昨日の演目の印象
はい、シェアする落語の四家です。
5月3日、土曜日なのかな、憲法記念日でゴールデンウィークお休みの最中で、神田連雀亭でゴールデンウィーク特別興行に行って参りました。
結論から言うと、次から次へと出てくる人みんな面白いなっていうですね。
当たりの時のワンコイン寄席、3人出るやつが合併したみたいな、そんな印象でございました。
トップバッターは春雨や晴太さん、ネタは『庭蟹』『洒落番頭』ですね。
これたぶん前に深夜寄席で聴いたんじゃないかな。芸協の『洒落番頭』からもう一歩進めて、面白いと思いましたね。
たぶんこれ、春太さんの独自の入れ言が、ギャグがどんどん入ってきていて、洒落が多くなってます。
洒落喋る人も洒落が多くなっているというので、面白いですね。
続いて春風一刀さんですね。
「私、一刀だけに」って言ってね。
つまり一朝師匠のお弟子さんなので「私、一刀だけに」言ってちょっと間を置いて「真剣にやりたい」と思います。
まあいい落としどころですね。毎回言っていいんじゃないかなっていうふうに思いますけども、新作でしたね。
またこの新作がね、斬新というか、先生同士が喋ってるんですけど、まあその喋りがくだらないという。
結論から言うとめちゃめちゃ面白いんですよ。
めちゃめちゃ面白くて、全巻というか、全体の3分の2ぐらい。始まってから3分の2ぐらい。ほぼ一人語りなんですよね。
一人語りと言っても、本当に一人で語ってるわけではなくて、会話の片方の人だけの喋りがずっと続くっていう。
その人が頭おかしいので、その頭おかしさがやたらとおかしいっていう。
このままずっと一人が喋っている会話っていうのが続いていったら面白いなと思うんですけど、香盤ちょっと切り替わります。
切り替わって、落語の中に座っている頭のおかしさっていうのが、消えないまんままっすぐに突っ走っていくんで、
最後まで面白かったですね。演目は『聖職者』という、そういうお話でした。
春風亭の魅力
続いて春風亭昇羊さん。
「春風一刀さんは素晴らしい素敵な人なんですが、いま一刀さんが演じていた登場人物はすごい腹立たしい」っていう話をしてまして、
全くその通りだなというふうに思いました。
そこから魅力的なまくらをいくつか振った後で、この人は貫いてるなと思いますね。
『権助提灯』です。何が貫いてるかっていうと、
女の人が出てくる話、ちょっと色気のあるような話を貫いてる。
そこはいいと思います、僕は。
そういう女の人の嫉妬とかそういうものが出てくる中で、
じゃあ権助は弱いのかっていうと、しっかり権助ですね。
非常に楽しかったです。
続いて我らが橘家文吾さんです。
「我らが」とか勝手に言っちゃいましたけど、シェアする落語ご出演いただいたことあるんでね。
文吾さんは面白いんですよ。
愛嬌たっぷりだしテクニックもしっかりしてる。
こういう『のめる』みたいな噺をさらっと
『のめる』みたいな噺をさらっとやって、
さらさらさらっと爆笑爆笑爆笑つなげて、さらっと降りていく。
面白いしかっこいいですね。
続いてですね、久しぶりなんですよ僕は。
三遊亭鯛好さん。
なんとですね、このたび三遊亭百生という名前を襲名して、
真打昇進というのが決まった方でございます。
もっと落語業界くらいしか伝わらない言葉で「ぞろっぺい」って言葉がありますけど、
いろんな趣味を持ってて、その趣味をベースに好きなように着てるという、
非常に羨ましい方で、そこがかっこいい。
この日のまくらでも、
同じ型のジーンズを何本か持ってて、
それを売りに行ったみたいな話をしていて、
いかにもね、自分の好きなものだけのために生きているっていう感じがたまらないんですけどもね。
ロックであるとか、このロックの話もしてたな。
エリック・クラプトンとイギー・ポップ。イギー・ポップなんか日本来てたんですね。
