サンフランシスコ・デザイントーク、この番組は、サンフランシスコと東京に拠点を置くデザイン会社、BTRAXのCEO、Brandonと、デザイナーの彩香が、日本で働くデザイナーや、デザインをビジネスに取り入れたい方向けに、様々なトピックについて深く話します。
はい、サンフランシスコ・デザイントーク、本日も始めていきたいと思います。MCを務めます、今回初登場のリュウチです。よろしくお願いいたします。
よろしくお願いします。
本日のテーマは、なぜデザイン案件は炎上しがちなのか、というテーマで。
そうね、これは結構、僕としては、ずっと温めてたトピックで。
温めてたんですか。
今まで、デザインの仕事をずっとやってきて、案件もたくさんやってきた中で、デザイナーの方、聞いてる方だったら実感あると思うんですけど、炎上する案件の方が多いぐらいなんですね。
あ、そうなんですか。
予定通りにいかないケースの方がほとんどで、めちゃくちゃスムーズに、何の問題もなく、みんながハッピーで終わることの方が実は少ないんで、それはどうしてかっていう話をできれば。
その原因と対策、我々なりにたどり着いた対策とかも話せればなと思います。
いろいろ乗り越えてきたってことですね。
乗り越えてくる。
新しい案件が入ると、また炎上する可能性があるって感じなんですけど。
そういう話ができればと思います。
よろしくお願いいたします。
まず、平和に終わる案件が少ないってことで、どんな原因が今までのご経験であるのかなっていうのを。
そもそも、じゃあどういうことになりがちなのかっていう、その炎上の定義からした方がいいなと思うんですけど。
まず、一番ケースとして多いのが、提案時とか見積もり時に想定していた期間およびそこにかかるリソースの費用通りに終わることが少ないってことですね。
プロジェクトって基本的に最初に見積もり出して、それをクライアントさんが承認して、その範囲内で始めるんですけど。
その見積もり金額内に収まるようにするっていうのが、結構至難の技でして。
結論としては、出した見積もりより全然時間かかっちゃったとか、コストかかっちゃったっていうことの方が多いし、
逆に言うと、固定費用で見積もること自体が実は非現実的な業界なんですね。
始めてみないとどのくらい時間かかるかわからない。
クライアントさん的に、いくらかかるかわかんないんで、とりあえずやってみましょうかっていう案件をOKすることはほとんどないじゃないですか。
一般的に考えて、買い物とかした時に商品手に取った時に値段書いてなくて、レジに行った時に値段が決まりますって。怖くて買えないから。
とりあえず金額は出さなきゃいけないし、クライアントさんも予算っていうものがあるから、その予算内で仕事をしてもらわないと困るよっていう。
そういうのが一般的な企業であればどこでもそうなると思うんですね。
ただ、プロジェクトの性質上コントロールがしにくいところが出てくるので、じゃあ1ヶ月かかると思ってたら結論3ヶ月かかりたっていうこともありましたし、
じゃあ3ヶ月かかったんで3倍くださいって言ったらふざけんなって言われる。
それが基幹的な話が一つ。
もう一つが、じゃあプロジェクト終わりましたと。
デザイン系の仕事だと作ったものが何らかの形で世の中に出るわけじゃないですか。
それがウェブサイトかもしれないし、製品かもしれないし、もしかしたらマーケティングキャンペーンかもしれないですけど。
クライアントさんとしてみればお金払ったから、それが世の中に出たときに何かしらポジティブな結果が生まれることを期待するんだけど、
思ったより良い結果が出ないということで、何かしらどうなってんだっていうことで揉めがちっていう結果的なことね。
3つ目がこれはすごいざっくりしてるんですけど、プロジェクトやってる最中に何らかの形でお客さんと揉めるってことですね。
関係がギクシャクするとか、一緒に同じものを作ろうとしてる割には敵対関係になっちゃうっていうか、そういうのも頻発します。
これは今やった3つって、僕の経験上国とか文化とか人種関係ないですね。
関係ないんですか?
関係ないです。うちの会社は日本の会社さんの仕事もさせていただいてますし、それ以外の国、アメリカとか、
国に言うと他のオーストラリアの企業と仕事したり、ヨーロッパの企業と仕事したり、はたまた中東とかアジアの他の国とかもあるんですけど、
どこの国のどの仕事をしたところでこれにはまるケースはパターンとしては一緒。
なので、よく言われる日本の企業はなかなかお客様神様理論で難しいとか言われますけど、
実は国文化関係ないです。
なるほど。
一旦炎上とはってことですね。
僕のイメージ、僕はアメリカに留学して今サンフランシスコにいるんですけど、
アメリカではプロジェクトマネジメントって講義があるって、
そこではすごいスコープ、何をやるやらないっていうのをしっかり明確にしましょうみたいな、
プロジェクトチャーターっていって、プロジェクトの内容をしっかりと記したものを作ってやりましょうみたいな、
そういうのがすごく行き届いてるなって感じがしたんですけど、
それがあっても別に変わらない。
アメリカでもスコープが外れたことを求められたり炎上しがちだったりするんですか?
