1. 志賀十五の壺【10分言語学】
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2024-11-16 11:59

#704 『砂の器』と日本語の方言分布の謎 from Radiotalk

主要参考文献
大石初太郎・上村幸雄(編)1975『方言と標準語: 日本語方言学概説』東京: 筑摩書房.

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#落ち着きある #ひとり語り #豆知識 #雑学 #教育
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番組宛にお便りいただいております。 春さんからいただきました。ありがとうございます。
少し前の回に、もう一回、少し前の回の話になってしまうのですが、縄文語や弥生語の回で、裏日本方言というものが出てきました。
今は裏日本という言葉はほとんど使われていないかと思いますが、裏日本方言というのは言語学の用語なのでしょうか。
気になったのでご質問させていただきます。ということで、春さんのおもたよりありがとうございます。
端的に言えば、この裏日本というのは差別用語にあたるんじゃないかみたいなね、おそらくそういったことではないかと思いますが、
まずこの裏日本方言という言い方、裏日本的な特徴という言い方は、それなりにされるんじゃないかなと思います。
その縄文語や弥生語の話をした時に参考にした小泉珠津先生の本の中でもね、そういった言い方はされています。
特に山陰と東北方言の繋がりというか、共通した特徴を述べるときによく使われます。
これが言語学を離れると裏日本という言い方がされているかというと、あんまりされてないですよね。
昔は天気予報なんかで使われてたらしいですが、どうしてもネガティブなイメージがついて使われなくなっているみたいなんですよね。
そういった意味では山陰という言い方ももしかしたらなくなるかもしれないですね。
BGMです。
始まりました。4月15日のツボ。皆さんいかがお過ごしでしょうか。片桐教習所です。
言語学において、少なくとも言語学において、その学術的な意味で日常的には使われなくなった一種の差別用語、
あるいは差別用語とまでは言わないけども、使いづらくなったような言葉を使うということはまあまああるかなと思います。
お便りにあった裏日本というのもそうですし、あとは朝鮮語とかね、多分朝鮮という言い方はしづらくなっているんですけど言語学では朝鮮語と言ったり、
あるいはシナという言い方をすることもあります。特にシナチベット語族とかね、語族の話をするときはシナチベットという言い方をします。
中国語、シナ語ということはさすがにないですが、このシナというのも日常生活では使いづらいんじゃないかなと思いますね。
シナチックとかね、シナそばっていうのもメンマとか、あるいは中華そばとかっていうふうに言い換えられてますよね。
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これは言語学というアカデミックな場において差別的なとか否定的な意味は全くないです。
そういった含みを持たずに使われてますというか、そういう含みがないからこそ平気で使ってるっていう言い方もできると思います。
おそらく言語学に限ったことではないと思うんですよね。特にチリの分野とか、
東シナ海とかね、朝鮮半島という言い方をしてますよね。
あれも地名というか場所の名前なので、まあ平気で使えてると思います。
あとは西インド諸島とか、もう今ではインディアンって言い方ができないですよね。
メジャーリーグの球団の名前が変わったりもしましたが、このインディアンっていう言い方をせずに、ネイティブアメリカンという言い方をします。
ですが、地名の話になると西インド諸島っていう言い方はまだ多分使われていて、どう考えてもあそこはインドではないんですよね。
カリブ海のあのあたりの島をひっくるめて西インド諸島というわけですが、
チリの分野でも言語学の分野と同様、日常生活では差別用語となったものが引き続き使われています。
まあ当然これはね、時代の流れとともに使えなくなっていくっていうことはあり得るので、
裏日本という言い方もダメだということになればダメになるでしょうし、シナチベットっていう言い方も、シナ単体ではもう使わないので、
ひょっとしたら使えなくなるかもしれません。そこは柔軟に対応していくんではないかと思います。
ですのでお便りの回答としては、裏日本という言い方は日常生活ではほとんど多分使われてないですが、
言語学ではその日本海側を指す用語として、 地理的な意味合いですよね。で、そういった言い方をするというのは、
