00:00
こんにちは。
こんにちは。
さて、今回は、送ってくださった方の文章をもとにですね、一冊の漫画が持つ力、それから記憶の継承について、深く掘り下げていきたいと思います。
はい。
テーマは、辰田和人さんの『いちえふ 福島第一原発労働記』です。
この作品の文庫版が発売されるっていうことへの喜びと、あとは事故の記憶が風化していくことへの、まあ強い危機感が綴られてますよね。
そうですね。これは単なる作品紹介っていうだけじゃなくて、なぜ今この漫画が重要なるかっていう問いが中心にあるなと感じました。
はい。
なので、送ってくださった方の文章を手がかりに、このいちえふという作品の得意性と、それが現代に投げかける意味を一緒に探っていきましょうか。
お願いします。
まずこのいちえふなんですけど、作者自身が元作業員っていう、そういうルポルタージュ漫画ですよね。
ただなんか、よくある潜入期とか告発者とはちょっと一線を貸すというふうに書かれています。
当時この作品が特別だったのって何だったんでしょうか。
それはですね、やっぱりその徹底して冷静で科学的な視点なんですよね。
送ってくださった方の文章にもある通り、この漫画って放射線の恐怖をやたらに煽ったりとか、声高に原発の是非を問うたりはしないんですよ。
描かれるのはあくまで現場で働く人々の淡々とした日常、そして放射線というものを正しく恐れてどう対処するかっていう、すごく実務的な態度なんです。
なるほど。怖い危ないっていう感情論じゃなくて、どう扱うかという知識とか技術の話に落とし込んでいると。
だからこそ当時不安の中にいた描き手の方にとって救いになったと書かれてるんですね。
まさに感情的な議論が渦巻く中で、この冷静なヒッチが逆にすごく信頼できる情報源として機能したということなんだと思います。
その冷静な視点がある一方で、文章からは社会全体がその記憶を失っていくことへの焦りみたいなものも感じられます。
チェルノブイリと同じ国際原子力事象評価尺度で最悪のレベル7と評価された大事故の記憶がもう風化し始めてるんじゃないかと。
そうなんですよね。レベル7っていうのはもう広範囲な健康とか環境への影響を伴う重大な事故を意味するわけですから、その事実の重みとは裏腹に記憶はどんどん薄れていく。
その象徴として、この1Fでさえ一時期新刊で手に入りにくくなってたっていう事実が挙げられてますね。
そしてここで私すごくハッとさせられたのが、電子書籍と紙の本をめぐる考察なんです。
ああ、ありましたね。
自分が死んだ後誰かの手に渡ってほしいかを基準に紙の本を選ぶっていう言葉にはドキッとしました。
単なる所有欲とはもう全然違う、未来への責任みたいなものを感じます。
03:05
いやー素晴らしい視点ですよね。これってメディア論でいうところのアフォーダンスっていう考え方にもつながるんですよ。
アフォーダンスですか?
ええ。物が持つ物理的な特性が人の行動をどう規定するかっていう概念なんですけど、電子書籍は手軽ですけど貸し借りしたり本屋さんで偶然出会ったりはできない。
ああ、確かに。
手渡せる、書き込める、古びていくっていうその紙の本の物理的な特性そのものが記憶を不特定多数の他者とか未来へつなぐための媒体として機能するんだっていう非常に鋭い指摘だと思いますね。
記憶をつなぐっていう点だと文章では2014年にあの大きな論争を読んだオイシンボーの福島の真実編にも触れられていましたね。
ええ。作中で登場人物が原因不明の鼻血を出す描写があって、それがまあ放射線被曝と関連づけられたことで社会を二分する大論争になりましたよね。
なりましたね。
1Fのあの静かな筆地とはすごく対照的です。
同じテーマを扱っても本当に描き方一つで社会の受け止め方が全く変わってしまうっていう強烈な事例ですよね。
そう思います。だからこそ今このタイミングで1Fが文庫化されて多くの人が手に取りやすい形でまた世に出ることの意義はすごく大きいなと。
その通りです。さらに言うと双葉町で原価展が開かれるっていうのも重要ですよね。
ああそうですね。廃炉作業は今も続いてますし現地ではまだ日常が戻っていない。
この作品が再び注目を集めるっていうことは福島の今を社会に思い出させる強力なリマインダーになるはずなんです。
というわけで今回は1Fの文庫化をきっかけに送ってくださった方の文章から一冊の本が持つ社会的な意味と記憶の継承という大きなテーマについて考えてきました。
送ってくださった方の自分が死んだ後誰かの手に渡ってほしい本家っていう問いはもしかしたら私たち全員に突きつけられてるのかもしれないですね。
情報がデータとして無限に増えて消費されていくこの時代にあえて物理的な形で次の世代に手渡したいと願う物語とか知識っていうのは一体何なのか。
ちょっと立ち止まって考えてみるのもいいかもしれないなと思いました。
次回の配信もお楽しみに。さようなら。