今回、MindShift 発想の転換でお話を伺うのは、前回に引き続き、ライフスタイルブランド Human Made の CEO 松沼レイさんです。
レイさん、このライフスタイルブランドっていうのは、海外でもすごく注目を集めているジャンルなんですか?
そうですね、ここ10年から20年ぐらいの流れだと思うんですけど、それまではストリートウェアと言われていて、すごくニッチなものだったブランドがかなりメインストリームになって、そしてラグジュアリーなステータスを持ち始めていると思うんですね。
というのも、もうこれは有名になって久しい話ですけども、スプリームとかって、僕がニューヨークに来た1990年後半から2000年前後の時、ニューヨークの一角にお店ができたんですけども、その頃はほんの高校生、大学生、せいぜい20歳、25歳ぐらいの男の子たち、若者が崇拝していたブランドで、いわゆる大企業が気にしているような存在ではなかったんですね。
それが2000年前後だったと思うんですが、その後2010年とか15年ぐらいになったら、そういういわゆるストリートブランドが大企業から注目をされ、そしてそれこそレビトンだったりとか、いわゆるマスなんだけどすごく高価なハイブランドから注目を浴びて、そして買収されたりとか、
あとそういう高価な、もっと年齢層の高い人たちをターゲットにしていたブランドが、例えばスニーカーを出したりとか、すごくラグジュアリーのストリー化がここ15年ぐらいで起きてたと思うんですね。
このヒューマンメイドっていうのも、どっちかというとそのジャンルとしてはストリートウェイに入るとは思うんですが、そこがうまくバランスが取れていて、すごくマスブランドではないんですけども認知度がかなり上がってきていて、なんだけど全ての人が関門でもない、なおかつ広がっているってちょっと矛盾しているところはあるかもしれないんですが、なかなか日本では、そしてグローバルで通用しているブランドとしては数少ない存在なんじゃないかなと思います。
2023年にはニューヨークでポップアップストアをやったりとか、2024年には韓国でポップアップストアをやったりとか、かなりその実店舗にもお客さんがたくさん来たりするような人気ブランドっていう感じなんですよね。
実際にそれまでもそのECとかで海外にも展開はされていたんですが、店舗は主に日本だったのが、ここ3、4年くらい特に松山さんがCEOになられてからその海外展開もじわじわとされてきていて、アジアでも展開を徐々に広めているという現状ですね。
2016年に設立されたヒューマンメイドは、もともとその2号さんというカリスマ的なクリエイティブディレクターがいらっしゃって、その彼が設立されたんですけども、それまでは彼のブランドとして移っていたところが大きかったと思うんですね。
今回その松山さんにお話を伺いしたのも、ここ3、4年でその個人ブランドであった2号さんがやってらっしゃったヒューマンメイドっていうのがヒューマンメイドとしての存在感をメキメキと出してきていて、それがブランドそしてビジネスの成長につながっている。
個人ブランドから組織ブランドへっていうことなんですが、それにどういうことをされてきたのか、どういうテクを入れだったりとか、どういうことに注力をされて組織とブランドを成長させてきたのかっていうところに迫りたいなと思います。
では早速お話を伺いましょう。
この番組のそのトピックでもある一つの趣旨として、やっぱりその日本が元気になるには、ジャパニーズブランド、日本企業が日本だけではなく、やっぱり海外で成功していかなきゃいけない、呼びなきゃいけないなっていうのもあるんですけども、
口じゅうの簡単なんですが、なかなかできないところが多いと思うんですよね。
そういうところでここ3年間で松山さんがつられてから何倍も売り上げが伸びていて、具体的にその辺をぜひぜひ、もちろん話せないこともあると思うんですが、そうとは言わずに秘密をぜひ皆さんにお伝えしていただきたいなと思うんですけども。
僕が入った時からも熱量の高いお客様っていうのがいて、比較的商品出せば売れるっていうような状態ではあったんですけれども、何分僕は全職ユニクロだったので、いわゆるサプライチェーンマネジメントであったりとか、いわゆるこの商品が企画されて計画されて、生産されて運ばれて売られるっていう一連の小売りの仕組みがあると思うんですけども、
やっぱりその仕組みが全く整ってなかったというところが最初のいい意味で衝撃というか、これはもうやりがいがあるなというふうに思いましたね。
