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2025-11-22 04:35

【1268】2025/11/22 濁点の哲学

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2025/11/22

サマリー

濁点の有無が言葉の意味やニュアンスに与える影響について考察しています。「だめ」と「ため」という言葉の対比を通じて、心の持ちようや物事の捉え方が変わることを示しています。

濁点の影響
おはようございます。 花火鑑賞士、気象予報士の鶴岡慶子です。
この配信では、花火や天気、言葉に関することなどをお話ししています。 今日は、たった一つの濁点、その小さな点が人の心をどう動かすのか、そんな話をします。
それが、「だめ」と、「ため」です。
濁点があるかないか、違いはそれだけの言葉なんですが、意味は全く逆になりますよね。
この「だめ」の語源は、あて字の「だめ」です。 だっていうのは、つまらないとか、価値が低いという意味を持つ漢字です。
「おだちん」なんか そうですね。つまり、「だめ」っていうのは、もう見込みがない、役に立たないというニュアンスの言葉です。
一方の、濁点を抜いた、「ため」なんですが、「ため」っていう漢字には、何かをなし得たり、何かのために行ったりという意味のほかに、何々となるという意味があります。
「ため」は、行為の理由、目的、利益になること。つまり、本来は、未来に向けて蓄えられるものという、前向きな意味を持つ言葉です。
ちなみに、このためという漢字を使った、「ためひと」と書いて、何と読むかというと、「ひととなり」と読みます。
「ひととなり」と読ませるんだったら、「ひと」の方が先で、「ため」が後に来たらいいと思うんですけど、「ためひと」と書いて、「ひととなり」って読むんですね。
とっても不思議だなと思います。話を元に戻すと、こうやって濁点ひとつで、評価が否定から肯定にひっくり返るんですね。
私たちの心の持ちようも、何かもしかしたら、そんな小さな違いなのかもしれないなとも思えてきます。
利益とご利益の変化
そしてもう一つ、意味の変化がとても面白い言葉があります。
利益とご利益です。同じ漢字を書きます。
利益は、「便利が増える」という言葉で、自分にとって増えるもの、経済的なメリットを表す言葉です。
俗に、儲けが出たというようなことです。でもそこに、「ご」がつくと、世界がガラッと変わります。
ご利益は仏教語で、仏様や菩薩が私たちに恵みを与えることを意味する言葉です。
「ご」がつくことで、主体は自分ではなくて、神物に移り変わります。
同じ利益という文字、表記は同じなのに、自分が得るものから、授かるものに意味が変わります。
濁点1つ、窃盗語1つ変わることで、こんなにも意味が変わるっていうのは面白いなと思います。
その小さな違いが、人の考え方とか、物の見方を大きく変えるように思います。
もし今、何かうまくいかないと感じているのであれば、これはダメだと切り捨てる前に、これも自分のためになると、
一文字、心の濁点を外してみると、その小さな変化が、やがてご利益のように、未来の自分に返ってくるかもしれません。
ダメとため、利益とご利益、濁点1つ、窃盗語1つ、文字としては本当に小さな違いなんですが、その違いが意味とかニュアンスをガラッと変えてしまうということ。
このわずかな違いの中に、言葉の面白さが詰まっているなって思いました。
そして、その小さな違いをどう私たちが受け取るかで、私たちの気持ちって少し変わります。
いや、大きく変わるかもしれません。
ダメだ、つらいと思いながら過ごすのか、大変だけど自分のためなんだと思って過ごすのかって、大きく違うと思いますし、
利益を得た時に、おかげさまのご利益だったと思うのか、その小さな差をどう心に置くかで、日々は少しずつ変わっていくのかもしれないなって思いました。
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それではまた明日。
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