「五木の子守唄」について
「中村泉の三味線・民謡ラジオ」
こんにちは、玉村町在住の三味線・着付講師の中村泉です。
この番組は、カゴメカゴメ、ソーランブシなど、知っていた曲が実は民謡だった。
そんな身近にある民謡や三味線についてご紹介します。
今回ご紹介するのは、熊本県民謡の「五木の子守唄」です。
熊本県熊群五木村の子守唄ですが、民謡でありながら子守唄ということで、広く知られています。
私は、お座敷町であったり、三味線合奏であったりと、よく演奏する曲で、好きな曲でもあります。
この曲は、子守をする少女が、自分の不幸せを嘆き悲しむというものです。
今まで、歌詞の内容を深く考えたことがなかったので、さらに心に残る一曲となりました。
この歌の歴史をひも解けば、五木村は「野の脇」「板木」「下谷な」ど37の部落が5つの地区に分かれているので、五木谷と呼ばれてきました。
一線小近い山村に33軒の地頭。
と呼ばれる家があり、村の人は旦那と呼んでいました。
この33軒は、村の一切を取りしきり、村の8割近くの土地を持つ大地主でした。
そして、旦那に仕えている名護と呼ばれる子作人は、小さな子供まで旦那の家へ奉公に出されたのです。
断るということはできないのです。
奉公は、子供の家に出されたのです。
奉公に行く子供たちは、男の子は2歳、女の子はメロウと呼ばれ、9歳くらいから奉公に出されます。
奉公の期間は、正月から次の正月、お盆からなら次のお盆まで。
奉公先へ行っても、衣類は自分持ち、食べ物は旦那の家の残り物、お給金などはありません。
親はその代わりに、山の斜面一旦ほどを1年間借りることができるのです。
歌詞の意味
この歌には、方言が多く使われていますので、歌詞の意味を簡単にご紹介しましょう。
1番(歌詞の意味紹介)
私は、お盆までしかここにはいません。
お盆が早く来れば、すぐ戻ります。
2番
私は貧しい。
あの人たちは、
お金持ち。
良い帯、良い着物。
3番
私が死んだら、誰が泣いてくれるでしょう。
泣くのは、裏山のセミだけ。
4番
泣いているのは、セミではなく、妹が泣いている。
泣かないで、心配になるから。
5番
私が死んだら、道の端に埋葬してね。
そこを通る人たちが、花を供えてくれるでしょう。
6番
花は、椿の花を。
水は、天から降る雨をいただけるから。(歌詞の意味終了)
では、千葉県市川市出身の民謡歌手、金沢明子さんの歌う、五月の子守唄をお聴きください。
(歌開始)おどま盆ぎり盆ぎり。盆から先きゃおらんと 盆が早よ来るりゃ
早よもどる
おどま勧進勧進あん人たちゃよか衆
よか衆ゃよか帯 よか着物
おどんがうっ死んだちゅうて誰が泣いてくりょか
うらの松山
蝉が鳴く
蝉じゃごじゃんせん 妹でござる
妹泣くなよ気にかかる
おどんがうっ死んだら
道端ちゃいけろ通る人ごち
花あぎゅう
花は何んの花つんつん椿
水は天から
もらいみず。
~
~
~
(歌終了)
いかがでしたか。方言がわかるとより一層味わい深い歌になりますね。しみじみとした哀愁が人の心を打つということで、第二次大戦後レコード化され大流行しました。
さて、「子守唄」には「遊ばせ歌」と「眠らせ歌」があり、この歌は「眠らせ歌」になりますが、子守を仕事とする子どもたちにとって、子守をするための仕事歌とも言えるのではないでしょうか。
中村泉の三味線民謡ラジオ、今回は熊本県の民謡「五木の子守唄」をご紹介しました。
なお、この番組はラジオをご覧いただきありがとうございます。
「ラヂオななみ」ポッドキャストでもお聞きいただけます。
また、私の所属する三味線を楽しむ会では、一緒に演奏してくれる仲間を募集しています。
番組へのメッセージもあわせて、ラヂオななみ宛にお寄せください。
たくさんのメッセージお待ちしています。
また次回お会いしましょう。中村泉でした。