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三、お釈迦様は極楽の蓮池の淵に立って、
この一部四重をじっと見ていらっしゃいましたが、 やがて神方が血の池の底へ石のように沈んでしまいますと、
悲しそうなお顔をなさりながら、 またぶらぶらお歩きになり始めました。
自分ばかり地獄から抜け出そうとする 神方の無慈悲な心が、
そうしてその心相当な罰を受けて、 元の地獄へ落ちてしまったのが、
お釈迦様のお目から見ると浅ましく思い目されたのでございましょう。 しかし極楽の蓮池の蓮は、少しもそんなことには頓着いたしません。
その玉のような白い花は、お釈迦様のお三足の周りに、 ゆらゆらうてなを動かして、
その真ん中にある金色の髄からは、 何とも言えない良い匂いが、
絶え間なくあたりへ溢れております。 極楽ももう昼に近くなったのでございましょう。