音楽演奏不安の定義
今回は音楽を演奏する人が緊張して上がってしまうっていうのをどうやって測るのかという研究をちょっと紹介してみたいと思います。
サイエンスポットは最新の科学技術にスポットライトを当てるポッドキャストです。 ホストはサイエントークのレンです。ということで、今回ちょっとストレスに関するお話ということで
毎月恒例の7月の科学系ポッドキャストの日に参加しております。 今月のホストは工業高校農業部さんで、テーマがストレスということで
ストレス溜まってるんですかね、ホストの方もね。わかんないですけど。 何でもいいのでこのストレスに関わるお話をいろんな番組でしています。
概要欄にもプレイリストがあると思いますので、ぜひそちらチェックしてみてください。 何話そうかなって思った時に、ちょっと音楽とストレスの話を絡めたいなと思いました。
これが出ている日におそらく上がると思うんですけど、日本放送の番組に出演させていただきました。
東京ミュージックインスティテュートというゴリゴリの音楽番組です。 この音楽番組で、僕が言ってちょっと科学者っぽいことを話してほしいという話でしたので、
音楽と科学の結びつきというか、どういう音気持ちいいの気持ち悪いのとか、なんでそういう感じになるんだろうねみたいな研究をちょっと紹介しているとかしてみています。
これちょっと最後に紹介しますので、 初めて日本放送の番組に多分出たと思うんで、ちょっとそれも後で話したいと思います。
なのでちょっとストレスと音楽を掲げ合わせた話、ちょっとそれを調べている時にあったので、ちょっとついでに調べてみました。
今回本題に入るんですけど、この演奏するっていうことに関して、緊張するっていうことは誰しもあるかなっていうふうに思います。
僕もずっとちっちゃい頃からピアノとかやってて、やっぱり大勢の人の前で演奏するときは緊張したりもしますし、
まあ演奏じゃなくてもプレゼンテーションなんかする時とか、緊張することは皆さんあるかなと思います。
で、この音楽を演奏するときの緊張っていうのは一応学術的に名前がついていて、音楽演奏不安。
英語で言うとMusic Performance Anxietyって言うんですけど、略してMPAって呼ばれる現象ですね。
これをどうやって科学的に測ったりするんだろうっていうのは色々研究がされているということです。
で、もちろんこういう不安があると演奏家にとっては手が震えたりして、あと息上がったりして、思うようにパフォーマンスできないっていうのは結構死活問題になるので、
で、実際音楽家の半分以上というか70%以上はこのMPAを経験しているっていう統計があったりもするので、
残りの人たちはむしろしてないんかなって思うぐらいなんですけど、まあこれをどう捉えるかっていうことですね。
で、一応これを測る国際的な心理尺度っていうものがすでにありました。
これがKMPAIRっていうやつですね。これ別に名前覚えなくてもいいんですけど、要はこのMPAっていうものを測る手法ですね。
で、この手法っていうのは基本的にはアンケートみたいなものだと思ってもらえばOKなんですけども、
日本語版の作成と検証
このアンケートっていうのは2009年に開発されて、しかもこれがいろんな言語に翻訳されて、世界中の音楽家がこのMPAを把握するための基盤になっているようなものです。
これをもとにいろんな研究がされているとか、カウンセリングに使われるとか、何か演奏家の不安を取り除くための処置をしたらその前後を比較するための指標にするとか、そういったものとして使われています。
ただ、これ日本語版がなかったらしいんですよね。なんで?っていう感じなんですけど、なので日本語版もないし、その日本語版を作って言語が変わると、もしかしたら言い回しとかで回答の質変わっちゃったりとか、
妥当性本当にあるの?っていう話になるので、その妥当性の検証もされてない状態になっていたと。なので日本の音楽家だけ緊張するっていうのを国際標準で測れないみたいな状態になっていたらしいです。
今回紹介するのは東京大学大学院の新領域創生科学研究科というところの吉江純教授、村井純教授、あとは高木大学院生さんが実際この国際標準の質問のやつを作ろうと、日本語版を作ろうと、そしてその信頼性と妥当性を検証しようというところで立ち上がったみたいですね。
これまず何したかというと、まずは翻訳しますと。翻訳して、プロとかアマの音楽家にインタビューを行って、単なる直訳じゃなくて、これ自然になっているかとか、音楽家の経験から違和感がないかとか、そういった生の声を取り入れてブラッシュアップしていったそうです。