結局その商品を作る人と売る人はいるんだけれども、間接的な人が全くいない状況だったので、一番最初にやった仕事はまず組織図を作って、こういう組織にしなきゃいけない、こういう組織に対してここでこういう人が必要だろうっていう、やっぱり採用に力を入れたっていうところがあるんですけれども、状況としては本当に人数も20人ぐらいですかね。
お店のスタッフ入れるともうちょっと30人ぐらいいたかもしれないんですけれども、当時で。
で、売上に伴って今人数も5倍とか6倍とかになってますけれども、本当にそこをまず整えるっていうところの状況でありましたね。
最初の1年で一番大変だったことって何ですか。
いっぱいあったとは思うんですけれども、やっぱり最初の1年もそうですけど、今もそうですけど、急速に事業が成長拡大していって人が増えると、やっぱりそこの価値観の共有というか、やっぱりみんないろんな会社さんから来るし、いろんなバックグラウンドをお持ちの方もいるので、
例えばユニクロとか他の大手の小売とかっていうのは新卒採用されて、そこである程度組織文化がある中で若い時から成長されていくので、
基本的な考え方の軸みたいなのはある中でのビジネスみたいなことがあると思うんですけど、やっぱりまだまだ若いブランドですし、いろんな方がいろんな業態から、だからもう本当にそれもアパレル限らずいろんなところが来るので、
やっぱりそこの文化を作っていって、そこを共鳴しながらやっていかないと、1たす1が2でしかないというか、本来で言うと1たす1がもっと5とか10になっているようなことをしなきゃいけないんですけども、そこを作り出すっていうことが課題でもあったし、
そのために今回4月5月に会社もヒューマンメイド株式会社に変えて、改めてミッションとバリーを作ったんですけれども、やっぱりそこのプロセスが非常に大事だなと今振り返ってみても思いますね。
でも、例えば商品計画とか企画をするじゃないですか。
週に10品とか15品とかだと、例えば貼るものが12週間あるとしたら120点とか150点とかのものを企画するとします。
そういったときに最初に2号さんからこのシーズンはこういうものでやろうとか、どういうディレクションが出るんですか。
それで言うと他と違うのは、あんまりシーズナル性というか、シーズンに対してシーズンテーマみたいなことを設けない。
コレクションブランドではないので、コレクションブランドだとデザイナーの方とかが、要はスケッチを描いて、絵型を描いて、これで何カタで、それでショーするみたいな進め方だと思うんですけど。
それはテーマがあってやることだと思うんですけど、そことは全然違うような。
だから普遍的な価値のものをこのシーズンの中でやっていくべきもの。
それはさっきの上はアウターから下はボトムスまでみたいなことの商品分類もそうなんですけれども、
Future is the pastって言ったときに、服って長い歴史の中で、もちろん西洋から移り渡ってきて、あらゆる服のジャンルっていうのが歴史由来があるじゃないですか。
ジーンズだったらもちろん労働者の服から来たとか、ミリタリーは軍隊から来てたとか、例えばアメカジとかバーシティみたいなことを言うと大学の戦況的なところから来たとか、
あらゆる出自がある中で、その中で僕たちとしてフックすべきような、ある種カテゴリーとは呼ばないかもしれないですね。
そのときのムーブメントみたいなことを自分たちで解釈し直したときに、こういったコレクションが面白いよねとか、こういった考え方が面白いよねっていうことを、
うちのデザイナーたちが試行錯誤しながら考えて、そういった考え方を2号さんと意見交換したりとか、
その中で、じゃあこういったものがいいんじゃないっていうふうに、だんだんだんだん解像度が上がって、商品の輪郭が見えてくるっていうような。
だから、ストリートブランドみたいなカテゴライズもあるんですけれども、結構ものの作り方としてはユニークな。
それを気づかれてか気づかれてないかわからないんですけれども、そこが面白がってくれてるのかなっていう気はしてますね。
なるほど。
例えば、ヒューマンメイドっていう言葉に名はタイを表すじゃないですけど、出てる事例としては、
毎日発売しているデイリーティーシャツっていうのがあるんですけれども、それは日付が入ってるんですね。
その日の。
インスタグラムのストーリーで今日の日付の入ってるものをアップして、それに対してそれを見たお客さんがすぐオンラインサイトで買えるようになっていて。
それは例えば同じTシャツのデザインで、今日は例えば3月1日はこれ、3月2日は同じなんだけども、どっかに日付が入ってるのがそれが違うのか。
そうそう、単純に日付が変わってるっていう。
日付が違う。