それまさに専門の単語があるんですよ。
スコープクリープって言うんですけど、
英語でコミュニケーションしてるときにスコープクリープが発生してるとか言い方するんですけど、
スコープっていうのは範囲じゃないですか、
クリープっていうのは嫌なやつっていう意味なんですけど、
スコープで決められた以外のことをお客さんが求め始めたみたいな、
よくあるケースなんですね。
例えばロゴのデザインをする案件があったときに、
最初プロジェクトマネジメントでディファインしていくじゃないですか、
まず3種類見せますと、
そこから3ラウンド経て、
バリエーション見ていただいて、フィードバックいただいて、
改善してを2回やる、3回やるって決めて、
ファイナルしましょう。
これこの通りに終わることってほとんどなくて、
どういうことになるかっていうと、
いい感じのデザインなんだけど、
もう少し他のバリエーションを見てみたいとか、
最終的にこれにしましょうって決まるはずが、
いいんだけどもう少しここの部分、
もうちょっとこうできないかっていうことで、
どんどんリクエストが入ってきてしまう。
プロジェクトマネジメント側からすると、
最初決めたときにバリエーションとラウンド数決めたじゃないですか、
これで終わりなはずじゃないですかって言ったときに、
それはそうなんだけどって言って、
クラウドさんもその中で収めるべきじゃない理由を並べてくるんですね。
一番よくあるのが、
あなたたちのデザインスキルがもっと高ければ決めれたんだけど、
出してきたものがお粗末なので、
もっと出してもらわないと困りますって考え方。
でもデザイナーとしてみれば、
いや想定した時間とリソース使ってるんで、
これ以上やるとコストかかるんですよって言って、
そこでお仕引きが発生するわけじゃないですか。
もうお客さんと揉み始めてるんです。
これをプッシュバックって言うんだけど、
無理ですって言ったときに、
人間だからやっぱり機嫌悪くなるじゃないですか。
否定されるから。
この行ったり来たりを続けてるうちに、
すごい嫌悪なムートになる。
お前とはもう仕事しねえっていう感じになったりとか、
お金払ってるんだからやってよっていう話になったりとかして、
で、もう大変ギスギスしてくるんですよ。
っていうことが、
理論的にはスコープ決めるんだけど、
現実的にはスコープクリープが多発します。
やっかいトリッキーだけど、そこから逃げてはいけない関係性づくりが必要とするんじゃないかなと思ってますけど。
ありがとうございます。
解決策というところでは、一緒にやるっていうところでワークショップっぽいやる。
このポッドキャストでも結構前のエピソードで話してたことがあって、
デザイナーのスージーと話した時に、
彼女もビートラックスのデザイナーで、
こういうデザイン案件でいろいろそういう壁にぶつかって悩んでいる時に、
何かいい方法ありませんかって言われて、
ワークショップやっぱり一番いいよねって話をしたんですね。
ワークショップって何かっていうと、
今このビートラックスのサンフランスコのオフィスの隣の部屋でも今やってるとこですけど、
クライアントさんとうちのデザイナーなりが、
同じ場所と同じ時間を共有して、
一つの課題に向かって一緒に考える時間を作ろうっていうやり方ですね。
さっき言ったみたいに、
コラボレーション関係、信頼関係を結んで、
一緒に同じものを一つ作るっていうのは重要だとすれば、
一番いい方法っていうのは、
日本語で言うとこの同じ釜の飯を食う関係になるっていう。
日本だと例えば合宿とかあるじゃないですか。会社で合宿。
あれもそうで、チームとしてチームビルディングをした上で、
一つの課題に対して同じ方向を向かって一緒に解決策を考える。
これはデザイナーもクライアントさんもそういう関係を結ぶと、
非常に課題解決に近づくので、
うちの会社でこういうさっき言ったような炎上問題が多発してた時に、
これワークショップで解決できないかなと思って、
そこで考案されたのが、もう10年くらい前ですけど、
デザインワークショップ型のサービスなんですよね。
そこからデザイン志向なり、リーンスタートアップなり、
デザインスプリントなりのメソッドも活用しながら、
日々クライアントさんとワークショップを進めてるんですけど、
僕がビートラックスとしてワークショップサービスを提供しようと思った、
一番の理由としては、もっと良いものを世の中に出したいからだったんですよ。
ワークショップ型じゃない受発中関係みたいな関係になっちゃうと、
どうしても良いものを作るのに限界があるということに気づいて、
これはワンチームでやらないと本当に良いものって作れないんだなと。