実際にこれ日本語版のものができて、これちょっと中身が何なのかっていう感じなんですけど、例えば演奏前に手が震えますかとか、演奏中に集中が切れますかとか、失敗することばかり考えてしまいますかみたいな身体的だったり認知的、感情的、あとは行動的な緊張するっていう症状に関する質問が複数入っていますと。
で、それに対して普通のアンケートと一緒ですね。全くないっていうところからいつもそうっていうので、段階的に度合いをスコア化して、そのスコアを最終的にまとめるっていうアンケートになってますね。
で、これに関してできた後に国内の200名のプロの音楽家、200名のアマチュア音楽家、合計400名にこれを実際に回答してもらって、中にはいろんな楽器とか歌手とか歌う歌う人とかそういった人も全部対象になっていて、より日本の音楽家全体に適応できる、そういうアンケートになっているかっていうのを調べたみたいです。
で、こういうアンケートデータを使うもので大事なことって、ちゃんと有効に使えてるかっていうところですね。
で、それを科学的に確認するために、信頼性と妥当性の検証っていうのも行っています。
で、この信頼性っていうのはその尺度が測定しようとしているものを一貫して測定できているかということです。
で、何回測っても同じですよねっていうところで、これを信頼性ちゃんと取れてますっていうのを調べる方法がちゃんとあります。
で、これクロンバックアルファ係数っていうちょっと難しい単語なんですけどっていうのがありまして、これは数値化できるんですね、信頼性に関して。
で、どういったものかっていうと、例えば昨日した質問に今日同じように答えられるかっていうので答えられたら1みたいな。
で、ずれてたら0.何本みたいな点数がつけれます。
で、あとは同じ質問アンケートの中でも、例えばあなたの元気度を測る質問が例えばあったとして、
今日気分はいいですかっていう質問と、今日やる気がありますかっていう質問と、今日疲れてませんかっていう質問。
これ全部元気度合いを測ってる質問だと思うんですけど、これの質問の回答がちゃんと整合性取れてますかっていう話なんですね。
この質問の項目同士はある程度まとまりになっているので、このまとまりに一貫性がある。
で、それが良かったら1。で、なんかちょっと今日気分いいって言ってるのに、なんか疲れてますでちょっと丸ついてるなみたいになったらスコアが下がって0に近づいていくっていうもの。
で、今回このアンケート、音楽家の不安のやつに関しては0.93っていう高い値を示しています。
なので、この質問の中で項目が全部バラバラになってこうめちゃくちゃな回答を得られたわけじゃなくて、ある程度音楽演奏不安っていう一つの概念を図るために、
質問同士がちゃんと連携していて、まとまって機能しているっていう信頼性を担保することができたというのもこれ一つです。
ちょっとこれめっちゃわかりにくいですね。文系の研究のやつなんですけど、まあこれよく結構やられている方法かなというふうに思います。
で、あとはもう一つ妥当性の方ですね。で、これ妥当かどうかっていうのも実際科学的にっていうのを考えるとめっちゃ難しいなっていう感じですけど、
これも一応、公正概念妥当性っていうのと基準関連妥当性っていうのがあります。
で、公正概念妥当性っていうのは、要は簡単に言うと、これで測ろうとしている心理現象をちゃんとこの項目で特定できてますかってことですね。
体温計だったら本当に体温を測っているんですか、それとも室温を測っているんですかみたいな、そもそも何を測ろうとしているんだろうっていうのがちゃんとあっているかっていうことになってます。
で、今回はこれ探索的因子分析、いろんなデータの中から共通する要素とかパターンを見つけ出す方法っていうのがあって、
さっき言ったような質問のグループみたいのがあって、これが何を表しているかっていうものについては、ちゃんとまず翻訳前のものとちゃんと一致してますよと。
そして翻訳前の結果と日本語版の結果っていうのもちゃんとあっているし、ちゃんともともとの意図した通りの概念を測れてますよねっていうのをこの公正概念妥当性で言っていると。
で、もう一つが基準関連妥当性というのがあります。で、これもすごく難しいんですけど、この基準関連妥当性というのは他の尺度とちゃんと一致してますかということですね。
だから今回は演奏不安を調べたいっていうものなんですけど、類似のものとしては例えば状態特性不安尺度っていう、要は不安の尺度ですね。
っていうのも合わせてこれ測定していると。で、これとよく演奏不安のやつが一致している、スコアが一致している、高い相関係数である。
演奏不安の測定方法
ちゃんと相関してますよっていうこと。だから既存の他の不安を測るものと、お演奏することによる不安っていうものがちゃんと一致した傾向になってますよ。
