そうですね、ではですね、ちょっと作品紹介、ホームページから説明を引用したいと思います。
ロシアとウクライナの血を引くドイツ語作家が亡き母の痕跡と自らのルーツを見出す童牧の章。
母エウゲニアは著者が10歳の時、若くして世を去った。
幼い娘が知っていたのは、母がマリウプリで生まれたこと。
第二次世界大戦中、両親が強制労働者としてウクライナからドイツに連行されたこと。
被祖父が石炭商人、祖母がイタリア人だったらしいことくらい。
母の運命を辿ろうとこれまで何度か試みたが、成果はなかった。
ところが2013年のある夏の夜、ふと思い立ってロシア語の検索サイトに母の名前を打ち込んでみたところ、思いかけずヒットする。
ここから手探りの調査と驚くべき物語が始まる、というですね、あらすじがありまして。
でちょっとこの後、田和田陽子さんのちょっとコメントも寄せられていて、それも紹介すると、
ここ1年ほど悲しい姿ばかりが報道されたウクライナのマリウポリーだが、その多文化都市としての輝かしい歴史とそこに生きた作者の親族の運命がこの小説には知的なユーモアと息苦しいほどの好奇心を持って描かれている。
というですね、田和田陽子さんからのコメントもあってですね。
ちょっと最後にですね、もう少し本書についての説明がホームページに載っていまして、
ウクライナの選手、バルトドイツの貴族、裕福なイタリア商人、学者、オペラ歌手など存在すら知らなかった神類演者の過去が次々と現わになり、その思いもよらぬ光景に書者は息を呑み、読者もそれを追体験する。
忘却に抗い、沈黙に耳を澄ませ、失われた家族の歴史を永遠に留める。正規の小説。というのがですね、結構ホームページの紹介をされているんですけども。
お母さんのルーツを辿る辞伝のような小説であるんですけども、そこからすごい広がりを見せていくというようなですね、物語でもあると。
ちょっとここで本書のタイトルにも入っているマリウポリというですね、都市についてちょっと説明したいなと思います。
マリウポリはウクライナ東部にある都市になりまして、ロシアが一方的に併合したクリーミア半島とロシア本土を結ぶ重要な位置にあるということで、
ウクライナにとっては国海というですね、海の国海の北に位置するアソフ海にアクセスするための洋商にあたるというのでは、ロシアにとってもウクライナにとっても、どっちにとってもちょっとその姿勢学的には重要な場所になると。
この1年ほどですね、ロシアによるウクライナ信号で結構ですね、ニュースでも聞くようになった名前かなと思います。
この土地が持つ重さみたいのはどうしてもありますよね。
さて、そんなわけなんですが、ちょっと最初にですね、今回大枠のストーリーをもうちょっと詳しく話していった方が、この作品理解に進むかなと思うので、
ちょっとまずですね、これがどういう本なのかというのを話していきたいと思います。
前提としてはですね、これは著者のナターシャ・ボーディンさんが自分の母のルーツをたどっていくという自伝的小説になっています。
4部構成になっています。1部、2部、3部、4部とありまして、1部は主人公のナターシャが自分のルーツをふと探し出すところから始まる。
で、これかなり現代的なんですけれども、インターネットにですね、ルーツを探す人のためのサイトがあって、そこで検索したりしていくうちにインターネットを介してですね、
コンスタンチンというこのルーツ探しが得意な男みたいな人と知り合います。
で、このコンスタンチンはですね、めちゃくちゃ何だろう、丁寧とかとは違うんだよな、何だろうな。
なんかすごい執念がありますよね。
この人は何なんだって思ってたけど、とにかく誰かのルーツ探しに関しては、もう異常なほどの熱意を傾けて探してくれるんですね。
なので、この主人公の母のことも探してくれます。
ただ、やはり情報が少なすぎて、なかなかこうわからないと。
で、主人公が持っている母の情報も少ないので、ちょっと手掛かりというのがあんまりないという状況になってきますね。
なので、コンスタンチンからですね、母の家族の記録、姉とか兄がいるので、そこを探してみてはどうかという提案が出されます。
で、それに従ってコンスタンチンと調査を進めていくと、次々とですね、母の兄弟姉妹のことと、
あと母の祖父母ですね、あ、祖父母じゃない、母の父親と母、主人公から見ると祖父母のこと、さらにその一家のことが次々と明らかになっていくと。
で、ここで母の姉であるリディアという女性が結構フューチャーされるんですけれども、出自も含めてですね、ちょっと謎が多い女性です。
リディアのことを調べていくとですね、彼女の息子にたどり着き、電話で話すことができたり、また孫なんかにもたどり着いたりしていきます。
で、このリディアについてですね、リディア自身が残した手記が見つかって、これが主人公のもとに送られてくるというところで第1部は終わります。
で、第2部はその手記により明らかになっていくリディアの人生が語られます。
ここではですね、リディアにとっても主人公の母は結構幼い頃に離れ腹になっているので、母のことはほぼ書いていない。
ただ、まあ主人公はそこにどういう形で自分の母がリディアの人生に絡んでいたんだろうか、リディアがこうしている時には母はこういう状況になったんじゃないだろうか。
で、この第2部で明らかになっていくのはリディアが経験した悲惨な人生ですね。かなりとんでもない状況にあったということが明らかになっていきます。
で、まあそして結構第2部はですね、この当時のウクライナの悲惨な状況っていうのも見えてくる。
第3部から第4部は母の話になっていきます。
第3部では戦時中の共生労働所において母が、主人公ですね、を妊娠するまで、そして第4部では母の死までが語られるという構成になってますね。
かなりざっくりですが、まあ大枠はこんな感じかなと。
