作品名:やまなし『一、五月』
著者:宮沢賢治(みやざわ けんじ)
図書カード:https://www.aozora.gr.jp/cards/000081/card472.html
青空文庫:https://www.aozora.gr.jp/index.html
ブンゴウサーチ for Kids:https://bungo-search.com/juvenile
7・15・23・31日更新予定
#青空文庫 #朗読 #podcast
BGMタイトル: Maisie Lee
作者: Blue Dot Sessions
楽曲リンク: https://freemusicarchive.org/music/Blue_Dot_Sessions/Nursury/Maisie_Lee/
ライセンス: CC BY-SA 4.0
【活動まとめ】 https://lit.link/azekura
著者:宮沢賢治(みやざわ けんじ)
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BGMタイトル: Maisie Lee
作者: Blue Dot Sessions
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ライセンス: CC BY-SA 4.0
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サマリー
宮沢賢治の『やまなし』には、青白い水の底で話すカニの子供たちと神秘的なクラムボンの存在が描かれています。物語は、魚とカワセミの出現を通じて、自然界の不思議な瞬間を探求しています。
クラムボンの謎
やまなし 宮沢賢治
小さな谷川の底を写した、二枚の青い幻灯です。
一、五月
二匹のカニの子供らが、青白い水の底で話していました。
クラムボンは笑ったよ。
クラムボンはカプカプ笑ったよ。
クラムボンは跳ねて笑ったよ。
クラムボンはカプカプ笑ったよ。
上の方や横の方は、青く、暗く、剥がれのように見えます。
その滑らかな天井を、つぶつぶ暗い泡が流れていきます。
クラムボンは笑っていたよ。
クラムボンはカプカプ笑ったよ。
それなら、なぜクラムボンは笑ったの?
知らない。
つぶつぶ泡が流れていきます。
カニの子供らも、ポッ、ポッ、ポッ、と、
続けて、五、六つぶ泡を吐きました。
それは揺れながら、水銀のように光って、
斜めに上の方へ登っていきました。
ツーッと銀の色の腹をひるがえして、
一匹の魚が頭の上を過ぎていきました。
クラムボンは死んだよ。
クラムボンは殺されたよ。
クラムボンは死んでしまったよ。
自然の神秘
殺されたよ。
それなら、なぜ殺された?
兄さんのカニは、その右側の四本の足の中の二本を、
弟のへらべったい頭に乗せながら言いました。
わからない。
魚がまた、ツーッと戻って、下流の方へ行きました。
クラムボンは笑ったよ。
笑った。
にわかに、パッと明るくなり、
日光の金は夢のように水の中に降ってきました。
波から来る光の網が、底の白い岩の上で、
美しくゆらゆら伸びたり縮んだりしました。
泡や小さなゴミからは、まっすぐな影の棒が、
斜めに水の中に並んで立ちました。
魚が、今度はそこら中の金の光をまるっきりくちゃくちゃにして、
おまけに自分は鉄色に変にそこびかりして、
また、上の方へ登りました。
お魚はなぜ、ああ行ったり来たりするの?
弟のカニが、まぶしそうに目を動かしながら尋ねました。
何か悪いことをしているんだよ。
取ってるんだよ。
取ってるの?
うん。
そのお魚がまた、上から戻ってきました。
今度はゆっくり落ち着いて、
ヒレも尾も動かさず、ただ水にだけ流されながら、
お口を輪のように丸くしてやってきました。
その影は黒く静かに、底の光の網の上を滑りました。
お魚は、
その時です。
にわかに天井に白い泡が立って、
青びかりの、まるでギラギラする鉄砲玉のようなものが、
いきなり飛び込んできました。
兄さんのカニははっきりと、その青いものの先がコンパスのように黒く尖っているのも見ました。
と思ううちに、
魚の白い腹がギラッと光って、
いっぺんひるがえり、上の方へ上ったようでしたが、
それっきり、もう青いものも、魚の形も見えず、
光の金の網はゆらゆら揺れ、泡はつぶつぶ流れました。
2匹はまるで声も出ず、いすくまってしまいました。
お父さんのカニが出てきました。
どうしたい、ブルブル震えているじゃないか。
お父さん、今、おかしなものが来たよ。
どんなもんだ?
青くてね、光るんだよ。端がこんなに黒く尖ってるの。
それが来たら、お魚が上へ登っていったよ。
そいつの目が赤かったかい?
わからない。
ふーん。
しかし、そいつは鳥だよ。
カワセミというんだ。
大丈夫だ、安心しろ。俺たちは構わないんだから。
お父さん、お魚はどこへ行ったの?
魚かい?魚は怖いところへ行った。
怖いよ、お父さん。
いい、大丈夫だ。心配するな。
そら、カバの花が流れてきた。
ごらん、綺麗だろう。
泡と一緒に白いカバの花びらが天井をたくさん滑ってきました。
怖いよ、お父さん。
弟のカニも言いました。
光の網はゆらゆら伸びたり縮んだり、
花びらの影は静かに砂を滑りました。
07:24
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