なのでこれちゃんと不安の測れてますよねっていう方法で妥当性を言ってるっていうことですね。
で、なんでまとめますと、ちょっと言葉がすごい難しいのが多かったんでまとめると、信頼性っていうのはまず同じような似たような質問にちゃんと一貫して答えてますよねっていうのがあって、このアンケートの正しさ信頼性っていうのをまず保証している。
そして妥当性っていうのはちゃんと意図した質問のまとまりになっていて、その回答が得られてますよねっていうことと、
今既存である尺度っていうものと別に間違ったような結果を導き出してないですよね。ちゃんと相関がありますよねっていう、まあ要は音楽不安と一般的な不安がちゃんと一致してますよねっていうのを確認したっていう妥当性。
これを確認して、今回作った日本語版っていうものが日本の音楽家の演奏不安を測定するために信頼性と妥当性のある標準化された方法ですというふうに言うことができたっていうことみたいですね。
正直これ日本語版なかったんだっていうのもそうなんだって感じなんですけど、こういうの普通にやられそうじゃないですか。でも翻訳して終わりっていうのは基本こういうのはダメで、ちゃんとこうやって担保して担保してっていうのをやって、
初めてここから日本のいろんな人にこのアンケートを使って回答してもらって、それを使って例えばこの音楽ジャンルは緊張しにくいしやすいとか、経験年数が経ったらどうなんだとか、そういう詳細な研究はこれを使ってできるっていうことなんですよね。
で、そっちもすごい興味あるなというか面白そうだなって思うんですけど、その第一歩になるようなのにはこういう結構地道なこれも研究ですねっていうのがありますよっていうちょっと紹介でした。
で、実際これ海外だとどうやって使われているのかなっていうところも一応調べてみると、例えばさっきちらっと言ったんですけど、何かしらこの緊張をほぐすというか、そういうサポートをするっていうものをやったときにちゃんとアドバイス通りにやると緊張が抑えられてますかっていうのを点数化するみたいなこと。
で、それを例えば音楽の教育現場でカリキュラムとしてこういうのを導入するとか、そういうのの判断に使ったりとか、あとは国によってどう違うのかとか、特定のグループごとにやっぱり上がりやすい上がりにくいがあるのかとか、そういう研究活動にもっと応用するっていうのは海外だともっとやられてるみたいですね。
なので、それが日本でも一応できるようになるということらしいです。
まあ、何かただストレスかかって緊張みたいなので片付けられがちだし、それを言語化するのも難しいしっていうふうに思われがちではあると思うんですけど、一応こういうスコアをつけるみたいなことがちゃんとできると。
ここからこれをどう使うかっていうのは今後考えられていくのかなというふうにはこれを見てて思いました。
音楽家って結構メンタル大変そうですよね、正直。わからないですけど、僕もなんかいろんなライブ見に行ったりとかするんですけど、この間もロンドンの夜遊びのライブ見に行ったりして、一応Vlogにもあげてるんで、Vlogぜひ見てください。
すごいんですよね。やっぱり一発で結構素晴らしい演奏を皆さんされてるんですけど、当たり前じゃないと思ってて、かなりメンタル強いなというか、絶対ミスできない現場でミスしないっていうのはすごいことですし、なんかこういうのをちゃんと可視化するみたいな方法としてこれは面白いなというふうに思いましたね。
はい、ということで今回、かなりちょっと文系チックな研究ではあったんですけど、ちょっとこの演奏不安の図る質問の日本語版を作るっていうお話でした。
最後にちょっとまたお知らせになるんですけど、今回科学系ポッドキャストの日というエピソードになっておりますので、ぜひ他の番組さんも含めて概要欄にプレイリストありますのでそちらも聞いてみてください。
そして、今日とあとは来週ですかね、もう前編後編に分かれて、日本放送の番組東京ミュージックインスティテュートという番組の方で、僕一人ゲストとして喋りに行っております。
で、まあこれぜひちょっと僕がここでいろいろ話すより、ぜひ聞いてみてほしいなっていうことで、あのめっちゃクラシック系の番組なんですけど、なんか個人的にはむちゃくちゃ面白い話できたかなというふうには思っていて、今日のやつよりかはもうちょっとフランクというか、
あの音楽を聞いたことない民族の人に西洋音楽聞かせたらどう思うんだろうねとか、共和音とか不共和音、漢字が僕らと違うのかなとかそういうものとか結構面白いなって僕自身も思いますし、結構盛り上がったので、ぜひそちらも聞いていただけると嬉しいです。
はい、ということで今回のサイエンスポットは以上です。ありがとうございました。