そうなんだよね、なんか1部で完結してもいいぐらい完成度が1部は高かったから。
そうですね、いや1部がすごい良くて。
じゃあちょっと特徴いきましょうか。
この小説の特徴を少し話していって、まあ印象残ったところで話していきたいと思います。
ちょっと私のほうから特徴をですね、いくつかちょっとお話ししたいと思います。
まず一番最初にこの小説で、まあ最もこれがポイントだなと思うところはですね、やっぱりこの次々と明らかになってくるこの主人公一家の歴史ですね。
これがもともとこう主人公が、おじさんはこういう人だったんじゃないかとか、母はこういう人だったんじゃないかとか、
まあいろんな自分の中にあった思い込みとか潜入感みたいのがあったんですけれども、
それがですね、どんどんどんどん過去が明らかになるにつれて更新されていくという作りになっています。
これは結構個人的にはめちゃくちゃ面白い作りをしてたなと思っていて、話が進むにつれてですね、
自分もこの、そうかこういうことだったのか、みたいなのがなんかわかっていくっていうのは、
なんかちょっと現実ともリンクする面白さだなと思っていて、自分もですね、結構あると思うんですよ。
誰しも1回、1度や2度こういう思いを抱えたことがあると思うんですけど、
親戚の人はこうだと思っていたけど、あれ?なんか違ったぞとか、
祖父母の生き方も父親とか母親とかにですね、よくよく聞いてみると、自分がイメージしたものとは全然違ったみたいなことって結構あるなと思っていて、
この感覚を味わえる読書体験というのはあんまりないなと思うので、非常に面白い作品だったなと思いました。
確かにこの、著者のナターシャも自分の一族ってそんな大したことないだろうみたいな感じで最初思っていたんですけど、
ルーツを調べていくと、そこには全然違った背景というか一族があって、
実はその貴族出身のすごい大富豪だったとかですね、そのおじいさんかなTGさんとかですね、
あとこれはおじいさんとかおばさんになるんですけど、
お母さんのお兄さんがオペラ歌手とか、お母さんのお姉さんが文学を志していたとかですね、
本の中ではやっぱり著者がなんか自分がいかにそのオペラが好きかとかですね、結構その自分についてもちゃんと語っているんで、
そことそのオペラ歌手だったおじいさんの話とかがリンクしてくるところとかはやっぱりすごい感動しましたし、
このルーツがだんだん見えてくるのと、その著者のナターシャの自分とそのルーツにある人々とのつながりっていうのが
だんだん見えてきた時のこの読み応えというか感動というか、それはすごいなんかもう読んでて魅了されていきましたね。
あとちょっと補足すると、ウクライナとかあの辺りのヨーロッパの移民だとか難民が、
いわゆる日常的な地域ではルーツ探しっていうのは結構一般的らしいですね。
自分のルーツがわからないっていう人が多いみたいで、それに対して行政なのか、行政もそうだし、
今回実際インターネット経由で探してますけれども、サイトとかもあるみたいで、そのあたりのルーツ探しっていう行為自体は割と一般的な行為みたいです。
そうですね。さっきのストーリー紹介でもあった、コンスタンチンっていう男性、協力者なんですけども、
まずその存在がすごい絶対的で、なんかすごいあらゆるノウハウを知っていてっていうルーツ探しの。
あと役所も過去の記録でこの人いなかったでしょうかって言ったら、たぶん一担当者だと思うんですけど、
もうちゃんとピンチをくれたりとか、それによってちょっとヒントを得られたりとか、そういうのもあるんだなって本当感じましたね。
そうですね。話し逸れちゃうけど、このコンスタンチンと主人公の関係もなかなか良くて、調査を通してですけれども、
結構このコンスタンチンがかなり親身に主人公に接してくれるので、どうしようもなくなった時のメールのやり取りとかね、なかなかちょっと感動するものがありましたね。
そうですね。本当にすごい発見があった時とか、夜中から朝にかけてずっとメールを往復し合ったとか、
著者もコンスタンチンとの出会いが最大の功績だったってね、作中で書いてますし。
もう一つ特徴でお話ししたいところはですね、ウクライナの状況ですね。
ずっと話している通り、主人公は今ドイツに住んでいるんですけれども、ルーツはウクライナにあります。
彼女の一家はですね、紛争、戦争に巻き込まれて、強制労働省とかですね、基金の時とかもあったので、
人間が人間として扱われないような状況にいたということが多い一家でした。
主人公も幼い頃、母が強制労働省が開放された後に生まれているんですけれども、
妊娠した当時は強制労働省に両親はいたので、状況としてはですね、結構似たようなところがあります。
彼女の一家はウクライナには帰らずに、ドイツで外国人たちが住む集合住宅みたいなところでですね、暮らしていて、
これはですね、貧しいだけではなくて、身分が認められない生活を送ることになります。
多少、戦時中よりは回復はしてるんですけど、でもなかなか厳しい状況にありますね。
これなんでウクライナに戻らないかというとですね、強制労働ではあったんですけれども、
戦時中にナチスに協力した、加担した非国民扱いをされるので、帰れないという板挟みがあります。
もう帰ってもですね、自分たちの身分がそちらでも危ないんですね。
この本当に行き場のない、どこに居場所を置いていいのかわからない状況で生きていた時代っていうのがあったっていうのが、
サッと調べただけじゃわからない、生々しさを持って迫ってくるので、
私何度も言ってますけど、やっぱちょっとここはしんどかったし、
読み終えた未だに自分の感情を何て言い表していいかわからない状況に今、私はずっとありますね。
なんか僕も読んで本当に、本書の中でも戦争が一応終わってですね、
町に戻ってこれたというか、住むところが与えられたっていう、そういう展開になっていくんですね、