それなりにあり得るんじゃないかと思います。
最近、砂の器の映画を見ました。松本成長の小説が原作ですが、
なんとか映像化されていて、ドラマ版もあったりするんですけど、僕が見たのは1974年公開の映画で、
僕は小説の方は読んでいたんですけど、映画はまだ見たことなかったので見たいなと思ってたんですよね。
youtube で無料公開されていて、その小築の映画の公式のチャンネルが公式に公開していて、
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ちょうど映画公開から50周年だったんですよね。で、それを記念して youtube で見られました。
よかったですね。丹波哲郎さんとか出てたわけですけど、音楽が芥川康で、いい映画というか、なかなかね、
圧巻の映画というか、おそらく日本映画史に残る映画の一つなんじゃないかと思います。
僕はその辺分かりませんけど、僕はいい映画だと思いました。
で、なんでそんな話をしたかというと、ちょっとネタバレ的になりますけど、今回お話ししている裏日本方言っていうのがちょっと、
ちょっとじゃないか、キーになっていて、なんやかんやで犯人が東北弁を話していたということが分かって、
で、その東北地方を中心に創作するんですよね。映画だと冒頭がそういうシーンでしたが、
東北方言というのはいわゆるズウズウ弁と言われるものです。このズウズウ弁というのも、もしかしたら差別的な意味合いがあるかもしれませんが、
いわゆるズウズウ弁です。言語学的に言えば中舌母音と言われるもので、
ちょうどイとウの中間のウみたいな発音です。それは東北方言の特徴なので、
被害者と容疑者がそのズウズウ弁で話していたという証言を得て、
東北地方を創作するんですが、
ただこのズウズウ弁という特徴は、実は参院地方にも見られる特徴で、中舌母音ですね。
参院の島根県の方から犯人の手がかりを掴んでいくっていうようなストーリーの流れがあって、
そういうふうに言語学的な話も絡んできてるんですよね。
実際国権といって国立国語研究所が映画の中で出てきたりします。
繰り返しになりますが、その中舌母音、いわゆるズウズウ弁というのは、東北地方と
参院で観察されて、その縄文語のエピソードでお話したのは、
その中舌母音というのが、イとウの中間みたいな音が縄文時代話されていた日本語の名残だっていうね。
そういった小泉多茂先生の説をご紹介しました。 中舌母音を持っているということは、
例えばすしっていうのと、ライオンのししっていうのが、両方せすみたいな発音になるということです。
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そういった特徴が裏日本的な特徴で、かつては参院から日本海側をずっと伝って、東北まで広くそういった発音の特徴が分布していたと小泉先生は考えてるんですよね。
後に大和政権が近畿で力をつけていくと、その中舌母音を持たない日本語が近畿地方に広がることになって、
その連続していた中舌母音の特徴っていうのが分断されちゃって、 現代では東北と参院に離れて分布しているように見えると。
つまり東北方言と参院の方言の中舌母音、ズーズー弁的な特徴というのは、もともと共通のものだったということですね。
今手元に方言と標準語っていう本があるんですけど、これが出たのが昭和50年なので、
さっき言った砂の器の映画が公開されたぐらいに出版された本ですが、この本の記述を見ると章ごとに書いている研究者が違うんですよね。
ですので研究者によってこの辺の見解は割れていて、一冊の本の中で真逆の見方が両方あって、
一つは小泉俊先生と同じように、東北方言と参院の方言というのはもともと日本海側で連なっていて、それが近畿の方言によって分断されたというのが一つ。
もう一個真逆なのは、参院の方言と東北の方言っていうのは別個にズズ弁的な特徴、中舌母音を獲得したっていう説明ですね。
というのは中央の方言、近畿の方言にその中舌母音があったみたいな記述がないので、
文献としての証拠がないので地理的には離れている、出雲と東北でそれぞれ同じ特徴が発生したという説もあります。
現代の方言の分布として、参院の方言と東北の方言が特に母音について似たような特徴を持っているっていうのは事実なんですが、
それが果たして共通の祖先まで遡れるのか、あるいは別個に発生したのかっていうのは諸説あるというお話でございました。
それではまた次回のエピソードでお会いいたしましょう。番組フォローも忘れずよろしくお願いいたします。
お相手はシンガーズユウゴでした。
またねー!
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