じゃあやっぱりその日に買ったっていうことが、例えばインスタのストーリーで、今日3月2日だからリンクがあって購入してサイズを選んで、数日後にはその3月2日に買ったのが届くっていう。
おっしゃる通り。
なるほどね。
なんか購買体験をデザインしてるっていうか、ある種そのきっかけ作りから僕たちなりのエモーション体験を作りたいっていうことまでデザインしちゃってますね。
最後届いた時の箱を開ける時までのワクワクまでデザインするっていうことが大事だと思ってるので、だからその梱包されてる箱とかも相当いろんなサンプル作ってこれだよねって決めましたし、
今ちょっとしたこうありがとうの気持ちを込めてノベルTとかも入れてるんですけども、それとかも手を変え品を変え、お客様が毎回買って毎回同じものが入っててもつまらないじゃないですか。
その購買頻度に合わせた形でちょっと毛色の違うアイテム、なかなか売ってない非売品でこんなのがちょっと自分の生活になったらいいなって思ってもらえるようなものをちょっと入れて、
最後、そのノベルTとか商品を取った後にサンキューって一言メッセージが入ってるとか、なんかそういったこと。
Appleもね、箱を開けるときはワクワクするじゃないですか、デザインがカリフォルニアっていうところからも含めて。
そこまでやっぱ体験をデザインするっていうことがすごい大事。
逆にそういう体験って、これ大平がないように言いたいんですけども、規模がある程度個人マインドしてた方がやれることも多いと思うんですね。
あまりにもそれこそユニクロさんの規模になっちゃうと、そこまでハイタッチなことってできないじゃないですか。
その天井みたいのは持ってらっしゃるのか、まだまだできるからやってるのか、多分どっかでこれもう無理だよねみたいなことが来るんじゃないかなと思うんですけども。
これはですね、やっぱりそれこそユニクロの柳井さんからも、経営とは矛盾との戦いだっていう話だなと思ってるんですけど、
結局効率を求めることとホスピタリティを実現するって、ある種相反するようなようなものに聞こえると思うんですけども、
それをその矛盾を解決してどっちもできるようにするっていうのができるようになるっていうのが、
ある種これも日本企業、日本企業っていうカテゴライザーしない方がいいのかもしれないですけど、得意とするというか、やっぱりそのあたりがポイントなんじゃないかな。
だから別に規模が多くなればそういったことができないっていうことではないかもしれないですね、そこは。
松山さんが入れる前から海外ではある程度は売ってはいたんですか。
海外は基本的に卸先さんに一部商品を卸してるっていう形で、もちろんスタンダードアローのお店ではなく、各セレクトショップの中でラック展開してるみたいな形ではありましたね。
で、こないだ韓国でのお店あれはポップアップ?
あれはもう直営ではないんですけど、現地のパートナー会社さんの運営のもと、あたかも直営店の形のように路面店でヒューマンメイドという矢口がドーンとついた形で、
僕たちは外縁前のところにヒューマンメイドと、あとブルーボトルコーヒーと、要は服買いながらお茶も飲めるっていうような形態で開発してる業態があるんですけど、
それをそのまんまソウルに持って行って、なのでオフラインストアっていう名前なんですけども、オフラインストアソウルっていう形で持って行った初めてのお店ですね。
今後そのブランドを成長させるっていう意味で、ヒューマンメイドのような、いわゆるマスブランドではないじゃないですか。
それこそユニクロとかザラとか、そこら中にお店があって何十カ国にお店があってっていうマスブランドではないと思うんですけど、
ちょっと違う路線の話で言うと、例えば一時ある意味一世風靡というか、すごく話題になったシュプリームみたいなブランドがある意味中途半端にマス化したというか、
最近またどっかに買収されたりとかで、ちょっとこう一時そのブランドとしてのすごい価値があったんだけども、
そこをちょっと超えちゃって、そのエクスクルーシブなところがなくなっちゃって、価値が下がってきたのかなっていうふうにここ5年ぐらいで思ってるんですけども、
なんかその辺の調整の仕方というか、どこまで伸ばすのが我々の良さを保っていて、
どっかのこの一線を超えちゃうとセラウトじゃないですけども、なっちゃうのかなみたいなことを、その辺どう思われてます?
なるほどね。
さて、ここまでお送りしてきました、レイナモトの世界のクリエイティブ思考。今回はマインシフト、発想の転換で個人ブランドから組織ブランドへをテーマにお届けしました。
レイさん、今回もたっぷり松沼さんに話していただきましたが、どんなことが印象に残りましたか?
