用として認められます。
そういった間違った言語仕様に敏感なのは都市部、中央部なので 日本列島で言えば近畿地方ですね。
中央部では規範意識が強いので 変化をあまり受け入れずに
今の例で言うと赤いというこのアイというのをそのまま保持していて、 規範意識がやや気迫な周辺部の方がそういった変化をどんどん受け入れていったという説明の仕方があります。
実際に江戸言葉であっても 上層階級は
母音の融合はあまり見られずに 下層の階級で
まあデイどころのデイコンみたいな言い方がなされていたという研究もあるんですね。 中央部では言語の規範意識が高いが故に新しい言語形式が生まれづらく
結果として中央部の周辺で 新しい言語形式が観察されるそれが
逆集権論です。 で同じようなことは例えばら抜き言葉についても言われていて
ら抜き言葉こそね間違った日本語とか正しくないとか言われがちですよね。 でそのら抜き言葉が観察されるのは
やっぱり都市部以外で でら抜き言葉っていうのは比較的新しい変化ですので
関東地方、東京周辺ではら抜き言葉の使用率は低いです。 それに対して中国地方とか四国地方とかのら抜き言葉の使用
率は高いんですね。 でさらに東京の中でも23区内の方がら抜き言葉を使わない
食べれないじゃなくて食べられないというより基本的な形式を使うということが指摘されています。
これは時代によって中央というのが変わり得るということも示していますね。
ですのでもしかしたら今後新しい言語形式が生まれるとしたら 都市部中央部ではなくてその周辺の地域で生まれるということも
大いにあり得るんではないかと思います。 というわけで今回は方言集権論の逆、逆集権論についてのお話でございました。
それではまた次回のエピソードでお会いいたしましょう。番組フォローまだの方はよろしくお願い致します。 お相手はシガ15でした。
またねー。
11:14

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