しかも、もういい爺さんなんですね。
イギーポップと好楽師匠が同い歳なのかな。
そんな話をしてたと思いますけども、
そういう趣味の中で生きている、もちろんそれだけじゃないと思うんですけど、
でもね、やっぱり趣味で生きてるという感じがいいんですよ、この人の場合。
そこからですね、『壺算』。
もともとね、はちゃめちゃなことも含まれるまくらから、入っていく古典落語っていうのは
非常に整っている感じがあった人なんですけども、
この『壺算』もすごい良かったですね。
やっぱりあれなんですよね、昇進決まると芸って伸びるっていうのはあるのかもしれないですし、
鯛好さん、百生襲名ということでですね、
そのまくらも、つかみのまくらもしっかり出来上がっておりますので、
今後注目というか応援したいなというふうに思っております。
立川流の特長
ここで仲入りが入りまして、今度は春風亭昇市さん。
昇るに市場の市ですね。
昇太一門ということなんですが、ネタは『鈴が森』。
もともとね、誰がやっても面白いネタではありますけど、
やっぱりしっかりしたテクニックを持っていて、
ちゃんと大爆笑を取れるというところが、なかなかなものだなというふうに思いました。
面白かったです。
ここでですね、立川談洲さんですね。
やっぱりこの人は新作が面白いなと思いますよ。
『已己巳己(いこみき)』っていう話をやってくれたんですけど、
『已己巳己』ってどういうふうに書くかは、これ写真見てください。ネタ出しのボードに書いてあります。
要は区別がつきにくいってことを言うらしいんですよね。
同じような字を4つ並べて。
これちょっとどこまでネタ割っていいのかな。
お裁きのお白砂に一人いるんですけど、
その一人が一人でありながら人格がいっぱいあるっていうですね。
それをどうやって調べたらいいのかっていう話があるんですけど。
要は人格がなかなか区別つかないけど、人格が分かれてるっていうですね。
そういう噺なんですよ。
今こうやって喋っても全然面白くないんですけど、話は面白かったですね。
そんなこと考えられるんだっていうちょっとアクロバティックな論理の持ってき方、
理屈の持ってき方に対して、
この噺どこ行くのかなと思うと、
ものすごくわかりやすいところにストーンストーンストーンって何度も落とされるんですよ。
そのたんびに爆笑するっていうことで、
喋りがやっぱりうまいからサラサラサラって言っちゃうときに、
このサラサラサラって言っちゃうのが、この前聴いた『藪入り』か、
のような人情噺だとちょっとそれが味わいの中でね、
ちょっと流れすぎちゃうみたいなところなんですけど、
今日みたいなぶっ飛んだ設定の話だと、
ちゃんと流れれば流暢に流れれば流れるほど面白いってのを改めて感じましたね。
談洲さんは面白いです。
ここで立川流がもう一人、なんと我らが立川寸志さんですね。
ここでもお客さん結構笑い疲れてるんですよ。
笑い疲れてるけど、じゃあ人情噺やるかってそんな時間はないわけで。
じゃあここでどうするかなって思ったら『野ざらし』持ってきましたね。
この『野ざらし』が何がいいかってやっぱり歌聞かせられるんですよね。
寸志さん歌うまいから。
もうね、さいさい節がね、
「上げ潮に南さってね」
まあ俺が歌っちゃうとね、まあね下手くそなんでしょうがないんですけど、
「スチャラッカチャン」ですね。
いいですね。
「あらかた仏〜」っていう歌もありますね。
非常に楽しかったです。
ゴールデンウィークの公演
そしてお客さんがちょっと笑い疲れてるっていうところを
ちゃんとしっかり計算した流れを取りましたね。
でも結局笑っちゃいましたけどね。
で、滝川鯉三郎さん。
この人はですね、わりとしっかりコテンをやるタイプで