やっぱりここ数年ですごく成長してるんですよね。何が秘訣なんですかって聞いたときに意外な答えが来て、まず一つはつまらないことこそ実は大事。
二つ目に経営は矛盾との戦い。そして三つ目に組織内での価値観の統一が鍵。この三つを改めて気づかされました。
まずこの一つ目のつまらないことこそ実は大事という話なんですが、松沢さんにじゃあ何から始めたんですかっていうふうに聞いたときに、最初に出てきた言葉、そして最初に出てきたことが実は結構地道であまり派手なことじゃなかったんですね。
なんか経営者とかもしくは新しい人材が経営層に入って改革していくとかっていうことになると、例えばマーケティングキャンペーンをやるとかリブランディングをやるとか、外に見えることをしがちなんですよね。
とか、なんか新しい商品をバーンと打ち出すとか、そういう目立つことをやりたがるんですけども、松沢さんがおっしゃっていたのは、まずそのサプライチェーンを整えるっていう、これって表にはほとんどわからないことなんですよね。
でもサプライチェーンを整えて、そして商品企画の計画を作ったっていうふうにおっしゃってるんですね。それまでもちゃんと商品企画っていうのもされてましたし、サプライチェーンもあったんですけども、やっぱりその大企業から来られた松沢さんから見たら、もっとこれってしっかりできるなって思ったらしくて、物流が工場からお客様の手に届くまでちゃんと成り立っているのか、そしてそれが効率よくできているのかっていうところを見直しをされて。
なおかつ商品企画っていうのをシーズンごとでそれまでやってらっしゃったらしいんですけども、それを毎週何かを出していくっていう結構細かい企画にしてたんですって。
そうすることによって毎週土曜日にニュースレターを配信しますと。
そこにその週の注目の商品ということで載っけると必ずその商品が売れるんですって。
それを毎週やっていくことによって今週土曜日にこの商品を打ち出しました。
それを何回かやっていくとお客さんがまた来週土曜日にもっていうふうに期待するようになってくる。
それで物流の流れとあとそのものが情報になって、情報としてのものの配信ができるようになって、そしてお客さんがファンとなっていくっていうすごくシンプルな構造ではあるんですが、
なかなかそれってこう話してみると当たり前のことかもしれないんですけども、この業界にもう20年以上いる僕でもやっぱそうだったのかっていうふうに改めて気づかされたポイントですね。
2つ目に経営は矛盾との戦いというポイントなんですが、このポイントはですね、やっぱりその規模が大きくなればなるほど小さかった組織、
そしてブランドの規模が小さかった時のきめ細やかな工夫だったりとか日本語で言うおもてなしとかがやりにくくなると思うんですよね。
そういうところをそういうふうになっちゃう時にどう経営をしてるんですかっていうふうに聞いた時に、いや経営っていうのは矛盾との戦いなんです。
そういうその矛盾っていうのは常につきまとって、それを解決していく、それと戦っていくのが経営者の役割なんだなっていうのは松山さんからのお言葉で気づきました。
そして3つ目のキーテイクアウェイなんですが、これはですね、組織内での価値観の統一が鍵というふうにおっしゃっていたんですが、
これはそのヒューマンメイドのサイトに行かれると実は結構浮き彫りになっているかなと思うんですが、
その会社の概要のページとかに行くとちゃんとこの会社のミッションとかがすごく明確にはっきりと表されているんですね。
人間のひらめきが生み出し、人間の手が作り出す輝きを世界へ、これをミッションと掲げられていて、想像こそ人間の根源的な価値である、私たちはそう信じているという言葉から始まるんですけども、
松山さんがヒューマンメイドに転職されて、もちろんさっきお伝えしたすごく地味なつまらないこともちゃんと立て直したっていうこともされていたんですが、
社内の価値観を揃えるためにミッションを書き直したりとか、そこをちゃんと言語化して社内で理解してもらうっていうところを最初の半年から1年ぐらいでやられたそうなんですね。
これって社内の意識をちゃんと整理するために、こういうふうに価値観っていうところをこういう明確な言葉にして恩恵知信っていう、これは前編でもお伝えしたことでもあるんですけども、その考え方を明確にしたりとか、
そういうところを社内で組織内で持つことによって、今まではヒューマンメイドっていうブランドがNigoさんというカリスマ的クリエイティブディレクターの頭の中で存在してたと思うんですね。