デザイナー側はお客さんのことをもっと知らなきゃいけないし、
お客さんはもっとユーザーの声とか聞けるようにしてあげた方がいいなと思って、
そこで考案したんですね。
いつの間にか良いものを作るだけじゃなくて、
人材育成の側面もあって、
クライアントさんから是非ワークショップお願いします。
人材育成したいんだよっていう、
副産物もできたぐらいに、いいんですけど、
そのワークショップでリアルタイムで課題解決をしていくのは非常に重要ですね。
逆に、作ってフィードバック出して、作ってフィードバック出してを、
メール上だけとかオンライン上だけでやるのは結構しんどい。
文字コミュニケーションの限界もあるし、
同じ温度感がわからないと、
なるほどね、だからこれがいいんだねっていうのがわかりづらいので、
ワークショップをやっています。
それが一つ。
あと、理想的なワークショップは、
どこかのタイミングで、さっき言った部長クラス、
例えば部長クラスにディシジョンメーカーの人が入るっていうことですね。
目に見えない階層、階層があって目に見えないボスキャラがどこかにいるっていうんじゃなくて、
そのボスキャラがどこかのタイミングでちゃんと出席してくれて、
リアルタイムでそのやりとりを目の当たりにしていただけると、
ずっと一緒にいなくてもいいんですけど、
要所要所で3時間でもいいから来ていただけると、
温度感がわかるし、
なぜそのデザインにしているかっていうのが伝わるかと思っています。
あともう一個、これもすごい重要なんですけど、
デザイン案件、特にデジタル系のサービス、
ウェブサイトとかアプリとかが多いんですけど、
クライアントさんからするとお金払ってるんで、
その中でできるだけいいものが欲しいじゃないですか。
そうなるとどうなるかっていうと、
完璧なものが手に入るまでやり直ししてほしいと思うんですね。
いつまで経っても。
これってうちの会社がウェブデザインをメインの生業としてた時に多発してまして、
どういうことかというと、
お客さんが納得するまでウェブサイトが公開されない問題。
公開されないと支払いも受けられないみたいな条件もあったりすると、
1ヶ月で終わるはずが、1ヶ月後にお客さんが、
いやいやまだこれだと完璧じゃないんで、
完璧になるまでとことん作ってほしいです。
ちなみに公開するまで支払いはしないんですけど、
なるとデザイナーも支払いを受けるために、
公開するために頑張らなきゃって頑張ってやるんだけど、
いつまでたってもお客さんが求めるクオリティにならない。
完璧にならない。
理由があって、ウェブサイトに完璧なんて概念ないんですよね。
常に進化するし、常に変化する世界。
デジタルっていうのはそういう世界なんで、
例えば日常使ってるスマホとかって定期的にOSアップデート入るじゃないですか。
バージョンアップで。アプリもそうだし。
リリースされてから短期間でどんどんアップデートされながら改善を繰り返して、
これで完成っていう概念すらないじゃないですか。
生き物だからね。
それに気づいた瞬間に、我々がやったことっていうのは、
30日保証をつけて公開しようっていう契約にしたんですよ。
どういうことかというと、スケジュールが決まってて、
このタイミングでだいたいウェブサイト完成するので公開しますと。
クライアントさんが、そこでできたもので終わっちゃうのってなると不安になるんで、
いや安心してください。30日間は無償で細かな更新であればやりますんで。
って言うと、じゃあいいや、とりあえず今日公開して、
来月の今日まで何かあったらお知らせするんで直してねって言って、
大丈夫ですよって言って、1回公開して支払いもいただいて、
30日保証があるので、もうちょっとテキスト公開てとか、
画像入れ替えておいてって言われたら全然問題ないですよ。
30日以内なんでっていうのをやってから、
お客さんと揉めなくなったんですよね。
お互い気持ちよく仕事できるようになったんですけど、
30日っていうのは一つの例だけど、
もしくは継続的なサポート契約を強いておくってことですね。
公開6ヶ月間は毎月いくらの金額で、
何時間以内までであれば仕事させていただきますって契約しておけば、
お客さんとしても、そっか、これが1回終わってからも
継続的にサポートいただけるんだったら、
1回ここで締めてもいいなって思ってもらえるようになった。
そんな感じです。
確かに。
自分たちで運用とか修正するのって多分難しいと思っているので、
クライアントからすると、より良いもので、
何十年何年か捨たれないものを多分求めているので、
その細かなサポート契約っていうのは良いなって思いました。
そんな感じですね。