感情をね、ちゃんと前に出しながら
『辰巳の辻占』かな。
巻き煎餅を食べる辻裏を見るところなんで非常に良かったですよ。
まだ伸びしろもありそうな感じでございます。
この日のトリを務めたのがここで女性一人、しかも講談一人なんですね。
やっぱりね、このゴールデンウィークの興行は
トリに講談浪曲を持ってくるっていう意図があったみたい。
一龍斎貞奈さんですね。
貞奈さんがね、いいネタを持ってきた。
これね『細川茶碗屋敷の由来』。
『細川茶碗屋敷の由来』がいいかっていうと、
ずっと落語落語落語落語で来る番組になっていて、
お客さんも落語を聴き慣れた人が多いわけですよ。
この細川茶碗屋敷の由来というのは、
もうご存知の方も多いと思いますが、
落語『井戸の茶碗』の元です。
元なんですが、
落語と微妙に違う部分がいっぱい出てくるんですね。
微妙どころじゃないな。かなり設定が違う。
何が一番違うかというと、
落語の『井戸の茶碗』って、
屑屋がメッセンジャーになって、
動かない侍たちの間を行ったり来たりして、
すごく困っちゃうって感じなんですよ。
今聴いた人いっぱいいると思いますけど。
ところが元になった『細川茶碗屋敷の由来』っていうのは、
屑屋から仏像を買った侍が、屑屋に仏像を売った方の侍の家まで行っちゃうんですよね。
侍同士の直接対決になって、
そこに大家が入るっていう、そういう話なんですよ。
だから同じ題材を取りながら、
実は落語版の茶碗屋敷の由来ではなく、
井戸の茶碗というのは、
かなり講談、浪曲もあるよね。
細川茶碗屋敷の由来と、
ほぼ同じ題材なのに、
言ってることが実は違うんですよね。
だからそこは講談と浪曲の違いっていうのを考える上で、
たぶん講談が元で、
落語は講談のパロディでもあるのかなっていうところがあるんですが、
それは同じように『芝居の喧嘩』というネタもそうですね。
同じ題材を扱ってるんだけども、
落語の方は笑いを取ろうとして、
結構いろんなものが変わっているっていうことですね。
『細川茶碗屋敷の由来』と『井戸の茶碗』を比べてみても、
茶碗を買った方が、講談の方は夫婦ものなんですよね。
落語の方は若侍。そこが全然違うわけですよね。
この違いというのを考えていくと、
さっきも言ったっけ、落語と講談の違いっていうのがちょっと見えてくるっていう意味で、
非常にいい噺なんですよ。
今日『井戸の茶碗が出たわけではないですが、
落語を聴きに来てる人たちに対して、
こっちが元祖であって、落語とちょっと違うんですよっていうのを紹介する意味においても、
ここで『細川茶碗屋敷の由来』をやるっていうのは非常にクレバーな選択であって、
しかもちゃんとした講談でしたんで、
まだまだ若手っていうことで若手って言っても結構キャリアありますけど、
まだ講談って難しいんで、
伸びしろがあると言っておきましょうかね。
まだまだこれから目指すべきところはあるんだろうなっていうところはありますけど、
今日の高座でも十分楽しいし、しかも落語を聴きに来てるお客さんに対して、
落語と講談の違い
このネタをやるっていう、ちょっと同じこと言っちゃってますけどね。
意味合いは非常に大きいんじゃないかなっていう、
どこまでご本人意識されてるかわかんないですけどね。
そういう意味でね、これだけいろんな人が出てきて、
みんな面白くて2000円というのは破格だなというふうに思いますし、
普段のワンコイン寄席っていうのも当たり外れはありますけども、
基本損はしないっていうことを考えるとですね、
これは神田連雀亭停に近い、電車乗って行ける範囲の人はやっぱり行ったほうがいいですよ。
ほぼ毎日やってるしね。
ということで連雀亭をお勧めしたいと思います。
皆さん良かったです。お疲れ様でした。シェアする落語の四家でした。
ではまた。