4人の子供を育てながら会社を経営するというのはかなり大変だと思いますが、どうやってバランスをとっているんですか?
バランスをとるなんて不可能です。どちらかというと、家庭と仕事という全然別の仕事をしています。
私は25歳とかなり若い時に結婚をして子供を産みました。でも野心的だったので、家庭や子供がキャリアの障害になるとは考えていなかったんです。
妊娠8ヶ月になっても企画を朝まで考えて、それから帰宅してまたすぐ出社する、そういう働き方をしていました。
広告業界は競争が激しく、仕事量も膨大なので、子供を産んで仕事を辞める人は大勢いましたが、私は家庭も子供も手に入れてキャリアアップもしたかったので、この業界を去るなんて考えたこともありませんでした。
例えば子供が小さい時には仕事の合間を縫って発表会に駆けつけたこともありました。その日は取締役会でプレゼンをしなければいけなかったんですが、冒頭でビジョンを説明した後、詳細な事例の紹介は部下に任せて、少し席を外して一気に階段を駆け下りて子供のバレエの発表会を見に行ったんです。
子供が踊り終わったらステージで花束を渡して、証拠写真を撮って、あっという間にプレゼンに戻りました。20分くらいでしょうか。トイレ休憩には長すぎますが、誰にも迷惑をかけることなく何とかやり遂げました。これが全然別の世界を何とか一つにまとめあげるということです。
決して簡単ではありませんが、私はどっちもちゃんとやるぞ、いつもそう思っていました。オフィスの近くに引っ越して、一旦家に帰って夕食を作り、子供を寝かしつけた後仕事に戻る、そんな風に働いていた時もあります。
バランスなんて取れていないし、両立しているとも言えませんが、私は並行する2つの世界を境目なく行き来することで何とか毎日をやり過ごしてきたんです。無茶苦茶な話に聞こえるかもしれませんが、やっていればなれるものです。
子供が大きくなったって一緒です。娘は33歳になりましたが、政治家をしているクライアントと撮影をしている最中にいきなり電話してきて、「ママ、ママ、パーティーなのにあれがない、これがない。」と話が止まらないこともあります。子供が3歳でも33歳でも何も変わらないんです。
会社の代表と母親の仕事をずっと行き来していれば、そのうち嫌でもうまく切り替えられるようになります。そしてこの方法は子供たちにとっても良かったようです。
私は週末も仕事をする必要があったので、よく職場に子供を連れて行き、お絵かきなんかをさせていました。子供たちには、「みんな、これは透明人間ごっこよ。ここには存在しないと思って誰にも話しかけず静かに過ごすのよ。」と、そう言い聞かせました。
そうしたら子供たちは飽きもせずに絵を描き続け、大人になった時には4人全員が広告業界に就職しました。もし仕事を続ける母親のことを嫌っていたら同じ業界には入らないでしょうから、私やスタッフたちが競い合うようにクリエイティブな仕事をするのを見て刺激を受けたんだと思います。
仕事と家庭という別の世界をまとめ上げるのは簡単ではなかったと思いますが、うまくいった背景にはどんな理由があると思いますか?
子供たちにとっては、子供たちが仕事をしなければならないことは、子供たちの楽園を押されることがあります。ただ私には、子供や家庭があってもキャリアアップできると証明するんだ、そういう強い思いがあったので、とにかく突き進みました。もちろんうまくいかなかったこともあります。
そういうときは、夫を頼るしかありませんでした。
ご夫婦でどんなふうに助け合ったんですか?
男性は仕事に行き、家庭を守り、女性は家庭を照顧します。しかし、今日、私たちは両方とも仕事をしている。私たちは両方とも子どもを照顧し、両方とも家庭を照顧します。しかし、私はもっと多くの役割を持っていると感じます。私はもっと多くのことを扱わなければなりません。
しかも私は毎日きっちり5時に終わるような仕事をしていないので、いつも夫にもっと協力してほしいと言わなければなりませんでした。夫婦のコミュニケーションは難しいものですが、何度も何度も気が遠くなるほど気まずい話し合いを重ねて、どうにか折り合いをつけていくしかなかったんです。
ある日、疲れすぎていて頭が回らず、子どもを学校に送って帰る途中にカージャックにあったこともあります。車にいきなり男が乗り込んできて、私の頭に拳銃を押し当てたんです。私は気が動転して思わず相手の拳銃をつかんでしまいました。
ただ、口からは驚くほど冷静に、私は降りるし車もあげる、そんな言葉が出たんです。怖かったけどパニックにならずに済んだのは、夫がいつも優先順位を考えるべきだ、そう言っていたからかもしれません。
夫婦にとって、相手のことを尊重する気持ちは何より大切だと思います。尊敬できなければ助け合えないからです。
広告業界で働いていると、完璧な仕事が求められるので、私は仕事のことばかり考えていて、人の話を聞いていないことがよくあるようです。夫はそういう時、「また別のことを考えているでしょ?」と言ってくるので、結構我慢させているのかもしれません。
でも本当に私の仕事を尊重して、よく応援してくれます。新しい事業を始める時も、いつも、「やればいいじゃないか。君なら絶対にできるよ。」と励ましてくれます。
もう一度子育てをやり直すとしたら、同じことを繰り返しますか?それとも何かやり方を変えますか?
もしやり直すとしたら、もっと子供たちと一緒に過ごすと思います。今でもできるだけ子供たちと一緒に映画を見たり音楽を聞いたりして過ごすようにしています。子供が大人になっても、ママはママと頼ってくれるのは嬉しいですし、これからもどんなことでも相談してほしいと思っています。
そして娘たちにも、「良い母親や良い妻になれないのではないか。そんな恐怖心から野心を手放さないでほしい。」と伝えています。独身女性の多くが怖がって自分の野心を叶えるための挑戦から逃げてしまっているのを見てきました。
まずは大きな夢を抱かないとそれを達成することはできません。大きな夢を捨てなければ人間は成長しますから、母親になっても家族とともに様々な障害を乗り越えていくことができるんです。喧嘩をしても走り続ければ後になって振り返った時に自分が多くのことを成し遂げられたと気づくことができると思います。
野心を持ち続けてとにかく突き進めばすべてを手に入れることができます。逆に言えばそれが唯一の方法です。どうか皆さん、夢を諦めないでください。
ここで学校から帰ってきた時に途中でカージャックに会ったっていう話をしていたんですね。周りに注意を払ってなかったらいきなり突然人が入ってきて拳銃を向けられたんだよねみたいなことを普通の出来事のように話されていて、それって命に関わることじゃないんですかっていうふうに僕は驚きながら聞いてたんですけども。