異色のミステリー作品
こんにちは。
こんにちは。
いやー、早速ですが、送ってきた方からのメモ、拝見しました。
ありがとうございます。
あー、はいはい。
今日はそのメモにあった、なんというか、非常にこう怪しげで面白そうな一冊。
漫画強殺人事件。
これをですね、ちょっと深く見ていきたいなと。
おー、漫画強殺人事件。はい。
メモによりますと、これ、国会図書館のデジタルコレクションで偶然見つけられたそうで。
へー、デジタルで。
なんか昭和のカオスが詰まっている本だ、ということなんですが、今回の目標はですね、このちょっと奇妙な本の正体と、それが生まれた時代の空気感みたいなものを探っていこうかなと。
なるほど、面白そうですね。
で、まず基本情報なんですけど、1984年、作品社からの出版ですね。
はい。
で、著者名が、赤塚不二夫。
まあ、まずそこが引っかかりますよね。
ですよね。えーってなりますけど。
で、さらに副題が、本格長編推理私小説。
あははは、もうてんこ盛りですね。
どこから突っ込んでいいのかっていう。
えー。
あらすじだけ聞くと、手塚八夢先生がですね、時間制御棒っていう、なんかすごいアイテムを持って失踪しちゃうと。
で、横山もちき先生とか、松本玲司先生とか、もう万馬界の巨匠たちが、次々に殺されていくっていう、一応ミステリー風なんですよね。
はい、すじ書きだけ聞くと、確かに。
でも、ミモにもありましたけど、実際の中身は全然違っていて。
うんうん。
石上翔太郎先生、藤子不二夫先生、もちろん赤塚先生ご本人も、当時のもう人気漫画家たちが、実名で。
実名で、ですよね。
ワンサが出てくる、なんか業界SFパロディー小説みたいな。
そうなんですよね。単なるパロディーっていうだけでもないところが、また深いというか。
ほうほう。
送ってきた方は、最初は福島ゆかりの漫画家さんの情報とかを、課題されたのかもしれませんけど。
あーなるほど。それ以上に、当時の漫画界、特にあの時はそう。
はい。
手塚先生とか藤子先生とか、赤塚先生とか、あの辺りの。
伝説のアパートですね。
そうそう。その周辺の人間関係とか、空気みたいなものが、なんか生々しく感じられるんですよね。
へー。
昭和の文化と人間関係
物語の構成自体も、もう破天荒で。
破天荒。
ええ。時はそう時代から始まったかなと思ったら、今度は、赤塚先生たちが作った、七福神の回の話になって。
あー、ありましたね。
で、スタジオゼロ、富士大黒、でグループを点々として、姉妹にはアメリカのあの風刺雑誌マット。
マット。
あれの視察予行まで行っちゃう。もう、時間も場所も視点もぐちゃぐちゃというか、飛びまくるんです。
目まくるしいですね。
で、SF要素も、なんか変に本格的で。
本格的?
ええ。トラヨトラヨって書説に出てくる情音と効果とか。
あー。
あと、タイポグラフィックなんて言葉も出てきたり、文字のデザイン自体が意味を持つみたいな。
へー。SFのアイディアが。
なんか、つついかおりさんとか、あるいはゆめまくるしばくさんの初期作品みたいな、ジャンル分けできない何でもあり感がすごいんですよ。
なるほど。そしてやっぱり気になるのが、著者の謎ですよね。
あかつか富士夫名義だけど、本当は誰が書いたんだっていう。
そこですよね。
まあ、通説としては、やっぱり富士夫プロにいらした永谷邦夫さん。
永谷さん。
本名、長谷邦夫さんですね。
この方が書かれた可能性が高いと、ウィキペディアにもなんかそういう記述があるみたいですよ。
あ、そうなんですね。じゃあ結構知られてはいる。
みたいですね。
しかもこの本、面白推理文庫っていうシリーズの一冊らしいんですけど。
はいはい。他にも、田森さん名義のタレント強殺実事件とか、ビートたけしさん名義のギャグ強殺実事件とか。
えー、田森さんたけしさん名義も。
あるらしいんですよ。もちろんご本人が書いたわけじゃないゴーストでしょうけど。
いやー、すごい時代ですね。今じゃそっと考えられない。
ですよね。人気タレントの名前で、そんな極まのっぽい本がシリーズで出てたなんて。
うーん。
ほんとに。で、送ってきた方がこういう本を、その国会図書館のデジタルコレクションで見つけたっていうのもまた面白いですよね。
えー、まさにそういう発見があるんですね。デジタルアーカイブって。
この本自体が、なんていうか、昭和っていう時代の大らかさ。
そうですね。良くも悪くもですけどね。
その自由さみたいなものをすごく体現しているのかもしれないですね。
だって、実在のしかも超有名な漫画家さんたちを、おそらくですけど許可なく登場させて。
おそらくそうでしょうね。
で、殺しちゃったり、犯人にしたったり。
今のコンプライアンス感覚だと、もう企画会議で絶対ストップかかりますよね。
かかりますよ。絶対弁護団が出てきますよ。
確かに。そう考えると、この本って単なる珍しい本っていうだけじゃなくて、
当時の著作権とか肖像権に対する意識とか、あるいはクリエイター同士の関係性のある種の緩さみたいなものを示す、
なんか貴重な文化史的な資料とも言えるんじゃないかなって。
なるほどな。個人のイメージとかIPとか、今みたいにガチガチに管理されるんじゃなくて。
そうそう。なんか登場人物のキャラクターが、ある意味パブリックドメインみたいに扱われてた時代の証拠というか。
はあ、そういう見方をすると、ただのパロディじゃなくて、時代の空気そのものを閉じ込めたタイムカプセルみたいですね。
そうかもしれませんね。送ってきた方にとっては、まあ最初の目的とはちょっと違ったかもしれないですけど、
結果的にすごく面白いものに触れられたんじゃないでしょうか。
というわけで、今回は漫画教殺人事件という、昭和が生んだ何とも摩訶不思議な一冊を掘り下げてみました。
実在の漫画家たちが、SFパロディ世界で大冒険するっていう破天荒な物語。
その裏には、まあ欲も笑くもですけど、自由奔放だった時代の空気が色濃くありましたね。
ありましたね。
そして、国会図書館デジタルコレクションみたいなアーカイブ。
ああいうところに、私たちが知らない、あるいはもう忘れちゃったような、過去の欠片がまだまだ眠ってるんだなっていう、そういう可能性も感じました。
まさにデジタルのその広大な海を探していくと、こういう忘れられた記録が、今の私たちの常識とか価値観をちょっと揺さぶるような発見につながるかもしれない。
送ってきた方は、この本からどんな昭和を感じ取られたのか気になりますね。
そうですね。いや、面白かったです。
はい。
次回の配信もお楽しみに。
さようなら。